2009年11月25日 (水) 掲載

◎厳しい雇用情勢 高校生にも直撃…面接会に181人

 来春卒業予定の渡島、桧山管内の高校生の就職内定率が10月末現在で、前年同期を7・0ポイント下回る38・6%に落ち込んだことが、函館公共職業安定所のまとめで分かった。求人数が前年に比べて4割近くも減少し、過去10年間で最も低い水準となった。24日に函館市内のロワジールホテル函館であった第1回新規高卒者就職面接会in函館(同職安主催)の参加企業も18社(求人数106人)にとどまり、厳しい雇用情勢が高校生の就職活動を直撃している。

 同職安によると、管内の高校卒業予定者は4144人(男2146人、女1998人)のうち、就職希望者は1115人。10月末時点での就職内定率は2006―08年度に40%台で推移していたが、昨年秋からの景気低迷で今年は4年ぶりに30%台に落ち込んだ。求人数は昨年同期に比べ37・8%少ない797人。昨年まで好調だった道外の求人が前年同期から44・0%も減少し、一段と厳しさを増している。

 就職面接会の参加企業数も目標としていた20社に及ばず昨年から13社減少。医療・福祉関係、宿泊施設、食品販売などの企業が参加し、31校から生徒181人が駆け付けた。昨年は163人が参加し、46人が内定を受けたといい、生徒たちは希望の企業のブースを回り、採用担当者から業務内容の説明を受けた後、自己アピールしていた。

 函大有斗高校3年の山本恭兵君(17)は「職種が限られているので就職活動は厳しい。面接会では希望職種があったので、全力で頑張り採用してよかったと思われたい」と話していた。市内のある高校の進路指導担当教員は「今年は道外求人が激減し、二次募集もないので近年で最も状況は厳しい」と頭を悩ませていた。(宮木佳奈美)



◎高谷副市長を後継指名…海老沢市長が引退表明

 【北斗】旧上磯町時代から通算9期35年にわたり首長を務め、今期で引退の意向を示していた北斗市の海老沢順三市長(77)は24日、市役所で開かれた市議会臨時会で正式に引退を表明した。終了後の記者会見で、海老沢市長は、来年2月に行われる予定の任期満了に伴う市長選挙の後継候補に高谷寿峰副市長(57)を指名した。高谷副市長は立候補に前向きな姿勢を示し、近く正式に態度を明らかにする見通し。

 海老沢市長は市議会臨時会で「合併の最大の要諦は人心の融和、一体感の醸成と考える。市の誕生以来、市民の融合、融和は一段と深まった」とし、「この4年間で、北斗市の未来づくりの基盤は出来上がったと思う。これからの行政運営は変化の激しい時代を迎えるが、優秀な市議会、職員、市民が英知を結集し、この難局に立ち向ってください」と述べた。

 記者会見で、海老沢市長は「再出馬の要請もあったが、高齢でもあり、体力、知力、気力も衰え、限界を感じた。9月に後援会の幹部と相談して決めた」と引退した理由を述べた。

 後継者に高谷副市長の名を挙げ、「民主党政権下で地域主権、地域自ら判断する分権化が進められ、各自治体が安定した行政運営が求められる。知識、経験豊富で行政のスペシャリストの高谷副市長が最適だ」と後継指名した理由を述べた。そして「わたしと違うカラーを出してほしい」期待を寄せた。

 高谷氏は報道陣に対し「まだ正式な指名を受けていない」としながらも、一部の市民から要請があったことを明らかにし、「こうした要請には前向きに応えたいと思う。家族などと相談して今後態度を明らかにしたい」と立候補に意欲を示した。

 高谷氏は1970年に旧上磯町役場入り。社会教育課長、総務課長を経て2002年から総務部長、03年から06年2月の旧大野町との合併まで助役を務めた。市誕生後、初代副市長に就いた。(鈴木 潤)



◎工藤副市長辞任へ…「市政運営への理念に違い」 函館市長選擁立の動きも

 函館市の工藤寿樹副市長(59)は24日、12月末で副市長を辞職する意向を西尾正範市長に伝え、市長もこれを了承した。工藤氏の任期は来年3月31日までで、任期を3カ月残しての辞任となる。工藤氏は「西尾市長とは市政運営のあり方に対する方針や理念に違いがある」と話している。また、経済界の一部には次期市長選に工藤氏の擁立を模索する動きも出ている。

 工藤氏は函館新聞の取材に対し、辞任理由について、西尾市長との路線の不一致とともに「任期満了も近く、新年度の予算編成にかかわるべきではないと判断した」と話した。

 一方で市長選出馬について「先のことはまったく考えていない。40年近く市役所にいたので、しばらくはゆっくりしたい」と話し、明言を避けている。

 これに対し、西尾市長は取材に対し、同氏からの辞職の申し出を認めた上で「今月で還暦を迎え、新年度の政策予算作りの関係で新しい人に道を譲りたいという話だった。(進退は)任せるという気持ちもあるし、一つの道だと考えている」と話した。

 工藤氏は今月末に辞職願を提出する考えで、市はこれを受け後任の副市長人事に向けた調整に入る。副市長選任は議会の同意が必要で、市は12月の定例市議会に人事案件を提案する方針。西尾市長は「空白は作らない」と話している。

 工藤氏は函館ラ・サール高、早大法学部卒。1973年に旧亀田市に採用され、函館市との合併後は財務部長、企画部長などを経て2006年4月に助役就任。07年4月から地方自治法改正により副市長。07年、西尾市長の就任を受け辞職願を提出したが、同市長からの強い慰留を受けて続投していた。(千葉卓陽)


◎縄文文化交流センター着工

 国宝「中空土偶」などを展示する「函館市縄文文化交流センター」の鎮魂式が24日、建設地の函館市臼尻町で開かれた。関係者ら約30人が出席し、着工に当たり工事の安全などを祈願した。

 同センターは函館市が、総事業費(土地や設計含む)約6億7700万円で建設する。鉄筋コンクリート造り2階建てで、延べ床面積は約1100平方メートル。建設地は国道278号のバイパスとして整備中の尾札部道路沿い。

 鎮魂祭は南茅部地域の縄文文化や魅力などを伝える「函館市南かやべ縄文文化創生の会」が主催した。祈とうに続き、同会の加藤詔三会長と、建設する小泉建設・明匠建工・茂泉建設・平谷建設共同企業体を代表して小泉建設の中嶋敏社長がくわ入れ。南茅部産のマコンブを献上し、工事の無事を祈った。

 縄文時代をイメージした手作りの“縄文服”に身を包んだ加藤会長は、「センターは縄文資料の収集や調査、研究の成果を発信する拠点として大きな教育作用を産むだろう。交流人口の増大や地域振興につなげたい」とあいさつ。函館市南茅部支所の梅田誠治支所長のかけ声で参加者一同が乾杯した。(小泉まや)


◎企画【わたし学びます】~函館遠友塾(4)~/葛西サチ子さん(67)

 民間で運営する自主夜間中学「函館遠友塾」では誰もが“同級生”だ。年齢や職業、経歴は一切関係ない。入学試験もない。函館市亀田港町に住む葛西サチ子さん(67)は、半世紀ぶりにできた約50人のクラスメートに喜ぶ。

 「『学ぶ』のが目的なのはみんな同じ。だから気取らなくていい」。自分で選んだ学びの道に間違いはなかったと確信している。

 ◆1942年、桧山管内今金町で生まれた。両親はジャガイモやトウキビなどの畑作と酪農で生計を立てていた。9人きょうだいの5番目。小、中学校に通いながら、幼い時から親の手伝いをした。学校での勉強は得意でなく、体を動かして働く方が性に合っていた。きょうだいは皆、学校卒業後は今金営林署に勤務した。自身も17歳から同署で働いたが、6歳年上の男性と結婚して辞めた。19歳の時だった。

 この日、遠友塾の数学の授業は「くり下がりのある引き算」がテーマだった。

 「40―18」「60―35」―。10の位から1(10)を借りて計算するのがポイントだ。

 スタッフの解説の後、塾生はプリント問題に挑戦した。「何十年も家計簿を付けたから計算は任せて」と一気に解く塾生もいれば、うんうんうなってスタッフを呼び止める人もいる。隣の人と答え合わせし、間違いに気付いて慌てて直す人も。

 足し算も混ざったプリント問題に、葛西さんは頭では分かっていてもパニック状態になった。結局時間切れになり、数問間違えてしまった。  自宅に帰り、間違えた問題をゆっくり解き直すのが日課だ。朝起きて夫が目を覚ますまでや、夜寝る前の数十分。静かな中、茶の間のテーブルで集中して鉛筆を走らせる。すると、ちゃんと解ける。ほっとし、次こそは、と意気込んだりもする。「学び」を味わうひとときだ。(新目七恵)