2009年1月8日(木)掲載

◎市内6カ所で放火か…不審車に警官発砲 公務執行妨害で男逮捕

 7日未明から早朝にかけ、函館市本町10の飲食店ビル「第3セイコービル」など同市内6カ所で相次いで火災が発生、同ビル内にいた女性(18)が3階から転落して腰の骨を折るなど、男女計20人が重軽傷を負った。函館中央署などは連続放火事件とみて捜査。同市内で不審な軽乗用車を発見し、停止命令に従わなかったため、同署巡査長が車両右前輪に向けて拳銃1発を発砲、住所、職業不詳の男(42)を取り押さえ、公務執行妨害と道交法違反(無免許運転)の現行犯で逮捕した。軽乗用車内からは灯油のポリタンクが見つかっており、同署で調べを進めている。

 同署や市消防本部によると、同日午前3時35分ごろ、同市中道2のコンビニエンスストア店舗裏側で同店男性従業員の乗用車が燃え、近くの5階建てマンションでも部屋の玄関ドアを焼くぼやがあった。同5時20分すぎには本町の飲食店ビルの火災が発生、救助や消火作業中の同5時50分ごろに、若松町24の店舗兼住宅や飲食店など3件でもシャッターや外壁が焼けた。若松町の現場付近では灯油のようなものがまかれた痕跡があったという。

 同署は最初の火災の出火直前、同コンビニ店員ともめ事を起こしていたことや、この男の知人宅が火災の被害に遭っていたことから、男が何らかの事情を知っているとみて行方を追い、同7時ごろ、同市万代町7の国道5号交差点付近で不審な軽乗用車を発見、複数の警察車両で追跡した。

 不審車両はそのまま本町方向に逃げ、同7時17分ごろ、元町12の元町公園前で、車両を停止させようとした同署地域課の男性巡査長(32)が発砲。銃弾は右前輪に命中したが、同車両はさらに逃走。同7時27分ごろ、若松町12の函館朝市周辺で追跡中のパトカーが体当たりで同車両を停止させ、男の身柄を取り押さえた。

 20人の負傷者を出した飲食店ビルは鉄筋コンクリート造地上5階、地下1階の延べ約1784平方メートルで、3階スナック入り口付近から出火。骨折した女性や煙を吸うなどした18―39歳の17人が同市内の病院4カ所に搬送され、さらに3人が病院で診察を受けたという。

 男からは逮捕当時、酒のにおいがしたといい、調べに対し、「(逮捕容疑は)認められない」と容疑を否認。同署は8日午後にも函館地検に送致する方針で、今後、現住建造物等放火などの疑いでも捜査を進める。

 発砲について、同署の斉藤智昭副署長は「現時点では、職務を完遂するための正当な拳銃使用であると判断している」とコメントした。  



◎怒号、泣き声交錯…函館連続火災

 張り詰めた緊張感が早朝の函館市内を襲った。7日未明から市内で相次いで発生した放火とみられる連続火災。20人が負傷した飲食店ビルの火災現場では、凍てつく寒さの中、店舗関係者や付近住民らの怒号と泣き声などが交錯した。不審車両を追うパトカーや消防車のけたたましいサイレンが鳴り響き、正月気分が残る街は一転、強い不安と衝撃に包まれた。

 市消防本部によると、連続火災の3番目の現場となった「第3セイコービル」には、昨年末の調査で19店舗が入居。消防隊員による懸命の消火や救助活動が続けられた午前5時40分すぎには、ビルに取り残された若い男女の悲痛な叫び声が飛び交った。近くに住む女性(60)は「黒煙が辺り一帯に漂っていた。『早く助けに行けよ』などと怒鳴る声が聞こえた。こんな事件が起こるなんて怖い」と不安気な表情で話した。

 同日午後4時すぎには、同ビルに入居する経営者や従業員が店舗の状況を確認するため次々と出入りしていた。出火場所と同じ3階で店を経営する女性(56)は「3階は通路の壁、エレベーター、店のドアも真っ黒になっていた」と疲れた様子。

 逮捕された男の乗る不審車両を追う警察車両も、早朝の市内を駆け抜けた。市内の男性(31)は午前7時過ぎ、新川町付近で高砂通りを本町方向から函館山方向に向かう白い軽乗用車とパトカーを目撃。「道路を横断しようとしたら、暴走気味の軽乗用車にはねられそうになった。若松広路周辺には複数の覆面パトカーがいた。明け方の消防車のサイレンには気付いていたが…」と話した。

 約6キロの追跡劇の末に逮捕現場となったのは函館朝市周辺。普段は荷下ろし作業をする人や車両の行き来が多い時間帯でもあり、目の前で繰り広げられた大捕物に周辺は一時、騒然となったという。近くの店舗の男性(32)によると、警察車両が不審車両に追突して動きを止めると、複数の捜査員らが車の上に乗り、フロントガラスを割るなどして、男の身柄を押さえたという。別の男性(42)は「犯人が暴れるように騒いでいた。映画のワンシーンのような非日常的な光景だった」と興奮気味に話した。

 また、発砲現場の基坂では、元町公園を囲うように黄色い非常線が張り巡らされた。異国情緒あふれる観光名所もこの日だけは、頻繁に無線のやり取りをする警察官らの姿で異様な空気に包まれた。捜査員らは午前9時半ごろからバスに乗り続々と現場に到着。同公園入り口付近や園内、旧イギリス領事館敷地内などを丹念に調べていた。付近の住民や観光客は、一様に不安気な表情を見せながら、非常線の奥を注視。「何が起こったのか」「この道は通れないのか」などと言いながら、足早に現場を立ち去る姿も目立った。 .



◎グルメシティ五稜郭店閉店…5月末 

 ダイエーグループの食品スーパー、グルメシティ北海道(函館市湯川町3、丸橋淳一社長)は7日までに、グルメシティ五稜郭店(同市本町24)を5月末で閉店することを決めた。競合による業績不振や建物の老朽化が要因。同店は道南最大の繁華街・本町地区の中心にある核店舗の一つで、関係者は市街地の空洞化や地域全体の地盤沈下を懸念している。

 同店は地場スーパーの「ホリタ」の中核店舗として1970年に開業。90年にはホリタとボーニストアが合併し、「函館ダイエー」が発足。その後はダイエーグループの再編に伴い、93年に「北海道スーパーマーケットダイエー」、2006年3月から「グルメシティ北海道」の店舗となった。

 同店は地上7階、地下1階のテナントビルに入居。100円ショップや眼鏡店などのテナントも含め売り場面積は約8000平方メートル。正社員約20人やパート従業員約100人の処遇については、他店舗への配置転換や再就職のあっせんなど今後、労使間交渉を進めるという。

 同社は6月下旬で賃貸契約が切れるのを機に閉店を決断し、従業員や各テナントには昨年12月末までに報告済みとしている。同社は「競争激化で売り上げが年々落ち込み、今後も回復の見込みが立たないと判断した」と説明。年間売上高は1998年2月期の約27億7000万円をピークに減少を続け、2007年2月期には約18億円まで落ち込んでいた。

 本町・五稜郭地区の商店約120社でつくる「五稜郭商店街振興組合」の中里好之専務理事は「数年前の西武百貨店の撤退に次ぐショックで、函館最大の商店街全体の活気が低下しかねない」と危惧(きぐ)し、同地区の事業主約30社が加盟する「協同組合五稜郭」の久保一夫理事長は「行政も含めた地域全体で、まちづくりの観点から後継テナントの誘致に動かなければ」と話す。

 週3回は同店を利用する市内の元学校教諭の女性(78)は「洋服は丸井さん、食料品や日用品はグルメシティと、これまで使い分けてきたのに残念。企業は利益追求だけでなく、社会的責任も考えてほしい」と指摘。市商業振興課は「丸井今井函館店と双へきで地域の商圏を盛り上げてきただけに影響は大きい。できれば今までと同じような商業施設として新たな店舗運営を望みたい」としている。(森健太郎)


◎ロシアから足環付きシメ…七飯で発見 国内初の確認

 【七飯】ロシアの足環が付いた野鳥のシメ(スズメ目アトリ科)が6日、七飯町本町の民家で見つかった。窓に激突し、即死状態だったシメの足に鳥類標識調査の目印となる環があるのに気付いた住民が町に通報。足環には「TA64510 MOSKVA」と刻まれ、ロシア国内で放鳥されたことが判明した。山階鳥類研究所(千葉県)によると、国外で放されたシメが日本国内で確認されたのは初めてで、「シメの標識個体は少なく画期的なケース」としている。

 シメはユーラシア大陸からヨーロッパ大陸にかけて広く生息し、国内では北海道から九州まで分布し、道内では留鳥として知られている。

 今回、回収されたシメは体長約17センチで、雄の成鳥とみられる。窓に映った林を目がけて衝突したらしい。町職員が到着後も近くにシメの群れがいたという。同研究所が足環の文字から調べた結果、2008年9月14日、同町から約1800キロ離れたカムチャツカ半島南端で、日本とロシアの研究者が現地のシメを放鳥したことが分かった。

 同研究所は「秋にカムチャツカで付けた足環が冬に北海道で見つかったことで、道内では1年中見られていたシメの中に、ロシアのシメが南下して越冬しているケースも考えられる」と分析。留鳥ではない可能性も秘めていると指摘し、シメ研究の新たな一歩になり得るとしている。

 同研究所は近く、ロシアの研究所に照会し、さらなる研究を進める。(笠原郁実)


◎景気悪化 工場誘致交渉を中断…自動車メーカー関連会社と

 【江差】自動車産業を中心とする景気悪化の余波を受け、江差町では道外の大手自動車メーカーの関連会社と進めていた工場誘致の交渉が中断を余儀なくされたことが7日までに分かった。

 濱谷一治江差町長が明らかにした。町は昨年から中京圏に基盤を置く大手自動車メーカーの関連会社と工場誘致をめぐる交渉を開始。当初は自動車産業の順調な伸びを背景に企業側も町内進出に前向きな意向を示し、濱谷町長や担当職員らがたびたび企業を訪れ、誘致に向けた詰めの協議を進めていた。

 ところが、昨秋以降は一転して、米国発の金融危機に端を発した世界的な自動車産業の不振で、自動車メーカーではグループ全体で、工場の操業停止や派遣労働者の雇用契約打ち切りといった事態に直面。関連会社でも新たな設備投資が困難な状況に陥り、これまでの誘致交渉を凍結する方針を町に示したという。

 道は支庁制度改革に伴い、檜山支庁の統廃合を検討。計画では120人程度の職員削減が見込まれている。このため、長期的には人員や組織機構の縮小が避けられない官公庁に依存せず、過疎化の抑制や地域経済の維持、雇用確保を図る上で、支庁に代わる新たな企業誘致策に期待が集まっていた。

 濱谷町長は「何とか地域に活力を与える方法をと検討してきたが残念な結果となった。企業からは『江差町とは長いお付き合いをさせて欲しい』との言葉をもらった。良好な関係が築けているので望みは捨てていない」とし、将来的な景気回復に期待をつないでいる。(松浦 純)


◎次代に残したい 町並みを写そう…「ふるさと写真コン」作品募集

 函館の歴史的風土を守る会(落合治彦会長)は31日まで、道南の小・中学生を対象にした写真公募展「第6回ふるさと写真コンクール」の応募作品を募っている。落合会長(73)は「歴史的町並みを次代に引き継ぎたい。参加した子に関心を持ってもらえたら」と期待している。

 同会は1978年に発足。建造物や町並みの歴史、貴重性、景観への寄与を評価する顕彰制度「歴風文化賞」を創設するなど、函館に数多く残っている文化遺産や歴史的町並みの保存に向けた活動を展開してきた。こうした活動の一環で、子どもたちの関心を高め、郷土愛をはぐくむ目的で公募展を実施している。

 被写体は道南にある文化遺産、歴史的建造物、風景、電車など。好きな場所で写真を撮り、楽しみながらそのまちの魅力を再発見してもらう。

 写真の大きさは2LL判(縦約12.7センチ、横17.8センチ)で、パノラマは不可。写真の裏に作品名と氏名、学年を記入した紙を張り付け、連絡先を明記して郵送する。31日必着。作品は未発表のものに限る。版権は同会に属し、広報活動などに使用されるため、返却はしない。

 2月上旬に応募作品の中から金、銀、銅賞、特別賞、佳作を選考する。同14―18日に写真展、同15日午後1時から表彰式をJR函館駅2階の多目的ホール「イカすホール」で開催する。3月上旬には市電の車内にも写真を展示する予定。応募先は〒040―0001 函館市五稜郭町43の9 五稜郭タワー事務所内 函館歴史的風土を守る会。問い合わせは五稜郭タワー事務所TEL0138・51・4785。(宮木佳奈美)


◎函館演劇鑑賞会 今年の例会演目決定

 函館演劇鑑賞会(青木路夫代表幹事)の今年の例会作品が決まった。浅田次郎さんの小説が原作のミュージカル「天切り松~人情闇がたり」(2月26、27日)で幕開けし、原作本が話題になった「佐賀のがばいばあちゃん」「博士の愛した数式」や狂言など、多彩なラインアップ6作品を予定している。

 同会は会員制で観劇する非営利団体。今年で創立38年を迎え、現在会員は約1200人を数える。月額会費は大人2500円、学生1000円、中学・高校生は500円。入会金は一律1000円。

 今年第1弾となる2月の舞台「天切り松~人情闇がたり」は、大正時代、義理や人情に命を懸けた粋でいなせな怪盗たちの活躍を描いている。主演は左とん平さん。水谷龍二さんが脚本、鵜山仁さんが演出を手掛け、東京の劇団「イッツフォーリーズ」の団員らが出演する。函館市芸術ホール(五稜郭町37)で26日午後6時45分、27日同1時半から上演する。

 同会の鈴木順子事務局長は「生の人間が演じる演劇はエネルギーがもらえるはず。今年は地元出身の阿知波悟美さんの出演作や狂言など幅広いジャンルをそろえ、本やドラマで人気の作品がどう舞台化されているかも楽しんでほしい」と呼び掛けている。

 問い合わせ、申し込みは同会TEL0138・51・7376(平日午前10時―午後6時半)。

 このほかの演目は▽4月「佐賀のがばいばあちゃん」(13日午後6時45分、14日同1時半、阿知波悟美さんら出演)▽6月「茂山千五郎

 狂言」(26日午後7時、茂山千五郎家一門出演)▽7月「博士の愛した数式」(24日午後7時、25日同2時、湯本弘美さんら出演)▽9月「天国までの百マイル」(1日午後6時45分、2日同1時半、佐々木愛さんら出演)▽11月「エンバース~燃え尽きぬものら」(29日午後6時45分、30日同1時半、長塚京三さんら出演)。(新目七恵)