2009年5月26日 (火) 掲載

◎ツル飛来!? 大千軒岳

 【知内】渡島西部の秀峰大千軒岳(標高1072メートル)に巨大な“ツル”がお目見えし、「これは縁起がいい」と一部住民の間で話題だ。純白に加え、頂上目がけて飛び立つ優雅な姿で、鮮やかさを増す新緑に映えている。

 日当たりの良い南東斜面の残雪が、ツルに似た姿を浮かび上がらせている。知内町湯ノ里の道の駅近く、七峰橋付近、福島方面へ向かう国道228号から眺めることができる。

 この自然現象は地元ではあまり知られていないが、毎年この光景を楽しみにしている町民は「大千軒岳の残雪ヅル」と名づけ、「今年は例年より少し羽が小さいような気がするが、美しさは変わらない」と紹介する。

 初夏の陽気が増すにつれ、残雪ヅルの羽ばたきも増し、その姿を遠のかせる。(田中陽介)

 【写真説明】大千軒岳中腹付近に姿を現した「残雪ヅル」(25日午前11時ごろ、知内町七峰橋で)



◎函館の原風景 撮影 「海炭市叙景」映画化でクレーン解体前に先行ロケ

 函館出身の作家、故佐藤泰志の小説「海炭市叙景(かいたんしじょけい)」の映画製作で、初めてとなる函館市内での先行ロケが順調に進んでいる。24日は、解体・撤去が迫った函館どつくの大型クレーン(ゴライアスクレーン)を背景にしたさまざまなシーンを撮影。子役に起用された地元の小学生兄妹も熱心に役を演じ、熊切和嘉監督(34)=東京在住=は「実の詰まった映像が撮れ、手応えを感じる」と話している。

 正式なクラインクインは来年2月の予定だが、大型クレーンの解体前に「函館の原風景」として映像を残そうと急きょ企画された。熊切監督はカメラマンの高橋正信さん(35)と23日に来函。26日まで函館ロケを行う予定。脚本は未完成だが、今回は主人公の兄妹の幼いころを振り返る回想シーン十数分を撮る。

 24日は穏やかな天候に恵まれ、函館どつく函館造船所や入船漁港などでロケを実施。クレーンを背に子どもが廃材で作ったいかだを海に浮かべ、乗り込む場面などを撮影した。

 この日は実行委メンバー約10人も応援に駆け付け、小道具の用意や撮影移動などで協力。現場は緊張に包まれながらも、熊切監督は楽しそうに映像をチェックしたり、子どもたちに声を掛けるなどし、撮影は終始和やかな雰囲気で進んでいた。

 子役として出演した函館南本通小5年の中野敬輔君(10)は「周りに人がいて緊張したけど上手にできた」と笑顔を見せ、同2年の桃さん(7)は「監督は優しいし、楽しい」と話していた。

 高橋さんは「クレーンを背景にした映像は収穫だった。見応えのある作品になるのでは」と話し、熊切監督は「感の良い子どもたちだったので演技も良く、脚本化のヒントも得られた」と話していた。(新目七恵)



◎大船南部神楽保存会に助成金 明治安田文化財団 「継承に役立てて」

 明治安田クオリティオブライフ文化財団(東京、大島雄次理事長)の本年度の「地域の伝統文化保存維持費用助成制度」の対象先に、函館市大船町の大船南部神楽保存会(高谷昇会長)が選ばれ、助成金40万円の目録が贈られた。

 同財団は1991年度から、地域の伝統文化の継承や発展を支援するため助成事業を展開している。本年度は41都道府県から144件の応募があり、42件が選ばれた。道南では2000年度の掛澗奴保存会(当時砂原町)に続き6件目。

 大船南部神楽は大正初期に旧熊泊村(現函館市)の若者たちが当時、交流のあった青森県南部地方から取り入れた舞楽。戦後は一時途絶えていたが、90年に地元の有志らで保存会が発足し、現在は函館南かやべひろめ舟祭りなど、年5回程度披露されている。

 明治安田生命函館支社(同市若松町)で行われた贈呈式で、横田雅俊同支社長が「継承している文化財の内容が豊かで、長期にわたる保存活動が評価された。地域活性化や後継者の育成に役立ててもらえれば」と話し、高谷会長に目録を手渡した。

 高谷会長は「戦後30年眠っていたまちの伝統文化を掘り起こし、何とかして後生に伝えたかった。当時から変わらぬ衣装が傷んできたので今回の助成を有効に活用し、今後も一生懸命やっていきたい」と話した。助成金は衣装の新調費に充てられるという。(森健太郎)



◎外国人による日本語弁論大会 函館から2人出場

 函館開港150周年記念行事として、30日午後1時半から函館市民会館大ホールで「第50回外国人による日本語弁論大会」(函館市、財団法人国際教育振興会、国際交流基金主催)で開かれる。出場者12人のうち、函館在住者2人が発表する。入場無料で、市国際課は「非常にレベルの高い由緒ある弁論大会。この機会にぜひ聞いて」と来場を呼びかけている。

 国籍や文化の違いを超え、建設的な意見を発表し、相互理解を深める目的。今年は全国から130人の応募があり、例年より1割ほど多いという。予選審査を経て、10カ国12人の出場が決まった。出場者の国籍はモンゴル、ロシア、キルギス、ベトナム、スリランカなど。

 函館市在住者からは、中国語教師の馬麗さんが「私の少子化対策」、アフリカのウガンダ出身で公立はこだて未来大学特任講師のドミニク・バゲンダ・カスッジャさんが「北の国で学んだ三つのこと」と題して発表する。

 生活様式や風習、習慣の違う日本に住んだ日常体験をもとにした発表が行われ、時間は1人7分。スピーチ終了後、審査員5人が質問する。テーマや発声、発音、表現力などを総合的に審査し、最優秀賞の外務大臣賞、2位の文部科学大臣奨励賞のほか、会場の参加者が選んだ会場審査賞を用意している。12人の発表後、函館子ども歌舞伎の特別公演もある。

 主催する国際教育振興会の大井孝理事長が函館出身で、節目となる第50回大会を開港150周年に合わせて開催することに意欲を示し、関係機関で調整して決まった。

 駐車場に限りがあるため、可能な限り公共交通機関の利用を呼びかけている。(高柳 謙)


◎「道教育の特徴」で持論 全国地方教育史学会第32回大会

 全国地方教育史学会第32回大会(同学会主催)が24日、道教育大函館校で行われた。地域教育に有用なさまざまな歴史を研究する全国各地の研究者ら約45人が参加。公開シンポジウムでは道教育大函館校非常勤講師の井上能孝さん、函館短大講師の佐々木貴文さんが「内と外から見える北海道教育の特徴」との演題に沿って持論を展開した。

 毎年この時期に行われる同大会は、各地の地域教育に関する特色ある歴史について会員が研究を報告し、実りある意見交換や議論を交わすことで互いの地域に理解を深めることなどが目的。

 井上さんは「函館英学に起因する教育機関の系譜」と題し、後の東京大学となる藩書調所と比肩された塾・諸術調所の教授を務めた武田斐(あや)三郎を取り上げた。「1856年に設立されたこの塾は階層や身分に関係なく、学問に志す者なら誰でも通うことができた」と述べ、「時代が時代だけに当時はそんな開けた塾は他になく、それこそ命がけの勇気と決断力がなければできたことではない」と強調。72年から函館に設けられていった英学塾のおかげで、当時の人々が英語を解するようになった点にも触れた。

 佐々木さんは「大正期における露領漁業への人材供給」をテーマに、函館を主要な根拠地とした露領漁業が道外(北陸)の水産教育を受けた人たちによって支えられていた実情を語った。

 また、シンポジウムに先立ち、研究者8人によるそれぞれの研究発表、全体討論も行われた。(長内 健)