2009年5月1日 (金) 掲載

◎帯広出身の松村さんが2日に豚丼専門店オープン

 帯広市内で洋服のセレクトショップ「マグネティックモンスター」を営む松村幸司朗さん(38)が5月2日午前10時、函館朝市(函館市若松町)に十勝豚丼の専門店「ポルコ」をオープンさせる。十勝の名に恥じない味を提供しようと厳選した豚肉を帯広から取り寄せ、「函館市民にも十勝の豚丼のおいしさを知ってもらいたい」と意気込みを見せる。(宮木佳奈美)

 松村さんは帯広市出身。高校時代から自分の店を持つのが夢だった。催事派遣業者に登録し、道内各地で古着を売っていたところ、函館のデパートで常設出店を依頼され、これを機に2002年、函館市内に古着屋を開店した。

 函館での生活で十勝の豚丼の味が恋しくなり、「誰も豚丼専門店をやらないならやりたい」と出店を決意。「自分が食べたかった」のが一番の理由だが、函館では十勝ほど豚丼が認知されていないため、ふるさとの味を広めたいとの思いもあった。店名の「ポルコ」はイタリア語などで「豚」を意味する。

 幼いころ親せきを訪ねて来た記憶がある函館の大門地区の雰囲気が好きで、松村さんは「出店するなら季節に関係なく活気ある朝市」と決めていた。地元客や朝市関係者にも味わってもらおうと、持ち帰り用も販売する。

 豚肉はあちこち食べ歩いてたどり着いたという「十勝でしか手に入らない、牛肉のようなさしが入ったロース肉」(松村さん)を使用。小料理店で働いていた亡き母からアドバイスを受けて考案した自家製ダレで、「飽きずにしょっちゅう食べられる味」に仕上げたという。

 メニューは特選豚丼980円、極上特選豚丼1280円、ハーフ特選豚丼780円の3種類で、いずれもみそ汁、漬け物付き。持ち帰り用はみそ汁無しで各100円増し。タレと塩の2種類の味を選べる。十勝管内鹿追町の牧場併設のカフェ「カントリーホーム風景」のソフトクリームも販売する。ゴールデンウイーク中(6日まで)は午前7時―同3時。定休日、7日以降の営業時間は未定。問い合わせは同店TEL0138・84・5588。



◎丸井今井函館店存続決定、安どと引き締めムード

 民事再生手続き中の道内百貨店「丸井今井」(札幌市)が30日、経営再建を支援するスポンサー企業に三越伊勢丹ホールディングス(東京)を選定したことで、存廃に揺れた函館店(函館市本町)の存続と旭川店の閉店が決まった。市内の関係者には安どの表情が広がる一方、従業員の雇用や今後の店舗運営を憂慮する声も少なくない。

 同日午後に開かれた臨時取締役会で正式に決定。丸井今井によると、三越伊勢丹が3―4カ月後に設立する新会社に札幌本店と函館店の営業権を譲渡する。パートを含む従業員はいったん全員解雇し、新会社で再雇用する方針。函館店では現在の約210人のうち40人前後が削減される見通しだ。

 函館店については「他の地方店と比べ商圏が独立しており、床面積当たりの売り上げが高く、収益力がある」(秘書広報室)と位置付け、スポンサー候補だった高島屋(大阪)の再建案にも存続が盛り込まれていた。ただ、高島屋の提示額では債権者への理解が得られないと判断した。

 スポンサー決定を受け、西尾正範函館市長は記者会見し「市民の(存続への)強い思いが通じ一安心している。今後も関係機関に従業員の雇用確保やテナントへの配慮を要請し、地域の核店舗として機能していくよう努力したい」と述べた。函館商工会議所の高野洋蔵会頭は「今後、地域経済界としても支援につながる各種事業を展開し、一層の応援に努めたい」とコメントした。

 一方、同会議所幹部は「まだスタートライン。もろ手を挙げて喜べる段階ではない」として慎重な姿勢を崩していない。函館店の30代の女性従業員も「残るのは良かったが、リストラされるとすれば自分たちもいつどうなるか分からないので落ち着かない」と不安を隠さない。

 函館店を訪れた近くの自営業の女性(58)は「少々高くても函館のシンボルのようなデパート。残ってくれてうれしい」と歓迎する一方、市内杉並町の男性(76)は「百貨店には夢があるが、現実は専門店で買う方が多い。これまで通りの売り方では客のニーズに応えられていない」と注文を付けた。

 地元商店街は今回の決定に胸をなで下ろしつつ、引き締めムードが漂う。五稜郭商店街振興組合の小島正彦理事長は「従来の大型店依存の集客を改めるチャンス。商店街との競争で相乗効果が生まれれば」、協同組合五稜郭の久保一夫理事長は「行政のサテライト機能の設置など人が自然と集まる仕掛けづくりが急務」と努めて冷静に話していた。(森健太郎)



◎ウイルス侵入、函館市役所で戸籍業務など停止

 函館市役所で30日午前11時半ごろ、コンピューターのシステム障害が発生し、本庁舎と各支所で戸籍や税務関係の証明書発行、届け出受け付けなどが終日ストップした。市総務部によると、ウイルスの侵入が原因。夜通しで復旧作業を急ぎ、1日は窓口業務の再開ができる見通し。個人情報の流出はないという。

 函同部によると、市役所8階情報システム課のサーバーに「スティンガー」と呼ばれるウイルスが侵入し、同11時50分ごろまでに本庁舎内の約20台のサーバーを停止。本庁舎と支所にある約450の端末も使用できなくなり、住民基本台帳や財務会計のほか、パソコンを見ながら行う医療助成や介護保険など福祉関係の窓口業務も止まった。

 函30日は午後5時半の終業までに607件の影響があり、内訳は戸籍関係243件、介護保険や国民健康保険などの民生関係が236件など。

 函侵入したのはネットワークシステムを破壊するウイルスで、市情報システム課は「各部で作ったデータ、媒体の中にウイルスがあり、サーバーに送る際に感染したことが考えられる」という。職員のパソコンとはネットワークが別で、庁内メールやパソコン利用に影響はなかった。

 函市役所1階の戸籍住民課では、システム障害発生を伝える張り紙を掲示し、来庁者に事情を伝えた。住民票などの申請を後日にしてもらったほか、受け付けた市民には復旧後に郵送や職員が届けることで理解してもらった。

 函求職活動のため住民票の申請に訪れた上湯川町の無職の男性(49)は「二度手間になるが、公的書類なので自分で取りに来たい。世の中便利になっても、障害があればすべてストップするシステムも考え物」と話し、印鑑証明の申請に訪れた赤川1の主婦(65)は「急ぐので、できれば連休前の1日までに復旧してほしい」と話していた。

 函本庁舎と各支所で、ウイルス除去作業と再開試験が夜通しで行われた。(高柳 謙)



◎ナルミが経営破たん 自己破産申請へ

 【乙部】建設資材系商社のナルミ(乙部町館浦、古畑篤社長)が30日、資金繰りに行き詰まり事実上倒産した。5月中旬にも裁判所に自己破産を申請する。3月末時点での負債総額は約45億円。同社を含むグループ7社の負債総額は約70億円に上るが、今後の調査で金額が膨らむ可能性がある。同日、記者会見した古畑社長は、景気悪化に伴う売上低迷、取引先に対する多額の貸付金が焦げ付いたことが原因と説明したが、金融機関や取引先企業は、商取引の実態が無い融通手形の振り出しや不透明な資金の流れがあると激しく反発。今後の破産手続きは難航も予想される。(松浦 純)

 古畑社長、斉藤信明専務、土谷修一弁護士が、同社で開いた記者会見で明らかにした。古畑社長は、景気低迷による業績悪化、関係企業に対する融資の焦げ付き、工事発注に伴う前渡金などの資金回収が困難になったことが破たんの原因と述べた。具体的な融資先、取引先、金額などの明言しなかった。

 同社によると、資金繰りの悪化に伴い、商取引の実態が無い融通手形を企業間で振り出していた。業績が悪化し始めた2007年ごろから常態化したという。振り出し先の企業が金融機関などで現金化したが、新たな融通手形で資金を確保するという自転車操業に陥った。手形の一部は金融業者などに流出し実態がつかめないという。

 同社は1912年創業。59年に会長の鳴海亘氏が乙部製材として法人化。90年に社名変更。木材や骨材などの資材販売、建設、健康食品販売など多角化を進め、檜山管内最大の企業グループに成長。08年度の売上高は50億円弱。健康食品などの通販事業部は1日、同社の鳴海周平常務が設立する新会社が事業継承する。

 グループ会社は、乙部町の丸善産業、丸協石油をはじめ、江差町や八雲町に建設会社や採石会社など7社ある。丸協石油と丸善産業は事業継続の方向。同社とグループ会社7社の従業員数は約60人。継続企業を除く約45人は30日付で解雇。建設部門では150人規模の季節労働者が雇用先を探している。

 また、道南では建設業者を中心に、同社の傘下にある企業も数十社程度ある。同社が1回目の不渡りを出した3月30日以降、関係先の3社が事実上倒産。事業休止や廃業した企業も複数ある。1億円超の工事代金が支払われていない下請企業も複数あり、連鎖倒産の拡大が懸念されている。

 30日には乙部町が、寺島光一郎町長をトップに課長級職員で構成する「緊急経済雇用対策会議」を設置。離職者の再就職支援や生活安定対策に当たる。檜山支庁でも高橋則克支庁長をトップに「ナルミ関連経済・雇用緊急対策会議」を設置し、連鎖倒産防止や雇用対策の検討に入った。江差町も4月21日に対策本部を立ち上げている。



◎自衛隊で“観桜駐屯地一般開放”

 陸上自衛隊函館駐屯地(函館市広野町6)は30日、構内にあるサクラを楽しんでもらおうと“観桜駐屯地一般開放”を行った。26日の寒さの影響でソメイヨシノなどのサクラは満開でなかったが、訪れた人たちは珍しい場所での花見を楽しんだ。

 周辺の道路からサクラを見ていた市民から観桜の要望があったことや、自衛隊への関心を高め、理解を深めてもらおうと初めて企画。正門から伸びる約500メートルの道路のうち、約200メートルを開放。夜には投光機でライトアップし夜桜を演出した。

 構内には1950年の開設時から約260本のサクラがあり、例年の開花日や見ごろの日を考慮してこの日に開いたが、直前に冬に逆戻りした寒さに見舞われ、花は三分咲き程度。友人同士で訪れという女性は「正門に入る時に緊張したが、隊員が明るくあいさつしてくれたので気持ちが和んだ。構内を歩くのは初めて。今年は満開で花見にはならなかったが、来年以降も続けてほしい」と話していた。

 このほか、駐屯地資料館と売店も開放され、貴重な資料に興味深そうに見入る人もいた。同駐屯地の清水薫広報室長は「隊員がサクラの手入れをし、来年も市民を迎えたいと思っているが、開催は未定。行うとすれば訓練車両の紹介など、自衛隊を知ってもらえる機会にしたい」と話していた。(山崎純一)