2009年12月22日 (火) 掲載

◎未来大開発、高橋病院でリハビリシステム実用化

 公立はこだて未来大3年生グループが、「モグラたたき」や「絵合わせ」などゲーム感覚で訓練ができる高齢者向けリハビリシステムを開発した。企画した函館市元町の高橋病院(高橋肇理事長)で導入される。21日には学生4人が来院し、システムの受け渡しが行われた。

 「地域医療におけるサービス・イノベーション・デザイン・プロジェクト」と題した同大のプロジェクト学習の一環として実施。医療現場の問題解決に向けた活動は2002年度から続けているが、システム面での実用化は初めて。

 同院は高齢化率の高い西部地域のニーズに応じ、リハビリに特化した体制整備を進めているほか、IT化にも力を入れている。9月に「ITが苦手な高齢の患者も楽しくリハビリできるものを」と同大にシステム構築を依頼した。

 プログラムは、脳梗塞(こうそく)などで脳に障害を負った患者の障害改善を目標として開発。下絵にそって色を塗る「塗り絵」や光る鍵盤を押して曲を演奏する「ピアノ」など6種類あり、同院の入院ベットに既に導入されているタッチパネル式のテレビモニターを利用する。

 スタッフが付き添わなくても患者1人ででき、従来のリハビリ訓練のように場所を取らないのが利点。利用回数などを情報データで把握でき、医療効果も分析しやすい。

 この日、来院した3年生の宮澤朋子さん(22)は「開発で普段使わないソフトに触れるなど勉強になった」と話し、指導した美馬義亮准教授は「現実世界で使える情報システムを作るのは学生にとって得難い貴重な機会。地域貢献にもなる」と語った。高橋理事長は「医療者が時間的、マンパワー的にできないものを学生が代わってかかわることは素晴らしい」と話していた。

 リハビリシステムは同院の179床のうち、一般病棟と回復期リハビリテーション病棟の計119床で使われる。(新目七恵)



◎ワンストップサービスデイ、年の瀬 職探しに奔走

 就職や住居・生活に関する相談を1カ所で受ける「ワンストップ・サービス・デイ」(ハローワーク函館、函館労働基準監督署主催)が21日、函館地方合同庁舎(函館市新川町)で開かれ、市内・近郊の求職者ら35人が相談に訪れた。「仕事がなく生活が苦しい」「このままでは年を越せない」―。年の瀬ぎりぎりまで職探しに奔走し、生活に困窮する相談者からは切実な声が聞かれた。(宮木佳奈美)

 高齢の母親と暮らす50代の女性は「年齢的に条件が厳しくて仕事が決まらず、生活がとても苦しい。貸付制度があることを今日初めて知ったので、相談に来てよかった」と話した。元鉄筋工の男性(55)は「体を壊して仕事を辞めたが、生活保護はなるべく受けたくない。貸付制度で何とか乗り越えたい」と話し、担当者から説明を受けていた。

 一方、多重債務を抱える男性(56)は「明日食べる物もなく、正月を迎えられない。生活が苦しくて借金したのに、債務があるからといって生活資金の貸付制度をすぐに利用できないのでは意味がない」と納得できない様子で会場を後にした。3月に派遣切りに遭った男性(42)は「60社ほど受けたが仕事が決まらない。9月末で失業保険が切れ、知人から借金して生活しているがもう限界。生活支援を受けるにも手続きに1カ月半かかると言われ、現実的には受け入れられない。今日ここでなんとか助けてもらえると思ったのに」と困り切っていた。

 国の緊急雇用対策の一環で、年末を控え、求職中で当面の生活や住居支援を必要としている人を対象に初めて開催。主催する2機関のほか、渡島支庁、函館、北斗両市、両市の社会福祉協議会、市立函館保健所、函館弁護士会の計9機関・団体が一堂に集まり相談を受けた。

 相談者は、函館市内に住む働き盛りの30―50代男性が中心。1人当たりの相談内容が複数の分野にまたがるケースが多く、相談件数は延べ64件だった。このうち就職や職業訓練など仕事に関する相談20件、当面の生活資金などを給付する生活福祉資金に関する相談19件で、この2つで全体の6割以上を占めた。



◎市民体育館、現在地で増改築を

 老朽化した函館市民体育館のあり方を検討する懇話会(座長・田中和久道教育大函館校教授)の最終会合が21日夜、市役所で開かれた。これまでの議論を踏まえて事務局が作成した案を基に提言書をまとめ、焦点の立地場所については現在地(湯川町1)での増改築が望ましいとの見解を示した。提言書は25日、多賀谷智教育長に提出する。

 提言書は体育館の現状と課題、役割、機能など7項目からなり、過去5回の懇話会で出された議論をもとに作成した。

 このうち立地場所では、「新たな場所への移転整備を望む意見もあったが、現在地での増改築が望ましい」として意見をまとめた。駐車場が狭いものの公共交通機関の利便性が高く、現在の体育館をサブアリーナとして活用し、隣接地にメーンアリーナを整備することで事業費の縮減も図られる―などの優位性を明記した。

 移転整備に関しては広い駐車場の確保をメリットとし、移転先として「北高校跡地や緑の島を想定する」との付帯意見を付けた。

 機能面では大規模スポーツ大会が開催可能なメーンアリーナ整備を求め、例としてバスケットボールコート3面、バドミントンコート16面が取れる広さを挙げた。すべての人が快適に利用できるユニバーサルデザインの導入やバリアフリー化も取り入れた。

 要望書ではこのほか、スポーツ以外のコンベンション開催にも対応可能な機能を検討することを求めたほか、太陽光発電の導入など、地球環境に配慮した施設整備にも触れた。(千葉卓陽)


◎千代田小5年生が手作り冊子で函館観光PR

 函館千代田小学校(梶利明校長、児童153人)の5年1組25人が21日、学校近くの五稜郭タワー(五稜郭町43)を訪れ、手づくりの観光冊子(A5判、16ページ)を来場者に手渡し、古里の魅力を伝えた。「このガイドを参考に観光を楽しんでください。五稜郭は本当にいいところです。どうぞまた函館にお越しください」と笑顔と真心で函館観光を盛り上げた。

 「地元の素晴らしさを多くの人と共有したい」と総合的な学習の時間を使い、1学期から準備。自然、歴史、経済と近隣住民へ取材を重ね、12月上旬に仕上げた。五稜郭タワーが全面協力した。

 「五稜郭公園の自然を紹介!」の見開きは、1660本のサクラが公園内にあると紹介。そのうち、1610本がソメイヨシノで、「春はやはり桜ですね。つつじやふじもきれいで、『見れば心が花ひらく!』」と案内する。

 2006年にオープンした新・タワー(高さ107メートル)については、旧タワーより47メートル高さが増し、「新しいタワーを作るのに、なんと30億円&2年かかったんだよ。びっくり」と表現。テレビや映画に多く登場していることも触れ、函館観光の象徴的存在であることを紹介している。

 函館は外国の文化が多い街。箱館奉行所を守るための城として国内初の西洋式の城郭設計が行われたと、歴史背景の説明も。「来年の7月29日には、当時の奉行所を再現する建造物がオープンする予定です」とPRする。

 児童は、同タワー1階を1時間かけて歩き、観光客らに声をかけ、勉強の成果をこれからにつなげたいと、アンケート箱も用意して感想を聞いた。観光客は「立派な冊子だね。ちゃんと読ませてもらいます。ありがとう」と目を細めていた。

 平川大雅君(11)は「勉強するたびに自分の住むまちの素晴らしさを実感した」、秋本紗奈さん(11)は「ガイドを手にとって観光客の人が喜んでくれたことがうれしい」とにっこり。担任の佐々木かおり教諭は「住み慣れたまちをいま一度見つめ直すいい機会になったはず。児童たちは協力してくれた多くの人に感謝し、自信を持ってふるさとの魅力を発信してくれた」と話していた。(田中陽介)


◎回顧1・火災現場へ昼夜駆けつけ

 今年も昼夜を問わず多くの火災現場に駆けつけた。弥生町の民家火災や函館どつく、湯川の温泉旅館など、大規模な火災が何件かあり、紙面に現場写真が掲載される機会も多かったように思える。現場を自分の目で確認すれば、事後に警察や消防で取材する際に状況を把握しやすくなるが、本音を正直に言えば「行きたくない」。時に悲しい場面を目にすることもあり、炎や黒煙を上げる建物を目の前にすると、足がすくむような恐怖を感じるからだ。

 1月7日、函館市民を震撼(しんかん)させた連続放火事件が発生した。午前3時半すぎの中道での車両とマンション火災を皮切りに、約3時間にわたり、本町の飲食店ビル、若松町など次々と火の手が上がる現場を追い掛けた。

 昨年末から市内では火災が相次いでいたが、この日だけは不自然さから放火を疑ってはいた。しかし、一段落した午前6時半ごろ、空が明るくなったこともあり「さすがに今日はもう終わり」と決めつけて、現場を離れた。この直後に警察と放火を実行した男との“大捕物”が始まるとは予想もせず、記者としての嗅覚(きゅうかく)のなさを自覚した。

 後に、放火罪などで起訴された男の公判で明らかとなった動機を要約すると、酒に酔った末、むしゃくしゃした気持ちを晴らすために次々と火をつけたというもの。大それた犯行には釣り合わない内容と思えた。公判中、怒りの声を漏らす傍聴者もいた。

 7月に大阪府内で5人が死亡する放火殺人事件があったが、可燃性の強いガソリンをまいて火をつけた手口が共通している。男は「少量だから大丈夫だと思った」などと供述したが、数十人が建物内にいた本町のビルや多くの住人が就寝中だった中道のマンションなど、「もし函館でも死者が出ていたら…」と、今考えても背筋が凍る。

 事件性はなくとも、12月に入ってからも、死傷者が出る住宅火災が相次ぎ、市内では20日現在、6人が命を落としている。消防本部で話を聞くと、放火を除けば、鍋を空だきしたり、暖房器具やたばこの火の不始末など、出火原因の大半が「うっかり型」。結果論だが、防ぐことのできる火災が多く、住宅用火災警報器があれば、逃げ遅れずに助かる見込みが高いケースもあるという話は何度も聞き、幾度となく記事にしてきた。

 取材活動を通じて、交通事故と火災だけは、決して人ごとではなく、いつ自分の身にも降りかかるかわからないとの思いは強い。その思いを記事に込めることは難しいのだが、せめて来年は平穏な1年であることを願いたい。(今井正一)

 この1年、本紙では、道南の各市町で起きたニュースや話題などをさまざまな切り口で伝えてきた。現場の担当記者が抱いた取材時の思いや体験を基に、残りわずかとなった2009年を振り返る。