2009年4月6日 (月) 掲載

◎高橋病院IT活用表彰…経産省「経営貢献賞」

 特定医療法人社団「高橋病院」(函館市元町32、高橋肇理事長)がこのほど、情報技術(IT)の活用で優れた成果を残した中小企業などをたたえる「北海道IT経営貢献賞」(経済産業省道経済産業局長表彰)を受賞した。医療分野から初めての受賞で、高橋理事長は「時代の流れに合わせて取り組んだことが評価され光栄。経営方針である人にやさしいITづくりを今後も進めていきたい」としている。

 今年の同賞には、高橋病院も含め道内5法人が選ばれた。同病院はこのほか「中小企業IT経営力大賞2009」(同省主催)で、ITで活動の効率化、最適化を図った組織と認める「IT経営実践認定組織」にも選ばれている。  同病院は03年から院内のIT化に着手し、道南で最初に電子カルテシステムを導入。06年には入院ベットにタッチパネル式のテレビモニターを設置した「ベッドサイドシステム」を構築し、患者がカルテを閲覧できるようにするなど、サービス創出に生かしている。

 昨年4月に道南圏で正式に稼動した医療情報の共有システム「道南地域医療連携ネットワークシステム(メディカ)」の立ち上げに尽力。現在も同システムを活用し、急性期病院から転院した患者の回復期リハビリテーションを積極的に受け入れている。中でも同システムによる医療機関同士の連携によって、検査や投薬の重複の防止につながることが、評価につながった。

 同病院は介護、福祉を含めた地域全員で患者の情報を共有する「生涯カルテ」や、高齢者の転倒防止する安全管理システムの構築に取り組んでいる。高橋理事長は「ITはあくまで手段だが、今の医療現場はITなしでは立ち行かない。ITを組織づくり、人づくりに生かすツール(道具)にしたい」と話している。(鈴木 潤)



◎北朝鮮ミサイル発射 渡島にも緊張走る

 北朝鮮が5日、弾道ミサイルを発射したことを受け、函館をはじめとした渡島地域の各自治体や関係機関では情報伝達や安全確認などの対応に追われた。大きな混乱や被害は確認されていないが、市民からは北朝鮮に対する非難や、政府に強い態度を求める声などが聞かれた。

 函館市役所では前日に引き続き、武田忠夫防災担当参事ら職員9人の警戒態勢を敷き、本庁舎6階の総務部で情報収集に当った。午前11時10分ごろ、テレビの臨時ニュースで「まもなくミサイル発射の模様」との情報を確認すると、フロア全体に一気に緊張が走った。

 同33分、政府の緊急情報ネットワークシステム「エムネット」が作動し、武田参事のパソコンに「北朝鮮から飛翔体が発射された模様」との第1報が入ると、職員が武田参事の周囲に集まり、慌しく情報の整理や集約に努めた。

 受信情報には飛翔体の落下が予測される時刻や場所なども順次追加され「日本上空を通過したと推測される」との第4報が同39分に入ると、現場にはようやく安堵(あんど)の雰囲気が漂い、職員は続報を注意深く見守った。

 エムネットによる情報は同55分、「日本の東2100キロの太平洋上で追尾終了」「引き続きテレビ、ラジオの情報に注意してください」との第8報で打ち止めとなった。この日は市民からの問い合わせやシステムトラブルなどの混乱はなく、各支所、市役所ともに担当職員が常時待機する態勢は午後3時までに解除された。武田参事は「まずは被害が何もなく一安心している」と話した。

 函館市消防本部では、前日同様に管理職4人による情報連絡室を立ち上げ、「ミサイル発射」の情報を受けると同時に各部署の責任者を招集。地域の安全を確認した上で夕方までに解散した。渡島支庁では地域政策課の防災担当職員4人が朝から臨時待機。道の危機対策局から電話でミサイル発射の報を受け、管内の各関係機関に連絡を取り被害や混乱がなかったことを確認すると、午後1時に1人を残して警戒態勢を解いた。

 今回のミサイル発射に対しては、直接的な被害が見られなかったためか、市民の反応は比較的冷静だった。北大水産学部修士1年生の大前智哉さん(23)は「自分の住む地域と離れた場所のことで、日本に落ちるという危機感はなかった。(日本海に)落ちたと知った時も『そうか』という感じだった」と話す。一方、市内のタクシー運転手の男性(57)は「発射はラジオで知り『やっぱりやったんだ』と思った。日本だけでは相手にされないので(米国など)他国と連携して北朝鮮を非難すべきだ」と、政府の強い対応を求めていた。



◎魅力的な街並み楽しんで…「松前藩屋敷」今季営業スタート

 【松前】松前町西館68の観光施設「松前藩屋敷」で5日、今季営業が始まった。親子連れらの観光客が訪れ、城下町を再現した建物が並ぶ敷地内で記念撮影に興じる場面が多く見られた。

 午前10時に正門前で安全祈願祭を実施。管理、運営する松前観光協会(疋田清美会長)の職員や前田一男町長らが玉ぐしを捧げるなどし、今季の無事と観光振興を祈った。

 今年も営業初日は無料開放とし、大鍋で煮込んだ豚汁200食も振る舞われた。同協会女性部のメンバーが早朝に仕込み作業をし、「いいだしだからおいしいよ!たくさんお代わりしてください」と来場者と交流を深めた。

 家族4人で来場した函館湯川小6年生の岩上寿哉斗(じゅきと)君(11)は「初めて来たけれど、街並みが面白くて江戸時代にタイムスリップした気分になった」と笑顔だった。

 同施設駐車場北側には松前出身の書家金子鷗亭(1906—2001年)の作品などを刻んだ石碑(高さ、幅ともに3—4メートル)84基が並ぶ石碑公園「北鷗碑林(ほくおうひりん)」(昨秋オープン)がある。藩屋敷では、この石碑にちなんだ拓本づくりを体験することができる。

 疋田会長は「今年は体験観光に力を入れる。美しい景色に加え、魅力的な文化を肌で体感してもらいたい」と声を弾ませていた。

 午前9時—午後5時(最終入館は同4時半)。入場料は大人350円、中学生以下230円。10月末まで。

 問い合わせは同協会TEL0139・42・2726。(田中陽介)



◎函館市役所と亀田支所が臨時開庁

 函館市役所本庁舎(東雲町)と市亀田支所(美原)で5日、転入・出などの届け出を受け付ける臨時窓口が開設され、多くの来庁者が届け出や各種登録証明の手続きを済ませた。

 市民部戸籍住民課によると、毎年3月下旬からの3週間は転出、転入の届け出に訪れる市民で窓口が込み合い、その件数は年間の約2割にまで達するという。同課は混雑を少しでも緩和するため、2006年から毎年、4月の第一日曜日を臨時開庁日とし、転入届けのほか、印鑑登録証明や国民健康保険、児童手当など各種手続きができるよう応援体制をとっている。

 本庁舎・亀田支所ともに午前8時45分に開庁。同課によると「3月30日が一番のピークで、30分待ちは当たり前だった」が、この日は大きな混雑もなく、来庁者は滞りなく手続きを済ませた。一日で同課が取り扱った各種手続きの総件数は612件とだった。

 この日、転勤で札幌から引っ越してきたばかりの道職員、川田晃義さん(53)は「札幌の勤め先で5日が臨時開庁日ということを知り、足を運んだ。明日から仕事が始まるので、その前に転入の届け出ができて助かります」と話していた。(長内 健)



◎「海炭市叙景」への思い語る…熊切監督トークショー

 最新作「ノン子36歳(家事手伝い)」の上映に合わせた帯広市出身の熊切和嘉監督(34)のトークショーが4日、函館市本町の市民映画館「シネマアイリス」で行われた。熊切監督は、監督を務める函館出身の作家佐藤泰志の遺作で、市民有志が映画化を目指す「海炭市叙景(かいたんしじょけい)」への思いも語った。

 「ノン子36歳」について、熊切監督は「日活ロマンポルノを意識し、匂いのする映画にしたかった」と説明。「坂井真紀さんという女優は最高。当たり前に性の部分を描きたいという思いに賛同してくれた」と振り返った。

 「海炭市叙景」については「小説を読んだ時、最初の兄妹の話が印象的だった。死のイメージを受けつつ周りの市民の人生の断片が描かれ、徐々に確実に生きている生のイメージに変わっていく」などと原作の感想を語った。

 「海炭市叙景」のプロデューサーを務める越川道夫さん(43)もゲスト参加し、「作品は発刊当時と復刊後も読み、映画化の話は耳を疑った。函館の今の風景は5年後には様変わりするはず。フィルムに定着させる最後のタイミングでは」と語った。

 会場には市民ら約40人が集まり、熱心な様子で3人のトークに聞き入っていた。(新目七恵)



◎きょうから春の交通安全運動

 春の全国交通安全運動(6—15日)のスタートを前に、渡島支庁や道警函館方面本部などは5日、函館市美原4の渡島合同庁舎前で交通事故撲滅に向けた住民総決起大会を開いた。函館周辺2市1町の首長らをはじめ、約25団体・機関から約300人が参加。住民を代表して函館中央地区安全運転管理者協会の白尾欣成さんが「依然として交通事故で尊い命が失われ、運転者のマナーアップが強く望まれている」と述べ、悲惨な交通事故の根絶を誓った。

 同函本交通課によると、管内の事故死者数は前年同期比3人減の4人、道内では同3人減の32人が犠牲となっている(4日現在)。運動期間中は「高齢者事故防止」「交差点事故防止」「飲酒運転根絶」など5項目を最重点対策に、警察による取り締まりや住民団体が各種啓発活動を展開する。

 決起大会で寺山朗渡島支庁長は、道内での死亡事故や交通事故発生が減少傾向にあることに触れ「交通安全に対する道民運動の成果が実を結んできている」とあいさつ。函本の大江宜信本部長は「暖かくなって活動期となったが、気を引き締めて防止対策に努めなくてはならない」と住民にも協力を求めた。

 大会終了後、函本交通機動隊のパトカーや白バイ13台が管内のパトロールに出発。参加住民は沿道で旗の波作戦を行い、ドライバーに「シートベルト着用」や「スピードダウン」を呼び掛けていた。(今井正一)