2009年10月14日 (水) 掲載

◎中島廉売「つゆきリビングショップ」が閉店

 函館市中島町13の中島廉売で陶器や生活用品などを販売する「つゆきリビングショップ」(露木登店長)が、近く閉店する。登さんの父、故懿(よし)さんが同廉売で陶器店を始めて60年余り。登さん(70)は妻の稲子さん(67)と一緒に店を切り盛りし、街の移り変わりを見つめ続けてきたが、高齢のため決意した。茶わんやほうき、コップ…。店内に並ぶ在庫を売り切った時点で店じまいするつもりだ。

 「いらっしゃい」―。店内に入ると、座布団が敷かれた丸いすが目に飛び込んでくる。「お客さんと話すのが好きだからね」という登さんの言葉に、稲子さんは「この人らしいでしょう」とほほ笑む。

 登さんの父は1947年、同廉売で陶器類を扱う露店を始めた。57年には「露木陶器店」と名付けた店舗もオープン。登さんは幼いころから店の手伝いをしてきた。

 67年に稲子さんと結婚。2人で父の店の運営を支え、廉売にある約140の露店の中心を担った時期もあった。木古内、八雲まで売りに出掛けたことも。稲子さんは「乳母車代わりに段ボールに子どもを入れて働いた」と懐かしげに振り返る。

 85年に独立した後は陶器だけでなく、日用品や園芸用品など取り扱う商品を広げた。「お客さんあっての商売だから」と登さん。大手デパートの誕生などで競争が激化する中、多様化する客の要望に応え続けてきた。

 登さんの信条は「真は商いの基」。しっかりした日本製の陶器を扱い、自信ある商品しか客に勧めない。そんな人柄にファンも多く、結婚記念日に客からもらった手作りの置物や学生客からのプレゼントの品は、2人の宝物だ。

 長年の客商売をやめる寂しさはあるが、登さんは「ここまで育ててもらったのはお客さんのおかげ。時代が変わっても中島廉売が少しでも良くなれば」と願う。これまでの感謝も込め、店内の商品はすべて半額で販売している。

 客同士のけんかがあるほどいつもお祭り騒ぎだった廉売の活気ある光景は、今も2人の脳裏に焼き付いている。店のシャッターを下ろすその日まで、2人は優しい笑顔で客を出迎える。(黒田 寛)



◎函館市文化賞に舞踊家・藤間さん、音楽分野・中島さん

 本年度の函館市文化賞受賞者に、芸術(芸能)分野から舞踊家の藤間扇世(本名・岡部貴代子)さん(73)=同市日吉町=、同(音楽)分野から中島眞之さん(68)=同市東山=が選ばれた。ともに長年にわたる各分野での教育、活動などが評価された。贈呈式は11月3日午前11時から、函館市民会館で行われる。

 同賞は市文化賞審議会(座長・西尾正範市長)が審議し、市の芸術や文化の発展に寄与した個人や団体に贈られる。本年度は団体の該当はなかった。芸能分野から36人目、音楽分野からは12人目となる。

 藤間さんは函館市出身。1歳5カ月で藤間扇吉氏に入門し、以来72年間にわたり活動。1983年には他流派の若手6人と「六葉会」を結成して発表会などを開催し、芸の向上や日本舞踊の普及などに励んできたことが評価された。また市民歌舞伎「初春巴港賑(はつはるともえのにぎわい)」には初回から出演し、最多記録を誇る。

 中島さんも函館市出身。道学芸大学函館分校(現道教育大学函館校)卒業後、作曲活動を行う傍ら、市内の中学教諭として吹奏楽指導で道内トップクラスの実績を持つ。79年には函館市民オーケストラを設立し、毎年定期演奏会を開き、国内外のプロと共演するなど幅広く活動。99年まで団長を務め、現在も常任指揮者として活躍している。

 受賞の知らせを受けた藤間さんは「これまでの地道な活動が評価されたのかな。今後は育成や普及に力を入れたい」。中島さんは「多くの人と活動してきて、その代表として賞をいただいたと思っている。これからは次の世代につなげていく役目を果たしたい」と語った。(山田孝人)



◎神山茂賞に近江さん…長年にわたり郷土史研究、身近な形で市民に発表

 社団法人函館文化会(安島進会長)は13日、函館や近郊の郷土史について優れた研究を収めた個人や団体に贈る2009年神山茂賞に、函館市白鳥町の無職、近江幸雄さん(72)が決まったと発表した。近江さんは長年にわたり郷土史研究に取り組み、道南の人物を広くこまめに研究し、身近な形で市民に発表してきたことなどが評価された。

 同賞は昨年該当者はなく、2年ぶりの受賞者決定となった。近江さんは1936年函館生まれ。56年に市水道局勤務。88年発行の「函館市水道百年史」の編集に携わったほか、著書として「函館人物誌」「合津斗南藩と函館開拓使」を出版。北海道史研究協議会渡島地区幹事、南北海道史研究会会員として活躍。2003年には神山茂奨励賞を受賞した。

 07年には「函館ふるさと紀行」を、今年に入り、20数年前から研究している函館出身の漫画家、挿絵家の小山内龍(本名・沢田鉄三郎、1904―46年)の生涯をまとめた「小山内龍―北の絵本作家」を出版。また、函館開港150周年を記念し、市内の出版会社と函館の歴史を題材にした「函館いろはかるた」を共同制作し、発売した。

 市教委や学識経験者で構成する同賞選考委員会の安東璋二選考委員長は「歴史の中に埋もれかねない事柄や人物に光を当て、市民が郷土史に興味を持つような研究、発表の内容。今後の活動にも期待できる」と称えた。

 近江さんは現在、本紙日曜日掲載「道南不思議夜話」(毎月2回)を執筆するほか、さまざまな講座などで講師を務める。「受賞はうれしい限りで今後の活動に責任を感じる。これまでは史実を大作としてまとめた方が受賞してきたが、小山内のような小さな本(A5判、54ページ)が評価されたことは今後、若い人が郷土史研究に励むきっかけになるかもしれない。これからも地道に研究し、青少年の教育に尽力していきたい」と話していた。

 神山茂賞は函館出身の郷土史家、神山茂氏(1893―1965年)の業績をたたえ、函館文化会が88年に創設。函館の文化高揚に貢献する郷土史研究者奨励事業の一つとして、函館や近郊の郷土史について優れた研究、出版などの事跡を残した個人・団体を表彰している。89年から一昨年までに16個人4団体に本賞、4個人3団体に奨励賞が贈られている。

 表彰式は神山氏の命日にあたる11月7日、函館市末広町4の五島軒本店で開かれる。(山崎純一)


◎市立函館保健所 インフル ことし初の警報

 市立函館保健所は13日、今年初めてのインフルエンザ警報を発令した。今月5―11日の市内の定点医療機関での患者報告数が30・64人となり警報レベル(30人)を超えたためで、道内では浦河保健所管内に続き2カ所目。函館保健所でのこの時期の警報発令は、資料が残る過去5年間では例がない。また、10―12日の3連休に休日当番医を担当した函館市内の各病院には新型インフルエンザの感染を疑う患者が殺到し、各病院とも対応に追われた。

 同保健所によると、市内の小児科を含む定点医療機関11カ所で、患者報告数が第40週(9月28―10月4日)の94人から、第41週(5日―11日)が337人に増加。定点平均が30人を超え、警報を発令した。

 インフルエンザ警報の発令は2007年2月以来で、同保健所が注意報を飛び越して警報を発令した例は過去にないという。

 同保健所は手洗い、うがいの励行や人ごみを避けての行動を呼びかけているが「学校を中心に発生しており免疫をほとんど持たないので、広がりを止めるのが難しいのが現状。適切なタイミングでの服薬とともに、感染予防のためのせきエチケットを心がけてほしい」と話している。

 一方、新型インフルのまん延を受け、3連休中に休日当番医に患者が押し寄せた。

 市内桔梗3の「中川内科クリニック」は11日に休日当番医を担当。午前9時の診察開始から患者が詰めかけ、午前10時半には受け付けが150人を超えた。同クリニックだけでは対応し切れなくなり、市内の総合病院を利用するよう促したという。

 診察は午後5時までの予定だったが、同7時半まで延ばして116人を診察、うち64人をインフルエンザA型と診断した。中川享院長は「この時期にこんなに混雑するのは初めて」と話す。

 また、12日に当番だったある病院では190人が診察に訪れ、最大で5―7時間待ちと大混雑。午前中から駐車場が満杯となり、周辺では渋滞も発生した。同病院は「80―100人と予想していた。用意した検査キットが足りず、急きょ追加で発注した」と話している。(千葉卓陽、山田孝人)


◎岩村、小林、川村氏立候補…八雲町長選 18日投開票

 【八雲】任期満了に伴う八雲町長選挙が13日告示され、届け出順に新人で前町議の岩村克詔氏(52)、新人で前町議の小林石男氏(60)、現職の川代義夫氏(66)の3氏が立候補した(いずれも無所属)。同日告示された町議選は、八雲選挙区に15人(定数14)、熊石選挙区に9人(同6)が立候補した。

 現職対新人2人の三つどもえとなった今回の選挙では、4年間にわたり新町の基盤づくりを進めてきた実績を訴える現職の川代氏に対し、経営者としての行動力でまちづくりを訴える岩村氏、1次産業を軸とした地域活性化を掲げる小林氏が激しく火花を散らす。

 同町は2005年10月に旧八雲町と旧熊石町が支庁の枠を超えて合併し誕生。前回の町長選挙では、当時、八雲町助役だった川代氏が無投票で初当選した。

 岩村氏は静内町(現ひだか町)出身。八雲高校卒業後、自ら会社を興し05年に町議初当選。企業経営の経験と人脈を生かし、自らトップセールスマンとして地域産物をPRし町おこしに力を注ぐとし、町政の無駄を見直し、不平等のない行政運営を訴える。

 小林氏は八雲町出身。八雲高校卒業後、農業に従事しながら4期14年町議を務めた。1次産業振興に重点を置き、地場産品を全国的にアピールしながら、若者の働く場所を確保するとともに、高齢者が安心して生活できる環境づくりを訴える。

 川代氏は八雲町出身。八雲高校卒業後、町役場に勤務。町長就任後は、合併後の町政運営に尽力。医療福祉の充実により安心して暮らせるまちづくりを目指すとともに、1次産業の生産基盤整備や次代を担う子どもたちの育成支援に重点を置くと訴える。

 投票は18日午前7時から午後8時までで、一部の投票所で終了時間を繰り上げる。即日開票し、町長選、町議選とも同日午後11時過ぎに大勢が判明する見通し。12日現在の有権者数は八雲地区が1万3306人、熊石地区が2658人。(小川俊之)