2008年9月9日(火)掲載

◎3航路で年間赤字50億円…東日本フェリー撤退 古閑社長が会見
 東日本フェリー(函館市港町3)の古閑信二社長は8日、函館北洋ビル(同市若松町15)で記者会見し、11月末で函館―青森など3航路の国内フェリー事業からの撤退を正式に発表した。燃油高騰や利用客の伸び悩みから採算が悪化したためで、3航路全体で年間の赤字が約50億円に膨らむことを明らかにした。昨年9月と今年5月に相次いで就航した高速船「ナッチャンRera(レラ)」「ナッチャンWorld(World)」の2隻も10月末で運航を休止する。 会見には古閑社長と関根二夫専務の2人が臨席。古閑社長は「広域観光や地域活性化の一翼を担うという期待に添えない形となってしまった。本当に残念で断腸の思いだ。厳しい環境下で会社を存続させるためには(撤退を)決断するしかなかった」と、時折言葉を詰まらせながら無念さをにじませた。

 事業撤退の理由については燃油価格の高騰で赤字が拡大していることに加え、今年5月以降の利用客の落ち込みが激しいことを挙げ「(青函航路の)燃料代だけで今年は約33億円の赤字が見込まれる。繁忙期の8月の利用客も前年対比3割弱の増加にとどまり、営業的な落ち込みも約10億円に上る」と説明。函館―大間、室蘭―青森はそれぞれ年間約2億円、約6億円の赤字が見込まれるという。

 今後、売却かリースされる見込みの高速船の行方については「これから(関係先と)相談して決めたい」としながら、報道陣から「当初から売却ありきだったのでは」との質問が及ぶと「最初から売るつもりで造った船ではない。青函圏の広域観光化や地域活性化には2隻体制が必要だった」と語気を強めた。

 青函航路は東日本フェリーの系列会社・道南自動車フェリー(同市港町3)が高速でない在来船2隻を引き継ぎ、今後は計4隻体制で運航を続ける。一方、函館―大間と室蘭―青森航路については既に各地元自治体などに支援を要請していることを明らかにし「大間町、青森県には一つの案として各1億円の支援を要請した。その回答を待って航路の存続を決めたい」と述べるにとどまった。

 高速船の就航に合わせて計約38億円かけて新設された青函両ターミナルは現存のまま活用する予定で「過剰投資だったとは思っていない。油の問題がなければもっとお客さんに来てもらえたと思う」と語った。古閑社長は今後も苫小牧と大洗、八戸を結ぶ船舶貸渡事業を柱とした経営の立て直しに向け、社長を続けるという。

 東日本フェリーは、2003年6月に会社更生法を申請した旧東日本フェリーを海運会社のリベラ(現リベラホールディングス、広島県呉市)が05年8月に吸収合併し、06年10月に道内のフェリー事業を分割、事業継承するために新たに設立された。(森健太郎)


◎自治体や関係団体 「大間存続」「利活用探る」
 東日本フェリー(古閑信二社長)が8日、函館―青森間など3航路のフェリー運航事業からの撤退を正式発表したことに対し、自治体や各関係団体の反応はさまざまだ。

 函館市の西尾正範市長は記者団の質問に「(存続が危ぶまれている函館―大間便について)東日本フェリーから資金援助の要請は来ていない。ただ、大間側にとっては函館への通院や買い物などで大切な路線なので、大間町と青森県で何とか存続に向けて頑張ってもらいたい」と述べた。市からの資金援助については「厳しい財政状況を考えると難しいと思う。運輸の路線問題は航空路の関西便の減便などもあり、フェリーだけではない」と語った。

 一方、大間町側はフェリーの存続に対し危機感を募らせている。同町の吉田安男総務課長は「撤退の発表前から、東日本フェリーからは函館―大間便存続のために年間1億円程度の支援を要請されている。12日からの町議会で対応策を協議するとともに、県も含めてた議論を重ねていきたい」と存続への動きを本格化させる。

 一方、函館市観光コンベンション部の鈴木敏博部長は「高速船)就航によって観光客の増加が期待されていたただけに、わずか1年での撤退決定は残念。継続が決まっている青森―函館間航路の利活用方法を、もう一度原点に戻って開拓していきたい」と、観光面での巻き返しを図る。

 経済界への影響も懸念されており、函館商工会議所の高野洋蔵会頭は「異常なまでの燃油高の影響とはいえ、5月に高速フェリーの2隻体制が整ったばかりでの撤退は驚き。景気の低迷が続く道南地域にとって影響は小さくない。今後は大間航路の存続を含め、既存フェリーの安定運航を望む」と述べた。


◎函館ラーメンの老舗「鳳来軒」27日に閉店
 函館ラーメンの名店のひとつ、函館市末広町8にある「鳳来軒(ほうらいけん)」が27日の営業を最後に閉店する。1948年に先代の店主が開店して60年―。73年から2代目店主の千田正昭さん(73)が店を継ぎ、35年間のれんを守ってきた。千田さんは「持病を抱える妻の健康や自分自身の年齢、体力を考え1年前に決断した」と閉店の理由を話している。多くの市民や観光客らに惜しまれながら「老舗の灯」が消える。

 「料理好きの父親の影響を受けて子供のころからラーメンを作っていた」―。千田さんにとってラーメン店の経営は子供のころの夢。家業の水産加工業を継いで、いったん夢を断念した時期があったが、38歳の時に、先代の店主が後継者を探していることを知り、千田さんが名乗りを挙げ、屋号を引き継いだ。

 子供のころに味わい、作った「塩ラーメン」の味が支えで、独自に研究を重ね、わずか1カ月の準備期間で「店の味」を作り上げた。開店初日は約400人が来店し、「とにかく忙しかった。ただ、夢を実現させたことはうれしかった」と振り返る。

 メニューはラーメンをはじめチャーハンやギョーザなど15種類あるが、人気は函館ラーメンの本流の「塩ラーメン」(500円)。具はチャーシュー、ネギ、メンマの3種類で、軽くちぢれためんと透明感のあるあっさり味のスープは35年間変わらない。

 「いつ、どんな状態でも同じ味を維持することを心掛けている。それがラーメン作りの難しさ」と話し、「『前来たときと味が変わらないね』と言われたときはうれしい」と笑う。

 昔と比べて具が多く、こってり味のラーメン店が増えつつある中、「味や中身を変えようとは一度も思わなかった。昔ながらのスタイルを守り抜いたことで、多くの人に支持していただいたと思う」という。

 70歳を過ぎたころから引き際を考え始め、昨年9月、一緒に店を切り盛りしていた妻の秀子さん(68)が体調を崩したのをきっかけに、店を閉じる決心をした。

 常連客が来るたび、閉店することを伝えているが、「まだできる」「やめないで」と言われる。千田さんは「今は未練はない。店をたたむまでいつも通りのスタイルでやっていく」と淡々と話す。

 営業時間は午前11時―午後2時。スープがなくなり次第閉店する。休業日は日曜、祝日だが、23日の秋分の日は営業する。(鈴木 潤)


◎佐藤氏が正式出馬表明…森町長選
 【森】競売入札妨害(談合)容疑で逮捕、起訴されている湊美喜夫被告(79)の森町長辞職を受け、10月19日に行われる出直し町長選に、高校卒業まで森町で過ごした神奈川県横浜市在住の会社経営佐藤克男氏(58)が8日、正式に出馬を表明した。同町長選ではこれまで、元町議の松田兼宗氏(52)が出馬を表明、阿部真次副町長(66)も出馬の意向を示している。

 佐藤氏は函館新聞社の取材に対し「昔のことより、未来に向けて変えなければ」とし、「森町には町民も知らない多くの魅力がある。森町のセールスマンとして産業を活性化するとともに、日本一お年寄りを大切にするまちづくりをしたい。しがらみのない私だからこそできる町政を」と述べた。

 佐藤氏は1949年森町生まれ。森高校を卒業後、上京して会社員として勤務後、95年の参院選比例全国区と98年の同神奈川全県区に政治団体・青年自由党から出馬し落選している。2002年に太陽ハウス(横浜)を設立し、社長に就任した。(笠原郁実)


◎七飯養護学校の今西教諭 「自主夜間中学」来春開設へ準備
 戦争や家庭の事情、病気などで満足に義務教育を受けられなかった人を対象にした「自主夜間中学」を函館市内に開設しようと、七飯養護学校の今西隆人教諭(52)が準備を進めている。来年4月の開設を目指しており、入学希望者を募集中。高齢者向けのこうした取り組みは道南では初めて。今西教諭は「学ぶ喜びを皆で分かち合えれば」と話している。

 今西教諭は札幌市内の特別支援学級教員として務める傍ら、2000年から8年間、同市内の自主夜間中学「札幌遠友塾」のスタッフとして活動した。生徒の多くは70歳前後の高齢者。生き生きと学ぶ姿などから「逆に自分が教わったことが多い」と振り返る。

 こうした経験から今春の七飯への転任を機に、函館での開設を企画。同塾の許可をもらって「函館遠友塾」と名付けた。場所は函館市総合福祉センター(若松町33)の予定。

 対象は十分に義務教育を受けられなかった人で、年齢制限はない。授業は週1回、平日午後の2時間。3年間で中学1年生までの内容を学ぶ計画で、教科は国語、数学、英語、社会のほか、遠足なども行う。ひらがなや足し算、引き算など基礎から始め、無理のないペースで進める。

 入学試験はなく、費用は月額数百円程度の予定。運営は退職教員や学生など市民有志のボランティアスタッフが協力する。3年間通った生徒にはオリジナルの卒業証書が授与される。

 全国夜間中学校研究会(事務局・大坂)などによると、民間運営の自主夜間中学は全国で27校。道内では札幌のほか、4月に旭川でも開設した。今西教諭は「仲間と一緒に机を並べて勉強する喜びを味わってほしい」と話す。

 10月2日には同センターで入学希望者向けの説明会を開く。希望者は平日の午後6時以降に今西教諭(TEL080・5598・5608)へ。(新目七恵)


◎原油・物価高 対策実現を…危機突破地区集会
 道南地域の各業界団体が一堂に会し、原油高騰や物価上昇に対する対策の実現を求める「道民生活、経済・産業危機突破函館地区集会」(実行委主催)が8日、ベルクラシック函館(函館市梁川町)で開かれた。各団体の代表者が産業界や消費者の厳しい状況を訴えるとともに、行政に対して実効性のある対応策を求める決議を採択し、一致団結して活動を継続することを確認した。

 道南地区農民連盟、函館地区商工連盟、連合北海道函館地区連合会、高齢者退職者連合会による実行委(末藤春義委員長)が主催。道南地域の経済・産業団体関係者を中心に約750人が出席。民主党の逢坂誠二衆院議員や函館市議らも顔をそろえた。

 冒頭あいさつに立った末藤委員長は「物価高騰の影響は、地方産業や地域経済に大きなしわ寄せとなって表れている。今みなさんが声を大にしないと、この窮状は政府には伝わらない」と訴えた。逢坂氏は「大幅な灯油高騰の中、北海道の住民は厳しい冬をどうやって乗り切ればいいのか。国民が苦しんでいるこの時期に首相が逃げ出す無責任な与党には政治を任せておけない」と語った。

 各業界代表が厳しい経営状況などを説明した後、灯油や生活物資の高騰に対する有効な抑制策と生活弱者への支援策の充実などの実現を求めた決議案を満場一致で採択。最後は函館地区連合会の渡部正一郎会長の発声による「がんばろう」の三唱で締めくくった。(小川俊之)


◎オンパク第3弾 15日に競輪体験
 湯の川温泉街のホテル・旅館などでつくる「はこだて湯の川オンパク実行委員会」(金道太朗委員長)は、15日に行うバスツアー「Let’sけいりん」の参加者を募集している。毎年秋に湯川地区などで開催する体験型イベント「はこだて湯の川オンパク」を年間通して楽しんでもらおうと、5月から始めたスポット企画「四季を楽しむオンパク」の第3弾。今回は函館競輪場(金堀町10)を訪れ、競争路内の見学や試走、レース予想などを体験する。

 当日は午前9時半に湯の川プリンスホテル松風苑(湯川町1)に集合し、競輪場までバスで移動。現役選手の練習風景を見学したり、競輪場が用意した自転車でバンク内を実際に走ったりできる。今年新設されたロイヤル席で初心者向けの場外開催レースの予想会も開催。正午すぎにはホテルに戻り、特別ランチや温泉入浴を楽しめる。

 予想会の掛け金は実費で、子どもたちは1着になる色を予想し、当たれば函館競輪のマスコットのぬいぐるみがプレゼントされる。実行委の河内孝善事務局長は「道内唯一の競輪場を広く知ってもらい、公営競技の面白さやスポーツ性に理解を深めてもらいたい」と話している。

 参加条件は補助輪なしで自転車に乗れる人。先着順で定員24人になり次第締め切る。親子ペアは4000円、大人1人は2500円(食事、入浴代などを含む)。親子ペアの子どもの食事はお子様ランチとなる。問い合わせはオンパク事務局TEL0138・59・3789(平日午前9時―午後5時)。(森健太郎) 


◎イラン映画「オフサイド・ガールズ」15日に上映会
 イラン映画「オフサイド・ガールズ」(2006年)の上映会(実行委主催)が15日、函館市民会館(湯川町1)で行われる。イラン人留学生のトークショーも予定しており、実行委(清水国昭委員長)のメンバーは「普段見られないイラン映画をぜひ見に来て」と呼び掛けている。

 函館映画鑑賞協会(木澤晧会長)創立28周年記念として市民有志が企画した。作品は、法律によって女性のスタジアムでのサッカー観戦が禁止されているイランで、何とか応援したいと男装してスタジアムに潜り込む少女たちの奮闘をユーモラスに描いている。

 映画は92分。3回の上映((1)午後零時半(2)同3時15分(3)同6時)と、イラン人の北大留学生カヴェ・ファタヒさんがイランの市民生活などを語るトーク((1)午後2時15分(2)同5時)も予定。

 実行委メンバーの佐々木公子さんは「家族で楽しめる作品。留学生から直接話も聞ける貴重な機会なので、ぜひ足を運んで」と話している。

 前売り1200円(当日300円増)、学生・障害者は800円(同)。同市民会館やシネマアイリスなどで取り扱い中。問い合わせは同協会TEL0138・52・0193。(新目七恵)