2009年12月29日 (火) 掲載

◎正月彩る多彩な縁起食材…おせち作り本格化

 正月の家族団らんを盛り上げるおせち料理。函館市宝来町9の料亭「冨茂登」(尾形有司社長)では、材料や味にこだわった本格おせちを家庭で味わってもらおうと、従業員らが手分けをして朝早くから仕込み作業に取り掛かっている。

 28日から本格的に製造作業を開始した同店は、毎年市内のデパートなどを中心に販売している。10月から企画し、2段重に43種類にもなる色とりどりの縁起食材などを詰め込んだ180個を、31日までに仕上げる。

 「おせちは1年の集大成。伝承された味に新しい心づかいを」といつも心がけて調理すると話す尾形社長(59)。その言葉通り定番の「子持ち鮎の甘露煮」は何工程も経て、煮崩れないように6時間かけて仕上げる。そのほか、函館近海で獲れたあわびを使った粕漬けや兵庫県丹波市産の黒豆、大きな栗の渋皮煮がのった栗きんとんなど、こだわりの品々が充実している。

 食材をお重に詰める作業は30日の夕方から明け方にかけて進め急ピッチで進められ、市内や遠くは東京まで届けられる。(小杉貴洋)



◎受験生安心 新型インフルワクチン接種開始

 受験を控えた中学校3年生と高校3年生への新型インフルエンザワクチンの接種が28日、道内で始まった。函館市内の各医療機関ではそれぞれの事情に合わせ、同日にスタートした所もあれば、数日ずらしたり来年1月に始める所も。いぜんとして容量の多い10ミリリットル容器に対する苦戦が続いている。

 接種は国や道が決めたスケジュールに従い行われているが、中高生に対しては接種開始の時期が変更されたり、当初2回とされた接種回数が1回とされたことなどから、各医療機関は国に対する苦情を訴えている。

 28日に接種を開始した北美原クリニック(同市石川町)は、12月下旬から予約を開始し、初日は約20人に接種した。接種に訪れた函館亀田中学校3年の男子生徒は「学校内でも流行し、周囲でも感染した人がいたので、自分もいつかかるか心配だった。ワクチンを打ったら安心して勉強に励みます」と話していた。

 函館市東山2のにれ小児科医院は来年1月中旬ごろの開始を予定。「優先順位や接種開始日など、厚労省からの情報が来るのが遅い」と憤る。特に10ミリリットル入り容器という障害は大きく、連絡があってから接種希望者に連絡する作業は大変だ。また「予約しておきながら別の医療機関で接種して連絡がない人もいる」という。

 曜日を決めて接種するため、通常医療機関が混み合う月曜日を避ける傾向から、29日に開始する所も多い。みはら内科クリニック(本通3)は29日、中高生4人に接種する予定。恩村内科(五稜郭町)は毎週水曜日を接種日と決めて対応してきたが、祝日や年末と重なる12月下旬のみ火曜日としたため、中高生への開始は29日となる。(小泉まや)



◎桧山管内09年度上期 観光客数86万9300人

 【江差】桧山支庁は28日、2009度上期(4―9月)の管内観光客入り込み状況を発表した。入り込み総数は前年同期比1・6%減の86万9300人。上ノ国、厚沢部、せたなの3町は客数の増加傾向がみられたが、管内全体では06年度から続く減少傾向に歯止めが掛からない状態が浮き彫りになった。

 同支庁は「全国的な景気低迷に加えて新型インフルエンザなどが影響した」とみている。管内7町の入り込み客は、05年度上期に前年同期比で2・2%の増加を記録して以降は、06年度10・3%減、07年度4・3%減、08年度11・2%減と、低迷を続けている。合併により旧熊石町が調査対象から外れた06年度上期の客数は104万100人。実人数ではこの4年間で17万人以上の減少となった。

 町別では江差町35万3800人(前年同期比7%減)、上ノ国町6万4900人(同3・7%増)、厚沢部町8万8500人(同3・9%増)、乙部町10万5800人(同0・6%減)、奥尻町3万2100人(同5・6%減)、今金町3万1600人(同5・1%減)、せたな町19万2600人(同6・1%増)。

 管内を代表する観光地である江差町の落ち込みが、管内全体の客数を押し下げる要因になっている。05年上期は51万4000人の入り込みがあった江差町は、客数がこの5年間で16万人余も減少した。

 上ノ国町は、道の駅にオープンした物産センターが客数を伸ばした。厚沢部町は、道の駅の入り込みが好調。乙部町は天候不順による海水浴客の減少が響いた。奥尻町は、上期にフェリー料金助成などの対策を講じたが、減少傾向に歯止めが掛からなかった。

 管内全体では、日帰り客は76万1800人(同0・6%減)、宿泊客は10万7500人(同8・3%減)。道外客は18万6800人(同5・7%減)、道内客68万2500人(同0・4%減)。(松浦 純)


◎3カ月ぶり上方修正…11月の道南経済

 日本銀行函館支店(市川信幸支店長)は28日、11月の道南地方の金融経済動向を発表した。個人消費の一部や、外国人観光客の回復などを踏まえ、「非常に厳しい状況が続いているが、持ち直しの動きや下げ止まりの兆しがみられる」とし、前月までの「一部に持ち直しの動き」から3カ月ぶりに上方修正した。

 個人消費は主要小売店10社の売上高が、家計の節約志向の強さを背景に、衣料品など中心に高額品の買い控えが続き、前年同月比1・5%減と前年割れ。一方、エコカー減税の効果で、新車登録台数は減税対象の普通・小型車が同48・0%と大幅に増加し、乗用車全体では同28・1%と4カ月連続のプラス。さらにエコポイント制度で薄型テレビ、ブルーレイレコーダーなどの一部の家電が好調なことから、「耐久消費財を中心に持ち直している」に判断が上向いた。

 観光は主要ホテル20社の宿泊客数が同4・1%減、函館空港乗降客数が同5・4%減といずれも19カ月連続でマイナス。函館山ロープウェイは同5・0%減、五稜郭タワーが5・5%減とともに2カ月連続で前年を下回ったが、いずれも減少幅は1けた台にとどまった。

 国際便客の減少幅が前月の31・2%から9・2%に縮小し、中国や台湾、韓国からの外国人観光客の入り込みが増加していることから、判断を「下げ止まりの兆し」に上方修正した。

 公共投資は小口案件がまとまって発注され、同37・3%増と3カ月連続のプラス。生産は造船が受注残から安定した操業を続け、電子部品も中国向けの輸出回復から高めの水準となっている。今後の見通しについて同支店は「海外経済、経済政策の動向、円高などの先行きの不透明感から、予断は許さない」との見方を示している。(宮木佳奈美)


◎道南自治体 まずは安堵…新幹線予算450億円

 25日に発表された2010年度一般会計予算の政府案で、北海道新幹線の新青森―新函館間の事業費は450億円となった。09年度当初予算の337億円から113億円、33・5%のアップとなったが、道や関係地元自治体は「2015年の開業に向けて弾みのつく内容」としながらも、札幌延伸や周辺インフラ整備に関わっての動向を注視している。

 来年度の整備新幹線5路線の事業費は2600億円(同26・5%減)で概算要求通り。国土交通省によると、総事業費の内訳は国による公共事業費が706億円、地方負担分が867億円、既設新幹線への譲渡収入が1027億円。

 05年度に着工した新青森―新函館間は05年度30億円、06年度60億円、07年度100億円、08年度178億円と推移。09年度は当初予算に加え5月に150億円を補正しており、来年度予算を加えた総配分額は1305億円となった。函館市の西尾正範市長は「国土交通省試算の予算総額(4700億円)に対する進ちょく率が27・8%と全体の4分の1程度となるので、2015年度末までの開業に向けて一層整備が進むと考えている」とコメントしている。

 また渡島支庁新幹線推進室は、未着工区間の新規着工が決定した場合に対応できるよう、全体で90億円の留保分が確保されたことを受け「札幌延伸に向け、計画通り実行できる一定の予算が確保された」と安堵(あんど)の表情を浮かべ、「来年度からは未着工区間の用地買収も本格化する。当面は2015年度までに開業する新函館までの整備を着実に進めたい」と話す。

 工事が進んでいる北斗市は「開業を踏まえて順当に予算付けしてくれたものととらえる。次年度以降も工期が遅れないような予算配分をお願いしたい」(建設部)と評価する一方、開業に合わせて新函館駅(仮称)周辺の整備を進める中で、駅前開発やインフラ整備に充てる財源を確保できるかが気掛かり。国土交通省の来年度予算案では、まちづくりや道路、下水道など従来の補助金を原則廃止して一本化した「社会資本整備総合交付金」(仮称)を創設。同部は「制度内容が詳しく示されておらず、計画通りに予算が確保できるのか心配。情報収集に努め対応していきたい」としている。(千葉卓陽、森健太郎、鈴木潤)