2009年1月17日(土)掲載

◎磯の香りに包まれ作業…ふのり採取はじまる

 全国的にも珍しい人工礁を使ったフノリの収穫が16日、北斗市の沿岸で始まった。同市茂辺地地区では、三角形の人工礁に張り付いたフノリを、胴長姿の上磯郡漁協関係者ら約30人が手作業で手際よく採取していた。

 養殖事業は上磯郡漁協などが2003年度より始め、同地区に488基、同市当別地区に479基の人工礁が設置されている。昨年6月に同漁協関係者らが胞子をまき、フノリの成長を待った。同漁協はまなす支所によると「今年は生育状況が少し遅れているが、採取時期は例年通り。昨年並みの5㌧の収穫を見込んでいる」という。

 採取作業は月に4回ほど、日中の干潮時に2時間程度行い、3月上旬まで続けられる。この日は午前11時ごろから作業が始まり、海風が吹き付け小雪が混じる天候の中、関係者は網を片手に中腰の姿勢で丁寧にフノリを摘み取っていた。上磯郡漁協茂辺地地区ふのり部会の池田博会長(78)は「採取が楽しいから、腰の痛みも忘れてしまう」と笑顔だった。

 フノリの多くは乾燥させて「海峡ふのり」(30㌘入り、420円)として、道内を中心に出荷される。味pク汁の具や海藻サラダとして食べるのが一般的だが、「かきあげのように、油で揚げて食べるととても美味しい」(同支所)という。(山田孝人)  



◎特別職給料減額求める…函館市報酬審議会

 本年度3回目の函館市特別職報酬等審議会(会長・松本栄一函館商工会議所副会頭)が16日、市役所会議室で開かれ、市長と副市長の給料について「なお一層の減額措置を講じることが必要」との答申案をまとめた。事実上の減額答申で、松本会長は「減額を求める初の答申となり、踏み込んだ形」と整理した。議員報酬は据え置きとした。

 市長の給料は月額113万円、副市長は同89万円、議員報酬は同51万円。市長と副市長は2002年度から自主的に5%カット、06年度から市長10%、副市長8%に拡大している。西尾正範市長が減額幅をどう判断するか、注目される。

 事務局の市人事課が答申案を提示。当初は特別職給料について「中核市との水準で決して高くなく、据え置くことが適当だが、一層の減額措置が必要」との内容だった。これに対し複数の委員から「据え置きが妥当とする意見は主流でなく、この答申案では納得できない」「本則給の据え置きと自主カットの両論併記で、据え置きありきだ」との反対意見があった。

 一方で「減額を迫る厳しい内容で、あとは市長の判断」との意見もあり、最終的に「本則据え置き」の部分は削除した。自主的な減額を拡大しても本則給は変動がないため、退職金の額(市長1期で24カ月分、約2700万円)は変わらない。ただし、厳しい経済情勢から、「市長、副市長の退職手当も適切な判断をすることが必要」と記した。

 道内の中核市では、旭川市が06年度から5年間の予定で市長20%、副市長11%の自主カットを実施している。

 議員報酬は削減を求める声もあったが、全国の中核市では最低の額で、職務が広がっていることなどから据え置きとした。

 松本会長が19日に市長へ答申する。(高柳 謙)



◎乗車券&観光施設利用券「はこだてスペシャルチケット」20日に発売

 函館市内を運行する公共交通機関の乗車券と、観光施設の利用・入場券を組み合わせた「はこだてスペシャルチケット」が20日から、個人旅行者向けに市内の観光案内所などで販売される。2000円。3月末まで取り扱い、利用者のアンケートを基に利用施設や販売場所の増強などを図りながら、通年化したい考えだ。

 同チケットは、市の実証実験を参考に旅行業界大手の近畿日本ツーリスト(東京)が昨年12月に道内旅行のオプションとして商品化。好評なことから、函館国際観光コンベンション協会が取り扱いを市から受託した。チケットは市電の1日乗車券またはバス乗車券を選べるほか、もぎり式のチケット13枚付きで、利用する施設やサービスに応じて提示する枚数が異なる。

 現在利用できる施設は、函館山ロープウェイ(大人8枚)や五稜郭タワー(同6枚)、大門横丁(同1枚から)など10カ所。チケットを販売するのは、函館駅前と元町の観光案内所、同協会が入居する旧イギリス領事館。

 利用者約100人対し、チケットの満足度や施設利用状況、来函回数などに関するアンケートを実施。来年度以降の販売継続に向けたチケット内容の検証に役立てるほか、市内のホテルなどにも販売の協力を呼び掛けていく予定。

 市観光振興課は「個人旅行客の多様なニーズに応えられるよう、内容の充実に努めていきたい」と話している。問い合わせは同協会TEL0138・27・3535。0(浜田孝輔)


◎地域一体 子どもの読書推進…桔梗・石川地区が委員会発足

 子どもたちが本に親しみ、感受性をはぐくむ環境をつくろうと、函館市桔梗、石川両地区の全学校、PTA、町会がこのほど、「桔梗・石川地区読書活動推進委員会」(委員長・手坂世志雄函館桔梗中校長)を発足させた。小、中学、高校、家庭、地域が一体となり、読書会や啓発活動などを進める試み。道教委によると道内でも珍しい取り組みで、手坂委員長は「活字に触れる機会を増やし、人間性を高めてほしい」と話している。

 構成しているのは函館桔梗、函館中の沢、函館北美原の各小学校、函館桔梗中、函館稜北高、各校PTA、桔梗、桔梗西部、桔梗北、石川の各町会。代表者が集まり昨年末に総会を行い、設立主旨や事業内容を確認した。

 推進委は、国語専攻の手坂委員長が、これまでの赴任校で読書の効能を実感した経験などから、桔梗中に赴任した2007年度に校区内の他校に協力を呼び掛け、翌08年度から各校で朝読書を取り入れたのがきっかけ。小松一保桔梗小校長の提案で、地域を巻き込んだ読書推進の組織を立ち上げることになった。

 具体的な活動としては、学校では朝読書に加え、読み聞かせなどの読書活動を一層進める。町会では看板設置などの啓発活動など、PTAは研修会や親子読書会の開催などを想定している。推進委を年1回開き、情報交換を行う計画だ。

 道教委生涯学習課社会教育グループは「学校、町会、PTAが一体となって取り組む例はあまり聞いたことがない」としている。

 手坂委員長は「家庭でも本を読む『家読(うちどく)』を広め、地道に活動を進めたい。本から多くのものを得て、財産にしてほしい」と期待を寄せる。副委員長の青坂栄一桔梗町会長は「大変良い取り組みで、地域一緒に進めたい」と話している。(新目七恵)


◎高卒者の求人拡大を経済団体に要請…渡島支庁など

 景気後退の影響で厳しさを増す今春の高校卒業予定者に対する地元求人を増やそうと、函館公共職業安定所と渡島支庁、渡島教育局の3機関のトップ3人が16日、函館商工会議所や函館建設業協会など5経済団体を訪れ、積極的な求人枠の拡大を要請した。

 昨年10月に続く2回目の求人要請で、卒業後に就職を希望する高校3年生の内定率が低迷していることから、15、16、19日の3日間に全道各地で緊急的に実施。年度内に2度も要請活動を行うのは「極めて異例」(同職安)という。

 この日は畑秀叔渡島支庁長、吉田一昭渡島教育局長、村山時雄函館職安所長の3人が各団体を訪問。同会議所では3人が昨年末現在、道南で335人の就職希望者の内定が得られていない状況を説明し、桜井健治常務理事に「傘下企業に地元雇用の推進を促してほしい」と要請書を手渡した。桜井常務は「会員企業も厳しい状況だが、一件でも多く周知したい」と述べた。

 同職安によると、管内の高卒予定者の就職内定率は昨年12月末現在47・5%で、前年同期に比べ0・9ポイント下回っている。同職安は「このままでは若者の人材流出が一層懸念される」として22日にも新規高卒者対象の就職説明会を開く予定で、参加求人企業を募っている。(森健太郎)


◎【企画・今年にかける】(5)開港150周年記念事業実行委のメモリーチームメンバー 茎沢直子さん(38)

 函館開港150周年記念事業などの情報を発信する公式ウェブサイト「ハコダテ150」の運営、内容更新などで慌ただしい日々を送る。各種記念事業や函館の街並み、飲食店などの様子を発信し、記録する目的で発足した市民のワーキンググループ「メモリーチーム」の一員。会社員や主婦、学生など年齢や立場を超えたさまざまな市民23人とともにサイトを更新している。

 1970年に函館市で生まれ、父親の転勤で道南各地に移り、14歳から函館に住み続けている。99年に結婚し、現在は主婦として夫、長女(7)と3人で暮らす。

 2006年3月、親しい友人が転勤で函館を離れたのをきっかけに、地元の様子を伝えるブログ(日記風サイト)「洋梨の函館生活」を開設した。「友人には函館を忘れてほしくない。どんな身近な情報でも喜んでくれるはず」。そんな思いで日々の生活を記録し始めた。大好きだというスーパーや図書館など、地域の良さを発信し続けることに喜びを覚えた。

 昨年1月、ブログを通じて知り合った同チームの佐々木康弘編集長(36)から仲間に加わるよう依頼された。「人々が函館に注目する年。地域の良さを広く知ってもらう絶好の機会だと思った」。開港記念日の200日前に当たる昨年12月13日の「スウィートキャンドルプロジェクト」など、市内の行事を精力的に取材し、にぎわいを伝えている。

 8月8―16日、市内大町の緑の島をメーン会場に、食や音楽、スポーツをテーマにした記念事業の一大イベントが開かれる。「いつまでも人々の記憶に残るようにしたい」。取材にも力が入る。 (長内 健)