2009年12月23日 (水) 掲載

◎雪の田園地帯に大型風車…江差北風力発電所が5基

 【江差】町内の江差北風力発電所では、平野部に設置を予定していた出力2000キロワット級の大型風車5基がほぼ完成し、雪に覆われた田園地帯で巨大な姿がひときわ目を引いている。

 風車の設置は、町内北部の水堀、朝日、小黒部、越前などの農村地帯で11月上旬にスタート。江差港北ふ頭に陸揚げされた支柱や巨大な羽根は、深夜から未明にかけて大型車両で現地に運び込み、巨大なクレーンでつり上げて、次々と組み立て作業を進めてきた。

 水堀地区の国道229号からは、平野部に並ぶ高さ約120メートルもある5基の風車が、ずらりと並んでいるのが見える。発電機などを納めた本体部分では航空機などの衝突を防ぐライトも閃光(せんこう)を放っている。風車の足元では工事車両が慌ただしく行き交い、年末を控えて急ピッチで作業が進んでいる様子だ。

 同発電所は、国内風力発電3位の日本風力開発(東京)の子会社・江差風力開発が今年3月に建設を開始。出力2000キロワットの風車10基を建設する。総出力は1万9500キロワット。平野部の1―5号基は計画通り、来年4月に商業運転を始める。ただ、五厘沢地区の丘陵地帯に建設を予定していた6―10号基は、用地確保上の問題から立地場所を約4キロ北東の鰔川地区に変更したため工期が遅れ、来年4月に着工し、同12月の完成を見込んでいるという。(松浦 純)



◎大雪で明暗…雪かき大変、除雪用品好調

 12月下旬に入り、函館市内では平年の3倍以上の積雪となっている。15日から22日にかけ、18―30センチ(平年は8センチ程度)と推移し、12月としては2005年以来4年ぶりの大雪。昼夜にわたる降雪で、道路にはわだちができ、歩行や自動車の運転には細心の注意が求められる。銀世界に包まれる中、市内や近郊では明暗も現れている。

 函館海洋気象台によると、この断続的な雪は、冬型気圧配置が例年より長居しているため。「これからは大雪になる見込みは少ないが、真冬の寒さと一定の雪は続く」という。24、25日には一時的に寒さはゆるむが、28日ごろには再び寒気は強まると予想している。

 ホームセンター「スーパーデポ石川店」(石川町)では、15日ごろから長靴や雪かきスコップ、圧雪して押し出すスノープッシャーなどの除雪用品の売れ行きが好調という。「買い替え時期もぶつかったのでは」と同店。今年は、例年以上に自動車用のスノーブラシ、ワイパーなどを買い求める客が多いという。品薄状態ではないが、追加発注をしている。

 19日にオープンした七飯町仁山の「ニヤマ高原スキー場」の22日現在の積雪は70センチ。雪質は湿り気が多少あるものの上々で、この雪を歓迎する。今後、年末に向けて多くのスキー客が見込まれる。

 中島廉売(中島町)の関係者にとって「お客さんの安全とサービス向上のために」と通りの雪かきは重要な仕事の一つだ。「堂守豆富店」の堂守信行さん(29)は毎日、午前4時に起床。「この時期の朝は寒くて辛いが、雪かきは大事。少々積もったらすぐに行う。根雪になる前にやれば負担も少ない」と商品の仕込みの最中、常に玄関先にも気を配る。

 市内豊川町では22日午前、屋根の雪下ろしをしていた男性が見られた。「昔は毎冬1回作業していたが、今日は2、3年ぶりかもしれない。雪は少し湿って重く大変」と話していた。市内の温泉経営者は「寒くなると温泉に来る客は増えてうれしいが、大雪は困る。でこぼこの雪道で、ここまで来るのが大儀になる人が多く、浴場ががらがらになる時もある」と困惑気味。

 観光客にとっても雪は複雑なようだ。千葉市の公務員榎一郎さん(53)と妻の恵美さん(51)は同日、札幌から函館入りしたが、飛行機が欠航し、列車に切り替えたため6時間遅れの到着となったという。「天候の事情は仕方ない。トラブルも旅の思い出。きれいな雪景色を見られたので良かった」と話していた。(田中陽介、小杉貴洋)



◎高谷氏が正式出場表明…北斗市長選

 【北斗】北斗市前副市長の高谷寿峰氏(57)は22日、任期満了に伴う来年2月の市長選挙に無所属で立候補することを正式に表明した。

 市内飯生の事務所で開いた記者会見で高谷氏は、産業振興や福祉のまちづくりなど9項目の公約を掲げ、「市誕生後に築かれた基盤をさらに充実させ、北海道新幹線開業を見据えた新しいまちづくりを推し進めたい」と抱負を語った。

 出馬の動機は「1、2年前から(市長選出馬を)推す声があり、期待に応えるのも私の責務と思った。最終的に家族や親せきと相談し決断した」と述べた。

 海老沢順三市長から後継指名されたことについて「光栄でありプレッシャーを感じる。良い部分は受け継いでいきたい」とし、北海道新幹線開業に伴う並行在来線の問題には「鉄路維持することを基本に考えたい」と述べた。

 選挙戦に向けては特定の政党から支持を受けずに「市民党という立場で草の根の運動をする。40年の行政経験をアピールしたい」とした。

 高谷氏は旧上磯町出身で、1970年に同町役場入り。社会教育課長、総務課長を経て2002年から総務部長、03年から助役を務め、市誕生後、初代副市長に就いた。(鈴木 潤)


◎小柏氏の副市長選任に同意…函館市議会

 函館市議会第4回定例会は22日、本会議を再開し、本年度各会計補正予算など議案37件を原案通り可決した。今月31日付で辞任する工藤寿樹副市長(60)の後任に小柏忠久理事(62)を起用する選任同意案に賛成多数で同意し、21日間にわたった全日程を終え、閉会した。

 小柏氏の選任同意案は無記名投票で行われ、賛成25、白票を含む反対が7だったほか、1人が退席した。

 小柏氏はこれを受け31日付で理事を辞任し、1月1日付で副市長に就任する。西尾正範市長は行財政改革担当として昨年4月に4年間の時限付きで設置した特別職「理事」を空席とし、本年度で廃止する方針。同市長は同日付で後任の総務部長を置く。

 採決に先立ち、3氏が質疑を行った。理事職の今後の扱いをただした斉藤佐知子氏(民主・市民ネット)に対し、西尾正範市長は「人事配置の事情でこうなったことは申し訳なく思う」と陳謝。他の特別職の扱いも含め、来年2月の定例会で整理する考えを示した。

 また志賀谷隆氏(公明党)は「新しい副市長が行革を担うのか」と質問。同市長は「市長を中心としたチームとして市政運営を進める上で、小柏氏が適任として選任せざるを得ず、理事を空白にせざるを得ない」と述べ、理解を求めた。

 このほか請願1件、意見書案16件を原案通り可決。新副市長に決まった小柏氏は「職責の重大さに身の引き締まる思い。市長を補佐し、誠心誠意努力していきたい」とあいさつした。(千葉卓陽)


◎回顧2・函工ラグビー部を追って

 5月にスポーツ担当となり多くの競技を取材した。学業や仕事と両立し、道南から全道や全国を目指して戦うアスリートに触れ合う機会を持てた。中でも、地区予選から全道大会までを追いかけ、深く印象に残ったのは函館工業高ラグビー部の全道準優勝だった。

 「長い間、函館勢は札幌勢に勝てていない。地元開催のチャンスを生かしたい」と函工の下澤瑛人主将(3年)は闘志を燃やした。ラグビーの聖地“花園”への最終関門である「第62回道高校南・北選手権大会兼第89回全国高校大会道予選会」(道高体連など主催)は、9月22―26日に根崎運動公園ラグビー場などで開かれた。函館から函工、ラ・サール、当番校として市立函館の3校が全道の強豪に挑んだ。

 函工は、10連覇を目指す強豪・札幌山の手の“対抗馬”と目されていた。夏から札幌山の手を意識して猛特訓を積み重ねた。相手のひざ下に飛び込む低いタックルに磨きをかけるなど、地元の期待を背負った部員全員が燃えた。木津谷富紀監督は「多くの人が応援にきてくれる。山の手の連覇を函館で止めたい」と意気込んだ。

 その効果は存分に発揮した。1回戦は大麻(札幌)を、準決勝はaウ別(空知)を退け、大方の予想通り、決勝は札幌山の手戦となった。これは、函工にとって雪辱戦でもあった。2年前の決勝で逆転負けを喫し、花園切符を逃した。3年生は目の前で味わった悔しさを胸に練習に励み、再び全道決勝の舞台に戻ってきたのである。

 試合は前半6分に先制を許すも反撃に出た。だが、少しずつ相手のすばやい突破に自陣を浸食され始めた。函工は計3トライを挙げ、一時は7点差まで追い詰めるもあと一歩及ばず、17―38で敗れた。

 「胸を張れ」―。木津谷監督は引き揚げてきた選手にそう声を掛けた。下澤主将は「結果は負けだが、大勢の人が見に来てくれており、その前でしょぼくれたところは見せられない」と涙を浮かべながら気丈に振り返った。部員の表情には大きな栄冠をつかみ損ねた無念さと、やりきった充実感の2つが入り混じっていた。この経験は選手の今後の人生の大きな糧となるだろう。今でもあの表情を思い出すたび、胸が熱くなる。見ている者の心をこれだけ動かすのだ。スポーツがもたらす感動は図り知れない。

 5カ月間スポーツを担当し、現在は函館市役所記者クラブに詰めている。政府の行政刷新会議が事業仕分けで、スポーツ予算の縮減が妥当と判定するなど、スポーツ界には逆風が吹く。来年も行政取材の中から函館で競技に取り組む選手や、さまざまなことに打ち込む人を応援する記事を書ければと思う。(山田孝人)