2009年2月14日(土)掲載

◎ガリ版の美しさにひかれ引かれ…道南唯一 新出さん作品作り

 【七飯】七飯町に住む新出誠さん(63)は、昔懐かしい謄写版(ガリ版)を使った作品作りに約40年間取り組んでいる。近年は出身地・江差町の姥神大神宮例大祭の山車や非常勤講師として勤める函館遺愛女子高校周辺の風景などをモチーフとし、友人らに配って喜ばれている。今では道具も手に入りにくく、新出さんは道南で唯一の“ガリ版愛好者”となった。「想像以上に仕上がるとうれしい」と魅力を語っている。

 ガリ版は孔版画の一種。ヤスリの上に置いた原紙に鉄筆などで製版し、ローラーで刷る日本独特の印刷方法だ。約30年前までは学校や官公庁などでよく活用されたが、パソコンなどの普及で姿を消した。

 新出さんが頻繁に使うようになったのは1968年、奥尻町の稲穂小学校に教員として採用されてから。そこで別の学校の教員が作ったガリ版の印刷物を目にし、「見事なゴシック体や濃淡のある挿し絵に魅せられた」という。

 ガリ版の美しさに引かれ、75年に転任した八雲町熊石高校時代には愛好者団体に参加。通信教育も始め、文字のや絵の技法を習得した。ガリ版での手作り年賀状にも凝るようになり、年々工夫を重ねていった。

 2006年に七飯高校を定年退職した後、時間に余裕ができた分、作品づくりにのめり込んだ。15歳から毎年参加するほど愛着のある江差町の同例大祭の13台ある山車を1台ずつ描き、既に7台分が完成した。作品は同級生らに配布し、遠くに住む仲間からも「祭りの雰囲気を思い出して元気になる」と好評を得ているという。

 勤務先の遺愛女子高周辺の美しい風景も題材とし、旧宣教師館(通称・ホワイトハウス)周辺でクロッカスが咲き誇る光景や、サクラ散る本館の様子などを製版。絵はがきも作り、教え子や教員らにプレゼントした。

 作品はどれも多色刷りで色鮮やかに仕上がり、素朴な味わいがある。新出さんは「絵画として目を楽しませるような作品づくりが目標。印刷するのが楽しみで、今後も続けたい」と意気込んでいる。(新目七恵)



◎奥尻町長選17日告示

 【奥尻】任期満了に伴う奥尻町長選(22日投開票)が17日に告示される。これまでに現職の和田良司町長(62)=無所属=と、新人で前町議会議長の新村卓実氏(56)=同=が出馬を表明。2001年以来8年ぶりの選挙戦の構図は、現職と新人による一騎打ちとなることが確実な情勢だ。

 和田氏は同町出身。町立青苗中卒。1963年に町役場入り。水産課長などを経て01年4月、鴈原徹前町長の下で助役に就任したが、任期中の03年1月に退任。町内の社会福祉法人理事や老人ホーム施設長などを経て、05年の前回町長選で無投票当選した。選挙戦では財政再建の実績を掲げ、行財政改革の継続を訴える。

 新村氏は同町出身。千葉商科大卒。1983年に町議に初当選し、町長選出馬に伴い辞職するまで7期務めた。町議会議長は通算4期。07年8月に桧山支庁管内町村議会議長会副会長に就任した。新村氏は公共事業削減や住民サービスの低下を批判。町政の刷新と民間主導による町内経済の活性化を掲げている。

 新村氏の町長選出馬に伴う町議補欠選挙(定数1)も同日告示され、22日に即日開票される。(松浦 純



◎「函館牛乳」関連商品が好調…セブン―イレブン函館地区 17日から「濃厚シュー」新発売

 コンビニエンスストア大手のセブン―イレブン・ジャパン函館地区で、原材料に地場産牛乳を使った商品の売れ行きが好調だ。火付け役は昨年9月に発売したシュークリーム「函館牛乳を使ったシュー」。1店舗当たり一日平均40個が売れる人気商品として定着し、パンやグラタンなど関連商品も登場した。17日からは第2弾となるシュークリームも発売し、地域密着型の商品展開を前面に打ち出している。

 地元でなじみ深い食材を使うことで食の安全・安心をアピールしようと、セブン―イレブン社の函館地区が全国で初めて企画。函館酪農公社(函館市中野町)と提携し、現在、看板ブランドの「函館3・8牛乳」を主原料にしたシュークリームやパン、グラタンなど4品を展開中だ。

 通常の3―5倍が売れればヒット商品となる中、函館牛乳関連商品は5―10倍の売れ行きで、セブン―イレブン社函館地区は「商品供給が間に合わず、欠品が続いた店もある」と予想を上回る人気にうれしい悲鳴を上げる。シュークリームは一日で600個近く販売した店もあったという。

 17日夕からは渡島・桧山管内の72店舗で、第2弾となる「濃厚函館4・0牛乳をつかったシュー」を限定発売する。函館・近郊で冬季のみ搾乳される乳脂肪分が4・0以上と通常より高い牛乳をクリームに使い、濃厚でコクのある味わいが特徴だ。1個120円で、3月中旬まで店頭に並ぶ。

 地場産牛乳を使ったこうした取り組みは道内の十勝や釧路、網走管内などのほか、関東や九州地方の商品開発にも波及していて、函館地区の福田明弘ディストリクトマネジャーは「今後も地元の優良な食材を使った商品を手掛け、地域に愛される店づくりを進めたい」としている。(森健太郎)


◎マル獄印 前掛け人気…廉売で刑務所作業品即売会

 函館市の中島廉売内の特設会場(中島町23)で13日、全国の受刑者らがつくった刑務所作業製品の展示即売会が始まった。空き店舗を活用した初の試み。人気商品の函館少年刑務所製の「マル獄」印の前掛けなども並び、通常はシャッターの閉まった“店内”に新たな息吹が吹き込まれた。15日まで。

 同廉売の商店主らでつくる中島町商店街振興組合(二本柳秀樹理事長)の主催で、「お客様感謝デー」(毎月第2金、土曜)の関連イベント。出店要請を受けた同刑務所も「地域貢献と商店街の活性化の一助になれば」と全面協力して実現した。

 この日は開店前から10人近くが並ぶ盛況ぶりで、看板商品のマル獄印の「刑務所の前掛け」は用意した計50枚が昼すぎには完売。市原少年刑務所製のみそやしょうゆ、月形刑務所製の鍋敷きなども人気を集め、「通常の即売会の2、3倍の売れ行き」(同刑務所担当者)という。

 まな板を購入した市内榎本町の女性(58)は「品質が良くて長持ちしそう。少しでも受刑者の更生に役立てば」と話していた。前掛けは14日も50枚限定で販売する。午前10時から午後5時(15日は午後4時まで)。(森健太郎)


◎“地域の家庭”30年迎える…学童保育所「ちびっこクラブ」設立記念祝賀会

 共同学童保育所ちびっ子クラブ(函館市弥生町)が今年で設立30周年を迎え、このほど記念祝賀会が開かれた。「働きながら子どもを育てたい」と願う保護者らが必要に迫られて始めた民間発の子育て支援で、長年子どもたちが放課後を過す“第二家庭”の役割を担ってきた。30年近く指導員を務めた高田恵美子さん(63)は「今や学童保育はなくてはならないところ。より環境が良くなるよう今後も協力したい」と発展を願っている。

 同クラブの設立は1980年。青柳小学校にある公営学童保育所が夏休みに開設されないため、子どもを預ける場所がなくて困った高田さんら保護者が夏休み期間だけ「夏の子どもの家」と名付け、宝来町の神社で活動したのが始まり。夏休み明けの9月に高田さんが指導員となって弥生、西の両小学校の保護者と協力し、「地域にも学童保育所を作ろう」と、ちびっ子クラブを立ち上げた。

 利用児童3人からスタートし、88年の34人をピークに西部地区の人口減少に伴い、児童数も20人台に。高田さんは「父母と指導員が協力して運営や保育内容を良くしてきた。食育を兼ねた手作りおやつ、自然との触れ合いを大切にし、子どもたちと一緒に成長してきた」と振り返る。

 8日にホテル函館山(元町)で開かれた記念祝賀会にはOBの子どもたち、その保護者ら100人が出席。歴代の父母会長へのインタビュー、現役の子どもたちの和太鼓演奏などが行われ、節目を祝った。

 高田さんは昨年7月に指導員を退き、顧問に就任。「保護者負担の軽減や指導員の待遇改善などまだやり残したことがある。働きながら子どもを育てるという当たり前のことがゆとりをもってできる環境づくりを、国として実現できるよう訴えていきたい」と話している。(宮木佳奈美)


◎キャンドル300個きらめく…朝市と函館駅で「光の小径」

 函館市内で開催中の2009はこだて冬フェスティバル(実行委主催)の一環で、手作りキャンドルの明かりが函館の街を彩る「はこだて『光の小径(こみち)』IN函館朝市&JR函館駅」が13日、同市若松町の函館朝市周辺で行われた。

 「光の小径」は市民や観光客が作ったワックスキャンドルを道端などに配置してともすイベント。今年から実施期間や場所を拡大、初めて朝市周辺で開かれ、300個のキャンドルが並んだ。

 この日に合わせて函館朝市協同組合連合会がイベントを企画。あいにくの雨となったが、カニやゴッコなど5種類の朝市特製鍋や甘酒を無料で振る舞い、訪れた市民や観光客がいくつもの鍋を味わい、冷えた体を温めていた。

 また、約20店舗が夜間営業する「ナイトマーケット(夜市)」では、どんぶり横丁市場などの飲食店が海産物を盛り込んだオリジナルミニ丼を500円で提供。海産物を販売する駅二市場も開店し、キャンドルの光が足もとを照らす朝市周辺は普段と異なる雰囲気に包まれた。鍋を味わった市内の女性(59)は「夜の朝市もいつもと違う活気があっていいですね」と話していた。

 一方、金森赤レンガ倉庫(豊川、末広町)付近でもアイスライトファンタジーが始まり、15日までアイスキャンドルや氷の像などが並び、ライトアップされる。(宮木佳奈美)


◎故佐藤泰志の小説映画化へ 制作実行委が正式発足

 函館出身の作家、故佐藤泰志(享年41)の代表作「海炭市叙景」の映画化を目指す市民有志の制作実行委員会が13日、正式発足した。実行委員長に就いた市民映画館「シネマアイリス」の菅原和博代表(52)は「佐藤泰志の作品に触れる機会を定期的に作りたい」と意気込みを語った。4月4日に監督を発表し、その後は目標額を1000万円に設定して資金集めを始めることなどを決めた。

 映画化構想は作品集の出版など、近年佐藤泰志の作品世界に再び光が当たる中、菅原委員長が発案。佐藤泰志の函館西高時代の同期生で、「はこだてルネサンスの会」事務局長の西堀滋樹さん(58)をはじめ、関係者らに呼び掛けた。

 この日はメンバー20人余が参加。菅原委員長はこれまでの経緯を語り、「20年前の作品だが現代に通じる内容。衰退する地方都市に暮らし、どこか希望を失わずに生きる人が描かれ、(映画化は)いろいろな意味で意義があるのでは」と熱い思いを語った。

 参加者は役割分担などを決めた後、市民の気運を盛り上げるため、今後関係者を招いた講演会や定期的な朗読会、テレビやラジオを巻き込んだ広報活動を展開することを確認した。総制作費は2000万円を見込み、この半分の1000万円を募金活動で賄うことを目標とし、個人や各種団体などに協力を呼び掛けることにした。

 事務局長の西堀さんは「不景気な函館だからこそ明るいものを目指したい。1人1人が窓口となり大きな動きを作りたい」と話していた。

 映画化に関する問い合わせは菅原代表(アイリス内、午後1―4時、TEL0138・31・6761)、佐藤泰志に関しては西堀さん(弥生小内、TEL同23・5285)。(新目七恵)