2009年1月6日(火)掲載

◎9月に函館で国際啄木学会

 函館市で今年9月、国際啄木学会(太田登会長)が開かれることが決まった。学会の創立20周年にあたり、石川啄木の原点である函館で節目の大会を開く。芥川賞作家、新井満さんの記念講演や最新の研究発表などが予定されている。太田会長(61)=天理大学名誉教授、日本近代文学=は「一番ゆかりの深い函館の地で記念大会を開催することに意義がある。函館市民に啄木をさらに知ってもらうとともに、国際的な評価を高めたい」と話している。

 同学会は1989年の設立で、会員は国内外に200人以上いる。函館での大会は93年の第4回大会以来で、海外でも台湾や韓国などのほか、2007年にインドネシア、昨年はインドで開いた。今年は9月5―7日の3日間、函館で開催する。

 今大会のテーマは「21世紀に対話する石川啄木(仮題)」で、節目の年に『国際詩人』としての啄木を広く世界に普及させていく契機とする。

 5日はホテル函館ロイヤルで創立20周年記念大会を開催。市民向けのイベントで、新井満さんが啄木の魅力について講演し、同学会発行の書籍や会員の著作物などを廉価で提供するバザーを開く。

 函館の高校生を対象に好きな啄木の短歌を選んでもらったり、自作の短歌を出してもらう企画も検討している。「学会には著名な歌人もいることから、選歌してもらい表彰することなどができれば。広く多くの人に啄木の魅力を伝えたい」と太田会長は語る。

 6日は函館市中央図書館視聴覚ホールで研究発表とシンポジウムを予定。啄木をどう普遍化、継承していくかが求められており、シンポジウムは「21世紀における啄木研究の現在と課題」を仮題にしている。7日は文学散歩で、市内の啄木ゆかりの跡を訪ねる。住んでいた青柳町や大森浜の歌碑、立待岬や一族の墓など、啄木にかかわりの深い風土に親しむ。

 太田会長は「啄木が函館に滞在したのは4カ月余りだが、思想的にも難しい時期。文学を志しながら生活の糧に代用教員を務め、文学者から生活者へのはざまの中でうごめいていた。のちに札幌や小樽、釧路と渡り歩くが、1年間の北海道生活の苦しみがあったからこそ、のちの成長があった。その原点が函館にある」と説明する。

 学会の成功に向け、地元函館で人脈を生かして大会準備を進めている、日本近代文学会会員で啄木研究家の桜井健治さん(61)は「全国から集まる研究者や市民の皆さんが、啄木第二のふるさとで熱い論議を交わし、21世紀に啄木の業績や評価をどうとらえ、検証していくかを探る機会にしたい」と話している。(高柳 謙)

 石川啄木(いしかわ・たくぼく) 1886年2月、岩手県日戸村(現盛岡市)生まれ。文学を志して1902年、東京へ。07(明治40)年5月、義兄を頼って単身で函館に到着。函館商業会議所臨時雇いを経て函館区立弥生小学校の代用教員となる。8月には代用教員を務めながら函館日日新聞の記者となる。同月25日夜の大火で罹災し、函館を離れて道内を転々とする生活へ。函館滞在は130日余りで、小樽日報や当時の釧路新聞記者を務め、08年に再び上京。森鴎外、正宗白鳥、嶋崎藤村、夏目漱石などを訪ね、10年12月に「一握の砂」を刊行。肺結核を患い、12(明治45)年4月、27歳で没。



◎【企画】改善への道-経営見直す市立函館病院・下
 看護師増やし患者確保

 函館市病院事業改革プラン策定懇話会の報告では、内部努力による経費削減と並び、看護師増員の必要性を強調している。診療報酬面で利益が大きい「7対1看護」を維持しながら患者を増やすためには、看護師の増員が不可欠だからだ。

 看護師募集に当たり市病院局は、道内他地域や道外の看護学校にも声を掛けており、昨年11月からは対象を九州方面などにも拡大した。しかしもっとも望ましいのは、市立函館病院に併設する市立函館病院高等看護学院(学院長・吉川修身同病院長)の人材。この確保が当面の大きな課題となっている。

 市立病院は条例により正職員にできる看護師の人数に限りがある。2006年度までは現在より定数が少なかったことなどから、意識的に採用人数が抑えられていた。同局経理課の藤田公美課長は「採用したくともできない時代があった」と説明する。

 同学院の田中隆志副学院長は「これまで採用する人数が少なく、学生にも簡単に就職を勧められないでいた」と実情を明かす。その上で「採用枠が広がっても、これまで道外に就職した学生とのつながりがあって勧誘されるため、急には就職者を拡大できないだろう」とみる。

 田中副学院長によると、学生は卒業後、経験と実績の積み上げを目指して教育体制がしっかりしている病院を選ぶ傾向にある。「受け入れる人数が多い首都圏の方が考え方が進んでおり、好条件にある」と言い、新卒学生に対する病院の受け入れ体制充実の必要性を説く。さらに「未知の病院へのあこがれもあるうえ、学生時代に内部の状況を知っている実習病院(函病)は採用の面ではかなり不利になる」とジレンマを抱え市立病院が他の病院よりも高いレベルが求められる難しい立場にある状況を指摘する。

 同病院は06年度から看護師募集に力を入れ、市立病院に勤務する卒業生を同学院に訪問させている。看護婦の質も、田中副学院長が「市立函館病院の看護師の評判が昨年11月ごろから極めて高くなっている」と話すように市内の医療関係者の評価は高い。

 改革プランに盛り込まれた対策でも、材料費の圧縮や院内保育所の24時間化、クレジットカードによる支払いシステム導入など、可能なことは本年度から随時取り組んでいる。藤田課長は「何とかしなければいけないという意識が職員にも根付いているようだ」と語る。劇的な経営改善は難しいとしても、医師、看護師、事務職員が一体となった意識改革が進んでいる。地域医療の中核としての役割と責任を担いながら収支の改善を図る―。公市立病院の努力はこれからが本番だ。(小泉まや)



◎威勢よく初せり…中央、水産物地方卸売市場

 函館市が開設する中央卸売市場(西桔梗町589)と水産物地方卸売市場(豊川町27)で5日、初せりが行われた。夜明け前から場内に新鮮な生産物が運び込まれ、威勢の良い掛け声とともにスタート。景気悪化による消費低迷が懸念される中、関係者は今年1年の業界の繁栄と活況を願った。

 ○…中央卸売市場は、4月に市場取引で規制緩和などの利点がある青果物地方市場に転換することから、中央卸売市場としては最後の初せり式となり、卸業者や買受人ら約150人が出席した。

 西尾正範市長は「南北海道の物流拠点として新しい時代のニーズに対応し、生産者や消費者に信頼、期待される市場になるよう、みんなで力を合わせて冬の時代を乗り切っていきたい」とあいさつ。函館青果物商業協同組合の川崎正博理事長の発声で三本締めをして、1年の商売繁盛に気持ちを新たにした。

 この日の競りでは、野菜66・1トン、果物24・6トンが入荷。野菜はダイコンやニンジン、果物はリンゴやミカンなどが中心で、同市場によると、価格は例年並みだという。(浜田孝輔)

 ○…水産物地方卸売市場には戸井や江差のタラ、函館近海のヤリイカ、ホッケ、ゴッコ、カレイ類、青森沖のソイなどがずらりと並んだ。

 生産者や卸業者、買受人ら約300人を前に、開設者の谷沢広副市長が「漁獲減少や魚価の低迷、燃油高騰など取り巻く情勢は厳しいが、地域住民に安心・安全な水産物を供給するため引き続きご協力を」とあいさつした。

 卸業者の函館魚市場、松山征史社長が「質の高いサービスと地域密着型で安定的に供給し、市場の発展に尽くしたい」と述べ、手締めをした。祭壇に並んだ縁起物のタイ、メジ(マグロ)、ブリの3点が「10万両(円)」「8万両」などの値段で競り落とされた。

 入荷は22トン。函館魚市場は「しけの影響で昨年より入荷が少ないが、いい品がそろった。煮ダコが極端に少なく、マイカはこの時期でも網に入っている」と話していた。(高柳 謙)


◎ウシ元気に大空を舞う…梅谷さん、恒例たこ揚げ

 函館市山の手3の創作凧研究所「創作凧治工房」を主宰する梅谷利治さん(79)は5日、同市大町の緑の島で新春恒例のたこ揚げをした。干支(えと)の丑(うし)にちなみ、獅子舞ならぬ「ウシ舞」をイメージした「笑福天牛」や龍、函館の名物イカの連たこなどが強い風を受け、青空を舞った。

 元函館東高校美術教諭時代の教え子など約50人が駆け付け、たこ揚げに参加した。函館港に水族館を作ろうと、イカのほか多幸(たこう)を現すタコの連たこも登場。中には「このたこのように景気が上昇しますように」と願いながらたこ糸を引っ張った人も見られた。

 ウシの連たこは12個の連結を予定していたが、強風で糸が切れる恐れがあるため7個にした。笑顔の“7藤”は本物の獅子舞のように空を跳ね回っていた。梅谷さんは「いずれも良く揚がってくれた。教え子たちが手伝ってくれ、一緒に揚げてくれるのは教師として幸せ」と話していた。(山崎純一)