2009年11月23日 (月) 掲載

◎高橋さんら有志、「冬春太鼓」で日乃出町を盛り上げよう

 函館市日乃出町を和太鼓で盛り上げようとする市民有志がいる。「冬春(とうしゅん)太鼓」と命名。「『日乃出』という地名は縁起がいい。粋な和太鼓の音色でみんなを元気づけたい。年末年始の宴会や祝い事に駆けつけて披露しよう!」とメンバーは意気込んでいる。

 市内千代台町の高橋順一さん(82)が考案し、高橋さんを慕う堤義雄さん(67)、市川正さん(60)、石川悦子さんがけいこに励む。函館鍛神小1年の数馬うららさん(7)も一員で、自宅で練習をしながら休日に仲間入りしている。

 高橋さんは、木琴演奏の道内の草分け的存在として知られ、函館市民さあかすを創る会の代表も務める。「人を喜ばせることが生きがい」と道化師にもふんし、ファンは多い。函館巴太鼓、木古内みそぎ太鼓、南茅部大漁太鼓、箱館やぐらとご当地太鼓の創案者でもある。

 「芸達者な高橋さんに、このまちならではの太鼓をつくってもらおう」―。市川さんらが企画を持ちかけ、高橋さんは「それはいい。夢と遊び心を持って音色を生み出そう」と協力。9月中旬から構想を練り、11月上旬には音色をほぼ完成させた。

 けいこ場所は、日乃出町21の「スナック ひので」。営業前の2時間、練習を重ねる。「体で覚えるのが一番」と譜面はない。「トントントントン、トトントトン」と高橋さんの声にばちを振るう。

 打ち出しは、夜明けから朝日が輝かしく昇る様子を表現。小刻みな小さな音色が、奏で合い、次第に豪快さを加えていく。「イヨッ、ハッ!」と張りのある掛け声も印象的だ。

 メンバーは「ドシンと体に響く音が最高。相打ちがうまく決まれば気持ちいい。なかなかさまになってきた。豆絞りの鉢巻きも似合って、ばっちりだべさ」と笑い、お披露目に向け最終調整をする。(田中陽介)



◎知的クラスター事業「廃止」/怒り、撤回の声強まる

 政府の行政刷新会議が来年度予算の事業仕分けで、産学官連携による技術や産業開発を支援する文部科学省所管の知的クラスター創成事業を「廃止」と判定したことに対し、地元関係者の反発と予算確保を願う声が強まっている。事業推進に対し、5カ年で計15億円の補助金交付が打ち切られるだけでなく、不況と人口減の中でまちづくりの起爆剤として国際水産・海洋都市構想を掲げる函館市などからは「はしごを外された」と、民主党政権へ矛先を向けている。(千葉卓陽)

 

 同創成事業は、国際競争力を持った新産業の創出に取り組む地域を支援するもので、公募によって支援地域を選出する。

 函館市と道は「函館マリンバイオクラスター」と銘打ち、海洋環境の計測、予測技術の確立、沿岸の海洋資源などを活用した食品や医薬品の開発など、4項目を研究テーマに掲げて提案。文部科学省は今年7月、同事業の「グローバル拠点育成型」に採択した。各研究テーマは北大大学院水産科学研究院や道立工業技術センターの研究者がグループリーダーを務め、これに公立はこだて未来大や函館高専など23の研究機関、50の企業が参画している。

 函館エリアは2003―05年に都市エリア産学官連携促進事業の一般型、06―08年度は同事業の発展型の採択を受けている。同発展型ではガゴメ(トロロコンブの仲間)などを使った113の製品を開発し、「函館?ガゴメ」のブランド作りにも役割を果たしてきた経緯もある。

 しかし、事業仕分けでは「このレベルの事業規模では成果が生まれない」「地方大学救済のためなら別途、予算を要求すべき」と“一刀両断”。同事業を含む産学官連携関連は廃止と判定された。

 函館市の西尾正範市長は廃止判定を受け、地元選出の国会議員への要請などを精力的に行ったほか、19日に開かれた民主党国会議員との政策懇談会では、同じく対象地域の上田文雄札幌市長、砂川敏文帯広市長らと歩調を合わせ、予算確保を訴えた。

 「水産・海洋都市構想はもともと、1994年ごろの北大水産学部移転問題が発端で、15年かかってここまで到達してきた。これを再び立て直すには5―10年を要する。廃止判定は地方主権を目指す民主党の思想から考えてもおかしいと言わざるを得ない」と憤る。

 本年度交付された3億円は、研究員の人件費や必要機器の購入、調査旅費などに充てられている。同事業の中核機関・函館地域産業振興財団も「成果を上げており、決して“税金のムダ遣い”ではない」と声を荒げる。事業統括の三浦汀介副理事長は「資源のない日本は技術や研究シーズ(種)で世界と戦っていかなくてはならないのに、将来のフレームが見えない中で予算が少ないから削るというのはどうか」と疑義を呈する。

 20日には高橋はるみ知事ら関係する7道府県の知事が予算確保を求める緊急声明を発し、「廃止撤回」を求める動きは加速している。三浦副理事長は「産学官の調和は地域発展の要。上手にやることが地方のまちづくりにもつながるということを(政府には)見てほしい」と話す。



◎東大沼小校100周年記念式典

 【七飯】東大沼小学校(工藤達也校長、児童13人)の開校100周年記念式典が22日、同校で開かれ、卒業生ら約150人が先人の功績をたたえながら節目を祝った。

 東大沼小学校は1909(明治42)年11月、軍川尋常小学校の雨鱒川特別教授場として雨鱒川橋右脇に校舎を建て開校。移転や名称変更を経て41(昭和16)年に銚子口国民学校として独立校となった。55年に東大沼小学校と改め、これまで579人の卒業生を送り出した。

 昨年9月に学校や地域住民、PTAなどでつくる協賛会を発足させ、式典に向けて準備を進めてきた。

 式典では、工藤校長が「100年という歴史は先人の努力によって成り立っていることを改めて自覚しないといけない。苦労、困難を乗り越えてきた精神は後に続く者の誇りと自信となった」と式辞。同校の卒業生で、同式典協賛会の若松時彦会長が「子供を見守るやさしいまなざしはいささかも変わっていない。一層の飛躍を期待する」とあいさつした。

 来賓の中宮安一町長と冨原亮道議、渡島教育局の吉田一昭局長がそれぞれ祝辞を述べた。

 同協賛会から同校への記念品贈呈、歴代校長や永年勤続職員らへの感謝状贈呈の後、全校児童13人が同校の歴史をまとめたぺープサート劇(紙人形劇)「東大沼小100」を上演。同校の歴史を紹介しながら駒ケ岳の噴火など周辺地域の出来事も伝え、最後は歌で“100歳”の誕生日を祝った。

 劇の上演後、児童全員が壇上で呼び掛けをし、「東大沼小の伝統を守りながら勉強や運動に頑張ります」と述べると、出席者も温かい拍手を送っていた。

 町内在住で、1944年卒業の南部カエさん(77)は「当時は戦争中で、幼い妹たちの子守をしながら学校に通った。とても懐かしい気持ちになった」と話していた。

 式後、大沼婦人会館で祝賀会を開催。アトラクションでは20年前に校庭に埋めたタイムカプセルが開封された。出席者は久々に再会したクラスメートや恩師らと思い出話に花を咲かせていた。(鈴木 潤)


◎「五稜星の夢」準備始まる

 国の特別史跡・五稜郭跡で22日、星形の掘を約1800個の電球で装飾する「五稜星(ほし)の夢」の電球設置作業が始まった。実行委員会会員など約30人とボランティア約80人が参加。冬の函館を彩る作業にいそしんだ。

 全体作業は午前10時から開始した。周囲1.8キロの内堀に沿って杭を土のうで固定。電気ケーブルを引っ掛け、電球を取り付けていった。会員とボランティアは、前日の雪でぬかるむ足元に注意を払いながら、1つずつ丁寧に作業を進めていた。

 札幌市から観光で訪れていた幼稚園教諭の秋谷礼香さん(23)と会社員の濱田里香さん(23)は「ライトアップされるのは知らなかった。とてもきれいだと思うのでぜひ見てみたかった」と話した。

 25日に電球の点灯試験を行い、28日から来年の2月28日まで毎晩午後5時―10時まで点灯する。点灯初日の28日午後5時には趣向を凝らした花火が打ち上げられる。実行委に500円を募金すると、五稜郭タワーから無料で星形に光る五稜郭を見ることができる。問い合わせは実行委員会事務局℡0138-53-65110。(黒田 寛)


◎企画【わたし学びます】~函館遠友塾(2)~/須藤君子さん(61)

 北斗市久根別に住む須藤君子さん(61)は民間で運営する自主夜間中学「函館遠友塾」への通学をきっかけに、学校に行ってないことを周囲に話せるようになった。

 「それまでは人に隠して卑屈になっていた。オープンにしたら気が楽になりました」。その穏やかな表情からは、これまでの苦悩を推し量ることはできない。

 漢字が書けない、学校を卒業していない。自分を苦しめてきたコンプレックスを、少しずつ乗り越えようとしている。

                      ◆

 1948年、七飯町大中山生まれ。5歳の時に父が病死した。女手一つで農家を続け、3歳年上の兄と自分を育てていた母親が、小学4年の時に脳溢血(いっけつ)で倒れて半身不随になった。家計のため、自分から学校に行かなくなった。勉強があまり好きではなく、友達との間で何か嫌なことがあったのも理由だった。

 田植えや種まき、草刈り、収穫など慣れない農作業に励み、周囲の大人の協力もあり、何とか生活していけた。学校から先生が迎えに来たり、母に諭されもしたが、たまに教室に顔を出すと勉強についていけず、足は遠のいた。通学する友達の姿から目をそらした。いつしか学校のことは一切考えないようになっていた。

                      ◆

 遠友塾の「遠」。空に浮かぶ「雲」。いつも聞いている「歌」。遠友塾の国語の授業で漢字の筆順を教わる度にうれしさが込み上げる。筆順通りだと字がきれいに書けるのだ。今まではほとんど自己流だった。

 「書き順が正しいとこんなにも違うんだ」。漢字練習帳の小さな1マス1マスは、そんな大きな驚きで埋まっている。数学は九九程度までしか分からない。遠友塾の授業はテンポが早く、計算問題を大量に解かねばならない。ユーモアたっぷりのスタッフの説明に時折笑いながらも、「ついていくのに必死なの」と恥ずかしそうに漏らした。でも、学ぶことを選んだことに後悔はない。(新目七恵)