2009年10月17日 (土) 掲載

◎石川稜北地区問題 商工会議所が要望、請願取り下げ

 函館市が市街化調整区域の石川稜北地区(33ヘクタール)を市街化区域に編入する手続きを進めている問題に絡み、函館商工会議所と函館市商店街連盟は16日、編入取りやめを求めて先月下旬に市、市議会に提出した要望、請願をそれぞれ取り下げた。14日に市が提示した商業施設の延べ床面積を抑制するなどの修正案を受け入れたもので、これにより、21日の市都市計画審議会では同地区編入の予備審議議案が承認される見通しとなった。

 同会議所は16日午前に開いた商業部会で修正案の扱いを協議し、全会一致で取り下げを決定。午後に松本栄一副会頭、古川雅章専務理事、桜井健治常務理事が市役所を訪れ、市に要望書、市議会に請願書の取り下げを伝え、それぞれ受理された。

 要望、請願は同地区への大型店進出によって中心市街地空洞化が進むことを懸念する内容だった。これに対し市は、スーパーマーケット系の延べ床面積を1万平方㍍以下から5000平方㍍以下に抑制する修正案を提示。会議所側も大型店進出が一定程度制限されると判断し、譲歩する形となった。

 松本副会頭は同市長との懇談で「経済界の主張を理解していただいた。100%ではないが一定の成果があった」と述べた。西尾市長は「事業者に譲歩をいただいた。懸念の払しょくはできるのでは」と応じた。

 今回の取り下げにより、21日の市都市計画審議会で修正案が承認される見通し。市は承認を得た上で、22日の道の都計審の幹事会に諮る考え。



◎石川稜北地区問題、既存商店街の崩壊懸念 市はまちづくりのビジョンを

 函館商工会議所などが石川稜北地区の市街化区域編入に反対する要望を取り下げたことで、同地区に600区画を造成する民間の区画整理事業が事実上動き出す。併せて、函館新道沿いに新たな大型店舗の進出が見込まれ、会議所部会の全会一致とはいえ、既存商店街の崩壊や地盤沈下を懸念する声はやまない。まちづくりはもちろん、商業全体の振興や大型店対策について、市は明確なビジョンを示す必要がある。

 商工会議所関係者は今回の取り下げが苦渋の決断だったことを明かす。松本栄一副会頭は修正案について「100%ではない」と幾度となく口にし、古川雅章専務理事もまた「道の都市計画審議会が迫る中で、ギリギリの判断だった」と話す。

 市議会で郊外型の大型商業施設の立地問題を長く取り上げ、今回の問題でも市の対応を追及した志賀谷隆氏(公明党)は「商工会議所が決めたことなので是としなければならないが、個人的にはこれで都市のスプロール(無秩序な拡大)現象や空洞化に歯止めがかからなくなると思う。5000平方メートル以下の商業施設なら認めると言っても、実は相当な大きさ」と語る。

 食品スーパーに限ってみると、2007年6月にオープンしたスーパーアークス港町店は延べ床面積が約3300平方メートル、08年7月のフレスポ戸倉内のアークス戸倉店は同約2200平方メートル、同年11月に開店したコープさっぽろひとみ店は同約2100平方メートルだ。志賀谷氏は「これに他の物販やアミューズメント(娯楽)施設などが立ち並べば、中心市街地はひとたまりもない」と懸念。市職員やOBからも「床面積を縮小するだけで、問題の根本が解決されるわけではない」とする声が聞かれる。

 市内の流通関係者は、函館市のまちづくりや商業政策について「市内に入る幹線道路の“関所”に商業施設を造るという失態を続けている」と指摘する。国道228号は北斗市ではあるが七重浜の商業施設、道道函館南茅部線にフレスポ戸倉、国道5号函館新道に現在の「石川問題」となる商業施設が立ち並ぶことになる。関係者は「市や議会が一体になれば函館新道や戸倉の開発は防ぐことができた。そして今回、また同じことを繰り返している。市が棒二森屋や丸井今井、地元スーパーを守ろうといくら言っても、やっていることが逆だ。大型店の撤退問題が再び起きるだろう」と語る。

 人口問題研究所は、約20年後の函館市の人口を20万人と推計している。市議会で同問題を取り上げた福島恭二氏(民主・市民ネット)は「将来に禍根を残さないよう、石川の市街地拡大には反対してきた。これで石川地区に小学校を作る動きも出てくるだろう。少子化で学校の統廃合を進めている中、教育政策でも逆行する」と別な観点からも問題点を指摘する。



◎「生活の足」期待し乗車 「おでかけバス」試験運行開始

 函館市が西部地区住民の利便性向上を図る目的で同地区を循環運行するコミュニティーバス「おでかけバス」の運行実験が16日、始まった。同バスの停留所では地域住民が案内パンフレットを手に、循環コースを試し乗りする姿が多く見られた。18日までは周知期間として無料で運行する。実験は12月30日まで。

 ルートは船見町から十字街の間を、7つの坂を上がり下りしながら循環する全長9.2キロ。38の停留所が設置されている。バスはリフト付きの26人乗りで、業務は函館バスに委託。時間は午前8時―午後5時過ぎまでで、約50分間隔で運行する。料金は大人100円、一日乗車券は300円。

 初日は無料ということもあり、循環コースを丸一周して利便性を確かめる市民が多く見られた。市電との乗り継ぎポイントである十字街から乗車した末広町の主婦、山田徳子さん(73)は「元町を散策したいという時に利用すれば便利かなと感じた。料金も安価でいいと思う。ただもう少し本数があればもっと便利だと感じた」。バスの折り返し地点である船見町に住む主婦、石田靖子さん(70)は「生活の足として使いたい。これまで買い物の時には歩いて1日に何度も坂を往復していた。これから冬場を迎えるしありがたい」と話していた。

 市は事業化のめどを1日あたり450人と設定し、見込める場合、公共交通事業者に本格運行に向けた要望を行う。また21日まで函館山ロープウェイの法定点検作業の影響で、一部う回運転を実施する。運行に関する問い合わせは函館バスTEL0138-51-3137。


◎大沼で「秋の味覚市」スタート

 【七飯、森、鹿部】駒ケ岳周辺の七飯町と森町、鹿部町の特産品を売り込む「秋の味覚市」が16日、大沼公園広場で始まった。3町の観光業者らでつくる環駒ケ岳広域観光協議会(堀元会長)の主催。

 同市は11月16日までの1カ月間、金・土・日・月曜と祝日に開催する。ツアー客など大沼の滞在時間が短い観光客をターゲットにしたイベントで、売り場には3町の特産や人気商品を陳列。森町のイカ飯や大沼牛のローストビーフ、鹿部産のホタテなど1品300円で提供し、来場者はそれぞれの町の味覚を味わったり買い物を楽しんでいた。

 期間中の土曜日には、JR大沼公園駅に隣接する大沼国際交流プラザを発着点に3町の観光・産業スポットを巡る「秋の味覚ツアー」も実施。17日に1回目のツアーを行う予定で、バスで北電森発電所やニチレイフーズ森工場、鹿部町のしかべ間歇泉公園などを訪れ、各訪問先で地場産品を試食する。

 「この1カ月、秋の大沼を満喫してほしい」と同協議会。ツアー申し込みは各実施日の前日午後5時までで、同プラザ℡0138・67・2170へ。

 同広場では17、18の両日午前10時から、恒例の大沼紅葉まつりも開かれる。


◎新幹線延伸予算要求見送り 道南にも動揺広がる

 2010年度予算の概算要求で、北海道新幹線の長万部―札幌間など新規着工区間の事業費が盛り込まれなかったことを受け、札幌延伸を目指してきた道南の関係者にも動揺が広がった。新青森―新函館間など既着工区間の予算は当初の予定通り確保された一方、前政権下で合意していた09年度内の札幌延伸着工は先送りされる公算が大きくなった。

 10年度当初予算の概算要求では、整備新幹線の国費として、道新幹線新青森―新函館間に充てる工事費を含め、09年度当初と同額の706億円を計上。ただ、09年度予算に盛り込まれていた長万部―札幌間など新着工区間の事業費や調整費については、今回の要求では見送られた。

 高橋はるみ知事は「概算要求に既着工区間の予算が盛り込まれたことは、北海道新幹線の新函館までの着実な整備が図られるものと受け止めている」としながら、「新規着工区間については年末の政府予算案の決定までに精査され、札幌延伸に向けて政府でさらに検討が進められることを期待している」とコメント。

 西尾正範函館市長は「札幌―長万部間の認可、着工についてはこれまで各期成会と連携を図りながら要望活動をしてきた経過があり、今後の対応について期成会とも相談して検討したい」と述べた。渡島支庁新幹線推進室は「一日でも早い札幌延伸が必要というスタンスは変わらず、今後も沿線自治体や経済界と連携して活動していく」、北斗市新幹線対策課は「延伸については国の動向、推移を見守りたい。まずは最重要課題の新駅整備を粛々と進めていきたい」と話している。