2009年5月13日 (水) 掲載

◎函館開港150周年記念事業、式典開催まで50日切る

 函館開港150周年記念事業の記念式典が開催される7月1日まで残り50日を切った。同記念事業実行委員会(会長・西尾正範市長)を中心に準備を進めているが、市民から「PRが足りない」「盛り上がりに欠けている」などとささやかれ始めている。市役所庁舎や中心市街地中などには垂れ幕や旗などが飾られておらず、市民らは記念事業のムードを体感できないようだ。同実行委は「16日以降から本格的な周知、宣伝活動を展開したい」としている。

 (鈴木 潤)

 記念行事は開港記念日の7月1日に市民会館で記念式典が行われるほか、8月8―16日までの9日間にわたり函館港緑の島を「DREAM BOX150」と称して、「食」「音楽」「スポーツ」をキーワードとした多彩なイベントが繰り広げられる。

 しかし、イベント概要などのちらしやパンフレットが街中で配布されていないため、市民は知る機会がない。市内桔梗の男性(37)は「いつ何をやるのか分からない。もう少し市民が分る形で情報を発信してほしい」と注文をつける。別の60代男性も「せっかくの記念の年なのに街に何もなく寂しい」と話す。

 市民の不満に対し、同実行委事務局長の会田雅樹港湾空港部参事は「大型連休前に垂れ幕や旗を飾る予定だったが、さまざまな事情で延期となった。五稜郭祭が始まる16日には垂れ幕を出す予定」と説明。さらにちらしを配布し、旗を飾っていく考えで、「6、7月の宣伝周知活動は遅れがなく実施し、本番までに盛り上げたい」と挽回を期す構え。

 「同じ開港150年の横浜は大いに盛り上がっている」という声も少なくない。横浜市の記念事業を運営する開港150年・創造都市事業本部の担当者は「直前まで決まらず、なかなか発表できなかったことが多かった」としながら、「昨年12月ごろから垂れ幕や旗を出してきた。デパートやコンビニエンスストアにキャラクターグッズを置いてもらい、開港の年を意識させるようにした」としている。

 西尾市長は「市民手作りの事業として運営しているのでなかなか動きが見えてこない部分はある」と話す。市民参加の事業としていかに機運を高めていくことが必要だ。



◎恵山中にニュートンの木移植

 旧尻岸内中が東京の植物園から譲り受けた「ニュートンの木」がこのほど、函館恵山中学校(木村元校長、生徒83人)敷地内に移植された。木は、イギリスの物理学者アイザック・ニュートンが「万有引力の法則」を発見するきっかけとなったリンゴの木の子孫。旧尻岸内中校舎を使っていた恵山高の閉校に伴い、植え替えとなった。12日には移植記念祭が行われ、関係者は「子どもの励みや目標になれば」と期待を寄せている。

 ニュートンの木はイギリスで接ぎ木によって増やされ、1964年、日本に苗木が送られた。その木は現在、東京の東京大大学院理学系研究科附属植物園(通称・小石川植物園)にあり、全国各地に分譲されている。

 移植された木は94年5月、当時の鈴木武嗣尻岸内中校長が小石川植物園に申し込み、植樹した。2005年、尻岸内中が東光中と統合した後も、校舎を引き継いだ恵山高が木のせん定などを続けていた。

 記念祭には保護者や地域住民ら約20人が来賓として参加。あいにくの雨模様だったが、参加者が中庭に植えられた約2メートル30センチの木に土をかけ、立派な成長を願った。

 体育館での式で木村校長は「それぞれ思いを持つ記念日にして」とあいさつし、2年の斉藤啓太君と田中翔太君が木の由来を英文と訳文で発表。3年の佐々木将斗生徒会長は「木を誇りにし、自分を高めたい」と感謝の言葉を述べた。

 来賓で参加した鈴木元校長は「中学生に将来への希望を見出してほしいと願って植えた」と回想。取り寄せた苗木は2本あり、当時東光中に一本をゆずった事実を明かし、「(旧東光中の)恵山中敷地内で成長しているはず。ぜひ探して」と呼び掛けた。尻岸内中卒業生も駆け付け、植樹時1年生だった長谷部裕美さんは「これからも元気に育ってほしい」と話していた。(新目七恵)



◎函館市、定額給付金 15日に1回目支給

 函館市は12日、定額給付金と子育て応援特別手当の1回目の支給を15日に実施すると発表した。窓口支給も同日から始まり、市役所1階特設窓口と各支所で平日の午前10時から午後4時まで対応する。給付金の口座振り込みは1週間ごと、子育て応援手当は2週間ごとに行われる。

 15日に支給する定額給付金は対象14万3000世帯のうち、申請初日(4月13日)に受け付けた2万4000世帯分となる。4月14日に受け付けた分は5月21日の振り込み、4月15日以降は5月27日以降となる。市定額給付金事務局は「給付が遅いと市民からおしかりをいただいているが、安全、確実な作業を進めている。金融機関は他市町村の分も取り扱うため、週1回のペースにならざるを得ない」と話し、理解を求めている。

 給付金の申請書類で記載ミスが見られ、口座番号や名義人、支店名が間違っているケースが多いという。

 市が独自に、他の住居に避難しているDV(配偶者からの暴力)被害者に支給する定額給付金の対象者は、問い合わせがあった11世帯のうち3世帯9人が該当することが分かった。市の調査では40世帯110人ほどが対象とみられ、今後も周知していく。

 子育て応援特別手当は、15日の初日に対象の約80%に支給される。市福祉部は「11日時点で2495件、対象者の91・4%から申請があり、次回の27日で9割以上に支給できる」と話している。(高柳 謙)



◎19日に「石田雪子with函館MB混声合唱団 日米交歓ガラコンサート」

 函館開港150周年、ペリー提督来航155周年記念「石田雪子with函館MB混声合唱団 日米交歓ガラコンサート」(函館日米協会主催)が19日午後6時半から函館市芸術ホール(五稜郭町37)で開かれる。米フィラデルフィア在往のソプラノ歌手で音楽博士の石田雪子さん、世界的ピアニストデービッド・アントニー・ロフトンさん(米)、ニューマン大学合唱団(同)、函館MB混声合唱団、函館のピアニスト畑中佳子さんが出演し、歌で開港の節目を祝い、日米友好を深める。

 石田さんは熊本県出身。国立音楽大、米テンプル大学卒業、同大学院声楽科修了。コムズ音楽大学で「明治維新に日本に入って来た歌の西洋音楽の影響」についての論文発表で、日本人女性で初めて同大学声楽科博士号を取得。函館市とは1998年から公演などで関わり、函館MB混声合唱団との共演は3度目。デービッドさんは米フィラデルフィア生まれ。故ルチアーノ・パバロッティ氏のピアニストとして活躍したほか、同氏の国際声楽コンクールでは指導者の経験もある。ニューマン大学合唱団は石田さんの指揮のもとで活躍している。

 プログラムは、函館MB混声合唱団が畑中さんの伴奏で混声合唱のための童謡メドレーを、石田さんはデービッドさんの伴奏で「サマータイム」など、最後は出演者全員で「さくら」や「アメイジング・グレイス」などを予定している。

 入場料は1500円。市内松柏堂プレイガイドで発売中。問い合わせは函館日米協会事務局TEL0138・51・4785。

 石田さんは公演当日の午前、市内の外人墓地やペリー広場でも歌う予定。

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 同協会では入場券を5組10人にプレゼントする。希望者ははがきに住所、氏名、電話番号を記入し、函館新聞社(〒041・8540 函館市港町1丁目17の8)石田雪子公演チケット係まで応募する。締め切りは15日(必着)。 (山崎純一)


◎新社会人応援企画(5)…笑顔と感謝を忘れずに・市立函館病院看護科長、印牧順子さん(53)

 「患者さんに寄り添い、考えて行動できる看護師でありたい」。原点にあるのは、病に苦しみ表情が曇りがちになる患者から笑顔を引き出した先輩看護師の姿。最初は白衣へのあこがれだったが、いつしか「こんな看護師になりたい」と目標とする先輩の背中を追うようになった。

 名寄市出身。中学2年生の時に函館市に転居し、1974年に市立函館病院高等看護学院に入学。77年から同病院に勤め、病棟や手術室などを経て2007年から看護科長に就き、新人教育や看護師の研修などを担う。

 新人時代に苦労したのは患者とのコミュニケーション。会話から人間関係を作り、看護計画を立てるためにも患者の悩みや苦しみを聞き出し、次の看護につなげなければならない。「1年目は先輩のように患者さんとうまく会話ができなくて、どうやって話を引き出したらいいか分からなかった」と当時を振り返る。

 父親が入院した時、看護を受ける患者の家族の立場を経験した。看護師の言葉や態度次第でいかに患者と家族の気持ちが楽になるか、そのことをあらためて実感。今は後進の育成を担う立場になり、「笑顔と感謝を忘れず、患者に寄り添うことの大切さ」を伝えている。

 看護師に限らずどの職種でも夢と現実に少なからずギャップは生まれる。「つらい時は立ち止まってもいい」と後輩を励ます。悩むことは成長している証しだからだ。「成長しているからこそ悩みが生まれる。そのことを認めつつ前に進んできてほしい」と温かく見守る。(宮木佳奈美)