2009年3月17日(火)掲載

◎石積み防波堤どうの復元、検討会が方策案まとめる

 建設から100年以上が経過し、産業遺産、歴史文化財しての価値の高い函館漁港舟入澗防波堤(石積み防波堤)の復元方策を考える検討会(座長・長野章公立はこだて未来大教授)が16日、函館市若松町のフィットネスホテル330函館で開かれた。検討会の開催は2003年度以来5年ぶり。この日は検討会の前に現地見学会が開かれ、委員ら関係者が防波堤の現状を確認。検討会では前回の会合までに示された課題について協議し、部分、部位別ごとに破損部分の復元方策を大筋でまとめた。(鈴木 潤)

 同防波堤は、1899(明治32)年に完成。近代港湾施設の先駆けとなったとして2004年に土木学会の「選奨土木遺産」、06年には水産庁の「未来に残したい漁業漁村の歴史文化財100選」、今年2月には経済産業省の「近代化産業遺産群」に選定されている。

 現在も防波堤としての機能を果たし、プレジャーボートの係留場所となっているが、老朽化が進み、石積みの一部欠落や灯台の基部露出が目立っている。

 函館開発建設部が策定した函館漁港特定漁港場整備事業計画には同防波堤の復元を登載していて、02年度、03年度の検討会では防波堤の現状維持を基本とした補修・復元方法を探ってきた。

 検討会のメンバーは同部や市、渡島支庁の幹部や学識経験者8人で構成。この日の会合では事務局側がこれまでの経過と現地調査の結果を報告するとともに、復元方策案を示した。

 全体の保存方針として、近代土木遺産として技術、系譜、意匠の価値低下を可能な限り抑えることや、漁港としての利用上の安全性、漁港と調和した景観面にも配慮しながら補修、復元を行うことで申し合わせ、堤頭部、灯台部分、堤幹部など部位別に示された補修案について質疑を重ねた。委員からは「安全性を確保する場合の補修はどこまで許されるか」の指摘に対し、東北芸術工科大歴史遺産学科の田中哲雄教授は「文化的価値として復元するのであれば形体、構造を変えない程度の修復が望ましい」と見解を示した。

 同部は新年度に追加調査と施行方法の検討を進め、10年度末を目途に復元工事に着手する考え。



◎支庁再編条例修正 提案時期は流動的

 【札幌】高橋はるみ知事は16日の道議会本会議で、支庁再編条例修正案の提案について「地方4団体の理解を得た上で早期に改革に着手したい」と述べ、早期提案に意欲を示した。具体的な時期は明言を避けたが、定例会の会期末は25日に迫っており、知事が目指している会期中の提案・成立は厳しい状態にある。

 自民党・道民会議の岩本剛人氏(札幌市清田区)の一般質問に答えた。岩本氏は「4団体との協議はいつになるのか」と、具体的な日程を示すよう求めたが、高橋知事は答弁を留保。答弁を17日に持ち越した。高橋知事は当初、自民党などの合意が得られれば、17日にも道議会本会議に修正案を提案する方針だった。だが、定例会の日程が切迫しているほか、会期内に道町村会など地方4団体との会談を行うことも、日程的に困難な状況にあり、修正案の提案時期は極めて流動的な状態にある。

 一方、高橋知事は15日、道庁で開かれた「地域振興条例案」をめぐる有識者懇話会で、振興局地域への財政支援を定めた条例の項目を削除する方針を示した。同条例は、支庁再編で職員削減などの打撃が生じる、振興局地域を対象にした財政支援策を定める目的で検討が始まった。だが、再編条例の修正に伴い、振興局の位置付けが支庁に戻るため、振興局地域に限定した支援の枠組みが宙に浮いた。同条例は地域活性化の理念を明文化した“精神条例”に位置付けを変更し、再編条例と同様に本定例会での提案を目指す方針。しかし、検討懇の委員からは「条例の存在意義が問われる」など批判が相次ぐなど、条例自体の必要性が問われる状態にある。(松浦 純)



◎3月函館、ガソリン値上がり

 函館市が16日までにまとめた3月の石油製品小売価格調査結果によると、ガソリン(1リットルレギュラー)の平均価格は前月より3・37円高い112・74円で、2カ月連続で上昇した。一方家庭用灯油(1リットルホームタンク用)の値下がりは続いており、同5・56円安い64・11円となった。

 調査は卸、小売りを兼ねる店、小売販売店合わせて30店で12日に実施した。ガソリンの最高価格は前月比1・55円高い116円、最低価格は同3・8円高い104・8円となった。2008年度全体の平均価格は146・73円で、前年度比0・4%増。昨年8月までは急激な値上がが続いたが、同9月以降の大幅な下落に伴い、通年での差は小幅にとどまった。

 家庭用灯油の最高価格は前月比5円安い88円、最低価格は同7円安の55円。08年度平均は101・61円で、前年度比14・9%増加した。

 軽油(1リットル)の平均価格は前月比0・59円安い101・87円、最高価格は同3円安の108円、最低価格は同1・2円安の91・8円。08年度平均は前年度比4・8%増の132・7円だった。

 重油(1リットル)の平均価格は前月比3・95円安い68・6円で、最高価格は同1・35円安の76・65円、最低価格は同4・2円安の63円。08年度平均は前年度比18・3%増の101・68円となった。

 プロパンガスは5、10立方メートルともに平均価格と最高価格が値下がりしたが、最低価格に変化はなし。5立方メートルの平均価格は前月比5・53円安い5565・63円で、最高は同105円安い6615円、最低は5061円。10立方メート利の平均価格は同11・05円安の8989・63円、最高は同210円安い1万500円、最低は8054円。08年度平均は、5立方メートルは前年度比8・3%増の5550・35円、10立方メートルは同8・8%増の8958・07円だった。 (小泉まや)



◎笑い療法士・佐藤英代さん、「笑い」で患者を元気に

 「笑い」で患者の自己治癒力を高めたり、病気予防をサポートする「笑い療法士」。癒しの環境研究会(東京)が養成・認定している資格で、医療・福祉の現場をはじめ、日常生活の中で人々の笑いを引き出す活動に取り組んでいる。道南では長万部町消防本部の救急救命士佐藤英代さん(47)がこのほど2級の資格を取得。函館中央病院で月3回、病院ボランティアをしながら「笑いの力で患者さんを少しでも元気にしたい」と笑みを絶やさない。(宮木佳奈美)

 同研究会は「笑いは人が幸せに生きることを支え、また病気の予防にもつながる。そうした笑いを引き出すのが『笑い療法士』」と定義づけ、3―1級の資格区分を設ける。3級は笑い療法士の理念を理解し、熱意のある人。2級は笑い療法士として十分な実績を持つ人。1級は笑い療法士として社会に貢献し、とくに優れた実績があると認められた人と定める。

 佐藤さんは2005年12月、札幌に笑い療法士の第1期生が誕生したのを新聞記事で知り、06年2月に第2期生の認定講習に応募。同年7月に3級、昨年12月に2級の認定を受けた。「乳がんを患った義母に『絶対治る』という気持ちを持ってもらいたかったから」ときっかけを話す。

 佐藤さんは人を笑わせるのが好きで温厚な人柄。しかし職業柄、救急現場や病院ではたとえ安心感を与える笑顔だとしても受け取られ方によって賛否が分かれる。「笑い療法士なら病院や施設で人を笑わせることができるのでは」。佐藤さんは闘病生活で生きがいをなくした患者、孤独でさびしそうなお年寄りを元気づけたいという思いを行動に移した。「『笑い』とは幸せ・元気・健康の証し。笑うことが体にいいということを伝えたい」と語る。

 06年11月から実践の場として病院ボランティアの活動をスタート。初対面の人の笑いを引き出すのは容易ではないが、「笑顔や笑いは相手にうつる。あいさつから始めて受け入れてもらえたら冗談を言ってみる」と佐藤さん。

 笑い療法士の役割は、相手から自然な笑いを引き出すこと。無理に笑わせるのではなく、相手の心に寄り添い、穏やかな気持ちになってもらうことが重要。患者から声を掛けられたり声を出して笑ってくれたりしたときが何よりうれしい。佐藤さんは「長い目で焦らず、温かい気持ちで相手を包んであげられたら」と活動の幅を広げている。

 癒しの環境研究会事務局(日本医科大学医療管理学教室内)ホームページhttp://www.jshe.gr.jp



◎白百合高吹奏楽部に都響の故高藤さんのトロンボーン寄贈

 旧上磯町出身で元東京都交響楽団(都響)のトロンボーン奏者、故高藤重孝さんが長年使用していた楽器がこのほど、函館白百合学園高校吹奏楽部(中村香澄部長)に寄贈された。同吹奏楽部にプロの演奏家の愛器が寄贈されるの初めてで、顧問の前田浩史教諭(42)をはじめ、部員一同は大喜び。前田教諭は「一流のオーケストラで活躍していた演奏家の情熱や魂が、楽器を通じて生徒に伝わってくれれば」と期待を込める。(長内 健)

 高藤さんと前田教諭はともに武蔵野音楽大(東京)の出身。函館出身の前田教諭がトロンボーン専攻で入学したころには高藤さんは既に都響で活躍していた。前田教諭は「都響の演奏会には足しげく通い、高藤さんの演奏技術や音色をよく勉強していた。同郷の後輩ということが分かると、高藤さんはかわいがってくれた」と当時を懐かしむ。

 15年ほど前に亡くなった高藤さんの楽器は、遺族の手を通じて高藤さんに師事していた市内在住の男性に渡った。前田教諭は約10年前に市内の演奏会でこの男性と知り合い意気投合し、交流を続けてきた。仕事で忙しい男性は普段楽器に触れる機会が少ないことから、前田教諭に「トロンボーンを譲りたい」と話を持ち掛けた。「自分が持つよりも、夢のある部員に吹いてもらうほうが天国の高藤さんも喜ぶのでは」と考えた前田教諭は、男性から快諾を受け、同吹奏楽部への寄贈されることが決まった。

 楽器はイギリス製のテナーバストロンボーンで、既に製造中止となったモデル。前田教諭によると、現在の一般的な楽器と違い、音程を下げる役割を持つバルブ「Fロータリー」がチューニング管(音程を調節する管)のそばにある外観が特徴という。男性が10年以上メンテナンスを怠らなかった楽器の音色については「とても優しい温かみのある音色が出る。吹いてみると、穏やかで真面目だった高藤さんの人柄を感じることができる」と話す。

 同吹奏楽部のトロンボーンパートは2年の中村部長(17)と1年の今野綾香さん(16)。中村部長は「吹いてみたらとても音がまろやかで驚いた。寄贈はわたしたちだけでなく、部員全員の励みになる」と声を弾ませる。今野さんは「この楽器で一生懸命練習して、良い演奏ができるようになりたい」と喜びをあらわにしている。