2009年3月25日 (水) 掲載

◎14支庁体制存続、改正条例10月施行へ

 【札幌】道の支庁制度改革をめぐり道町村会(会長・寺島光一郎乙部町長)など地方4団体は24日、道庁で開かれた高橋はるみ知事との2度目の直接会談で、現行の14支庁の枠組みを維持したまま、渡島など9支庁を総合振興局、桧山など5支庁を振興局に再編することで最終合意に達した。道による一方的な振興局の職員削減に歯止めをかけるため、総合振興局への広域的業務の集約や振興局の組織体制は、道段階と5振興局地域にそれぞれに設ける協議の場で合意形成を図る。関係市町村長の意見反映も支庁再編条例(総合振興局設置条例)の改正案に盛り込む。高橋知事は開会中の第1回定例道議会に改正案を提案する。改正条例は半年程度の周知期間を設けて10月にも施行する方針だ。(松浦 純)

 道は新幹線開業を見据えた地域振興や広域観光推進など、圏域全体で取り組む広域的業務は、段階的に総合振興局に集約する方針。しかし、集約の時期や進め方、振興局の組織体制や機能は、道段階では地方4団体と、振興局地域でも関係市町村と、それぞれの恒久的な協議の場を設け、地域の合意を得ながら検討を進める。関係市町村長からの意見聴取は改正条例に明記する。

 会談で高橋知事は「これまで地域の理解を得る努力が十分でなかったことを率直に反省し申し訳なく思う」と述べ、条例改正後には速やかに檜山などの振興局地域を自ら訪れて改革への理解を求める方針も示した。

 条例改正により総合振興局と振興局は、地方自治法上は同列の“支庁”になる。当初は「道南」「日胆」など、圏域名を冠するとした総合振興局の名称も、業務面や所管区域を含めた振興局の独立性を維持するため「渡島」「胆振」などの現行の支庁名を残すことで14支庁の存続をより鮮明に打ち出す。振興局地域に根強く残る“格下げ”への不満解消を図る狙いもある。

 道は条例成立後、半年程度の周知期間を経て10月にも新支庁体制に移行する考え。だが、定例会は26日まで。年度末が迫り大幅な会期延長も困難。道議会では審議時間が確保できないとして早期提案には慎重論も根強く、改正時期は流動的な要素も残る。



◎寺島会長「振興局縮小に歯止め

 【札幌、江差】支庁再編をめぐる道との協議が最終合意に達したことについて、道町村会長の寺島光一郎乙部町長は24日、函館新聞社の取材に対して「振興局の体制縮小には歯止めを掛けることができた」とし、合意の結果を評価した。

 会談に先立ち高橋はるみ知事は、再編条例から「支庁出張所」の文言を削除することで譲歩したが、総合振興局が振興局の所管業務を担当できるよう特例規定を設け、知事権限で振興局の縮小を図る構えを見せたことで道町村会は猛反発。会談直前の24日午前まで調整が続いた。水面下の攻防では、振興局の組織機能を担保する合意形成の枠組みとともに、振興局の独立性を高めるための総合振興局の名称変更など、道町村会の要求を知事サイドが事実上丸飲みすることでようやく合意に達した。施行前の条例を改正するのは道政史上異例の事態だが、道は新年度の再編着手という知事公約の実現を優先させた格好だ。

 会談でも寺島会長は、振興局の組織体制を検討する上で、江差町など関係市町村の合意を前提とするよう食い下がった。町村会幹部は「振興局地域が得るべきものはほとんど勝ち取った」と自信を見せた。寺島会長は「合意は江差町など5振興局地域が我慢すべきを我慢して、断腸の思いで決断した。道は振興局の組織体制を検討する際には地域の思いを理解してほしい」と語った。

 合意について濱谷一治江差町長も「支庁組織が残ったことが最大の成果。半年もの時間を費やした知事と地方4団体の合意を尊重する。粘り強く存続運動を進めた町民や町議会に感謝したい」とコメント。改正案成立後、高橋知事が江差入りする方針を示したことには「管内の振興を進める上で必要な組織体制についてしっかり意見を述べる」と話した。(松浦 純)



◎WBC日本連覇、道南でも熱狂

 「やった!イチローが打って決めてくれた」―。24日、第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)決勝戦の日本対韓国。函館市内の公共機関やデパートなどでは、テレビ中継に足を止めて応援するファンが多く見られた。一進一退の攻防に手に汗握り、日本が2連覇を達成するとテレビの周りでは「バンザイ!」と歓声が起こっていた。

 市内梁川町のテーオーデパートでは、買い物に来た主婦らが1階の広場にあるテレビの前に集まった。日本が優位に試合を進める中、東京から来函していた学生の佐戸充さん(21)は「韓国は追い込まれると強くなるので最後まで気が抜けない。3点差はつけないと勝てないのでは」とはらはらした様子。日本がリードして迎えた9回裏には約30人が集まるも、同点に追いつかれた時はため息に包まれ、家路につく人が多く見られた。

 一方、函館市役所の1階ロビーでも、手続きなどで訪れた市民らが待ち時間にテレビ中継を見入った。同点に追いつかれた時はテレビ前から人は減ったが、10回表にチャンスを迎えると再び人だかりに。イチローが決勝打を放つと「やったー」と声が飛び、リードした10回裏は、アウト一つ取るたびに拍手が大きくなり、ダルビッシュ投手(北海道日本ハム)が最後の打者から三振を奪い2大会連続の優勝を決めると、万歳をして喜ぶ人も。市内在住の会社員、近藤かおりさん(22)は「やっぱりイチローのおかげ。決める人が決めたと思いました」と笑顔。テーオーデパートでは、市内在住の木村誠さん(61)が「稲葉や小笠原らベテランの選手の活躍が素晴らしかった。韓国と力は同じだと思っていただけに優勝はうれしい」と声を弾ませた。(長内 健、小杉貴洋)



◎菊池さんが手話通訳士試験に合格 

 障害者生活支援センター「ぱすてる」(函館市石川町)の手話通訳要約筆記派遣調整員、菊池克子さん(53)が、本年度の手話通訳士の試験に道南から唯一合格した。合格率約3割の難関で、函館市内からは4年ぶり6人目。菊池さんは「手話通訳の仕事が注目されることで聴覚障害者への理解につながれば」と話している。

 手話通訳士は厚生労働省認定の資格。障害福祉や聴覚障害者に関する基礎知識、手話の実技などで通訳の技能が問われる。試験は年1回で、20回目の本年度は10月11、12日に試験、1月30日に合格発表が行われた。受験者数は897人で合格率は33・1%。聴力障害者情報文化センターによると、24日現在、登録されている手話通訳士は全国に2268人、道内には64人いる。

 菊池さんは、函館、北斗両市、七飯町の委託を受けて障害者のコミュニケーション支援事業を支えている同センターの手話通訳者の1人。手話通訳者や要約筆記者を派遣する業務を担う。

 手話通訳士には6年目で合格。北海道ろうあ連盟認定手話通訳認定試験(1、2級)にも合格しているため、これまで11年も試験勉強を続けた。「勉強が面白くなって自身のスキルアップにもなり、あきらめなくてよかった」と振り返り、「勉強会を開いてくれた通訳者仲間や聴覚障害者の皆さんに感謝したい」と話す。

 手話通訳士の試験は難易度が高く、受験できるのは東京都、大阪府、熊本県の3カ所のみで、道南から挑戦する通訳者は少ないという。菊池さんは「わたしでも受かったのでほかの通訳者にももっと受けてほしい。皆が受けると通訳者全体のレベルアップになり、聴覚障害者の生活を豊かにすることにつながる」と期待している。(宮木佳奈美)



◎函館国際学園理事会、ロシアセンター整備に900万円支出を陳謝

 ロシア極東大函館校を運営する学校法人函館国際学園は24日、函館市元町14の同校内ロシアセンターで理事会を開いた。小笠原雅専務理事が、ロシアセンター整備で市の補助金などから約900万円を支出した経緯を説明し、陳謝。本年度収支決算は市の調査結果が出てから改めて審議し、市からの運営補助金3000万円を含む2009年度予算案は暫定で承認した。

 小笠原専務理事によると、約2000万円となった現預金の回復を図るため、校長の管理職手当月額10万円を全額カット、副校長は同じく9万円を5万円とし、年間168万円の支出を抑える。このほか出張旅費の減額、教員が正規の授業以外に講義した謝礼(1講義4000円)も返上してもらい、合わせて327万円をねん出する案を示したが、理事からは異論も出たという。

 本年度収支決算は、ロシアセンターの負担分を計上したため、収支の差し引きが1030万円の赤字となった。  理事会では、センター整備の業者選定の経緯も報告された。受注した資材会社は過去にロシアの観光ポスター作製に携わり、ロシア語ができる同校卒業生がいることなどから契約先に選んだという。

 この業者から昨年10月31日にあった請求は2796万円で、内訳は建築主体工事が1517万円、冷暖房設備工事が462万円、電気設備工事が217万円、液晶テレビや付属品が106万円などとなっている。

 また、小笠原専務理事(学校事務局長兼務)は健康上の理由から3月末で退職し、後任の事務局長には元市職員の関谷隆氏が就く。専務理事の辞任も申し出たが、理事会預かりとなった。理事会には6人が出席した。(高柳 謙)