2009年3月29日 (日) 掲載

◎主婦の結城さん、お弁当の思い出を本に

 思い出をテーマに作ったお弁当「おも弁」の記録が1冊の本に―。函館市の主婦、結城美香さん(35)が長女の美桜ちゃん(6)と二女の咲心ちゃん(4)に作ったお弁当と思い出をまとめた「ママからの小さな贈り物 思い出のおべんとう」が、4月15日に文芸社(東京)から出版される。わが子への愛情と成長の思い出が詰まった1冊となっている。

 結城さんは砂川市出身。2002年に結婚し、長男の泰道ちゃん(2)を含む3児に恵まれた。本に取り上げられたのは、美桜ちゃんが幼稚園に入園した07年から作り始めたお弁当だ。親元を離れて過ごす幼稚園生活で、母親の存在を感じられる唯一の時間である昼食を「愛情ある時間にしてあげたい」(結城さん)と、子供が経験した思い出を料理で表現したお弁当を作り続けた。

 日々の思い出が「おも弁」となって積み重なっていく中で結城さんは「子供が成長した時にどんな気持ちで作っていたかを形にして伝えたい」と考えるようになり、心情をつづったメモと撮りためた写真を、昨年秋に出版社に持ち込んだ。編集者からは「お弁当のレシピ本は世の中に多いが、母親が子供に思い出を残すような本はなかった。同じ立場の母親たちの共感も得られるのでは」と評価され出版に至った。

 本には、美桜ちゃんが水泳教室で12級に進級した時に作った、「12」と記された帽子をご飯でできた本人の顔が被っているものや、咲心ちゃんが鉄棒で初めて前回りができた時にこしらえた、鉄棒に取り組む様子をのりで表現したものなど、成長を喜ぶメッセージを盛り込んだお弁当の写真と文章が添えられている。結城さんは「日々のお弁当作りの中でも、たくさんの愛情を子供に伝えられることを知った」と話している。

 四六変形版(縦15.6センチ、横13.6センチ)、オールカラーで全63ページ、1050円。問い合わせは最寄りの書店へ。(山田孝人)



◎「早く法律を」…肝炎患者ら早期成立訴える

 ウイルス性肝炎患者の治療体制整備や医療助成などを盛り込んだ「肝炎対策基本法」の制定をめぐり、今国会で審議が行われている。厚生労働省の統計によると、国内のウイルス性肝炎患者は約350万人に上り、大半が輸血や注射の回し打ち、薬害などの医療行為で感染されたとされている。病気が進行すると、肝硬変や肝がんに進行し、患者の多くは死の恐怖や闘病の苦しみを背負いながらの生活を強いられている。道南でも法の成立を望む声が広がっている。

 「いつかこの時が来ると覚悟をしていたが、がんと宣告された時はショックだった」。函館市内の男性公務員(50)は2月、肝がん検診によって肝臓に2センチほどのがんが見つかった。今月中旬、市内の病院に入院し、患部にラジオ波を照射する治療でがんを消滅させたが、ウイルスを根絶させない限り再発の不安はつきまとう。

 男性はB型肝炎訴訟北海道原告団の1人。1990年、血液検査をした際、B型肝炎ウイルスが検出された。子供のころに受けた予防接種が感染源として考えられ、「まさか」という思いだった。キャリアー(ウイルス保有者)であることを職場に伝えたが、誤解や偏見の目で見る人も少なくなかったという。

 2000年ごろまで、ウイルスの増殖を阻止するインターフェロン(IFN)治療を続けた。IFNでの治療中、倦怠(けんたい)感やうつ症状など副作用に苦しんだ。家族を養うために休職せず、副作用に耐えて仕事を続けた。「家では我慢した反動で常にイライラした。妻には嫌な思いをさせて申し訳ない気持ち」と男性は振り返る。

 2006年6月、道内のB型肝炎患者5人が国に損害賠償を求めた最高裁判決で勝訴したのを契機に、全国各地で提訴の動きが広がる。原告団に加わったのは、国の政策に一石を投じたいという思いから。男性は「訴訟の目的はすべてのウイルス性肝炎患者の救済。自分ができることをしたい」と決意を語る。

 一方、同市内の会社役員の男性(55)は91年ごろ、胃の痛みを感じ病院で検査した際、C型肝炎を発症していたことが分った。中学生のころ、十二指腸かいようを患い、輸血治療を受けた。

 一昨年11月、望みを託して12年ぶりに3度目のIFN治療を始め、通院しながら仕事を続ける。「治療をしているのに体を破壊しているみたいだ」と副作用の苦しみを語る。

 道の特定疾患医療制度を適用し、医療費の助成を受けてきたが、給付金が支給されるまで窓口での支払いが生じる。「通院するたびに1万以上かかる。治療費をかせぐために仕事しているようなもの」と漏らす。現在、札幌の肝臓専門医の診療を受ける。役員男性は「地域による治療格差を感じる。どこにいても安心して治療を受けられる体制を築いてほしい」と願う。

 昨年1月、薬害肝炎救済法が成立したが、救済対象者は一握り。北海道肝炎友の会「はまなす会」の川上博史会長(56)は「病気に対する偏見や誤解で家族や仕事を失い、病気で命も奪われた人は計り知れない」と話す。

 道南でも函館市議会や北斗市議会が法の制定を求めた意見書を可決したばかり。川上会長は「国の施策が後退しないよう、よりどころとなる法が必要」と早期成立を訴えている。(鈴木 潤)



◎「盲導犬って頼もしい」…募金2億円達成でふれあい教室

 【北斗】全国のダイエー直営店で募った盲導犬募金が2億円に達したことを記念し、七重浜4のダイエー上磯店(鳴川雅也店長)で28日、補助犬ふれあい教室(同店主催)が開かれた。来場者は犬との触れ合いを通じて、盲導犬の現状に理解を深めていた。

 全国のダイエー直営店(昨年11月現在、208店舗)は、盲導犬の育成や普及を目的に1991年から募金を開始。昨年11月に累計2億円を突破したことから、感謝の報告も兼ねてふれあい教室を企画した。道内での開催は上磯店のみ。

 この日は、道盲導犬協会(札幌)の訓練員、松坂郁浩さんが盲導犬の育成や具体的な仕事を説明。その後、来場者はアイマスクをつけて実際に盲導犬と歩き、障害者の感覚を疑似体験した。

 歩行体験をした七重浜保育園の長内杏樹ちゃん(5)は「犬に触ったり、一緒に歩くことができて楽しかった。盲導犬が増えてほしい」と話していた。

 全国で盲導犬を必要とする視覚障害者は推計で7800人に上る。それに対して現在活躍する盲導犬は約1000匹しかいないという。(石井 克)



◎支庁再編条例改正案を提案…30日中の採決は微妙

 【札幌】高橋はるみ知事が27日に提案した支庁再編条例(総合振興局設置条例)改正案をめぐり、知事与党の自民党・道民会議が、総合振興局への広域的業務の集約に関する市町村長の意見聴取を定めた条項の削除を求めたが、道は当初案での提案に踏み切った。週明けの30日に本会議で各会派が質疑を行うが、自民党には依然として条文修正を求める声があるほか、改正案の審議や道民意見の聴取に時間をかけるべきとの声も根強く、30日中に採決に入れるかは不透明な情勢だ。

 昨年6月に可決した同条例は「総合振興局及び振興局の設置に関する条例」に改称。第1条では総合振興局と振興局を、いずれも地方自治法上の支庁に規定。第2条は、改正前には「道南」(渡島・桧山)、「日胆」(胆振・日高)などの圏域名を冠した総合振興局の名称を、いずれも「渡島」など現名称に戻した。所管区域に変更がない網走支庁のみ、管内市町村の要望を受けて「オホーツク総合振興局」に変える。

 第3条では、総合振興局に振興局地域の広域的な業務を担わせる特例規定を新設。道町村会など地方4団体は、規定を根拠に振興局の組織体制が縮小されることに反発。妥協案として第2項に「関係する市町村長の意見を聴く」との文言を明記した。自民党は第2項の削除を求めたが、道町村会は「関係市町村の合意を得ることは4団体と知事による最終合意の前提」として拒否。道は原案通り提案した。

 改正案について27日の本会議では、高橋知事の提案説明にとどまり、30日午後に与野党が質疑を行う。改正案は道州制・地方分権改革等推進調査特別委員会、同時に提案した地域振興条例案は総合企画委員会で審議する。だが、わずかな時間で形式的に審議を終え、採決に移ることには与野党ともに慎重だ。高橋知事は施行までの猶予期間を3―6カ月としており「6月定例会で可決しても遅くはない」(道議会関係者)との声もある。

 改正案が成立した場合、高橋知事は10月の条例施行に向けて早い時期に、江差など関係市町村との協議に入る。道は振興局からの業務移行は、総務・企画部門から着手し3年程度で部門ごとに業務や職員を総合振興局に移す方針。江差町では「条例成立後に事実上の第2ラウンドが始まる」としている。(松浦 純)



◎4月2日に岡島緑バレエスタジオ10周年記念公演

 函館市本町の岡島緑バレエスタジオの開設10周年記念「10th Anniversary Je t’aime Ballet(ジュテームバレエ公演)」が4月2日午後6時半から函館市民会館大ホールで開かれる。また、前日の1日午後6時半からは同ホールで、第5回ジュニアバレエ発表会を開催。2日間にわたり、愛を表現する進化させた古典作品と子どもたちの愛らしい演技で節目を祝う。

 同スタジオは岡島さんが1999年6月に設立し、現在は3歳から中学生を中心に一般まで70人の研究生が在籍。今回は古典作品を演じるバレエコンサートのみではなく、今後の活躍が期待される子どもたちもたくさん登場し、踊ることを好きになってもらおうと2日間の公演とした。

 両日とも3部構成。2日は、第1部は「バレエコンサート」で、同スタジオの研究生と男性ゲストが「眠りの森の美女」など3作品からそれぞれ一幕を独自の振り付けで演じる。第2部は道内外で振り付けなどで活躍する坂本登喜彦さんが構成、演出するコンテンポラリー「dream dream」。

 第3部は「ドン・キホーテ」から「バルセロナの仲間たち」。古典ではあるが坂本さんの構成により独自の展開となっているという。岡島さんは「研究生たちは物語の意味、出演者の愛をよく考えて踊っている。これまでになく、進化した古典の世界になっていると思う」と話す。

 1日はクラスコンサートや、男性ゲストを交えたバレエコンサートで古典作品など演じる。岡島さんは「10年を迎えられ、このような大きな舞台ができるのは研究生やその保護者のおかげ。次の10年間活躍していく子どもたちが楽しく踊れるように構成、振り付けを考えた。夢にあふれる舞台を楽しんでください」と来場を呼び掛けている。

 入場券は、2日のジュテームバレエ公演はS指定席5000円、A指定席4000円、B自由席3000円(当日は各500円高)、1日の発表会は指定席3800円、自由席3000円(同)。問い合わせは同スタジオTEL0138・32・1001。(山崎純一)