2009年4月16日 (木) 掲載

◎函館市の観光ポスター決まる

 函館市は15日、2009年度版観光ポスターを発表した。函館市出身で、横浜市在住のデザイナー加藤朋子さん(34)が製作したポスターを採用した。イラストと函館山からの夜景写真が融合しており、五稜郭タワーやクリスマスファンタジーの巨大ツリー、イカなど函館の観光スポットや名物が1枚に凝縮されている。通年版と冬季版の計1万1000枚を製作し、市内や首都圏、関西圏の公共施設や観光施設などに配布する。

 今回初めて作品を公募して選定し、市内外から個人、企業合わせて13組の応募があった。市の幹部や観光関係者らによる審査を行った結果、加藤さんの出品作が選ばれた。審査に当たった市観光コンベンション部の鈴木敏博部長は「ざん新な発想で函館のイメージを表している。印象残った作品だった」と述べた。加藤さんは高校を卒業するまで函館に住んでおり「生まれ育った函館を思い起こしながら作りました」と話す。

 通年版の作品タイトルは「きらめきがあふれる街、函館。」、冬季版は「かがやきに出会える冬、はこだて。」。それぞれモチーフが異なるが、どちらもイラストの輪郭をくり抜いた部分に夜景が重なり、特に巨大ツリーの部分では夜景の光をイルミネーションに見立てている。加藤さんは「(夜景が)見え隠れすることによって見る人の想像力をかき立てたいと思った。街の奥行きも強調した。多くの人の目に触れ、函館に行きたいと思っていただければ」と話している。(鈴木 潤)



◎丸井今井再建策提出で函館店の行方注視

 丸井今井の再建案が15日、三越伊勢丹ホールディングスと高島屋から提示された。地方3店舗の一つ、函館店を抱える函館市の関係者からは「再建案の内容は一切伝わっていないが、函館店はもちろん全店舗の存続が願い」「冷静に推移を見守りたい」などの声が聞かれた。

 丸井今井はこれまで、両社に函館を含む全店舗存続の意向を伝えていて、再建案では札幌本店以外の函館、旭川、室蘭の地方3店の存廃が焦点の一つになっている。

 函館市の西尾正範市長は「三越伊勢丹と高島屋のどちらが良いということではない」と断った上で「北海道や地方の経済状態を考えると、地方店を含め4つの店舗が存続されることが道民の思い」と述べた。

 函館店については「独立した商業圏で、新幹線時代を見据えると有望な経済圏であることから、存続が盛り込まれることを強く期待したい」とし、経済界と連携し、市民と一体になった存続運動を継続して進める考えを示した。

 函館商工会議所の桜井健治常務理事は「正式決定が出ていないので、今はただ推移を見守るしかない。存続したとしても今後の経営形態がどうなるか注視したい」と語る。

 函館店の存続を願う気持ちは地元商店街や関係者も同様だ。五稜郭商店街振興組合の小島正彦理事長は「どちらが選ばれても、函館店は何としても残す方向で進んでもらいたい」、函館店のテナント会「丸井今井函館店の存続を応援する会」の渡辺良三呼び掛け人代表は「函館店は存続しそうな機運があり、一安心している。今後どういう形で残るかが問題で、引き続き活動を続けたい」とした。

 一方、一時的な存続運動で終わらない取り組みを求める声もある。協同組合五稜郭の久保一夫理事長は「今はただ祈るしかないが、百貨店の在り方自体が転換期にある。地元の支援策も長期的な視点で手を打たなければ、近い将来にまた同じことになるのではないか」と懸念する。

 スポンサーはどちらが優位か。丸井今井は「再建案の内容については最終的に決定するまで公表できない」(秘書広報室)としている。そうした中で市内の流通関係者は「高島屋は道内初進出で、三越伊勢丹の方が地に足が着いている。丸井を支援してきた三越伊勢丹は民事再生法の申請にもかかわっているから、現実的には三越伊勢丹だろうが、高島屋が店舗存続や雇用などで好条件を提示すれば高島屋がスポンサーにもなり得る」とみる。(高柳 謙、森健太郎)



◎原田さん、亡き父の「満州事変記」寄贈

 函館市在住の元教員原田幸一さん(68)は、満州に出征した父福治さん(享年31)が家族への思いや戦争体験などを記した手記を冊子「妻と子へ〜命尽きるまで『満州事変記』」にまとめ、市中央図書館(五稜郭町26)に寄贈した。原田さんは「平和への思い、命の大切さを感じ取ってほしい」と話している。

 上等兵として1931(昭和6)年の満州事変に出征した福治さんは43年、当時1歳の原田さんと妻の八重子さんを残し、秋田県の病院で病死。病床で、何百枚もの原稿用紙やノートに凄惨な戦争の情景、死から逃れられない病苦、両親への感謝などを克明に記した。

 原田さんは小学5年の時に八重子さんから福治さんの原稿用紙などを受け取っていたが、初めて熟読したのは教員を退職してからという。原文を読者が読みやすいように編集した。「親せきや友人など、自分を知る人たちに読んでもらいたく、1年間夢中だった」と振り返る。

 病床で激しい戦場の記憶をたどり「町の4分の1は火災を起こして5日間も煙を上げて燃え続け、焼け野原となっていた」、病院で「八重子、お前には本当に気の毒で死んで行かれないようだ。俺はまだ死にたくない。運命だからこれに従うけれど、お前や幸一と別れる辛さは病苦そのものよりも辛い」など、死を前にしてつづった福治さんの文章からは、妻子との別離、凄惨な戦渦の様子が痛ましいほどに伝わる。

 原田さんは「語り継ぐ戦争の資料として、父のような人間がいたことを分かってもらえれば」と話す。

 A5判の147ページ。100部を印刷し関係者に配布した。同図書館では2部が閲覧できる。(長内 健)



◎道南初の自主夜間中学開校

 道南で初めてとなる自主夜間中学「函館遠友塾」(今西隆人代表)の入学式が15日、函館市若松町の市総合福祉センターで行われた。塾生として参加する函館市とその近郊の20—80代の42人が“新入生”となり、新たな学びへの一歩を踏み出した。

 函館遠友塾は七飯養護学校の今西教諭が昨年秋に開設を呼び掛け、市民スタッフ約50人が集まった。授業は原則毎週水曜日午後に行い、国語や算数などの教科のほか、給食や学校行事も企画する。

 入学式ではスタッフらから大きな拍手が送られる中、第1期の塾生が入場。一人一人名前が呼ばれると、塾生は「はい」と返事していた。

 今西代表は「函館遠友塾は学びを味わうことが目的。じっくりゆっくりあせらず学んで」とあいさつ。新入生を代表し、塾生最高齢の黒田正二さん(88)が「昨年勇気を出して申し込み、今日は待望の入学式。多くの先生の指示のもと仲良く協力して楽しい勉強にしたい」と述べた。

 ことし20年目を迎える札幌遠友塾代表の工藤慶一さんもお祝いに駆け付け、「皆さんの学ぶ力が実りを迎える日は必ず来る。ぜひ一緒に歩みたい」と語り掛けた。各教科を担当するスタッフの自己紹介の後、参加者全員で「花」を合唱して締めくくった。

 函館市に住む竹内俊子さん(75)は「戦争の空白を埋めてくれる遠友塾に感謝したい。遅れたことをいろいろ教えてもらいたい」と喜んでいた。(新目七恵)



◎振り込め被害防げ…金融機関などで警戒

 依然として被害が相次ぐ振り込め詐欺を防ごうと、函館中央署、函館西署は15日、管内の金融機関などで特別警戒活動を実施した。道警函館方面本部生活安全課によると、14日現在、管内の振り込め詐欺発生は前年同期比6件減の5件、被害額は同約2036万円減の約425万円で減少傾向にある。この日は、年金支給日に当たることや、道南でも定額給付金の支給手続きが開始されていることから、市民に被害防止を呼び掛けた。

 函館中央署では、署員と警友会函館中央支部の会員計約30人が出動式の後、市内金融機関の現金自動預払機(ATM)周辺で警戒活動を実施。このうち、函館市本町の北洋銀行五稜郭支店では、制服姿の署員がチラシを配布し、「いろいろな手口があるので覚えてほしい」などと話しかけていた。

 元銀行員という市内五稜郭町の男性(74)は「家では以前にもらったチラシを冷蔵庫に張って、妻にも注意をするように話している。『私は被害に遭わない』と思っている人でもだまされているので気を付けたい」と話していた。

 一方、函館西署は、市内若松町のJR函館駅前広場で街頭啓発キャンペーンを展開。警友会函館西支部会員や函館西防犯協会などのボランティア約40人が参加した。同署管内では、3月に定額給付金の手続き代行を装う不審者情報もあり、新たな手口として警戒を強めている。署員らは、道行く市民にポケットティッシュを配布し、注意を喚起した。(今井正一、小杉貴洋)