2009年4月7日 (火) 掲載

◎新しい仲間と…新「弥生小」開校式

 函館弥生小学校と同西小学校の統合で誕生した新しい弥生小(村上一典校長、児童251人)の開校式が6日、函館市弥生町の同校(旧西小校舎)で行われた。教職員や児童、保護者らが集まり、新たな船出を祝った。

 式典で多賀谷智教育長は「新しい歴史の第一歩を歩み始める喜びを分かち合いたい」と呼び掛け、開校を宣言。村上校長が「夢や希望に向かい一生懸命努力していこう」とあいさつした後、児童を代表して児童会会長の6年、柴田梨乃さんと浜中公輝君が「新しい仲間たちとたくさんのことに挑戦したい」と喜びの言葉を述べた。

 最後に、児童が旧西小と旧弥生小の校歌を順番に歌って締めくくった。

 開校式終了後は始業式と入学式が行われた。旧西小校舎は、新校舎完成の2011年度まで使う予定。

 この日、道南の多くの小、中学校でも入学式と始業式が行われた。(新目七恵)



◎DV被害者の自立 準備期間サポート…「ステップハウス」開設

 夫や恋人からの暴力、DV(ドメスティックバイオレンス)に悩む女性を支援するNPO法人「ウィメンズネット函館」(古川満寿子代表)は4月中旬に事務所を移転し、被害者が新しい生活を始めるまでの準備期間に滞在できる「ステップハウス」を開設する。シェルター(一時保護施設)に入れない事情や自活に不安がある被害者に寄り添い、自立を助けるのが目的。さらに新事務所を拠点に被害者が気軽に集える「たまり場」づくり、就労支援にも力を入れる。(宮木佳奈美)

 ステップハウスは新しい生活への一歩(ステップ)を踏み出すための場所。札幌市、室蘭市にもあるが、道南で民間のステップハウスが設置されるのは初めて。函館市が本年度からDV被害者の自立支援事業に乗り出し、ステップハウスの運営費60万円、就労支援にかかわる経費40万円を補助する。

 新事務所は2階部分をステップハウスとして1、2世帯が入居できるようにする。シェルターを出た直後など、自立への不安があり、支援が必要なケースが対象。このほか仕事を持っていたり、夫以外の家族から暴力を受けていたりする場合、シェルターへの入居が困難でステップハウスの役割が重要性を増す。古川代表は「いろんな相談を受け、行動をともにしながらサポートしていく」と話す。

 DVから逃れてきた被害者は住み慣れた家や地域を離れ、子どもも転校を余儀なくされる。古川さんは「当面の問題が解決しても心にはさびしさや悔しさが残る。シェルターを出た時から孤独を感じてしまう」と指摘し、シェルターを出て地域で暮らす被害者が集える機会も設ける。被害者の話を受け止めて癒やす「傾聴ボランティア」の協力も得たいという。

 就労支援では、DV被害者の8割が生活保護受給者となる現状を受け、パソコン研修、ハローワークへの同行支援、化粧品メーカーによるメークレッスンなどを検討。ボランティアの講師による趣味の講座を開き、作品を展示、販売することも考えている。

 新事務所の場所は公表していない。問い合わせ、相談は同法人TEL0138・33・2110。(宮木佳奈美)



◎函館への郷愁 78編に…市内出版社が長谷川濬の詩文集刊行

 函館の出版社「Mole(モール)」(津田基代表)がこのほど、函館出身のロシア語翻訳家、長谷川濬(しゅん、1906—73年)の未発表のエッセーなどをまとめた詩文集「木靴(さぼ)をはいて—面影の函館」を刊行した。文学界で名をはせた「長谷川四兄弟」の三男が死の直前、ふるさとの記憶を思い起こしつづった78編に加え、同時代に活動したアマチュア写真家、熊谷孝太郎(1893—1955年)の写真28枚も収録。津田代表は「豊かだった大正期の地方都市の輝きが感じられる」と話している。

 未発表の詩文は横浜在住の興行プロデューサー、大島幹雄さん(56)が2004年、長谷川と交流のあった函館出身の興行師、神彰(1922—98年)の取材中に、長谷川の遺族から預かったノートの中から見つけた。知り合いだった津田さんに相談し、2人で3年掛かりで編集作業を進めてきた。

 「南部せんべいのやける匂/炭火に熱する円型鉄板/はじめるごま/無愛想なおやじとせんべい」—。「はこだて五島軒界隈」と題された詩の冒頭だ。78編の中にはハリストス教会や大門など西部地区の当時の様子を記す詩文が多く盛り込まれている。

 中学生だった長谷川が、トラピスト修道院で買った木ぐつで登校して教員に怒られたエピソードや長兄の海太郎に関する思い出なども回想。添えられた写真と合わせ、大正時代の函館の街並みや風俗に思いをはせることができる。

 津田さんは「函館への純粋なノスタルジーと美しい文章が胸を打つ」と説明。大島さんは「40年以上離れていたにもかかわらず20歳までの函館がそのまま残っている。地元の人にぜひ読んでほしい」と話している。

 初版は2000部作成。価格は2520円。市内の主要書店で販売中。問い合わせは津田さんTEL0138・27・1018。

 長谷川濬

 ロシア文学の翻訳家、作家。長兄は林不忘のペンネームで小説「丹下作善」をヒットさせた海太郎、二兄は画家の燐ニ郎、弟は文学者の四郎。函館弥生小では亀井勝一郎と同級。函館中学(現・函館中部高)卒業後、漁船で季節労働などに従事。ロシア語を学んだ後、満州で巡回映写力を注ぐ傍ら小説を発表。翻訳したロシア人作家バイコフの動物小説「偉大なる王(わん)」で有名に。戦後はロシア語通訳を務めながら小説や詩などを作り、73年没。享年67。(新目七恵)



◎函館市 あす申請書発送…定額給付金と子育て手当て

 函館市は8日、定額給付金と子育て応援特別手当の申請書の発送を開始する。定額給付金は約14万2400通、子育て応援特別手当は約2700通を対象者に郵送する予定。6日現在、記入方法などを説明するリーフレットなどとともに封入する作業はほぼ終わり、配達を待つばかりだ。どちらも申請から支給まではおよそ1カ月を要するという。

 市役所定額給付金事務局によると、定額給付金については、シルバー人材センターや市の臨時職員約55人が3月下旬から封入作業に入り、7日午前にすべての作業を終える。同日午後には郵便局の各集配局に送られ、8日から11日にかけて配達される予定だ。

 申請書と本人控えの用紙には、事前に世帯の氏名や住所、給付対象となる人数、給付額が印字されており。受け取った市民は、振り込みを指定する口座番号や名義などを記入し、サインと印鑑を押し、通帳の写しと共に同封されている返信用封筒(無料)で送り返すか、市の臨時窓口に直接持参する必要がある。受付開始日は、郵送は13日、臨時窓口は20日。

 子育て応援特別手当は、2002年4月2日から05年4月1日までに生まれた第2子以降の子どもが居る世帯が対象。函館で給付が確定しているのは約2700世帯だが、未確定の世帯にも案内を送付する。申請書などは12日までに対象者に届く予定で、13日には郵送、窓口共に受け付けを開始する。

 同給付金事務局と子育て支援課によると、給付金と特別手当のいずれについても「申請方法が郵送か窓口か、受け取り方法が振り込みか現金かで給付までの期間が変わることはない」という。また「数日であれば支給までの日数もほとんど変わらない」として、市役所を訪れる手数のかからない郵送申請を勧めている。

 申請の受け付け期限は、どちらも10月13日(当日消印有効)。申請しない場合、受給を辞退したものとみなされるため注意が必要だ。問い合わせは、定額給付金については同給付金事務局TEL0138・21・3975。子育て応援特別手当については、同支援課TEL同21・3905。(小泉まや)



◎野呂さん、10日にそば店オープン

 3月に函館市内の小学校長を退職した野呂克巳さん(60)が10日、長年の夢をかなえて同市昭和1に蕎麦(そば)の館「がびの」をオープンさせる。そば店では珍しい「学習・体験室」を併設し、客がそば打ちの様子を見られるほか、希望者は体験もできる。野呂さんは「仲間と一緒にそば打ちに打ち込みたい」と、第二の人生スタートに胸躍らせている。

 野呂さんは教員として道南各地の小学校に赴任し、3月に函館八幡小の校長で退職した。1997年に函館蛾眉野小(廃校)の学習活動でそば打ちに出会い、以来ほぼ独学でそば打ちを勉強。2002年に立ち上げた勉強会「函館蕎麦打ち同好会『ふれあい』」では指導者として活躍し、自宅に作った専用の部屋を利用して活動してきた。会員は現在56人にもなり、20—70代と幅広い年代でにぎわっている。

 退職を意識した3年ほど前から、「そばを食べながら語り合えるサロンのような店を持ちたい」との夢を持つように。昨年、退職金を使って念願の店を建て、店名は思い出の蛾眉野小から取った。

 ゆったりとした作りの店舗には、奥に約12畳の学習・体験室を設置。ふれあいの活動の場となるほか、「もっとたくさんのそば打ち好きに会いたい」との思いから、希望すればだれでも体験できる場所にした。

 メニューは、道産そば粉にこだわった手打ちそばのもりとかけのみ。「キタワセソバ」や「牡丹蕎麦」など、1週間ごとに使用するそば粉が替わる。オープンの週は幌加内産ほろみのりの石臼びきを予定。当面はそば粉の割合が8割の二八そばだが「慣れてきたら10割そばも提供したい」と意気込み、「味には自信がある。そば粉の違いを楽しんでほしい」と話す。

 店は昭和1の14の1、函館商業高校グラウンドに面する。営業時間は午前11時から午後2時。価格は550—650円程度で、そば粉の種類により異なる。2時以降はそば打ち体験が可能。材料費を含む体験料は粉によって異なり、5人分2500円から。火曜定休。問い合わせは090・8905・4342(野呂さん)。(小泉まや)



◎「海炭市叙景」熊切監督らロケハン

 函館出身の作家、故佐藤泰志(享年41)の代表作「海炭市叙景(かいたんしじょけい)」の映画化を目指す市民有志の製作実行委員会(菅原和博委員長)の活動で、東京在住の熊切和嘉監督(34)らが6日までの3日間、函館市内とその近郊で撮影地を探すロケハンを行った。一行は佐藤泰志の墓がある東山墓園などをめぐり、映画制作に向けた構想をふくらませていた。

 熊切監督は4日の最新作「ノン子36歳(家事手伝い)」の函館上映を機に越川道夫プロデューサー(43)と共に来函。同日実行委メンバーと顔合わせし、「人間のタフな面を描き重厚な映画になるはず」とイメージを語った。

 初日は函館山や函館市文学館などをめぐり、5日は北斗上磯中のプラネタリウムや函館市赤川町の笹流ダムなどを見学。東山墓園では佐藤泰志の墓に静かに手を合わせ、原作者に思いをはせていた。

 熊切監督は「市内のどこからでも函館山が見える。原作の要所でさまざまな角度から見える山の重要性を感じた」などと手応えを語った。越川さんは「登場人物が肉体を持って感じられ、どんな映画にすれば良いのか具体的に分かり始めてきた」と話していた。

 映画化に向け、実行委は制作予定費2000万円のうち、1000万円を市民からの募金で集めたい考え。19日には西部地区で行われる「バル街」でPR活動を行う。

 問い合わせは事務局(シネマアイリス)TEL0138・31・6761(午後1時—同4時)。(新目七恵)