2009年12月31日 (木) 掲載

◎コンブ作家”鳴海さん正月飾り手づくり

 【福島】福島町特産の養殖マコンブで工芸品をつくり、古里を盛り上げる鳴海健児さん(70)が、今年も函館新聞社に特製正月飾りを寄贈した。コンブで鶴と亀をかたどり、迎春にふさわしい縁起物。鳴海さんは「道南のみなさんが良い一年を迎えられますように」と穏やかな年明けを願う。

 鳴海さんは「コンブ作家」の愛称を持ち、新幹線の先頭車両の模型、町内の古道を歩いたとされる榎本武揚を題材にする作品をこしらえ、古里を盛り上げている。

 この正月飾りは2007年から制作。今年は大・小の計200個を仕上げ、福島大神宮(常磐井武典宮司)でお払いした。「今年も多くの人に支えられた。そのお礼を伝えたくて」と親せきや近所、各地の同級生らに渡した。また渡島支庁、JR函館駅にも届けた。

 本社にも毎年寄贈。07年12月に贈られた「コンブ宝船」とともに受付付近に飾られ、迎春ムードを高めている。社員は「みんながよろこんぶ。本当に立派でよいお正月を迎えられそう」と喜んでいる。(田中陽介)



◎年の瀬 美容室やガソリンスタンドにぎわう

 2009年もあと1日。30日の函館・道南は雨が降るあいにくの天候となったが、すっきり気持ちよく新年を迎えようと、市内の美容室やガソリンスタンドなどには多くの人たちが詰め掛けた。

 大森町22の美容室「luluwdy(ルルーディー)」(竹田青司代表)には、12月に入ってから連日多くの客がカットなどを受けにやってくる。30日も親子連れなどでいすは満席、5人のスタイリストと4人のアシスタントが連携を図り、作業を進めた。新年に向け「心機一転」とスタイルチェンジを希望する人には、ロングの巻き髪などの流行やオリジナルのスタイルを提案する。スタッフは「12月は昨年に比べ4割も来客数が伸びた日もあった。来年も引き続き、お客さまに喜ばれるサービスを提供したい」と話していた。同店は31日も午後3時まで予約を受け付けている。新年の営業は4日から。

 鍛治2のホクレンセルフ東山給油所には給油をする市民がひっきりなしに訪れていた。しかしこの時期になると多くなる洗車の列も、この日は雨のため少なめ。杉浦勝広所長は「年末は1日約300台の洗車をしていたが、この天候では100台くらい。どっと込むのではなく、一定のペースで来ています」と話していた。同店は31日午後5時まで営業。新年は2日から。

 市内の金融機関では28日をピークに30日まで窓口、ATMともに多くの利用者が訪れたという。(黒田 寛、小杉貴洋)



◎支庁再編 糸口つかめぬまま越年

 【江差】道の支庁再編は、振興局から総合振興局に集約する広域事務をめぐり、道と桧山・日高など振興局地域との対立が激化。事態打開の糸口を見いだせないまま越年を余儀なくされた。支庁再編条例の施行が来年4月1日に迫る中、年明け早々にも道と振興局地域の攻防が激化しそうな情勢だ。

 道は来年度、再編案で提示した104項目の広域事務のうち、土木現業所の所管事務を含む35項目を、桧山など5振興局から渡島など9総合振興局に集約する。道は年明けの早い時期にも、来年度に集約を予定している35事務に関する市町村の意向調査や個別協議に入りたい考えだ。

 しかし、今月14日に江差町で行われた、桧山7町と高橋はるみ知事による公開協議では、広域事務の位置付けや土木現業所再編などの争点をめぐり、道の準備不足や再編案の矛盾点が数多く露呈。桧山7町は、市町村対象の事務や土木現業所の業務を広域事務から除外するよう求める構えを崩しておらず「入り口の議論から一歩も進んでいない状況で具体的協議に入ることはできない。白紙回答もやむを得ない」(関係者)との声が上がっている。

 道と振興局地域との直接協議は、すでに桧山、日高、石狩、根室、留萌の5地域を一巡した。ただ、12日に日高管内で行われた協議は、日高管内7町の34団体で組織する「日高振興局を考える連絡協議会」の主催で、正式協議に先立つ事前協議との位置付けだ。道は来年1月中旬にも正式協議を開きたい考えで、広域事務のあり方を含めた再編案の見直しを求めている日高連絡協に対する回答が注目されている。

 一方、再編条例の施行前には、振興局地域での協議に加えて、道市長会や道町村会など地方4団体との中央協議という手順を踏まなければならない。だが、振興局地域での合意形成が進まない段階での協議に地方4団体は慎重だ。広域事務をめぐる問題を解決できないまま、高橋知事が条例施行を強行すれば、振興局地域の合意形成などを確認した地方4団体との約束を自らが破棄する形となる。施行までの3カ月間という短期間で事態を打開できるのか。公開協議でボールを投げ返した桧山7町は、高橋知事の出方を注視している。(松浦 純)


◎道南の市町で仕事納め

 道南のほとんどの市町は30日、一斉に仕事納めとなった。市役所や役場では、窓口で住民が各種証明の交付や手続きを済ませ、来庁者と職員が年末のあいさつを交わす姿が見られた。市長や町長は職員を前に訓示し、1年間をの労をねぎらった。

 北斗市では、来年3月の任期満了で引退する海老沢順三市長が市役所本庁と総合分庁舎でそれぞれ職員を前に訓示した。総合分庁舎では午後3時50分から職員35人を前にあいさつ。海老沢市長は「任期はあと2カ月あるが、旧上磯町時代から35年にわたり、町長、市長を務めることができたのも、職員の協力があったからこそ。感謝したい」と述べ、「新市長の下でも市のさらなる発展に尽くしてほしい」と激励した。

 北海道新幹線の渡島当別トンネル開通、政権交代による権限移譲などのほか、不況と新型インフルエンザが猛威を振るう厳しい1年だったと振り返り、「よく対応してくれた。市の施策も順調に進んだのもみなさんの努力のたまもの」とたたえた。

 函館市役所では午後3時から8階大会議室で、特別職と管理職合わせて約250人が整列し、西尾正範市長があいさつした。西尾市長は8月に緑の島で開催された開港150周年記念事業について「50年に1度のイベントで13万人を超える市民や観光客に喜んでもらえた」と述べ、来年に向けて「皆さん気持ちを一つにして、よりよく前に進んで行ける年にしなくては」と訓示した。

 これに先立ち、1月1日付で副市長に就任する小柏忠久氏が「常に大切なことは何かを考えて、勇気を持って一歩踏み込み行動してほしい」とあいさつをした。

 国や道の機関の仕事始めは1月4日、函館市など道南の主な自治体は同6日。(松宮一郎、山田孝人)


◎記者回顧 函館開港150周年記念事業を取材して

 国際貿易港として開港し、今年で150周年を迎えた函館市。7月1日の記念式典や8月に緑の島で行われたメーンイベント「ドリームボックス150(DB150)」といった公式行事が開催された。市民の中でも記念の年を祝うイベントや開港にまつわるシンポジウムも開かれ、祝祭に沸いた1年だった。

 記念式典で上演された舞台劇「リ・スタート~少年たちへ、そして、未来の函館へ~」は、記念事業のコンセプトでもあり、中学生4人を含む市民10人が熱演。函館の歴史や先人に敬意を示し、未来を創造する大切さを訴えた。

 演出した岩堀恭一さんは「かけがえのないものを見つめ直し、函館の将来を考えるきっかけにしてほしい」。記者も同じ思いを抱き取材に取り組んだ。

 函館役所担当に配置替えとなり、記念事業の取材を始めた3月、市民との雑談の中で「開港150周年はどうなっている」「横浜は盛り上がっているのに函館はさっぱり」という声を聞いた。中には、記念事業をやることすら知らない人もいた。

 街中にはPR用の垂れ幕や小旗などほとんど無く、祝祭ムードを感じることができなかった。式典開催まで50日を切った5月13日付の本紙で「開港150周年、高まらない市民の機運」と報じた。こんな意義ある年なのに。寂しいと思いながら、これから紙面で何とか盛り上げようと誓った。

 6月下旬には「函館巴港を見つめて」と題して5回連載の企画記事を書いた。北洋漁業の元漁師や青函連絡船の元船長、まちづくりグループの代表ら5人の物語を通して開港の意義や港の存在価値を見つめ直した。

 いずれも1時間以上に及ぶ取材で、往時の函館のにぎわいを知る5人の思い出話や仕事、活動への熱い思いを受け止めて記事を書いた。

 ペリー提督を研究し続ける井上能孝さんは「開港の歴史を風化させてはいけない。新しい光を当て付加価値を見いだすことが、今生きる市民の使命」。また、共同通船社長の小林敏夫さんは「函館は不況に強い港。先人から受け継いだ財産がある」。5人それぞれから開港の意義や港の価値を聞くことができた。

 9日間にわたり繰り広げられたDB150には連日足を運び、その都度記事にした。イベントに対し「開港の歴史にスポットを当てた催事が乏しい」などの批判もあったが、大勢の来場者でにぎわい、家族で楽しむ光景が目立った。実行委は「海や港に親しんでもらう催事が好評。緑の島の利活用の在り方も提起できた」。近年にないにぎわいを創出できた点では結果オーライのイベントだったかもしれない。

 印象的だったのは企画、運営に携わった市民の言葉から函館を活気付けたいという思いが伝わったこと。“夢”のある“ハコ”ダテにしたいとの思いを込めた「ドリームボックス150」。このプロジェクトが実を結ぶのはこれからだ。わがまちを愛する市民の気持ちが、函館の輝く未来をつくると信じている。(鈴木 潤)