2009年12月13日 (日) 掲載

◎渡島商談会で道南産品販路拡大…取引成立31件

 道南の特産品を売り込もうと、渡島支庁が全国の大手百貨店や商社のバイヤーを招いて10月下旬に初開催した「渡島ブランドフェア商談会」で、延べ141件の商談のうち31件が具体的な取引に結びつき、販路拡大に一定の成果を上げた。メーカー側も手応え十分で、道南産品のブランド化に向けた動きが加速しそうだ。

 商談会には渡島・桧山管内の食品関連メーカーなど37社が出展。東武百貨店(東京)や阪急百貨店(大阪)、伊藤忠商事北海道支社(札幌)など全国13社から招いた目利きのバイヤー約20人に自社製品を試食してもらい、パッケージデザインや内容量、価格帯などについてアドバイスを受けた。

 商談のあった延べ141件のうち、全体の約2割に当たる31件で取引開始や首都圏で開かれる物産展への出品要請があり、現在も商談を続けているものも14件に上る。中でも鹿部町のイリエ船橋水産のタラコ製品や、七飯町の桔梗農園の肉厚シイタケなどは味や品質、加工技術に高い評価を受け、複数社から引き合いがあったという。

 一方、出展者を対象に行ったアンケートではデザイン性と内容量の多さにバイヤーからの指摘が集中。「ターゲットを絞った販売戦略を」「パッケージで素材や食べ方が一目で分かる工夫を」などの意見もあった。商談会後にパッケージや内容量を見直したイリエ船橋水産の船橋吉右衛門社長は「素材の良さや安心・安全の加工技術が認められ、大きな自信になった」と好感触をにじませる。

 渡島支庁商工労働観光課は「これまで埋もれていた道南の隠れた逸品の掘り起こしにつながり、販路拡大や商品の磨き上げに効果的だった。道南産品の魅力や底力が裏付けられたのでは」とし、来年度以降も別のメーカーや商材で商談会を継続する考えだ。(森健太郎)



◎アンテナショップ限定のXマスケーキ発売

 函館市内・近郊の菓子製造販売業者でつくる「函館スイーツの会」(若山直会長)に所属する3社が、函館スイーツアンテナショップ(松風町)限定のオリジナルクリスマスケーキを販売する。20日まで予約を受け付けている。

 同会は函館の菓子のブランド化を目指す団体で、6月にアンテナショップをオープンさせた。クリスマスケーキは、函館市の五島軒、北斗市のジョリクレール、木古内町の北じまがそれぞれ、アンテナショップ向けに考案した限定商品で、初めての試み。

 五島軒はチョコレートスポンジでチョコクリームをサンドしたシンプルな大人のケーキで、ベルギーチョコレートの濃厚さ、口解けの良さが楽しめる。直径12センチで1500円。ジョリクレールは、函館湾に浮かぶクリスマスツリーをイメージしたロールケーキ。飾り付けの生クリームにフルーツジャムを乗せ、イルミネーションを表現した。長さ16センチで1800円。

 北じまは、ストロベリーのスポンジとプレーンの白いスポンジを重ね、間に生クリームと生のイチゴを敷いたケーキ。ピンク色のマカロンを飾り付け、かわいらしさを演出した。直径12センチで2800円。同店は「アンテナショップだけでしか手に入らないケーキをぜひこの機会に味わって」とPRしている。商品引渡し日は23―25日の希望日で、来店のみ。注文は同店TEL0138・21・1811(午前10時―午後7時、火曜定休)へ。(宮木佳奈美)



◎野又学園が歯科衛生士、看護の専門学校を来年度設立

 学校法人野又学園(野又肇理事長)は来年度、函館医療保育専門学校(柏木町)の歯科衛生士科、看護科を分け、「函館歯科衛生士専門学校」と「函館看護専門学校」を設立する。法令改正に伴い、歯科衛生士の養成課程は現行の2年から3年に移行する。同学園は「高齢化社会に対応し、より質の高い歯科衛生士を育成したい」としている。

 函館医療保育専門学校は現在、保育、歯科衛生士、看護の3科がある。このうち保育科は、函館短大に本年度新設された保育学科と統合することが決まっている。

 新しい2専門学校は、現在使っている校舎をそのまま活用し、1、2階を歯科衛生士、3、4階を看護とする。募集定員は歯科衛生士が現行の1学年50人から40人に変更し、看護は現行と同じ50人とする。

 野又淳司常務理事は「歯科衛生士は高齢化社会において重要な職業で全国的に求人も多く、就職面の強みもある。3年課程で高度な医療環境を支えられる人材を育てたい」と話していた。

 野又学園は財政健全化などを目的に経営する教育機関の再編を進めており、函館大も来年度から学科再編などを行うほか、函館ビジネスアカデミー専門学校と日本ビジネス綜合専門学校(札幌)は昨年度から募集を停止している。(新目七恵)


◎大沼地区が光通信整備へ…七飯町

 【七飯】七飯町は大沼地区に超高速インターネット(光ケーブル通信)を整備する方針を固め、関連経費を盛り込んだ補正予算案を16日開会の町議会定例会に提出する。大沼地区は町内で唯一、光ケーブル通信が整備されていない地域で、今回の措置で町内全域で高速インターネットのサービス環境が整うことになる。

 総事業費は2億1900万円を計上しているが、主に国の地域情報通信基盤整備推進交付金と地域活性化・公共投資臨時交付金を活用することで、町の一般財源からの持ち出しは150万円になる見通し。

 町内でNTTの高速インターネットサービスが届かないエリアのうち、本年度は峠下、藤城地区で光ケーブルの敷設に着手し、年度内には完了する見通し。現在、大沼地区が唯一未整備地区となっていて、観光事業者や地域住民から整備を求める声が上がっていた。

 光ケーブルの敷設は、NTT大沼電話局社から西大沼、東大沼、大沼湖畔の町境まで総延長約70キロ。一般家庭1120戸や小中学校、事業所、町の公共施設などがサービスを利用する見通し。峠下・藤城地区と同じ方式を採用し、整備したケーブルをNTTに貸与して、NTTがサービスを提供する。

 町は「大沼地区は観光地で、産業振興の視点からも超高速インターネットの整備は急務。早期整備に着手できるよう取り組みたい」と話している。(鈴木 潤)


◎<企画・中>親父を追いかけて…西山隆四郎、弘樹さん

 創業108年の西山表具店(函館市豊川町)。クロスの張り替えはもとより、和紙を扱い、ふすまなどを仕立てる表具の高い技術も健在で、4代目の西山弘樹さん(35)に継承されている。

 「小学生の時から跡を継ぐ気持ちがあった」。幼いころから、父・隆四郎さん(71)の仕事を傍で見て育ち、職人にあこがれるように。市内の高校を卒業後、札幌の内装会社に6年間勤め、内装工事の技術を習得。

 帰郷後、隆四郎さんから表具を学んだ。弘樹さんは「場数を踏んでいる分、教わることがたくさんある」と父親を一人の職人として尊敬する。洋間の普及とともに近年、仕事は壁紙の張り替えが主体だが、熟練の表装技術で、和紙を使った生け花展のステージづくりも請け負う。

 隆四郎さんが持つ壁装1級の資格を弘樹さんも28歳の時に取得。内装の現場仕事は弘樹さんと先輩職人のいとこで担う。隆四郎さんは「もう対等の職人としてみている。仕事も早いし、頼りにしている」と話す。

 内装は住宅建築で仕上げの部分に当たり、最も依頼主に喜ばれる。弘樹さんは「新築の家が家らしくなり、達成感を感じる。きれいになるとうれしいし、お客さんの喜びがじかに分かり、やりがいを感じる」と仕事の魅力を語る。

 業界では早さ、安さが求めるあまり、高い技術を持った職人がいても価格で敬遠されることも。しかし隆四郎さんは「家は一生ものだから、いいかげんな仕事はできない。職人の地位が向上し、子供たちがあこがれる職業になれば」と願う。弘樹さんも「西山表具店の名をなくさないよう自分の技術を認めてもらえるように成長したい」と向上心をのぞかせる。(宮木佳奈美)