2009年12月17日 (木) 掲載

◎愛する古里盛り上げたい…元町茶寮の成田和子さん

 【函館】函館市元町の喫茶店「元町茶寮」の店主、成田隆雄さん(享年59)が8月9日、がんのため死去した。35年余りのサラリーマン生活を終え、愛する古里・函館でようやく第2の人生を踏み出した矢先だった。店を拠点に街を盛り上げたいと願い、最期まで生きる意欲を失わずに病と闘い続けた夫の遺志を継ぎ、妻の和子さんは「店には彼の夢と希望が詰まっている。この場所を残すのが私の仕事」と話している。

 隆男さんは1950年、函館市で生まれた。西高卒業後、大学進学のため上京。学生運動にのめり込み、20代から大手薬品会社の営業マンとして働き始めた。和子さんとは営業先の帯広で出会い、87年に結婚して1女をもうけた。

 口癖は「最終的には函館に住もう」だった。仕事の都合で札幌や東京などに転勤したが、元町の土地を手に入れた90年には家を喫茶店に改装して家族を住まわせ、単身先と函館を往復し続けた。「とにかく函館が大好きな人でした」と和子さんは振り返る。

 店には隆雄さんのこだわりが詰め込まれている。「西部地区に溶け込む外観を」との要望で壁は温かみのあるしっくい、床やいすは良質な木材を使用。観光客向けのカメラフィルムを売ったが、「景観を壊す」と店先ののぼりも反対した。一方、和子さんは食器や食材を厳選し、季節感あるメニューを考案。子育ての傍ら店の経営に明け暮れた。

 98年から8年間は店を人に貸し、家族で転勤先の仙台に住んだが、定年前の2007年に隆雄さんが退職。コーヒーの焙煎技術を学び、店をリニューアルオープンさせて夫婦2人での経営を始めた。

 しかし08年2月、隆雄さんのすい臓がんが発覚。余命7、8か月と診断された。抗がん治療を始めたが、肝臓に転移し、入退院を繰り返した。闘病生活をしながら店を手伝っていたが、地元の病院に入院中の8月、息を引き取った。

 長年薬学畑を歩んだ隆雄さんは最新療法を調べ、積極的に試しては生きる道を模索した。「1年でも生き延びれば新しい治療法ができる、と常に前向きで弱音は吐きませんでした」と和子さん。医学だけでなく政治や経済、文学、音楽など幅広く知識があり、西高同期に当たる作家の故佐藤泰志の小説映画化にも強い興味を抱いていた。「お金やブランドとは違う価値観を持っていた」という。

 愛する夫の死から立ち直れず、和子さんは一度は店を閉めようと思ったが、20歳の長女に「お父さんの大好きな函館の店を手放したら絶対駄目」と言われて思い直した。「人と真っ直ぐ向き合うすてきな人だった。彼の遺した元町茶寮を続けたい」と話している。店は火曜定休。午前10時―午後6時。問い合わせはTEL0138・23・5350。



◎新函館にまた一歩…木古内幸連トンネル貫通

 【木古内】北海道新幹線の新青森―新函館駅間の幸連トンネルが貫通し、木古内町幸連のトンネル坑内で16日、貫通式が行われた。道内側の新設区間約37キロでは今年8月の「渡島当別トンネル」に次ぐトンネル貫通で、地元自治体や工事関係者が2015年度の開業に向けて着々と進む工事の節目を祝った。

 同トンネルは昨年11月に木古内側から掘削を開始。1カ月で平均110メートル掘り進み、今年11月24日に函館側に貫通した。道内で工事計画のある6本のトンネルのうち、渡島当別、新茂辺地、泉沢に次いで4番目に長い総延長約1・4キロ。総工費は約26億円。

 式典には発注元の鉄道・運輸機構北海道新幹線建設局や渡島支庁、木古内町などの関係者約100人が出席。名越次郎局長や寺山朗支庁長、大森伊佐緒町長らが発破ボタンを押すと、トンネル出入り口を遮っていた幕が外され、出席者の歓声がこだました。

 続いて坑内の作業員がみこしで担いできた酒だるを工事関係者の代表が鏡開き。出席者に振る舞われて全員で乾杯し、坑内は祝福ムードに包まれた。名越局長は「工事関係者の技術力、安全管理で事故なく無事に貫通できた。今後も安全に留意して、一日も早く所定の品質で工事を進めたい」と話した。

 木古内鉄道建設所によると、幸連トンネルは今後、坑内のコンクリートの吹き付けや橋りょう工事などを行い、2012年3月までの完成予定。年明けには木古内側の札苅トンネル(約1・2キロ)の掘削工事も始まるという。(森健太郎)



◎生きていく道模索…路上生活者対象に無料相談会

 函館地方社会保障推進協議会(函館社保協、堀口信会長)は16日、路上生活者を対象にした「生活・医療・労働の無料相談会」を市内の海岸町内会館で開いた。突然の解雇や派遣切りで、路頭に迷う生活を余儀なくされた30―50代の男性6人が参加。専門家のアドバイスに加え、豚汁やおにぎり、漬物も振る舞われ、安心できる生活への道を探った。

 同社保協は医療機関や女性団体、商工業者団体、労働団体などでつくる。経済・雇用情勢の悪化を受け、今年1月、5年ぶりに路上生活者の実態調査(目視、声掛け、聞き取り)と相談会のPR活動を行った。

 メンバーがJR函館駅やフェリーターミナル、バス停を回り、相談会の開催を周知。4月までに相談会を3回開いてきた。11月に入り、路上生活者が増え始めたことを受け、「昨年より状況が悪化する可能性が高い」との共通認識の下、師走の相談会実施を急きょ決めた。

 相談では、経歴や現在の生活状況、今後の見通しを聞き取った上で、生活保護の申請や再就職に向けた助言をした。医師による血圧などの健康確認のほか、市民からの寄付とメンバーが用意した衣類なども希望者に手渡された。

 夕方までに3人が市役所へ生活保護を申請し、いずれも受理された上、同日夜から市内の下宿への入居も決まった。  関東の自動車工場で18年間働き、健康上の理由で契約更新を打ち切られた渡島西部出身の男性(53)は、10月下旬から路上生活を続ける。「就職したいという強い意欲はあるのに、仕事がないのがつらい」と語る。

 函館近郊から来函したものの、降雪などで2日間寝ていないという男性(34)は「函館に来れば仕事があると思っていたが、現実は違った。このような相談会は本当にありがたくて心強い」と話していた。

 同社保協は来年1月にも相談会を開催する予定で、「年末から年明けにかけてさらに路上生活者が増えるかもしれない。社会が抱える深刻な問題として活動を続けていきたい」としている。

 問い合わせは社保協・路上生活者支援グループTEL0138・32・6136(道南勤医協内)、同52・6015(生活と健康を守る会)。


◎生活保護費過去最高額…本年度191億円

 函館市議会民生常任委員会(斉藤佐知子委員長)は16日、付託された議案を審査した。一般会計で約10億円の増額補正が提案された生活保護費について複数の委員が質問。齋藤利雄生活保護第1課長は、不況による経済的困窮などが理由で保護世帯数は過去例がないほど増加していることを説明し、理解を求めた。本年度の生活保護費総額は、過去最高の191億2767万円となり、保護世帯数も過去最多の8324世帯(10月現在)となっている。

 同保護費では、高齢や母子、障害などのある世帯以外の受給者に占める割合が特に増加しており、齋藤課長は「稼働年齢でも仕事がないなどの状況となっている」などと説明。10月の保護率は4・17%で、道内では4番目に高い。

 能登谷公氏(市民クラブ)は保護費の25%を市が負担することから、「これは驚異的な数字。財政に対してボディーブローのように効いてくるだろう」と長期的な影響を懸念。不正受給を含めた対策を求めたが、岡田芳樹福祉部長は「ひとえに経済状況によるもの」として致し方ない現状を伝えた。

 日乃出清掃工場運転管理業務委託料の債務負担行為について阿部善一氏(民主・市民ネット)は、委託業者について問いただした。ほかの業者が入札を辞退したことなどから、同一の事業者に委託している現状について「同じ会社に丸抱えの状況は正常でない」と指摘した。

 このほか民生委から「改正貸金業法の早期完全施行等を求める意見書案」と「細菌性髄膜炎から子どもたちを守るワクチンの早期定期接種化等を求める意見書案」を提出することを決めた。(小泉まや)


◎園児が熱帯植物園のサルにXマスプレゼント

 函館市湯川町3の市営熱帯植物園で飼うニホンザルに16日、リンゴ(約80キロ)のプレゼントが贈られた。市内の園児が「メリークリスマス」とサル山に勢い良く放り投げ、サルたちを喜ばせた。

 園児に動物を思いやる優しい心をはぐくんでもらおうと企画。遺愛旭岡幼稚園(山田秀夫園長)の年長組30人が駆けつけた。

 園児一人一人に刻んだリンゴが渡されると朝食を抜いていたサルたちは「キャッキャキャ」と大きな声。中には手をたたいて、「こっちにちょうだい」と催促するものもいて園児の笑顔を誘った。

 サンタクロース姿の職員がサル山温泉に丸いリンゴを投げ込むと、サルたちは一層にぎやかに。その様子に触発されてか、「おサルさんにダンスを見せたい」と園児も興奮。「ウッキィ、ウッキィ」と学校で楽しむモンキーダンスを披露した。

 小杉奎人ちゃん(6)は「サルがリンゴをおいしそうに食べてくれた」、高田詩織ちゃん(6)は「温泉に入って赤い顔をしたサルがかわいい」とにっこり。植物園の坂井正治さん(71)は「いつもはもらう立場の子どもたちが、プレゼントを上げるというその喜びを味わうことが大事。みんな優しくサルに接してくれた」と目を細めていた。

 サル山の壁には20日まで、「おサルさんクリスマスですよう」の特製横断幕も飾られている。(田中陽介)



◎私立高校願書一括配布

 函館市内の私立高校8校の願書一括配布が16日、函館市湯川町の市民会館で行われた。

 函館地区私立高校長会(会長・土家康宏清尚学院校長)主催。会場には函館ラ・サール、函大付属有斗、函館白百合、函館大谷、遺愛女子、函館大妻、函大付属柏稜、函館清尚学院の8校がブースを設けた。訪れた渡島、桧山両管内の中学校関係者に、高校の担当者が希望人数分の願書と調査書をまとめた封筒を次々と手渡していた。

 これまで函館地区の私立高の調査書は高校ごとに異なったが、本年度からは中学校教員の負担減など利便性を向上させるため、様式を統一した。来場者には様式のデータを入れたCD―ROMも配られた。(新目七恵)