2009年1月22日(木)掲載

◎オバマ大統領就任 函館からも期待の声続々

 米国のバラク・オバマ新大統領の就任式が日本時間21日未明に行われ、新たな時代の幕開けに日本でも歓迎ムードが漂った。「景気回復」「世界平和」など課題が山積する中、函館市内からも“チェンジ”を願う関係者らの期待が高まっている。

 オバマ大統領の地元イリノイ州シカゴ出身の函館遺愛女子高校宣教師、メリベス・ヴォスさん(37)は昨年10月中旬、不在者投票でオバマ大統領に一票を投じた。「オバマ大統領は米国人が必要としている『変革』の象徴で、強く誠実なリーダーになる人。厳しい経済情勢の打開に導いてくれると思う」と期待。就任演説はテレビとインターネットの両方で最後まで見たと言い、「日本と協力し、平和に向けて友好関係を築いていけるでしょう」と話した。

 市内に住むマサチューセッツ州出身のケイトリン・ウォルシュさん(24)は「就任式を見て新しい時代の到来を感じた。気持ちは喜びでいっぱい。戦争を平和的に解決し、経済を立て直してほしい」と要望。オバマ大統領の父と同じケニア出身のロビンソン・ムゴさん(32)北大水産科学院在学は「オバマ大統領の存在は米国にとってもケニア人にとっても誇り。就任式をテレビで見て胸が熱くなった」と声を弾ませた。

 函館日米協会(野田義成会長)の加藤清郎副会長(74)は「北朝鮮の拉致、核問題への態度をはっきりさせてもらい、日米親善が実りあるものになるよう日本政府とともに基礎を作り上げてほしい」とエールを送り、「155年前に異国情緒漂う函館の基盤をつくったペリー提督の活動を函館から国内外にアピールしなくては」と語った。

 市内で平和運動に取り組む個人や団体の関心も高い。イラク医療支援に協力するフリースペース「むげん空間 小春日和」主宰者の大野友莉さん(26)は「就任前からイラクからの撤退を公言しており応援していた。イスラエルとの関係が深い米国が今後どう中東問題とかかわるか注目したい」とし、函館YWCAの会津昭代会長は「中東問題に対し、武力ではなく対話による平和的な解決を望む」と話した。(宮木佳奈美、山田孝人、新目七恵)



◎遠隔医療 新システム構築へ…函館市、国の事業受託

 函館市は、情報通信技術を利用した国のモデル事業を受託した。札幌医大を中心に、市立函館病院や公立はこだて未来大学、函館市内の産科・小児科などの医院、道南の公立病院が参加し、遠隔医療の新たなシステム作りを進める。24日にこれらの団体でつくる「道南地域遠隔医療サービス・コンソーシアム」(会長・井上芳郎函館市病院局長)を設立し、周産期医療システムなど5つの課題解決に向けて動き出す。

 総務省が本年度から実施している「地域ICT利活用モデル構築事業」で、医療や福祉、介護をテーマに全国14カ所の自治体に同事業を委託している。函館市の事業費は約4800万円。道内では函館のほか、道と岩見沢市が受託した。

 インターネットを通じて患者や医療に関する情報を共有し、地域医療の水準を上げ、患者を地域全体で見守る。函館市は3月までに(1)地域における医療格差の解消(2)医師間などの密な連携による在宅独居高齢者等の見守り環境構築など―に取り組む。具体的には、医療機関で電子カルテを共有したり、総合病院や遠隔地の病院などが連携した周産期医療体制の構築、体重や血圧などの情報管理による高齢者の見守りなどのシステム構築を、5つのプロジェクトチームが行う。

 24日のコンソーシアム設立ではフォーラムを開き、各プロジェクトチームが概要を発表する。遠隔・地域医療と大学連携の役割については、参加団体の代表らが紹介。周産期医療支援システムの有用性や課題などを議論する場も設け、具体的な活動に入る。

 井上病院局長は「函館市内の病院間連携を広められることはもとより、自治体間の枠組みを超え、道南の地域特性を踏まえた医療サービスの提供につながる」と成果を期待している。(小泉まや)



◎市職員の告発めぐり質疑…貿易センター調査委

 函館市の第三セクター「函館国際貿易センター」(社長・谷沢広副市長)で起きた不正経理問題を解明する、市議会の調査特別委員会(斉藤佐知子委員長、委員11人)の参考人招致が21日、始まった。昨年12月末まで同社に派遣されていた市職員がマスコミに不正事実を証言したことについて、出資者である同社取締役は「なぜ相談してくれなかったのか、憤慨している」と述べた。

 これに対し委員は、公務員は職務執行にあたり犯罪の事実を知ったときは告発しなければならない、との刑事訴訟法の義務規定を挙げ、「取締役会で不正の事実がもみ消されるのではないかという告発者の気持ちを尊重すべきでは」と指摘。取締役は「内部で解決しなければ、迷惑をかける場合がある」と反論した。不正経理については「弾劾すべきとの考えで一貫している」と話した。

 このほか、同社が創業した2003年10月から続いてきた、市職員の研修派遣のあり方を問う声も相次ぎ、委員からは「設立間もない会社に派遣して、何の効果が得られるのか」「タクシー代やガソリン代などの自己負担を強いられることに、疑問を抱かなかったのか」などの声が上がった。

 この日は参考人5人が招致され、22日は同社に派遣されていた市職員ら6人から意見聴取する予定。(浜田孝輔)


◎函館三菱自動車販売 破産手続き開始決定

 三菱自動車系列の中堅自動車ディーラー、函館三菱自動車販売(函館市万代町22、白鳥一男社長)は21日までに、函館地裁から破産手続き開始の決定を受けた。帝国データバンク函館支店によると、負債総額は2008年3月期時点で約12億9000万円。

 同社は1928年10月に創業。89年2月には函館ギャラン自動車販売として設立され、同4月には別法人の函館自動車販売の商号を譲渡された。三菱製の新車販売を主力に、中古車販売や自動車修理なども手掛け、最盛期には函館市内や八雲町内に最大5店舗の営業拠点があった。

 一方、2000年9月や、04年5月に相次いで発覚した三菱自動車のリコール隠し問題の影響が大きく、近年は営業面の不振に伴い次々と店舗を閉鎖。02年3月期には27億7000万円あった売り上げは、08年3月期には10億2300万円まで落ち込み、赤字決算を繰り返していた。

 昨年末で実質的には事業を停止し、年明け以降も休業状態が続いていたが、今後の決済見通しが立たなくなり今回の事態となった。アフターサービスについては函館中央三菱自動車販売の各営業所が引き受ける。従業員約40人は昨年末で解雇した。(森健太郎)


◎新司法制度学ぶ…函館地裁 裁判員ショートツアー開始

 函館地裁は21日、5月に始まる裁判員制度について理解を深めてもらう「裁判員ショートツアー」を同地裁で開いた。3月までの第3水曜日に開かれるイベントで、初回のこの日は市民ら6人が参加し、刑事裁判の傍聴や同地裁職員による制度のレクチャーなどを通じて、国民参加の新司法制度について学んだ。

 ツアーでは、同地裁裁判員調整官の山田勉さんが制度の概要について説明。同地裁では昨年1年間に制度の対象となる重大事件の公判が10件あったことなどを示し、「国民参加により裁判の進め方や内容がより身近に感じられるようになって、司法への信頼が高まる」などと話した。

 続いて、裁判員法廷としても使用される2号法廷で、覚せい剤取締法違反で起訴された男(38)の初公判を傍聴。閉廷後には裁判官を務めた柴山智刑事部総括判事が「裁判員制度はみんなで話し合ってより良い結論を出す制度。分かりやすい審理を目指しています」と述べ、参加者の質問にも気軽に答えていた。

 参加した市内の男性(37)は「裁判所に来るのも裁判傍聴も初めて。堅い感じの印象を持ったが、法廷の雰囲気が分かり勉強になりました」と話していた。

 同ツアーは2月18日、3月18日にも午前9時15分から開かれる。参加無料。定員は各30人(先着順)。問い合わせは同地裁TEL0138・38・2370。(今井正一)