2009年11月4日 (水) 掲載

◎往時をほうふつ 高穂神社の社務所復元

 函館市上湯川町2の高穂神社(澤口廣宮司)で建設中だった社務所、客殿、調理場がこのほど完成した。日魯漁業創業者の平塚常次郎の養女・千鶴子さん(95)=東京在往=が住んでいた旧家の材を利用して同様に復元し、社務所などにした。3日に行われた「復元建築物清祓入魂祭」には函館在往の平塚家親族も出席。往時をほうふつとさせる大広間で、珍しい「釜鳴(かまなり)の神事」が執り行われる中、松前神楽などが奉納された。

 高穂神社は1911(明治44)年開基。80年に創建され、2010年の神社創建30周年を記念し、記念事業実行委により、鳥居などの建設などを進めてきた。社務所などは今年6月に上棟式が行われ、10月30日に完成した。澤口宮司によると、千鶴子さんが住んでいたのは、150以上年前に松前町で建てられた武家とみられ、後に同町内の漁師が使用、19(大正8年)年に常次郎と同じ日魯創業者の堤清六が購入し、同市湯川町に移築。長年、千鶴子さんが住んでいたが住人が居なくなり、2004年に取り壊された。

 解体作業をした市内の宮大工・原田組の原田徹社長(49)が「建物を支えているヒバやカツラなどの木材はまだ使える」と、澤口宮司や関係者に相談し「移設復元工事」が決まった。玄関や天井、階段の造りなどは異なるが、ほぼ正確に再現された。

 この日は本殿の同神社の秋祭り(神恩感謝祭)に続き、社務所客殿完成を祝った。入魂式には常次郎の妹の孫に当たる、ニチロ会(日魯のOB会)の加藤清郎会長(75)ら平塚家の親族4人や氏子など約100人が参列。釜鳴の神事は、水を沸かした釜の上に米を入れた木製の円形の筒を乗せ、釜を熱すると大きな音で釜が鳴り響く。強く、長く鳴るほど良いとされ、この日は参列者が耳をふさぐほど大音量が響く中、京都や札幌などから駆けつけた神職が新築を祝い舞などを披露した。

 祭礼後、加藤さんらは原田社長の案内で建物の説明を受けた。原田社長が「大広間は当時と同じ16畳」と語ると加藤さんは「もっと広かったような気がする。戦時中は疎開したり、戦後の夏には皆が集まって楽しいひとときを過ごした思い出がよみがえる。天井や梁(はり)を残し、見事に再現した原田さんにお礼を言いたい」と話していた。

 原田社長は「多くの人に喜んでもらえ、大工冥利(みょうり)に尽きる」、澤口宮司は「千鶴子さん以前の持ち主を調べ、150余年前の建物を後世に伝えていきたい」と話していた。



◎佐藤君(函工高定時制)最優秀賞 全道生活体験発表大会で

 函館工業高定時制4年生の佐藤燎君(18)が、このほど札幌で開かれた「第53全道高校定時制・通信制生徒生活体験発表大会」で、同校初の最優秀賞に輝いた。過去を見つめ直し、支えてくれた周囲への感謝と将来の目標を素直につづった。22日に東京で行われる全国大会に挑む。

 佐藤君の演題は「支えられて今がある、だから…」。小学3年の時に母親がクモ膜下出血で突然亡くなり、親せきの助けで立ち直るも不登校気味に。函工定時制に入学後、アルバイトや生徒会活動を通じて人と触れ合う楽しさを感じ、前向きに考えられるようになった。こうした経験を「過去があり、たくさんの人たちがいたからこそ、今の私がある」と振り返り、「今度は私が周囲の人の役に立ちたい」と将来の夢を語った。

 佐藤君は内藤正教諭(54)の勧めで参加を決め、作文作りから発表練習まで二人三脚で進めてきた。作文はまず、これまでの出来事と当時の心境を表に書き出し、必要な内容を選んで文章にまとめていった。「自分の過去を振り返られて良かった。発表したことをこれからも守るようにしっかりやりたい」と話す。

 同大会には地区代表の生徒10人が参加。「本番まで不安だったけど、檀上では練習通りできた。最優秀賞と聞いてまさかと思った」と話し、「全国大会でも聞いてくれる人に共感してもらえれば」と語る。

 内藤教諭は「大人に伝わるよう、淡々と心のままに訴える構成にした。全国では他の出場者の話も聞き、いろんな人がいることを感じてほしい」と話している。



◎たゆまぬ精励たたえる 函館市文化賞贈呈式

 2009年度の函館市文化賞贈呈式が3日の「文化の日」に合わせ、函館市民会館で行われた。芸術(芸能)分野で舞踊家の藤間扇世(本名・岡部貴代子)さん(73)に、同(音楽)分野で函館市民オーケストラを設立した中島眞之さん(68)に、西尾正範市長が賞状などを手渡した。

 市文化賞審議会(座長・西尾市長)が審議し、市の芸術や文化の発展に寄与した個人や団体に贈る。藤間さんは、1歳5カ月で藤間扇吉氏に入門して以来72年にわたり活動。1983年には他流派の若手6人で「六葉会」を結成して発表会などを開催し、芸の向上や日本舞踊の普及に励んだことなどが評価された。

 中島さんは道学芸大学函館分校(現道教育大学函館校)卒業後、作曲活動を行い、市内中学校教諭として吹奏楽指導に尽力した。79年に設立した同オーケストラでは毎年定期演奏会を開催。99年まで団長を務め、現在は常任指揮者として活躍する。

 贈呈式で西尾市長は「今日に至るまでのたゆまないご精励に心から敬意を表します」と式辞を述べた。受賞者を代表して藤間さんは、これまでの活動を振り返り「賞の名に恥じないようこれからも一層の研さんに励みます」とあいさつ。中島さんは「音楽仲間や活動を理解してくれた皆さんのおかげと感謝しています」と話した。


◎【新型インフル】 患者分散し混雑緩和 休日当番医増設で

 新型インフルエンザの流行に合わせて10月末から小児科の休日当番医を2カ所体制にした函館市と近郊では、流行期に殺到する患者が分散され、1カ所だった時よりも待ち時間が短くすむなどの効果が出ている。ただ、診察までの時間待ちは依然として長く、一部の保護者からは「もう1カ所増やしてほしい」の声もあがった。

 新型インフルの流行が顕著になった10月、休日当番医や市夜間急病センターに患者が殺到し、一部の休日当番医では、診療が深夜に及ぶこともあったという。これを受けて11月末までの日曜と祝日(全8回)に、函館と北斗市、七飯町の2市1町で2カ所体制とした。

 函館市医師会や各医療機関によると患者数は、10月18日は1カ所(内科と小児科)に264人が殺到していたが、初回の同25日は205人(小児科のみ)と93人(内科と小児科)に分散された。11月1日に担当したほくと小児クリニック(北斗市追分)は90人が受診。同院は「前回の9月21日は123人だったので、2カ所にした効果が出たのではないか。午後からは込み合うことなくスムーズに診察できた」と話す。

 3日の当番だった五稜郭ファミリークリニック小児科(函館市柏木町)の石坂仁院長も効果を実感。「医療機関は休みが確保できないため負担はある」としながらも、「患者のためには年末年始の対策も必要かもしれない」と言う。

 同院を訪れた市日吉町の深野静香さん(35)は「覚悟していたが今日は3時間待った。子どもの状態が深刻な保護者もいるので、もう1カ所当番医を増やしてほしい」と話していた。


◎雪の中 サケつかみ取り 茂辺地さけまつり

 【北斗】サケにちなんだ催しが繰り広げられる「北斗市茂辺地さけまつり」(実行委員会主催)が3日、茂辺地川下流特設会場で開かれた。雪が降るあいにくの天候で一部のイベントが中止となったが、大勢の市民らが来場し、サケのつかみ取りや買い物を楽しんだ。

 今回で28回目の恒例行事。祭りの呼び物となっているサケのつかみ取りは雪が降る中、2回行われ、開始時間を早めて実施。特設プールに計400匹を放し、抽選で当たった約300人がつかみ取りに挑戦した。プールに直接入って泳ぎ回るサケを捕獲する人もいれば、プールの外から手を伸ばして取る人もいて、それぞれ暴れ出すサケと格闘しながら手に入れていた。

 家族で訪れ、つかみ取りに挑戦した北斗久根別小6年の沢口一樹君(11)は「つかみ取りが一番面白い。取ったサケはちゃんちゃん焼きにして食べたい」と話していた。

 このほか会場では、近海でとれた海産物や地元産の農産物などが販売されたほか、500円でホタテの詰め放題なども実施。サケ鍋が無料で約1000食分振る舞われ、親子連れらが寄り添いながら味わっていた。