2009年12月25日 (金) 掲載

◎函館ハリストス正教会で市民クリスマス

 クリスマスイブの24日、函館市内の教会ではクリスマス礼拝が行われた。元町3の函館ハリストス正教会(ニコライ・ドミートリエフ司祭)では、市民を対象とした「市民クリスマス」が開かれ、参加者は聖歌の合唱や祈祷に聞き入り、キリスト降誕を祝った。

 同教会がギリシア正教の標準的な礼拝で行う降誕祭(クリスマス賛美礼拝)は20日に開かれており、この日は、信徒などで作られた聖歌隊約20人が市民向けに華やかな聖歌を取り入れるなどして開いた。函館湯の川温泉旅館協同組合が運営する「函館タイケン観光案内所」などの案内により約100人が集まった。

 白と緑のロシア風ビザンチン様式の聖堂では、ろうそくの炎が荘厳な雰囲気を醸し出し、明治時代に聖ニコライが訳した、原語の雰囲気が残った美しい聖歌や祈祷による祈りが約1時間半にわたって続けられた。

 ニコライ司祭は「降誕祭は喜びと、厳かな気持ちをもたらす。今日の参加で隣人をより愛するきっかけになってくれることを願います」と話し、参加者にクリスマスカードをプレゼントしていた。(山崎純一)



◎渡島管内上半期、観光客が過去最少に

 渡島支庁が24日に発表した本年度上期(4―9月)の管内観光入り込み客数(速報値)は、前年同期比4・7%減の618万9000人となり、現行の調査を開始した1997年度以降、前年上期に続いて過去最少を更新した。ピーク時の99年度上期と比べて3割以上減少し、観光客の落ち込みに歯止めが掛からない状況だ。(森健太郎)

 

 上期の減少は4年連続。特に道外客、宿泊客の減少が目立ち、同支庁商工労働観光課は「昨年度から続く経済情勢の悪化や新型インフルエンザの流行で、消費者の観光需要が冷え込んでいることが影響した」と分析。函館―青森間の高速フェリーの通年運航休止や国内外の空路の縮減なども背景にあるとみている。

 市町別では、ETC(自動料金収受システム)搭載車の高速料金割引で、函館・近郊と、それ以外の地域で明暗が分かれた。管内の観光客数の半数近くを占める函館市は同7・5%減の287万6400人。それに次ぐ七飯町が同14・2%減の91万6400人と低迷し、団体ツアー客の減少などで苦戦を強いられた。

 一方、松前や知内など渡島西部の4町はいずれも増加。特に松前町は同24%増の49万8400人と急伸し、「道の駅のオープンやマグロまつり、ご当地グルメのマグロ三色丼のPR成果が大きい」(同町)という。このほか、木古内が同53・3%増、知内が同14%増、福島が同7・4%増となり、ETC効果で車利用者の恩恵を受けた格好だ。

 また、上期に管内に滞在した外国人宿泊者数は同47・3%減の2万3226人。新型肺炎(SARS)の影響を受けた2003年度上期の水準まで落ち込み、過去最大の減少率となった。東アジア圏からの来訪者が全体の8割を占めたが、これまで主力だった台湾客が同80・7%減の3421人と急減し、全体を押し下げた。

 函館―ソウル線の就航で増加傾向にあった韓国客も同25・1%減の7425人と不振。世界同時不況や新型インフルエンザの感染拡大で、訪日旅行需要が冷え込んだことをうかがわせる。一方、中国客は規制緩和で個人旅行ビザの発給が開始されたことなどから同2・8倍の3442人と急伸し、国別では台湾を抜いて2位となった。



◎函館市と西警察署、暴力団員を排除で協定/「地方卸売市場」では全国初

 函館市は24日、市水産物地方卸売市場条例、青果物地方卸売市場条例の一部を改正するのに伴い、函館西署(伊藤勝博署長)と暴力団員の排除に関する協定を締結した。地方卸売市場を対象とした協定は全国初で、施行は来年1月1日。

 協定は市場関係業者に暴力団員がいるとみられる場合、市は同署に暴力団員か否かを照会し、情報提供が受けられることなどを定めている。市は昨年12月にも暴力団員の市営住宅などの使用制限に関する協定を同署、函館中央署と結んでいる。

 同署で行われた締結式で、西尾正範市長は「連携を緊密にしながら、安全・安心な市場づくりに努めたい」とあいさつ。伊藤署長は「暴力団員は市民生活に百害あって一利なし。今回を一つのきっかけに、細やかな点で連携を深めたい」と述べた。

 卸売市場における暴力団排除の取り組みは、08年7月に東京都中央卸売市場、今年9月に福岡、北九州両市で条例改正を行っている。市農林水産部によると、函館の両市場では現在、暴力団関係者の出入りは確認されていないという。(千葉卓陽)


◎救命技術を伝える田中さん、「AEDに点字」で実用新案に登録

 地域で救命の知識や技術を広めるNPO法人「救命のリレー普及会」の田中正博会長がこのほど、視覚障害者が操作できるよう、AED(自動体外式除細動器)に点字を付けることを発案し、特許庁の実用新案に登録された。講習会で使う練習用AED4台に点字シールを付け、「1人でも多くの視覚障害者が知識を身につけたら救命の可能性も上がる。活動の輪を広げたい」と話している。(宮木佳奈美)

 

 同会は応急手当普及員の資格を持ち、10年ほど前から市内で救命講習会を開く田中さんら有資格者で2月に発足し、10月にNPO法人化した。障害者を対象にした講習会がほとんどない現状を受け、視覚障害者への技術指導をスタート。神奈川県の茅ヶ崎市消防本部が視覚障害者向けの救命講習用に点字テキストを作製していることを知ったのがきっかけだった。

 本格的な講習会を開く前に、視覚障害者の意見を聞くなどし、AEDの電源やショックを与えるボタンなどを点字で表示することを思いついた。6月1日に特許庁に出願し、11月11日に登録。既存のADEに張り付ける「点字シール」と、あらかじめ点字が打ち込まれたAEDが製造された場合を想定し、「点字ブロック」の2種類の案で登録を済ませた。田中さんは「もしメーカーなどに採用され、使用料が見込めるなら財団や基金をつくり活動に役立てたい」と実用化に期待を込める。

 併せて応急手当講習テキストや、実技用にテキストの内容を抜粋したもので、一連の流れを簡潔にまとめた資料なども点字版で作製。これまで函館視力障害者福祉協議会(函視協)の会員を対象に10月、12月に2回、講習会を開催した。松前町に住む全盲のマッサージ師の女性は、講習会の受講を機に、点字を付けたAEDを購入し、万が一の時に備えるという。

 田中さんによると、4月現在で市内の視力障害者の数は1051人で、このうち函視協会員は153人。「必要最低限の知識があれば、救命が必要な場面で健常者に指示を出すこともできる。函視協の会員の8、9割が知識や技術を身に付けられるような形にしたい」と意欲を見せる。

 

 【実用新案】物品の形状、構造または組み合わせに関するものを保護する権利。特許庁に出願し、登録する。登録期間は最長10年。


◎記者回顧4・函館遠友塾と出合って

 「新聞に載りたくない人がいるので、後ろから撮ってもらえませんか」―。4月の開設を目指し、昨秋、函館市総合福祉センターで行われた民間運営の夜間中学「函館遠友塾」説明会の取材で、記者が今西隆人代表から告げられた言葉だ。会場は予想を超える参加者で熱気に包まれていたが、カメラを構えた記者に嫌そうな顔をする参加者もいた。予想していなかった反応に戸惑った。顔が見えないよう、背後から撮影した。それが、塾生との出会いだった。

 道南初の夜間中学として注目が集まり、4月の入塾式は多くの報道陣が詰め掛けた。式後、塾生が他社のインタビューを受けていた。記者も誰かに質問しようとする中、こんな声を耳にした。

 「学校に行ってないのが恥ずかしくて来たのに取材なんて嫌だ」。撮影拒否の理由を理解するのと同時に、本人にとってつらい過去を初対面の人間が無遠慮に聞くことに抵抗を感じた。それも仕事であり、記者もそうした取材をした経験はある。だがその日は、足早に去る塾生に積極的に声を掛ける気にならなかった。

 通常、入塾式という節目で取材は一段落する。しかし、入塾式で感じた疑問や「塾生に会いたい」との思いが背中を押し、その後も記者は週1回の教室に通った。

 夜間中学は戦争や病気、貧困などで満足に義務教育を受けられなかった人が対象だ。塾生の大半は70代前後。26歳の記者にとって祖父母のような年代の人が真剣に勉強する姿は新鮮だった。職業や年、経歴を超え、学ぶ喜びを共有する雰囲気は「教育」の原点に通じる気がした。そうした塾生の様子を、読者に伝えたい思いが次第にふくらんだ。

 開設から半年余りが経ち、塾生5人にスポットを当てた企画「わたし学びます」の取材に取り掛かった。なぜ、今、学ぶのか―。不遇な時代を生き抜き、ようやく学べる喜びに満ちた塾生1人ひとりの切実な言葉は記者の胸を打った。

 11月22日から5日間連続で掲載すると、読者から「元気が出た」「続きが読みたい」などうれしい反響があった。塾生からの「ありがとう」の言葉も大きな励みになった。

 遠友塾の取材を通し、人の人生を聞くことの責任の重さを改めて実感した。記者には当たり前になってしまうこの仕事は、時に人を傷つけ、不快感を与える。しかしそれを乗り越え、人と真っ正面から向き合い、その人が人知れず抱く前向きな思いや生き様を記事として伝えることは記者の使命だと思う。それが読者の元気や勇気、希望になればうれしい。殺伐とした世の中で、そうした“社会の光”に今後も目を向けたい。(新目七恵)