2009年2月11日(水)掲載

◎一般会計1248億円、5年ぶり増加…函館市09年度予算案

 函館市は10日、2009年度予算案を発表した。一般会計の総額は1248億2400万円で、本年度当初比2・0%増加した。当初予算の増加は04年度以来5年ぶり。経済・雇用対策や人材育成事業のほか、生活保護費など扶助費の伸びが影響しており、西尾正範市長は「今の経済状況を考え積極的に積み上げた結果」と述べた。27日開会予定の市議会第1回定例会に提案する。

 国民健康保険事業など10特別会計と、病院事業など5企業会計を合わせた総額は同1・4%減の2460億2800万円。

 一般会計の歳入では、市税が同2・1%減の333億1500万円。原油高騰の影響や景気低迷などで法人市民税や、たばこ税の減収を見込んでいる。

 普通交付税は同0・3%増の314億6100万円。交付税の不足分を起債(借金)で賄える臨時財政対策債は同55・3%増の36億7700万円を盛り込んだ。

 歳出は、行財政改革による職員数の削減により人件費が同3・3%減の235億6600万円。扶助費は生活保護費増などが影響し、同1・6%増の308億4500万円となった。借金返済に当たる公債費は、借り換えなどで同4・5%増の150億4700万円。

 事業費は、恵山コミュニティセンター整備事業や椴法華中学校学校給食共同調理場整備など大規模事業実施のため、同12・3%増の105億3500万円を計上。開港150周年記念事業は、関連分を含め1億6000万円支出する。

 緊急地域経済活性化対策としては、農業・漁業用機械等購入資金貸付枠の拡大や、公共事業の緊急対策などに6億円を見込んだ。うち地域求職者の緊急雇用経費では、市の臨時職員として50人を半年間雇用するため4540万円を盛り込んだ。

 新規事業では、旧市立函館図書館と公民館の活用に向けた耐震診断調査と市民懇話会開催経費として、図書館1400万円、公民館1560万円を計上した。学校施設アスベスト除去工事のためには、小中学校9校分で2億9000万円が必要。百貨店等支援調査費に100万円を、合併4地域の支所長裁量で住民要望に対応する地域コミュニティ推進経費に400万円を計上する。

 教育関連では、私立学校の運営助成費を生徒1人当たり1000円、同専修学校の運営助成費を同2000円増額。市立学校長の裁量で使える「知恵の予算」を継続する。妊産婦検診の助成回数はこれまでの3回を14回に増やし、1億3577万円見込んだ。(小泉まや)



◎交付税増で財源確保 ハード、ソフト両面に配分

 疲弊する地域経済を下支えする建設事業費が大幅に伸び、観光振興や保健・医療・福祉などのソフト面でも新規事業が増えた。一般会計の建設事業費は本年度当初予算比で12・3%増の105億3500万円。09年度に着工する事業が多かったこともあるが、市財政課は「交付税収入の増加が見込まれなければ、着工の先送りも考えられた」と語る。

 本年度は大型施設の最終設計が多く、同課によると縄文文化交流センターや恵山コミュニティーセンター、東消防署戸井出張所整備など6件で1億3000万円の設計費を積んだ。そして新年度は6件のほとんどが着工し、事業費が16億円に膨らんだ。

 09年度の交付税収入は、昨年夏の段階で10億円程度の減額が予測された。しかし国の方針転換もあり、その後に示された国全体のフレームでは15%増となり、市も臨時財政対策債を含む交付税全体の額を15億円増の365億円とした。

 10億減か、15億円増か。函館市は歳入に占める交付税の割合が類似団体の2倍以上あるため、この差は非常に大きい。西尾市長も「地方の行政需要を国が見てくれた」と安堵(あんど)した。

 通常の建設事業が確保された中で、経済・雇用対策として別枠で6億円を計上。臨時市議会に提出する本年度補正予算と合わせ15億円の財政出動になる。

 補正予算では小規模な公共工事の前倒し発注に7億円などを予定している。さらに実施する新年度の6億円は、道路整備などのハード事業に3億円、臨時職員の採用などのソフト事業に3億円を配分した。

 西尾市長は「地域経済に元気を与えるのは公共事業。ハード事業はもちろんだが、特別支援教育の充実や妊産婦検診の拡充、私学助成の拡大、自殺予防などソフト事業にも考えられるだけの知恵を絞った」と述べ、ハード、ソフト両面で一定の予算配分ができた感触を伝えた。(高柳 謙)


◎函館商工会議所 旧野村證券ビルに移転…4月「経済センター」オープン

 函館商工会議所(高野洋蔵会頭)は、函館北洋ビル6階にある事務所(函館市若松町15、函館産業会館)を函館市若松町7の野村證券函館支店跡の旧野村證券ビルに移転し、4月13日から「函館経済センター」として業務を開始することを決めた。

 9日に開かれた同会議所の常議員会で正式に決定。現在の事務所がある建物が築40年以上経過し、今後、老朽化に伴う大規模な耐震工事が必要となるため、2007年ごろから移転先の検討を進めていた。同会議所の移転は1967年以来42年ぶり。

 移転先のビルは1975年に建設され、鉄骨造り4階建て延べ床面積約1260平方メートル。1階の事務所スペースが現在より約100平方メートル広くなり、2階に中小企業基盤整備機構函館オフィスがテナントで入居。3階には収容規模100人の会議室などを設ける。

 電車通りに面した北洋ビル南側数十メートル圏内の立地で、野村證券函館支店が昨年9月、本町31に移転するまで営業していた。土地、建物は野村證券グループの不動産管理会社から購入済みで、3月末までに内装やレイアウトの改修工事を行う。

 現在の事務所がある北洋ビル6階フロアは北洋銀行に売却する予定で、これに伴い同じフロアの函館国際貿易センターや中小企業団体中央会も別の施設に移転する。同会議所の古川雅章専務理事は「これまでより分かりやすく、利用しやすくなり、地域サービスの向上が期待される。駅前の活性化にもつなげたい」と話している。(森健太郎)


◎丸井今井函館店存続は「白紙」…社長が市長らと会談

 民事再生手続きに入った道内最大手の百貨店、丸井今井(札幌市)の畑中幸一社長が10日、函館市役所を訪れ、西尾正範市長や函館商工会議所の松本栄一副会頭らと会談した。畑中社長が法的整理に至った経緯を説明したのに対し、市側は存廃に揺れる函館店の存続を強く要請。畑中社長は同店の収益が黒字であることを明かした上で「存続させたい気持ちはあるが、現時点では白紙の段階」と述べるにとどまった。

 この日は畑中社長のほか、菊地敏郎執行役員経営政策部長、金輪浩之函館店店長、代理人の橋本昭夫弁護士らが訪問。市や経済界、地元商店街などでつくる官民合同の対策会議のメンバーらと面会した。

 畑中社長は再生法の適用を申請した理由について、昨年11月以降、主力の婦人衣料を中心に売り上げが前年比15%ほど急速に落ち込んだことを挙げ、「これほど大きく下がったのは40年間勤務して経験がない。ぎりぎりまで逡巡(しゅんじゅん)したが、このままでは債務超過に陥り、自力再建は難しいと判断した」と述べ、陳謝の言葉を繰り返した。

 これに対し、西尾市長は「函館店は中心市街地の核となる店舗であり、地域の経済や精神的な影響は計り知れない。一企業の問題ではなく、社会的責任を果たしてもらいたい」と強調。今後の再生計画に函館店の存続を盛り込むよう求めた要請書を畑中社長に手渡した。

 会談後、畑中社長は記者団の質問に対し「函館店の収益は現在のところ黒字だが、スポンサー企業など第三者の見方も含め(存続するかどうか)より慎重に検討しなければならない」と函館店の存廃問題について明言を避け、「取引先など地域の皆様に多大な迷惑をかけて本当に申し訳ない」と神妙な面持ちで視線を落とした。(森健太郎)