2009年12月30日 (水) 掲載

◎漁獲高は過去10年で最低 量は前年比9%増…09年度渡島管内

 渡島支庁は、2009年の渡島管内(八雲町熊石地区を除く)の漁業生産高をまとめた。ホタテやスケトウダラなど主要魚種が好調で、数量は21万6000トンと前年比で9%、1万70000トンの増加。一方、消費低迷で魚価が下落傾向にあり、金額は前年比6%減の419億円にとどまり、過去10年間で最低水準に落ち込んだ。

 主要魚種別でみると、全体の半数近くを占めるホタテの漁獲量が同10%増の10万1500トンと2003年以来6年ぶりに10万トンを超えた。噴火湾でホヤ類の一種ザラボヤが大量発生した影響は数字上は表れず、「ザラボヤが生育するほど海域に餌が豊富だった」(水産課)。額では単価下落に伴い同8%増の134億8000万円。

 スケトウダラは、今年の秋以降、噴火湾を中心に豊漁が続き、数量が同2倍以上の3万6100トンと急増。サケも今季は当初の不漁予測が一転、数量で同2.4倍の1万700トンと過去10年で最も多かった。ただ、ともに魚価の低迷で額ではそれぞれ30億3000万円となり、スケトウが同27%、サケが同65%の増加幅にとどまった。

 一方、スルメイカは「今年は近年にない大不漁」(産業振興部)で、数量が同41%減の2万8700トンと過去10年で初めて3万トンを割り込んだ。水産課は「昨年も良くなかったが、後半の定置網が好調で盛り返した。今年はそれがない」と話す。魚価は1キロ当たり同25円増の195円と上昇したが、額全体では同32%減の56億円と過去10年で最低だった。

 このほか、コンブは養殖が振るわなかったものの、天然物が健闘し、数量で同3%減の6300トン、額で同12%減の86億3000万円とほぼ横ばいを維持。マグロは数量で同6%増の380トンとプラスに推移したが、100キロ超の大物が少なかったほか、不況で消費が冷え込み、魚価が下がっていることもあり、額では同32%減の8億4000万円と苦戦した。

 同支庁水産課は「魚種によって漁獲量では明暗が分かれたが、市況の低迷で魚全般の単価は下落傾向にある。2010年も国内全体の経済情勢による部分が大きく、引き続き管内の漁獲高が影響を受ける可能性もある」としている。(森健太郎)



◎知的クラスター存続へ 函館のマリンバイオ含む

 政府の行政刷新会議による事業仕分けで「廃止」と判定された、文部科学省所管の知的クラスター創成事業が、このほど政府がまとめた来年度予算案で「地域イノベーションクラスタープログラム」として継続されることになった。本年度採択を受け、同事業存続に向けて活発に働きかけてきた函館市や地元関係者は「地域の実情を訴えてきた努力が実った」と、ほっとした表情を見せている。

 「地域イノベーション―」は、道と函館市が本年度採択された知的クラスター創成事業と、都市エリア産学官連携事業を統合し、政府予算案では本年度比11%減の120億6500万円を計上している。予算配分は1月中旬にも決定する見通し。

 函館市と道は「函館マリンバイオクラスター」として、沿岸の海洋資源などを活用した食品や医薬品の開発など4項目を研究テーマに提案し、同省は今年7月、同事業の「グローバル拠点育成型」に採択。2013年度までの5カ年計画で約15億円の助成が決まった後の廃止判定に、函館市の西尾正範市長は民主党や地元選出国会議員への要請を行った。さらに、先月には札幌や帯広など関係11市に呼びかけて緊急声明を発表するなど予算確保への活動を強めていた。

 同市長は取材に対し「廃止になると函館水産・海洋都市構想に大きな悪影響を及ぼすだけに、継続は地域にとって非常に大きい。逢坂誠二衆院議員や高橋はるみ知事も精力的に動いてくれた部分も大きく、感謝したい」と話している。



◎日商簿記2級8人合格…函商高

 函館商業高校の3年生8人が、日本商工会議所主催の簿記検定2級に見事合格した。昨年に続いて合格者数が最多となり、学校関係者は喜んでいる。8人は来春、取得した資格を生かして就職や進学などそれぞれの道に進む。

 簿記は日々の経営活動を記録・計算・整理し、経営成績と財政状態を明らかにする技能。2級は商業高卒業程度の知識が求められ、株式会社の経営管理などに役立つ。受験者は社会人や専門学校生が多く、函館商工会議所実施分の合格率は35%だった。

 8人は3年生の選択科目で「課題研究」を選び、4月から受験勉強に励んできた。週2時間の授業のほか、夏休みや土・日曜の補習も参加し、11月15日の試験に臨んだ。

 合格したのは笹田麻衣さん(18)、佐藤愛子(ちかこ)さん(17)、近藤喬大(たかひろ)君(18)、楢原聖司君(18)、松倉里奈さん(18)、冨成結花さん(18)、川島愛(めぐみ)さん(18)、三好千春さん(18)。

 大学に進む近藤君は「将来は資格を生かし、土木関係に進みたい」と話し、楢原君も「プレッシャーで試験後は不安だったから合格を知ってうれしかった」と喜ぶ。銀行に内定した三好さんは「夏休みや土・日曜に夕方までびっちり勉強して大変だったけど、みんなとわからないところを教え合い、先生も熱心に教えてくれた」と周囲に感謝する。

 指導に当たった新谷弥教諭(34)は「努力すれば実るということは実社会にも通じる。8人ともよく頑張った」と喜んでいた。(新目七恵)


◎自由市場 にぎわう

 新鮮な海産物や青果などを販売する約60店が並ぶ「はこだて自由市場」(函館市新川町1)は、正月料理の食材を買い込む市民らでにぎわっている。市場には「正月だから安くするよ」と売り手の威勢のいい掛け声が響いている。

 29日は午前から混雑し、夕方まで活気づいた。マグロやカニ、くじらベーコンなどの鮮やな色合いの商品が目を引き、買い物袋を持った客でごったがえした。市場ならではの“値切り交渉”も熱気。「もっと安くして」「新鮮で、こんなに安くしているところはないよ」と談笑する光景が繰り広げられた。

 サケを専門で販売する米塚商店(澤崎達雄社長)は「毎年楽しみにしている人が多い。活気が出ていつもより売れ始めると正月を実感する」と話す。

 夫婦で買い物に来た北斗市の成田映子さん(51)は「子どもが正月に帰省するので大好きな魚を食べさせてあげたい」と話し、サケや銀だらなどを買い求めていた。

 同市場共同組合(佐藤止昭理事長)によると混雑のピークは30、31日。営業時間は午前8時から午後5時半まで。大みそかは各店ごとに商品が無くなり次第、閉店するという。(小杉貴洋)


◎年末回顧(9)/混乱続きの函館市政

 10月から約5年ぶりに函館市政の担当になった。昔とった杵柄(きねづか)で日々の取材活動に当たっているが、市役所内部に漂う空気は、5年前のそれとはまったく異なっていた。

 「歴史は繰り返す―」。

 11月24日、工藤寿樹副市長が任期を3カ月残して西尾正範市長に辞表を提出し、市役所に激震が走った。西尾氏も助役時代の06年暮れ、前市長の市政運営を批判して辞任した光景と重なり、前述の言葉を強く感じた。

 西尾氏と工藤氏はともに函館ラ・サール高出身で西尾氏が1年先輩だが、行政マンとしての一歩を踏み出したのは1973年春と一緒で、両氏とも企画部長と助役を歴任。07年春、市長に就任した西尾氏から続投を要請され職にとどまったが、国際貿易センターの不正経理問題をはじめとして、問題や不祥事が重なっていった。

 「今の政権がどういうことを志し、何をやろうとしているのか感じ取れない」。今月7日の市議会本会議で、工藤氏は隣にいた西尾氏を真っ向から批判した。この姿に「2人を足して2で割ったら完ぺきなんだけど、ライバルだからね」と苦笑する職員や議員は多かった。工藤氏の決断に理解を示す声があった一方で「市長の下で方針が決まれば、それに向かって進むのが事務方トップの役目では」との意見も聞こえた。

 西尾氏は今年も石川稜北地区の市街化区域編入問題やケアホームの認定ミスなどで謝罪や説明に追われる場面がみられたが、8月の開港150周年記念イベント「ドリームボックス150」は13万3500人の来場客と黒字を確保した。市長就任以降“人づくり”を目指す中で、地域交流まちづくりセンター(末広町)などは市民活動の拠点として活発な動きをみせる。今年4月に設置した「くらし支援室」も、多重債務に困る市民の駆け込み寺として実績を挙げており、ことソフト面において「西尾カラー」は着実に浸透していると言っていいだろう。

 使い古された表現だが、任期満了が迫る同氏にとって、来年は文字通り総仕上げの1年となる。新しい副市長に小柏忠久氏の就任が決まり、庁内の混乱はひとまず落ち着いた。最重要課題の行財政改革や雇用対策はもちろん、国際水産・海洋都市構想の推進に向けた「マリンサイエンスパーク(仮称)」の整備基本設計、市民体育館の増改築などハード面の課題も多い。函館を覆う閉そく感の打破に向けた“次の一手”は何か―。その動きを注視し、的確に伝えていかなくてはと思っている。(千葉卓陽)