2009年3月16日(月)掲載

◎待ち時間短縮に 市立函館病院、24日から問診コーナー設置

 市立函館病院(函館市港町1)は24日、1階ホールに看護師が対応する問診コーナーを設置する。症状に合わせ医師から事前に指示された検査を診察前に行うことでスムーズな診察につながり、患者の待ち時間も短縮される。まずは新患への対応のみだが、6月ごろまでには異なる疾患での受診や予約外の患者にも対応範囲を広げる。

 市病院局が、市病院事業改革プランの案にパブリックコメント(意見募集)の内容などを反映させた最終案を市議会民生常任委員会に示し、この中に盛り込まれた。同院はこれまで泌尿器科の受診患者の検尿など一部でこのような対応をしていたが、対象を全科に拡大して実施する。パブリックコメントでも待ち時間の長さを指摘する意見があり、この解消にもつながる。

 問診コーナーは、薬が院外処方になったことなどから余裕ができた1階の待合スペースに置く。プライバシーに配慮したコの字型の壁があるブースを当初は3つ、最終的には5つ設置する。ベテランの看護師を配置し、患者の症状に応じてどの科を受診すれば良いかを判断。医師は事前に、各症状に合った検査項目の指示を出しており、これに沿った検査を行う。

 その後の診察で医師は、検査の結果を見ながら診断を下す。検査前の診察時間やこの待ち時間などが短縮され、患者をスムーズに受け入れることで患者の負担を減らすとともに、病院側の業務短縮にもつながる。

 市病院局は「初めての患者はどこで何をすれば良いか分からない場合が多い。分かりやすく受診できるサービスを提供したい」と話す。16日から、問診コーナーの利用方法などを同院ホームページhttp://www.hospital.hakodate.hokkaido.jp/index.shtmlで紹介し、周知する。(小泉まや)



◎「こも」外して春を待つ 赤松街道 ボランティアで害虫を取り除く

 【七飯】鳴川地区の国道5号線、通称「赤松街道」で15日、冬囲いのためにアカマツに巻かれていた「こも」を住民らが外す体験会が行われた。参加者62人はアカマツの保護のため、作業に精を出した。

 冬期のこも囲いは、マツカレハやマツクイムシなどをこもに集めて駆除することが目的。約150年前から行われている伝統的な駆除の方法で、農薬を使わないことから現在でも皇居などで用いられている。体験会は地元の人たちにアカマツ保護の関心を高めてほしいと、赤松街道を愛する会(寺沢久光会長)が主催し毎年行っている。

 寺沢会長は、「今日は寒いですが、赤松街道のために元気を出して頑張りましょう」とあいさつ。8グループに分かれ、昨年10月に巻き付けたこもを一枚一枚丁寧に外していった。また、外したこもについている害虫の種類や数などをチェックするとともに、マツカレハやマツクイムシなどの採集も行った。体験終了後にはボランティア団体から豚汁が無料で配られ、参加者は冷えた体を温めながら、おいしそうに味わっていた。

 以前から街道の「こも」に興味を持っていたという函館市三育保育園の近藤D、君(6)は「何のためにこもをしているかがわかった。虫を探したり採ったりするのは面白かった」と笑顔で話した。 (石井 克)



◎「食」の交流会 自慢の味で〝桧山〟堪能 函館などから47人参加

 【上ノ国】桧山支庁主催の「ひやま『食』の交流会」が15日、上ノ国町の勝山交流館で開かれた。桧山伝統の郷土食やオリジナル料理を提供して、食文化を中心とした桧山の魅力をアピールしながら、農水産物の消費拡大や集客力のアップにつなげようと同支庁の独自事業として初めて企画した。函館市を中心にした一般参加者が、旬の食材を生かしたメニューに舌鼓を打っていた。

 料理を試食するのは、函館市を中心に渡島管内で公募した消費者47人。参加料は無料で、この日は送迎バスで上ノ国入りした。管内からは江差、上ノ国、せたなの3町で、料理の腕を自慢とする、5つの飲食店や旅館が参加。郷土食として「くじら汁」(せたな町・新矢旅館)、「根ボッケのおにぎり」(江差町・辻旅館)、「いももち」(上ノ国町・食事処友矢)、聖護院大根のかすみそ漬け(江差町・旅館松月)の4メニューを提供した。

 道南各地に伝わるくじら汁は、しょう油を使った味付けが主流だが、この日はあっさり風味の塩味ベースで仕上げた。料理を提供した新矢照彦さん(50)は「せたな町で製造している豆腐を使い、食材の味や香りが引き立つように工夫した。消費者や他店の皆さんと交流することは良いヒントになった」と語った。

 参加店が工夫を凝らしたオリジナルメニューは「アスパラとサツマイモのココット」(旅館松月)、「長芋と黒豚ソーセージのグラタン」(上ノ国町・料理宿宮寿司)、「クロソイの団子田楽」(友矢)など4品が登場。参加者は「初めて食べたメニューばかり」「とても良い味付けだった」と笑顔で語り、料理自慢の店主らとの会話を楽しんだ。函館市の主婦三宅巳音子さん(73)は「くじら汁を食べるのは50年ぶり。昔懐かしい味を楽しむことができました。オリジナルのメニューも味付けを良く工夫しています。こうした料理を生かすことで、桧山にも多くのお客さんを呼び寄せることができるはず」と、太鼓判を押した。

 イベントでは、古い歴史や文化に彩られた、檜山の魅力をPRするため、上ノ国町教委の塚田直哉学芸員、江差町教委の宮原浩学芸員が「桧山の歴史入門」をテーマに、管内の歴史を分かりやすく講演。参加者は熱心に耳を傾けていた。(松浦 純)



◎迫真演技 自己アピール 野外劇オーディション

 NPO法人市民創作「函館野外劇」の会(フィリップ・グロード理事長)主催の「第22回市民創作函館野外劇 星の城、明日に輝け」(7―8月)に出演するメーンキャストオーディションが15日、函館市民体育館第1会議室で開かれ、応募者35人が審査員の前で熱意をアピールした。

 野外劇は国の特別史跡・五稜郭を舞台に繰り広げられる函館の歴史絵巻。毎年、多くの市民ボランティアがキャストや裏方スタッフとして参加している。今年の公演は7月3日に開幕し、8月9日までに計11回行われる。

 募集した役柄は、土方歳三やペリー提督などの歴史上人物、劇の進行役を担う妖精「コロポックル」など主要18役で、小学4年生から70代までがオーディションに挑んだ。

 制作スーパーバイザーの鈴木均さんら東京のプロジェクトチームメンバー2人を含む6人が審査員を務めた。冒頭で鈴木さんは「いいものを作るには皆さんの力が必要。皆で作っていく意識が大輪の花を咲かせる。今日は自分を出し切って最高の笑顔を見せてほしい」とエールを送った。

 一番人気の土方役には6人が応募。1人ずつ刀を振り下ろす殺陣(たて)の場面を演じ、迫力ある大きな声でせりふを読むなど迫真の演技を披露した。初めて応募した道教育大函館校3年の永井聖司さん(20)は「経験者が多い中、初めてだったので見よう見まねで演じた。花形の土方役をやってみたい」と話していた。

 結果は数日中に郵送で発表され、3月下旬からけいこが始まる。また4月からはダンス役や殺陣役を募集する。(宮木佳奈美)



◎【ステップ企画】「写真の力」信じて進む 知内高校卒業生・村上槙吾君(18)報道カメラマンを目指す

 情報という感動を伝え、その喜びを共有できる仕事に就きたい―。幼少から報道カメラマンの存在に憧れ続けてきた。知内高校を卒業し、4月からカメラ技術を身に付けようと、札幌市の専門学校札幌ビジュアルアーツ写真学科に通う。

 「住み慣れた古里を離れるのはつらい。でも、チャンスだと思っている。ひと回り成長して、いつかは知内に戻ってきたい」

 風光明美な知内町で生まれた。津軽海峡や大千軒岳などと恵まれた自然環境の中で感性をはぐくんだ。

 将来について漠然と考え始めた小学校5年のとき、おじからカメラを譲り受けた。美しい街並みを鮮明に残したいとまちへ飛び出し、夢中でシャッターを押した。

 「これだと思う写真には、どんな言葉よりも、人の心を動かす感動がある。その奥深さが好きだ」。明確な将来像を見いだすきっかけになった。

 社交的な性格だ。郷土資料館主催の教育事業に積極的に参加し、各種出来事を愛機で記録。仲間からその腕を買われ、学校祭でも数え切れぬ思い出の場面を活写した。

 景色に限らず、笑顔や真剣な表情などと生き生きした人間模様を被写体にする喜びを味わった。

 高校卒業一カ月前の2月上旬、「やっぱり報道カメラマンになりたい」と両親へ思いを打ち明けた。

 返ってきた言葉は「おまえが納得できる人生を進め。できる限りの応援はする」。その温かさが身に染みた。

 「家族や周囲へ感謝する気持ちが強くなった。早く自立して恩返しをしたい。そのためにはまずは勉強を頑張らなくては…」

 若さと情熱がエネルギーだ。希望を掲げた未来を、ファインダー越しにのぞく日々が始まる (田中陽介)