2009年1月9日(金)掲載

◎鴎亭の恩師への手紙発見

 松前郡雨垂石村(現・松前町静浦)出身で日本を代表する書家の一人、金子鴎亭(1906―2001年)が、書家を目指すきっかけを与えたとされる恩師に送った手紙が初めて見つかった。収蔵している道立函館美術館(函館市五稜郭町)は「一人の人間としての鴎亭を知る貴重な資料」として、今後公開することも検討している。

 この恩師は尋常小学校時代の故飯田吉次郎教諭。2006年度の同美術館特別展「生誕100年記念金子鴎亭の書」の開催を機に、飯田さんの形見として手紙を譲り受けた知人(北斗市在住)が同美術館に寄贈した。

 手紙の日付は1970年5月17日。鴎亭が住まいのある東京から飯田さんが当時住んでいた旧大野町(現・北斗市)に送付した。鴎亭が揮毫(きごう)した松前城碑の除幕式に飯田さんが出席したことに対し、「光栄 御厚意千萬」などと謝意を伝える文字が縦20センチ、横69センチの画仙紙に草書体でつづられている。

 飯田さんと鴎亭との出会いは1916(大正5)年。飯田さんは鴎亭が小学4年生の時の担任だった。飯田さんは習字の時間に、鴎亭の作品を「甲の上上」と最高の評価を付けた。この時の喜びが原動力となり、鴎亭が書家の道を歩むきっかけになったといわれている。

 鴎亭が母校の松前大島小学校(当時は江良小学校)に寄贈した書「学書の萌芽」などで、後に「今でも筆を取るたびに江良小学校時代の絵のように美しい思い出に浸っている」と当時を振り返っている。

 飯田さんは教え子の鴎亭を誇りに思い、この手紙を額に入れて掲げ、大切にしていたという。「金子鴎亭―近代詩文書の開拓者」を著した同美術館の齊藤千鶴子学芸員は「鴎亭が書いた手紙は数多くあるが、飯田さんへの手紙が出てきたのは初めて。機会を見て公開できれば」と話している。(宮木佳奈美)  



◎障害者が暮らしやすいマチに…25日に市民主体でタウンミーティング

  障害児・者の差別や偏見などの諸問題を解消し、暮らしやすい環境を整えるための道条例の制定に向け、道南の障害者団体や当事者らでつくる「道障がいがあっても暮らしやすい街づくりをめざして条例を作ろう開催実行委員会」(能登正勝実行委員長)が25日午後1時半から、市民が意見や要望を出し合うタウンミーティングを函館市総合福祉センター(若松町)で開く。

 条例は道議会の自民、民主両会派ごとにそれぞれプロジェクトチームを構成して原案を作成し、制定を目指している。2月の定例道議会への提案に向け、昨年は道内各地で道議有志による意見交換会が開かれた。能登実行委員長は「市民レベルでの開催は今回初めて。当事者ら市民の意見を反映させた条例にするため、皆さんの声を届けたい」と一般市民に参加を呼び掛けている。

 午後1時50分から出席者全員がグループ討論で条例に関する意見や要望、疑問点などを出し合う。続いて午後2時40分から、道議や道保健福祉部職員、弁護士を交えたパネルディスカッションで、グループ討論で出た意見や質問などをまとめる。このほか、DPI(障害者インターナショナル)北海道ブロック会議の西村正樹議長の基調報告(午後1時35分から)、市内の男性ユニット「りぼん」による「条例を作ろう!」応援ミニコンサート(午後2時半から)も行われる。

 会場には要約筆記、手話通訳を配備する。参加無料。申し込み、問い合わせは実行委事務局(全国精神障がい者地域生活支援センター内)TEL0138・51・0026、ファクス同51・0044。(宮木佳奈美) .



◎IT人材育成プロジェクト 3期生募集

 【乙部】乙部町が2007年度に開始した「IT(情報技術)人材育成プロジェクト」が今春で3年目に入る。町は4月に研修をスタートする第3期生を23日まで募集する。景気悪化に伴う就職難や企業による採用内定の取り消しなどが相次いでいることを受け、町企画室では「このような時代だからこそ技術を身に付け、希望する職業に就職できるよう努力してほしい」とし、町内外からの幅広い応募を呼び掛けている。

 同プロジェクトはプログラマーなどIT技術者の養成研修を通じて、企業誘致や雇用開拓を進める町独自の取り組み。昨年度は卒業生の受け皿となるIT企業が町内に進出した。本年度も昨年4月から第2期生が研修を受けている。

 研修は前期(4―9月)、後期(10―翌年2月)の2期制。前期はプログラム開発に必要な基礎・実技研修を行う。函館市のIT企業・グローバル・コミュニケーションズの有料研修となり、受講料は1カ月7万3500円。

 後期研修は①業務系システム開発②記憶装置へのソフト組み込みや回路設計―の2コースを設定。同協議会が厚生労働省の委託事業として行うため受講料は不要。前・後期を通じ、農漁業体験、芸術研修、住民交流といった独自の研修プログラムにも取り組んでいる。

 町は町内就職を条件に人材育成研修奨励金を交付する。町外からの受講者には宿泊施設(有料、定員5人)も用意している。定員16人。IT業界の経験、学歴、性別は不問。応募方法などの問い合わせは町企画室TEL0139・62・2311へ。(松浦 純)


◎メタボ健診、目標の半分…函館市

 法改正に伴い、函館市が本年度から40歳以上の国民健康保険加入者に実施しているメタボリック症候群(内臓脂肪症候群)に関する健康診査(メタボ健診)の受診率が低い。本年度の目標25%に対し、昨年11月末の受診率は12・7%と半分程度。市国保年金課は「健康増進と疾病予防を図る健診なのでぜひ診断を受けて」と呼び掛けている。

 医療費が増す大きな要因として、糖尿病や高血圧、肥満症などの生活習慣病の増加がある。生活習慣病はメタボに起因することが多いため、国は各医療保険者にメタボ健診を義務付けた。市は自営業などの国保加入者に無料で実施している。対象は40―74歳で、75歳以上は希望に応じて受診できる。

 検査項目は問診、身長・体重・腹囲などの計測、診察、血圧測定、尿検査、血液検査などで、医師の判断で心電図や眼底検査を行う。市総合保健センター(五稜郭町23)や函館市医師会健診検査センター(湯川町3)と、市内137の医療機関で受診できる。健診結果でメタボ対象者には保健師による生活習慣改善の指導や支援が受けられる。

 市は健診事業を市医師会に委託し、同5月に対象者へ受診券を郵送した。受診券を紛失した市民には券を再発行するなど柔軟に対応しているほか、受診券がなくても受診できるよう医師会と対応を協議している。

 11月末時点の受診状況は、対象者5万6816人に対して7230人。40代は5―6%台と最も低く、最も高い65―69歳でも16・46%。市の本年度の目標は25%で、毎年10%ずつ向上させ、12年度には国が設定している目標値65%を目指している。健診や受診機関の問い合わせは市国保年金課32・2215、75歳以上は市医療助成課TEL21・3185。(高柳 謙)


◎郷土凧など30点展示…旭ケ岡の家に秋山さん寄贈

 函館市内に住む「はこだて日本の凧(たこ)の会」事務局長の秋山修正さん(79)がこのほど、全国から集めた郷土凧など約30点を同市旭岡町87の特別養護老人ホーム「旭ケ岡の家」(後藤隆博施設長)に寄贈した。幸福や長寿を願った絵凧、文字凧が中心で、同ホームの画廊に展示されている。

 秋山さんは元中学校校長で、約40年前に出張先の東京で見かけた「土佐凧」の絵柄に感銘を受け、和凧を集めるようになった。35年前からは同会の創立者、故・太田比古象さんに師事し、凧づくりを始めた。同ホームでボランティアをしていた妻愛子さん(故人)を通じて同ホーム創設者のフィリップ・グロードさん(81)と知り合い、毎年新年を祝う「寿賀凧」を貸し出している。今回は昨秋の叙勲で瑞宝双光章を受けたグロードさんへのお祝いを兼ねて贈ったという。

 画廊には「大漁」と書かれたイカ型の自作の凧、幸福を願う「万福寿長」の4文字が書かれた東京の「江戸角凧」、害虫駆除の伝統行事に登場する色鮮やかな竜が目を引く青森の「五所川原凧」などが並ぶ。秋山さんは「全国にさまざまな凧があることを知ってほしい」と話している。午前9時―午後5時。一般市民も自由に観賞できる。(長内 健)


◎「A/PART」映画化…イルミナシオンのシナリオ大賞 04年準グランプリ

 函館港イルミナシオン映画祭(実行委主催)のシナリオ大賞で、2004年に準グランプリに選ばれた脚本「A/PART(アパート)」が映画化された。主演はアイドルグループV6の岡田准一さんと女優の麻生久美子さん。同賞の脚本が映画、映像化されたのは10本目。初夏から全国公開される。0ァ40ィ(新目七恵)

 同映画祭は、市民有志の実行委員会(米田哲平委員長)が毎年12月に開催。シナリオ大賞は函館から映画や人材を発掘、発信しようと96年度から実施している。04年には長編部門に217本の応募作が寄せられ、グランプリの「あたしが産卵する日」も08年に田中誠監督の「うた魂♪」として映画化された。

 「A/PART」の作者は東京在住の脚本家まなべゆきこさん。作品は、都会のアパートで隣に住む顔を合わせたことのない男女が、人生の岐路や仕事に悩みながら、壁越しに聞こえる音で心を通わせるラブストーリー。映画題は「おと・な・り」と変わり、監督は「ニライカナイからの手紙」の熊澤尚人さんが務めた。

 撮影は昨年11―12月に行われ、2月下旬に完成する予定。

 まなべさんにとって単独のオリジナル長編作品の映画化は初めて。「入賞が映画化のきっかけになり、映画祭に感謝している。本当にうれしい。いつか函館を舞台に脚本を作りたい」と話している。米田委員長も「記念すべき映画化10作目が映画祭15年目の節目とも重なり、この上ない喜び。早く観たいし、次回映画祭でぜひ上映したい」と喜んでいる。


◎小切手の仕組み分かった!…法務局親子体験会

 冬休み中の小学生と保護者を対象にした函館地方法務局(横山和幸局長)の「法務局親子体験会」が8日、函館市新川町の函館地方合同庁舎で開かれた。親子10組が参加し、登記業務に必要な土地の測量や、供託金を受け取る際に使用する小切手の仕組みなどを学んだ。

 生活に身近なさまざまな業務を取り扱う法務局について、子どもたちにも分かりやすく知ってもらおうと今回初めて企画。同局の人権擁護課や戸籍課などの職員が講師を務めた。

 供託課のコーナーでは、大家と借家人の家賃の支払いをめぐるトラブルを例に、供託されたお金は銀行に預ける仕組みを学んだ後、そのお金を受け取るために必要な小切手発行の手順を体験した。子どもたちは小切手を渡す相手を同伴する母親にして、好きな金額を設定。実際にチェックライターと呼ばれる機械を操作して、模擬小切手を発行した。中には10けた以上の数字を書き込む子もいて、「本当だったらいいのに」などと母親を喜ばせていた。

 参加した道教大附属函館小3年の熊谷弐胡君(8)は「名前に使えない漢字があることなどを知った。いろいろな仕事があって楽しかった」と話していた。(今井正一)