2009年1月4日(日)掲載

◎木村さん、函館山 模型で再現

 道アウトドアガイドの木村マサ子さん(63)=函館市住吉町=は、明治中ごろまでの函館山を模型で再現することに取り組んでいる。函館山は明治後期から戦時中まで要塞(さい)があり、その建設のため、頂上周辺や山の一部を削った。木村さんは「要塞が作られる前の姿や、市民がどのように山を利用していたかを調べるためのイメージづくり」と話している。

 函館要塞は明治30年代から砲台や戦闘指令所などの施設が造られた。木村さんは1985年ごろ、函館山は要塞建設や道路工事などで、明治中ごろまでと現在では山頂部の標高が違うことを知った。91年から2003年まで、同市青柳町にある函館山ふれあいセンター長として、山の自然や歴史について調べたほか、2000年から5年間、函館産業遺産研究会(富岡由夫会長)の活動として函館要塞の調査を行った。

 今回はそれらで研究したことをまとめることと、さまざまな体験学習に生かしてもらおうと模型づくりを考えた。「資料や地図を並べても山の姿のイメージは浮かばない。それらの重要な要素をまとめた模型を作れば山のことが良く伝わる」

 同センター長時代には、全盲の人が登山をする際、函館山や歩くコースのイメージを持ってもらうため模型を自作し触ってもらった。函館山の模型製作は今回で4つ目。姿ばかりでなく、当時の山と市民の関わりを明らかにしようとあらゆる資料を集めた。中心になったのは明治政府が要塞を作るため山を測量した地図。このほか、1834(天保5)年に山に置かれた西国三十三観音像の配置図など。54(安政元)年にペリー提督が来函した際に随行者が函館山頂から街を見下ろした絵に描かれていた、山中の鳥居やイチイの木の位置も調べた。

 山頂部は現在334メートルだが、要塞工事に入る前は348メートルあったとされる。砲台の台座を造るために削ったという。そのほかの山の変形について、要塞建設当時の建築技術では、山を掘ることは難しく、山を削りさら地にし、コンクリートなどを積み上げてドーム状にするため、山の一部で低くなったと予想している。また、市街地を見渡すため、山の中腹にある一部の山や山中各地にあるこぶのような部分を削り取ったとされる。木村さんは「要塞調査の際、地質や木の植生を見ると明らかに山を削り取ったことが分かる」と指摘する。

 模型は、幅約60センチ、奥行き約40センチ。地図の等高線を張った厚さ5ミリの発砲スチロールを線に沿って切り段上に重ねる。高さは土台部分を含め約15センチ。今は山の形ができており、削られた場所が分かるように色付けするほか、天保年間に置かれた観音像の場所、当時の遊歩道も再現したいとしている。「この作業ができるのは私しかいない。函館山に要塞があり、要塞時代に山が立ち入り禁止だったために今でも多くの貴重な植物が自生していることを知らない市民が多い。山の歴史を知ってもらい、山を大切にしてほしい」。山を研究した集大成を伝える模型は春に完成する。(山崎純一)



◎【企画】改善への道-経営見直す市立函館病院・上
 医療制度改革で収支悪化

 2007年度末の不良債務は約38億円―。市立函館、恵山、南茅部の市立3病院の経営状況は「過去最悪」(市病院局)と言えるまでに悪化した。函館市の西尾正範市長は「このままいけば一般会計、ひいては市民生活にも影響するきわめて切実な問題」と危機感を強める。

 市立病院の経営は、なぜ悪化したのか。函館病院単体では05年度までは黒字を維持していた。しかし、06年度の診療報酬引き下げで、一気に収支が悪化。06年度は3病院で11億1598万円の赤字となり、07年度末には累積赤字が約38億3700万円に。本年度はさらに約15億5200万円増え、約53億8800万円に膨らむ見通しだ。

 市病院局も「国の医療制度改革による診療報酬の引き下げなどが影響した」とするが、さらに追い打ちをかけるような原因があった。

 大きな転機は、医療制度改革の時期と同じ06年度。函館病院では医師不足などの理由で産科の廃止と精神科の縮小が重なり、06年度の1日当たりの平均患者数は、一般病棟が前年度比40人減少、精神科病棟では同45人減少した。

 産科では5人いた医師が05年度には2・5人に減少し、夜勤などの勤務態勢の維持が困難となり、05年度末に廃止した。現在、2室ある分娩(ぶんべん)室は閉鎖。うち1室には使用しない用具を保管している。8人いた助産師は4人を残して他院などへ転出。同院に看護師として残った助産師の金光智花さん(48)は「地域医療の確保はもとより、病院収入に直結することもあり早く再開を」と待ち望んでいる。

 産科再開には最低5人の医師が必要だ。市病院局は確保に奔走するが「相手の都合もあるため、来年度の再開は難しい状況」といい、10年度以降の再開を目指している。

 精神科にはもともと、4病棟200床の設備がある。多い時の1日当たりの入院患者数は、01年度は186人だったが、医師の減少により受け入れられる患者数が減少。06年度には段階的に使用する病棟を減らし、現在は2病棟で最大100床までの入院患者を受け入れている。

 4月からは現在3人いる医師が2人となる見込みで、さらなる縮小を余儀なくされる。100人の入院定員をまずは80人にまで落とし、将来的には1病棟50人を目安に縮小する考えで、縮小がさらなる患者減、ひいては収入減につながりかねない状況にある。同局経理課の藤田公美課長は「入院患者の中には合併症として精神を病む場合があるため、科を廃止するわけにはいかない」として維持する考え。看護師の余裕は一般病床の看護体制維持に活用するが、空き病床の利用など課題もある。

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 函館の市立3病院は巨額の財政赤字に苦しむが、渡島などの3次救急医療機関(生命に危険が及ぶ患者対象)の中核としての使命があり、民間医療機関が立地困難な地域で医療サービスを提供するなど、地域医療を担う病院としての存在は重要だ。現状や課題、対策と今後の展望を3回にわたり検証する。(小泉まや)



◎Uターンラッシュ始まる

 年末年始を古里や行楽地で過ごした人たちのUターンラッシュが3日、函館でも始まった。本州方面に向かう列車、飛行機は終日満席状態で、駅や空港は大きな荷物やお土産を抱えた家族連れなどで混雑した。

 JR函館駅では「気をつけて」「元気でね」などと声を掛け合いながら、改札口やホームで手を振り合ったり、握手をするなどして別れを惜しむ姿が目立った。函館市港町に帰省し、札幌に帰るという佐藤英明さん(36)由紀子さん(35)夫婦は「正月らしくのんびりし、リフレッシュできた」と話し、長女の寧音ちゃん(3)は「お年玉でおもちゃを買えてうれしかった」と笑顔。北斗市の実家に帰省していた静岡県掛川市の会社員藤田知治さん(22)は「結婚の報告で帰省した。バタバタしてゆっくりはできなかったが、明日1日体を休めて5日からの仕事を頑張る」と気持ちを切り替えていた。

 今年は仕事始めの5日が月曜日なため、Uターンはこの土日に集中する傾向にある。JR函館駅によると本州方面の列車の混雑は5日まで、札幌方面は4日まで続く。両方面とも4日までの指定席は終日満席という。

 航空会社によると空の便は、6日まで本州方面に向かう便はすべて満席で、7日も混み合っているという。(山田孝人)

 


◎道警函本管内昨年の交通事故、過去最少の死者18人

 道警函館方面本部交通課は、2008年の交通事故発生状況をまとめた。管内の死者数は前年比11人(37・9%)減の18人で、統計のある1949年以降最少で、過去最も多かった69年の91人と比べ、約5分の1まで減少した。道内全体の死者数も同58人減の228人で、50年以降で最も少なく、愛知県276人、埼玉県232人に次いで第3位となり、4年連続で全国ワーストワンを回避した。

 管内の事故発生件数は同294件(14・3%)減の1762件で、負傷者数は同438人(17・0%)減の2145人。警察署別では、死亡事故は函館中央管内が9人で最多で、八雲5人、寿都2人、木古内、江差が各1人。函館西、森、松前、せたな管内では死亡事故はなかった。函館中央管内では、事故の発生件数が同210件減の1252件、負傷者も同306人減の1489人と大幅に減少している。

 事故の形態をみると、国道10人、市町村道5人、道道3人と続き、時間帯は午後4時―同6時の夕暮れ時の発生が5人、深夜の午前零時―同2時が3人と多い。車両の単独事故が9人と半数を占め、人と車両の事故が5人と続き、正面衝突による死者は前年より8人減少し1人だった。

 また、乗車中の事故で死亡した10人のうち、シートベルトを着用していなかったのは3人で、同課は「いずれも着用をしていれば助かった可能性が高い」と分析している。



◎「はこだてチケット」好評

 旅行業界大手の近畿日本ツーリスト(東京)が、函館市の公共交通機関の一日乗車券と、観光施設の利用・入場券を組み合わせた「はこだてスペシャルチケット」を旅行商品に組み入れ、冬季観光で人気となっている。近年は旅行形態が団体から個人型に移行し、旅行者のニーズも多様化。函館の新たな魅力を伝え、全国に情報発信するきっかけづくりとなるか、期待がかかる。

 はこだてスペシャルチケットは、昨年8月に市が初めて実証実験した「はこだてチケット」を同社が商品化。市の形式では観光施設7カ所の券をすべて盛り込んでいたが、13枚からなる「はこだてスペシャルチケット」では、10カ所の利用施設に応じた枚数をもぎりするタイプに変えた。1カ所当たり1枚から8枚が必要。

 同社は札幌、東京、名古屋地域で、往復の航空券と宿泊料を自由に組み合わせるフリープランのオプション、または商品自体に含めるパックとして販売。実施1カ月目の昨年12月は、函館の冬の一大イベント「2008はこだてクリスマスファンタジー」の人気も手伝って、100人を超える利用があった。

 2月には札幌雪まつりの相乗効果を見込めることから、同社のグループ会社「ツーリストサービス北海道函館営業所」(函館市若松町7、及川伸一所長)では3月末までに300人以上の利用を目標を掲げる。及川所長は「利用者への聞き取り調査でさらに満足度を高め、市や施設の協力を得ながら函館の新たな観光素材を作っていければ」と話す。

 市観光振興課は「まちめぐりしやすい仕組みさえ構築できれば、来函者への知名度アップにつながるはずなので、開港150周年記念事業の成功にも役立ててもらいたい」と期待している。(浜田孝輔)