2009年11月26日 (木) 掲載

◎新年もいい年に…函館八幡宮で縁起物作り

 函館市谷地頭町の函館八幡宮で25日、来年の初詣でに向けた「破魔矢」などの縁起物作りが始まった。

 作業は例年通り函館八幡宮敬神婦人会(勝又チカ会長)の会員45人が担当し、来年のえと「寅(とら)」が描かれた絵馬や鈴を矢に付けたり、袋詰めする作業に追われた。破魔矢より大きい「かぶら矢」やおみくじ作り、お札の袋詰めなども同時進行で行われ、参加者は和気あいあいとした雰囲気の中、手慣れた手つきで次々と準備を進めていた。

 勝又会長(73)は「今年は函館開港150周年などおめでたい年だった。来年は平和な一年であるよう願いを込めています」と話していた。

 26日までの2日間で破魔矢とかぶら矢計5000本、おみくじ2万5000本、お札2万5000体などを作る予定。(新目七恵)



◎江差追分 講師派遣も…事業仕分け 学校への芸術家等派遣事業「中止」

 【江差】政府の行政刷新会議は、新年度予算の概算要求を見直す“事業仕分け”で、文化庁が所管する学校への芸術家等派遣事業について「国の事業として行わない」と結論付けた。同事業を活用して、すべての小中学校に江差追分の講師を派遣している江差町教委は「町財政が厳しい中で教育関連予算も縮減を余儀なくされている中で補助金カットは痛手」とする一方、新年度以降は町単独でも講師の派遣を継続する方向で検討を進めるとしている。

 文化庁は2002年度に同事業をスタート。美術、音楽、舞踊、民謡など、幅広い分野の芸術家を学校に派遣するため、講師の謝礼や旅費を負担している。本年度は2億200万円の予算を計上。全国1330校で事業を実施する予定。道内では本年度、江差町の5小中学校を含む24校で講師派遣を行う計画だ。新年度予算の概算要求で同庁は3億200万円を計上。実施校は1527校を見込んでいた。

 江差町教委は2007年度から3年計画で、町内5校の小中学校で江差追分の授業をスタート。郷土学習の一環として“追分名人”で知られる、青坂満上席師匠をはじめとする師匠陣を派遣している。同事業による年間派遣回数は5校で延べ7回。謝礼や交通費は年間約25万円に上る。町立南が丘小では、道の無形民俗文化財の江差沖揚げ音頭や江差鮫踊りも指導。派遣をきっかけに学校との交流が深め、無償のボランティアで歌唱指導に取り組む講師もいるほか、校内に「追分クラブ」が誕生した小学校もある。江差追分会(会長・濱谷一治町長)も、小中学校への講師派遣を、地元での江差追分の普及伝承や後継者育成の重要な柱に位置付けている。

 ところが、政府の行政刷新会議は今月スタートした事業仕分けで同事業について「あまり必要性は考えられない」「自治体や学校の取り組みに任せるべき」「どうしてもやりたければ財源移譲を」と指摘。新年度以降は「国の事業として行わない」として、文化庁が取り組む事業としては事実上の廃止を決定。事業仕分けの結果に町教委は「郷土の伝統芸能である江差追分を学ぶ授業は今後も欠かせない。国の補助金が打ち切られても授業を継続する方向で検討したい」(生涯学習課)としている。(松浦 純)



◎最高幹部の対立表面化…インサイド 工藤副市長辞任表明

 函館市の工藤寿樹副市長(60)が任期を3カ月残して12月末での辞職を表明したことで、かねてからささやかれてきた市役所最高幹部の不協和音や対立が表面化した。1期目の任期総仕上げとなる西尾正範市長の来年度予算編成に影響が出るのはもちろん、後任の副市長人事も難航が予想される。約1年5カ月後の次期市長選を前に、西尾市長が求心力をどう維持し、市政の懸案に対応していくかが問われる。

 「西尾市長とは市政運営に対する方針、理念が違う―」。工藤氏の発言を聞いたある市幹部は「冷静ではいられない。ああいう発言が出るのはショックだ」とこぼした。

 工藤氏は2006年に助役(当時)に就任。その翌年の西尾市長就任で一度は辞職願を提出したが、西尾市長の強い慰留があり、続投した。しかし、自らの発想をすぐ発言し実行に移す西尾市長と、慎重に物事を進めようとする工藤氏とでは衝突は避けられなかったとの声がある。複数の市議は「ともに将来の市長候補と目された2人で、タイプも違うし、一体感はなかった。不協和音が出ても不思議ではない」と語る。

 工藤氏は函館国際貿易センターの不正経理問題やケアホーム利用者の認定ミス、特別職「理事」新設をはじめとする幹部人事など諸問題への対応で西尾市長への不信感を強め、取材に対し「辞職を決断したのは8月末ごろ」と話す。別の市議は「工藤氏は人事案件に介入させてもらえず、信用されていないと感じたのでは」と語る。

 工藤氏の辞任表明を受け、西尾市長は新たな副市長の人選に着手し始めている。人材不足との指摘も挙がる中、庁内外からは西尾市長の信任が厚い小柏忠久理事(62)を推す声も多い。

 ただ、理事は行革担当の特別職として、議会の根強い反対がある中で昨年4月に4年間の時限付きで設けた役職。小柏氏は任期を2年以上残しており、仮に同氏を副市長に登用する場合、理事職設置との整合性を問う議論の噴出は避けられない。「小柏氏だから理事が務まっている面もある」(市議や市OBなど)とする声も聞こえる。

 今回の事態を受け、2011年の次期市長選に向けた動きがにわかに熱を帯び始めることは想像に難くない。工藤氏は「先のことは何も考えていない」と言及を避けているが、いずれは出ざるを得なくなるのではとの声もある。

 かつて井上博司前市長の市政運営を批判して助役を辞し、今度は工藤氏から離反されることになった西尾市長は「それはそれで一つの道だと思う」と慰留しなかった。政策論争よりも不祥事をめぐる紛糾が多い西尾市政。残り1年余りの任期をいかに全うし、山積する諸問題に立ち向かっていくのか。西尾市長の政治手腕が改めて求められる。(千葉卓陽)


◎クリスマスファンタジー・メーンツリーが到着

 28日に開幕する、函館の冬を代表するイベント「2009はこだてクリスマスファンタジー」(同実行委主催)のシンボルとなるメーンツリーが25日、主会場となる金森赤レンガ倉庫(函館市末広町)岸壁に到着した。観光客らがさっそく記念写真を撮るなど、早くもお祭りムードが高まっていた。

 1998年にスタートした同イベントでは、函館市と姉妹都市提携を結ぶカナダのハリファクス市から毎年届けられる大小のモミの木が、会場を彩るクリスマスツリーとして活躍する。

 しかし今年は天候不順などの影響でツリーの到着が大幅に遅れ、飾り付け作業が間に合わないため、近郊の山から切り出した約20メートルのトドマツでメーンツリーを代用。約5万個の電飾が施された姿からは、例年のモミの木に引けをとらない迫力が伝わってくる。なお、8本のサブツリーと12本のインフォメーションツリーは、ハリファクス市からのモミの木が使用される。

 メーンツリーは27日に試験点灯が行われ、初日の28日は午後5時半のオープニングセレモニーで初点灯される。(小川俊之)


◎企画【わたし学びます】~函館遠友塾(5)~/浅川美津子さん(77)

 香ばしい香りが漂う函館市若松町の市総合福祉センター調理室。トントントンと、小気味よい包丁の音が響く。炊きあがったばかりのご飯の湯気が、ふわっと広がる。

 民間が運営する自主夜間中学「函館遠友塾」では月1回、給食が用意される。準備するのはスタッフだが、塾生数人も応援に駆け付ける。その1人が市内西旭岡町に住む浅川美津子さん(77)だ。

 「調理が好き。だから手伝いたいの」。人懐っこい笑顔を見せ、手慣れた様子で野菜を切る。

 1932年、函館生まれ。6人きょうだいの2番目。北洋漁業の船乗りだった父は子煩悩で、漁から戻る度によく仕事場の船に連れて行ってくれた。通った函館青柳小は名門だったが、自分は勉強が嫌いだった。6年間通い高等科を卒業した後、友達に誘われて当時の旭中校舎2階で行われた女子商業学校定時制に進学した。簿記などを3年間習ったが、教室でじっとしているのが苦手で、学校に行かない時期もあった。学ぶ喜びを当時はまったく感じなかった。

 遠友塾の給食作りは授業の約4時間前、午後1時ごろから始まる。メニューは予算に合わせてスタッフが考え、材料を買ってくる。ご飯と汁物程度だが、前日からスタッフが仕込んだり、塾生が差し入れたたくあんが添えられるなど、たくさんの手間と愛情が詰まっている。

 小柄な浅川さんは調理場を機敏に動き回り、手早く作業を進める。半年余りがたち、給食担当スタッフとの息はぴったり。あっという間にスタッフと塾生の約80人分が出来上がる。

 完成した料理は次々と塾生の待つ部屋に運ばれる。授業開始前、塾生は「いただきます」と一斉にあいさつして味わう。「家で1人で食べるよりおいしい」「給食なんて何十年ぶりかしら」。喜ぶ他の塾生の声が心地良い。友達とわいわい食べるご飯のうまさは格別だなぁと思う。(おわり)(新目七恵)