2009年4月2日 (木) 掲載

◎絵で訴えた反戦と平和…石川慎三さんきょうから絵画展

 太平洋戦争当時、千島列島の防衛に従事し、終戦後はシベリアに4年間抑留された経験を持つ、函館市松陰町の石川慎三さん(89)の絵画展が2日から、いしい画廊(本町32)で始まる。反戦や平和への思いから、今回、初めて戦争をテーマに筆を執り、激戦の様子やシベリアでの強制労働の過酷さが伝わる作品に仕上げた。慎三さんは「これからの世代の人にはあのような思いはさせたくない。戦争の無意味さやむなしさを知ってもらいたい」と話している。

 慎三さんは、1919年函館市で生まれ、画家を目指して勉強を重ねたが、戦争が夢を引き裂いた。戦時中は、旧陸軍兵士として補給が途絶えた千島列島で連日のごとく訪れる米軍の爆撃と飢餓に苦しみ、終戦後も旧ソ連軍と戦闘を継続。46年から49年までシベリアに連行された。

 抑留中は極寒のシベリアでさまざまな強制労働に従事。後半の2年間は絵の腕を買われて、芸術班に配属となったが「スターリンらの肖像画などつまらないものを描いた」と話し、絵を描く情熱はいつしかうせた。49年末に帰国を果たし函館に戻ったが、両親が「慎三さんが戦死した」との誤報を聞き、失意のまま亡くなったと知り、失った時間への無念さだけが残った。

 長年勤めた函館ドックを退職後の1980年から2005年まで25年間、念願の絵画教室を開いた。これまで、戦争がテーマの絵は描いたことがなかったが、ことし90歳を迎えることや、戦後60年を超えて戦争の語り部が少なくなることを憂い、薄れゆく記憶や資料を頼りに昨年夏ごろから筆を執った。

 完成した作品は、迫り来る米軍の戦闘機や旧ソ連軍の戦車の前に転がる死体など、死と隣り合わせの戦場の恐怖感を表現。シベリアでの経験からは、吹雪の中、貨物列車に満載の石炭をたった2人で下ろす作業や、飢えや重労働で命を落とした仲間の遺体を運ぶ様子などを描き、氷点下30度を下回るいてつく世界の鋭利さがキャンバスから伝わる。

 絵画展では、戦争記録画のほか、妻和加子さん(82)と病気を患う長女修子さん(55)との「親子3人展」として、3人がこれまでに描きためた思い出深い作品も出品する。和加子さんは「この歳になって一緒に絵画展をやれることだけで胸がいっぱい。夫には『ありがとう』の思いだけです」と話す。慎三さんは「苦労を掛けたが妻はわたしへの最後のはなむけのつもりでしょう。娘の生きがいをともにできて良かった」とし、「平和な時代の10年はあっという間だが、軍隊での10年は長く、苦しかった。戦争の悲惨さを少しでもわかってもらえれば」と話している。

 絵画展は7日まで。午前10時から午後6時(最終日は午後4時)まで。入場無料。(今井正一)



◎景況感 過去2番目の低水準…3月の日銀短観

 日銀函館支店(市川信幸支店長)は1日、3月の企業短期経済観測調査(短観)を発表した。渡島・桧山管内の企業の景況感を示す業況判断DI(「良い」とする割合から「悪い」とする割合を引いた指数)は、全産業でマイナス33となり、統計が残る1983年以来、造船不況に見舞われた84年(マイナス39)に次ぐ過去2番目に悪い水準に落ち込んだ。前回調査(12月)から9ポイント悪化し、3期連続の下落となった。

 産業別では、製造業が前回を4ポイント下回るマイナス19。このうち機械が世界的な景気後退に伴う需要の冷え込みで10ポイント悪化のマイナス30と大幅に下落した。食料品は個人消費の低迷などが響いたが、前回より2ポイント悪化のマイナス17にとどまった。

 非製造業は前回から11ポイント下回るマイナス39で、84年3月調査(マイナス50)以来、過去2番目の低水準に。特に小売は比較可能なデータの残る91年以降、過去最悪だった前回を6ポイント下回るマイナス70となり、ワースト記録を更新。飲食・宿泊は観光客の低迷が影響し、前回から38ポイント下回るマイナス63だった。

 3カ月後の景気予測を示す先行きDIは、全産業で7ポイント低下のマイナス40。製造業では輸出関連の機械を中心にマイナス34と大幅な悪化を見込んでいるのに対し、非製造業では横ばいか若干の改善を予測する業種も多く、景況感の悪化に一定の歯止めが掛かるとの期待感も示された。同支店は「雇用環境の悪化が消費不振に跳ね返った形で、非製造業の落ち込みが目立った。相次ぐ単価の下落で企業の経営環境は一段と厳しさを増している」とみている。

 調査は2月23日から3月31日まで道南の107社(製造業33社、非製造業74社)を対象に行い、全社から回答を得た。(森健太郎)



◎荒波なんの 希望胸に…市内企業で入社式

 新年度を迎えた1日、函館市内の企業や官公庁で新規採用職員の辞令交付式や入社式が行われた。式に臨んだ新社員、職員たちは職責を全うする決意をあらたにし、社会人としてスタートを切った。また、市内では観光名所「立待岬」へ向かう市道が開通し、春本格化を感じさせていた。

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 函館信用金庫(黒滝啓洋理事長)は、同市大手町の同信金本店で新入職員の入庫式を行った。厳しい就職戦線を突破し、今春、道内の高校や短大、大学を卒業したばかりの新入職員は、期待を胸に社会人としての第一歩を踏み出した。

 2009年度は高卒4人、大卒3人、短大卒2人で、前年度より1人多い男女計9人が入庫。このうち4人が地元の高校を卒業した女性で、同信金人事担当者は「管内高卒者の厳しい雇用情勢や、団塊世代の大量退職を考慮した」という。

 黒滝理事長は、新入職員一人一人に辞令を手渡した後、「100年に一度の危機と言われる経済危機を次への飛躍のステップとして、お客様に愛される立派な金融マンになってほしい」とあいさつ。

 新入職員を代表して五稜郭支店に配属される網野寛さん(22)=知内町在住=が「愛される信用金庫を目指し、真心こもったサービスで最善を尽くします」と誓った。9人は研修終了後の10日、函館や北斗、七飯、知内の各支店に配属される。(森健太郎)

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 函館市役所では、2009年度採用の6人に西尾正範市長から辞令が手渡された。本年度は前年度より4人減の採用で、内訳は一般事務職5人、理学療法士1人。

 交付式で、辞令を受けた新職員は法令順守の宣誓文を読み上げた。西尾市長は「最初は限られた中での仕事に就くことになるが、広い視野、問題意識を持って励んでほしい」と訓示した。

 一般事務職で採用された笹川英里さん(23)は「身の引き締まる思い。市が国際海洋都市を目指している水産分野の仕事をしたい」と抱負を話していた。新職員は2週間ほどの研修を終えた後、配属先が決められ職務に当たる。(鈴木 潤)



◎市民団体が指定管理者に…函館市女性センター本年度事業スタート

 函館市女性センター(東川町11)は1日から、市民団体「にっぽん生活文化楽会」(原田恵理子代表)が指定管理者となり、本年度の事業をスタートさせた。原田代表(48)が館長に就任。女性の職場環境やDV(配偶者などからの暴力)の相談事業を始めるほか、幅広い年代を対象にした講座開催で利用者を拡大し、男女共同参画推進などの啓発を効果的に進める。

 同会はDVや児童虐待などの社会問題の対策に取り組む団体を支援し、各団体のネットワークづくりを目的に活動する任意団体。社会問題を都市型社会の弊害ととらえ、失われつつある日本の伝統文化の伝承にも取り組む。

 同センター事業では相談事業を拡大し、新たにNPO法人ウィメンズネット函館が「DVと虐待相談」(火・木曜午前10時―午後3時)、「女性の職場環境相談」(水・金曜午後6時半―同8時半)を4月第2週からスタート。いずれも電話相談で1人30分程度(無料)。家庭生活相談も従来通り継続する。

 5月からシニア世代を対象に日本文学、書道や工作、そろばんに親しむ「寺子屋いろは」を毎週水曜午前10時から開講。定員20人。1回500円。6月には館内談話室に「喫茶まったり屋」を開店し、コーヒーや和風の甘味、軽食も提供し、利用者や地域住民の憩いの場にする。このほか毎月10日程度、養護学校の生徒と物作りをする「ボランティア工房」を開設し、5月からボランティアスタッフも募集する。

 本年度の各種講座は5月から始まり、第1回の「実用おもしろ英語講座」は4月2日から受講者を募集する。定員20人。受講無料。親子、男性向けの講座も企画している。原田館長は「誰でも気軽に立ち寄れて生活に潤いが出るような機会を提供していきたい」と話している。問い合わせは同センターTEL0138・23・4188。(宮木佳奈美)



◎道路整備に168億円…09年度函館開建設実施分

 函館開発建設部は3月31日、2009年度道開発事業費中、函館開建実施分の概要を発表した。総事業費は315億2000万円で前年比4・8%減。新規事業は今金地区の国営農地再編整備事業。継続事業である道縦貫道や函館新外環状道路、函館江差自動車道など、幹線道路の整備促進に大きな比重を置いた予算配分となっている。

 予算全体の半分以上を占める道路整備は168億3100万円で同9・2%減。高速道路ネットワークの整備では、函館江差自動車道の上磯IC―北斗富川IC間(約5キロ)の今秋開通を目指すとともに、市街地から新幹線新駅へのアクセスとして重要な函館新外環状道路の工事も本格化する。また、活力ある地域社会モデルの形成として、シーニックバイウェイの「函館・大沼・噴火湾ルート」と「どうなん・追分シーニックバイウェイルート(候補ルート)」の取り組みを支援する。

 農業農村整備は20億100万円で同11%増。継続事業である大野平野地区の国営かんがい排水事業を推進するとともに、今金地区の国営農地再編整備事業の調査計画を開始する。港湾整備は38億1600万円と同6・9%減。函館港の本港地区では臨海道路の整備、弁天地区では、函館国際水産・海洋総合研究センターと一体利用を目指す水深6.5メートルおよび5.0メートル岸壁の改良工事などを行う。

 水産基盤整備は34億3400万円で同2%減。久遠漁港や函館漁港では自然調和に配慮した施設整備を進める。

 このほか、治水に14億4700万円、都市水環境整備に400万円、道路環境整備に30億2400万円、空港整備に9億6600万円となっている。(小川俊之)