2009年5月19日 (火) 掲載

◎函館どつく 大型クレーン6月撤去

 函館港のランドマークとして市民に定着した旧函館ドック跡地の大型クレーン(ゴライアスクレーン)2基が、6月下旬に撤去されることが決まった。函館市から今年3月、クレーンごと跡地の一部を購入した函館どつく(函館市弁天町、岡田英雄社長)が、国内最大級の起重機船(クレーン船)を手配し、海上からそのままつり上げて、陸上で解体する。

 市が安全性の問題から2006年に解体・撤去の方針を決めて以来、市民団体が保存運動を展開。名残を惜しむ声が広がりそうだ。

 同社によると、当初は8月末の撤去、解体を予定していたが、クレーン船の手配がついたため、予定より2カ月早く実施する。施工はクレーンを製造・設置した石川島播磨重工業の関連会社、石川島運搬機械。工期は5月17日から7月7日まで。

 クレーンは1基2000トンで、4100トンのつり上げ能力を持つ固定起伏式起重機船「海翔」を手配した。計画では、工場側の1号機を海側の2号機方向に移動し、クレーン全体の補強をして、2号機から撤去する。クレーン船の作業は6月18日からの予定で、つり上げたクレーンは市が保有するドック跡地にそのまま運搬し、脚の部分を下から5分割し、最後にけた部分を下ろして切断する。

 撤去費用について同社は明らかにしていないが、市は跡地費用を8億900万円、解体経費を5億2800万円とし、クレーンは瑕疵(かし)物件のため、解体費用を差し引いた2億8100万円を売却価格とした。今後派生するスクラップの売却価格は市の売却価格に上積みされる。同社は「安全、確実な作業を進めたい」と話している。

 大型クレーンは1975年の建造で、2004年5月に函館市土地開発公社が北海道振興から跡地23・2ヘクタールとともに買い取った。老朽化や腐食に伴い大地震などで倒壊する恐れがあるとして、市は06年に撤去の方針を決めた。函館どつくもクレーンがある旧4号ドックを購入して活用したい考えがあり、両者で交渉が進められた。

 市民団体が大型クレーンの保存・活用を訴え、撤去に反対。ゴライアスクレーンを守る会(石塚與喜雄会長)が署名運動を展開し、市議会にも陳情や要望を重ねたが、撤去の流れは変えられなかった。

 石塚会長とともに保存運動に尽力し、守る会を「世界遺産推進連合協議会」に発展させた酪農学園大学教授で北海道産業考古学会の山田大隆会長は「ゴライアスクレーンは函館港の原風景として30年以上にわたり定着した。函館の基幹産業は造船で、造船とともに栄えてきた函館の中では唯一無二の価値がある。造った会社に買い戻されたが、今やどつくの持ち物を離れ、市民の心の中に独自の価値を持ち始めているだけに、残念」と話している。(高柳 謙)



◎小山内龍の生涯一冊に…近江さん資料などまとめる

 南北海道史研究会会員の近江幸雄さん(72)=函館市白鳥町=が函館出身で絵本作家、漫画家、挿絵家などとして活躍した小山内龍(本名・沢田鉄三郎、1904―46年)の生涯をまとめた「小山内龍―北の絵本作家」がこのほど、サッポロ堂選書3として発売された。近江さんが小山内に関する冊子を発行するのは2回目で、「戦前の児童文学で活躍した小山内のことをよく知ってもらえれば」と話している。

 小山内は上京し、31(昭和6)年、雑誌「アサヒグラフ」の懸賞漫画で入選し、漫画家デビュー。32年から「フクちゃん」で知られる横山隆一らが設立した「漫画集団」に加わり幅広く活躍。46年に疎開先の旧大野町で42歳という若さで病死した。

 近江さんは20数年前から小山内の研究をしている。「何事にも情熱的な姿に引かれた」と話す。96年から98年まで、函館のタウン誌「街」で「小山内龍ノート」と題し9回にわたり小論を連載した。それらを99年に小冊子としてまとめたところ、サッポロ堂書店(札幌)から本書の執筆を依頼されていた。今回は、最近に遺族から提供を受けた、小山内の晩年の日記「終戦日記」など資料などを増補して発行した。近江さんの小山内作品との出会い、名作誕生の秘話、漫画や絵本作家、労働運動との関わりなど、さまざまな角度から小山内を紹介している。

 近江さんは「資料の入手が困難など、今後に小山内の生涯を紹介する冊子が出る機会は難しいと思う。函館ではあまり知られていない存在なので、あらためて人間像を分かってもらえれば」と話している。

 A5判、54ページ。300部を印刷し、一部800円で発売中。函館では文教堂書店、くまざわ書店などで取り扱い中。(山崎純一)



◎観光大使に米の歌手・石田さん

 米フィラデルフィア在住のソプラノ歌手で音楽博士の石田雪子さんが18日、函館市役所を訪れ、同市の観光大使に任命された。石田さんは、開港後の函館で歌われた海外の音楽の研究をしていることに触れ「日本でも早くに海外文化が入った地域だということを伝えたい」と話した。

 石田さんは、19日午後6時半から市芸術ホール(五稜郭町)で開かれる「函館開港150周年、ペリー提督来航155周年記念 石田雪子with函館MB混声合唱団 日米交歓ガラコンサート」(函館日米協会主催)に出演するために来函した。市役所には夫のワンプラー・スコット・デーヴィッドさん、コンサートに出演するニューマン大学(米ペンシルベニア州アーストン)の学生と市民で構成する合唱団員9人、函館日米協会の加藤清郎副会長とともに訪れた。

 工藤寿樹副市長が対応。石田さんが19日午前9時ごろから、外人墓地(船見町)でもアメージンググレースなどを歌うことを話したのに対し「母国の人がたくさん来たので、埋葬された人も喜ぶのはないか」などと歓迎。観光大使の名刺を受け取った石田さんは「光栄です」と言い、団員らに披露していた。(小泉まや)



◎チャイルドラインはこだて…「受け手」養成講座スタート

 子どもの悩み相談の専用電話を常設している「チャイルドラインはこだて」(小林恵美子代表)は16日夜、サン・リフレ函館(函館市大森町)で電話の「受け手」を養成する本年度1回目の公開講座を開いた。小林代表が講師となり、これまでの活動で浮かび上がった子どもたちの深層心理を代弁した。

 講座はこの日から9月19日まで計13回あり、受け手ボランティアになるには、このうち9回以上の出席が必要。7回目までの講義で医師や教育関係者らから子どもを取り巻く現状を学んだ後、臨床心理士を交えて電話応対の疑似体験などに進んでいく。

 小林代表は「主体としての子ども観」をテーマに講演。子どもたちの声を“意見表明権”として受け止め、大人の価値観や先入観で判断しないことを強調。「基本は子どもの力を信じること。話すことで解決の糸口を自分で見つけ出してもらうよう、聞くことに徹して」と語った。

 これまでに20分間の無言の後に話し始めたり、家庭環境が複雑な友達に家族旅行が楽しかったことを話せなかったりした相談の実例も挙げ、「電話してくる子どもの数だけ悩みはある。子どもの声に耳を傾ける大人が増え、チャイルドラインが必要ない世の中になれば」と説いた。

 次回講座は30日午後6時から、サン・リフレ函館で社会評論家の芹沢俊介さんを講師に招き、子どもたちの心の闇について探る。参加費は800円(学生600円)。問い合わせは小林代表TEL0138・40・0084。(森健太郎)


◎函館市が新型インフル発生に備え対応検討

 新型インフルエンザの国内感染拡大を受けて18日、函館市新型インフルエンザ対策本部(本部長=西尾正範市長)は、課長級職員が現場レベルの対応を確認する幹事会を開催した。今後さらに国内の感染地域が拡大したり、函館市内や近郊に患者が発生した場合に備え、学校施設などを休業する対応方針の検討や、庁内で使用するマスクの備蓄必要数などをまとめるよう求めた。

 幹事会には市立函館保健所や各部の庶務課長、市消防、函館市医師会、道警函館方面本部などの担当者が出席。同保健所の山田隆良所長は、同市ではこれまでも国の新型インフルエンザ対策行動計画の第2段階(国内発生早期)に準じた対応をしてきたことから、今後も引き続き通常のインフルエンザと同様に、せきのエチケットや手洗い、うがいなど感染予防に務めてもらうことを話した。

 今後、市内や近郊で感染者が確認された場合について同保健所は「発症者の行動範囲により対応は異なってくる」とし、「場合ごとに学校閉鎖などの措置を検討するが、強毒性ではないとされるので、鳥インフルより弾力的な対応になるだろう」と話す。

 一方、道南の各自治体でもこれまでより一歩進んだ対策に乗り出した。北斗市は20日にも同市に設置した対策本部の会議を開催し、状況などを把握することを決定。このほか木古内町や福島町は、今後発行する広報紙やちらしで予防方法の周知徹底を図ることを確認した。(小泉まや)