2009年5月30日 (土) 掲載

◎本紙「レッツトライ理科実験」渡辺先生執筆「物理のキホン」が出版

 本紙に毎週土曜日掲載の「Let’s Try(レッツトライ)理科実験」を担当する市立函館高校の渡辺儀輝教諭(43)が執筆した「おもしろ実験と科学史で知る 物理のキホン」がこのほど、東京の出版社ソフトバンククリエイティブから出版された。現代の数式や法則が生まれるまで、古代から科学者らがどう自然法則を考え、解釈を発展させてきたかという科学史を、身近な素材を使った84の実験を交えて解説している。渡辺さんは「少しでも物理や科学に興味を持ってもらえれば」と話している。

 2007年に刊行された渡辺さん初の著作本を目にした同社が、昨年夏に出版を持ち掛けた。今回は高校生から高齢者まで幅広い読者をターゲットとし、分かりやすくまとめた科学史にちなんだ実験を主に「Let’s Try理科実験」の掲載内容から引用して再構成した。

 力学、熱、光、電気、流体の5章で構成。電気の章では、静電気の存在を広めた古代ギリシャの哲学者の話題から始まり、電気の正体が判明するまでの論議などを紹介。発明家として有名なエジソンが直流送電システムを確立しようと激しい論争を巻き起こしたエピソードもある。実験では電気をためる道具として発明された「ライデンびん」の作り方や、このびんを使って当時ヨーロッパで行われていた放電実験などを盛り込み、科学史の要点を手軽に体感できる仕組みになっている。

 渡辺さんは「読み物としても通用するよう心掛けた。ページ配分と実験の選定に苦労した」と振り返る。「科学は人間の“思考のリレー”で出来たことを感じてほしい。これを読み、8月のはこだて国際科学祭にも足を運んで」と話している。

 オールカラー222ページ。税込み1000円。8000部を作製し、全国の主要書店で取り扱っている。(新目七恵)



◎函館市の観光客 4年連続500万人割れ 20年前の水準に

 函館市の2008年度の観光客数は前年度比25万6000人(5・3%)減の456万2000人で、4年連続で500万人割れとなった。減少幅は有珠山噴火が起きた2000年度に次いで多く、市観光コンベンション部は「ガソリンをはじめとする燃料の高騰や世界的な経済不況など全国的な観光旅行減少傾向に加え、昨年11月以降の航空機の減便、高速フェリーの休止が響いた」と話している。1989年の428万7000人までの水準に落ち込む厳しい結果となった。

 29日に市が発表した。08年度の上期(4―9月)は前年同期に比べ11万1000人(3・5%)減の310万9000人、下期(10―3月)は同じく14万5000(9・1%)減の145万3000人。月別に見ても、サクラの開花シーズンの4月を除き、5月から翌年3月まで前年割れと苦戦した。

 交通機関別の客数は、フェリー以外は前年割れ。一番多かったバスは178万1000人で、前年度比7・7%減、以下、JR118万8000人(同2・3%減)、乗用車71万5000(同4%減)、航空機60万7000人(10・5%減)と続く。特に乗用車はガソリンなど燃料が高騰した上期に、航空機は減便や機材の小型化が相次いだ下期に減少幅が大きかった。

 唯一増加に転じたフェリーは、07年9月に就航した青森―函館間の高速フェリーが道外客を押し上げ、その後の休止で減少傾向となったものの、結果的に前年比8・7%増の26万9000人に達した。

 市の観光客は98年の539万人をピークに減少傾向。同部はツアーなど団体旅行の需要が伸び悩み、他都市との競争も激化していることを要因に挙げる。

 500万人の大台回復には厳しい実情はあるが、同部は今年8月に開催される函館開港150周年記念事業を観光客増につなげ、個人・少人数に対応した観光メニューの創出や10年の東北新幹線新青森開業を見据えた観光戦略で減少に歯止めをかけたい考えだ。(鈴木 潤)



◎丸井今井 7月末にも新会社設立へ 函館店の受け皿に

 経営再建を進める丸井今井(札幌市)の畑中幸一社長らが29日、函館市役所や函館商工会議所などを訪れ、事業譲渡する函館店(函館市本町)について、三越伊勢丹ホールディングス(HD)が早ければ7月下旬にも受け皿となる新会社を設立して運営する方針を報告した。

 この日は畑中社長や菊地敏郎執行役員経営政策部長、金輪浩之函館店店長の3人が、市役所や函館商工会議所、函館公共職業安定所などを訪問。7月下旬から8月上旬をめどに三越伊勢丹が完全子会社の受け皿会社「函館丸井今井」(仮称)を設立し、営業権などを譲り受けるという。

 市経済部によると、市役所で会談した西尾正範市長は「函館店の従業員はできるだけ多く函館に残してほしい」と地域の雇用確保を強調。今月から運行を開始した無料の「買い物バス」などにも触れ、今後も支援を続ける姿勢を示した。西尾市長は来月5日、東京の三越伊勢丹HDに赴き、雇用維持などを要請する。

 丸井今井は今後、全従業員をいったん解雇した後、三越伊勢丹が事業継承する札幌と函館の受け皿会社2社で必要な人員を再雇用する方針。函館店の従業員は現在、パートを含め約210人で、新会社では170―180人の再雇用を予定している。(森健太郎)



◎版画家・佐藤国男さんの「セロ弾きのゴーシュ」再出版

 函館在住の木版画家、佐藤国男さん(57)がこのほど、宮沢賢治の童話「セロ弾きのゴーシュ」の作画を手がけた絵本を、さんこう社(東京)から出版した。以前リリースした同タイトルの絵本が絶版となったことを受けての再出版で、すべての版画を作り直した力作。佐藤さんは「また出版できて非常に感激している」と話している。

 佐藤さんは1992年、「セロ弾き―」の絵本を福武書店(現・ベネッセコーポレーション)から出版。しかし、同社が絵本の出版を取りやめたことから、いつしか絶版となっていた。

 賢治の作品をモチーフにした創作活動をライフワークとするだけに、再出版は佐藤さんにとって長年の夢。友人で、函館ラ・サール高校教諭のピーター・ハウレットさん、推薦文を寄せた文化人類学者の辻伸一さんとともに出版社を探し回った末、17年ぶりの再出版にこぎつけた。

 今回作り直した版画は、表紙を含めて全22枚。柔らかな木のタッチの中に、ゴーシュや猫らの表情がりりしく描かれ、賢治の文章とマッチした独特の世界が広がる。

 絵本は40ページ、オールカラー、1785円。ギャラリー村岡(元町2の7)で販売している。同ギャラリーではまた、再出版を記念した作品展も31日まで開き、絵本に使った版画も展示している。佐藤さんは「賢治の作品は日本の心を代表するもの。多くの人に見てもらいたい」と話すとともに「絵本を第2弾、第3弾とつなげていきたい」と意気込んでいる。(千葉卓陽)


◎優秀賞に佐藤さんら10人 はこだて観光俳句の入賞作品発表

 函館国際観光コンベンション協会は、2008年度に観光名所などで募集した「はこだて観光俳句」の入賞作品を発表した。優秀賞に函館市北美原3の家事手伝い佐藤彩さん(20)の「函館の夜景に見えた砂時計」など10句が選ばれた。

 同協会は函館の観光振興を目的に02年度から「函館の四季」をテーマに観光俳句を募っている。五稜郭タワーや函館山山頂展望台など市内7カ所に応募箱を設置し、今回は道内から沖縄までの1075人から計1392句が寄せられ、優秀賞のほか、入選30句を選んだ。

 本年度は箱館奉行所復元工事への関心が高いためか、五稜郭を題材にした作品が目立ったほか、夜景にちなんだ句も多かった。佐藤さんは道南では唯一優秀賞に選ばれ「昔から函館山からの夜景のくびれた部分が砂時計のようだと思っていた。応募したことも忘れていたのでうれしい」と喜びを語った。

 入選作品には「ゆの川のろてんぶろからなつのそら」、「いかつりにいったらいかがすみはいた」といった子どもたちの思い出をつづった句も目立ち、審査に当たった函館俳句協会の杉野一博会長は「子どもの素直で自由な表現が面白かった」と評している。

 入賞者には函館の特産品が贈られ、本年度の作品も市内の観光施設など7カ所で来年3月まで募集している。(森健太郎)

 佐藤さん以外の優秀賞は次の通り。(年齢は応募当時、敬称略)

 ▽片蔭をペリーの後に歩くかな=埼玉県、植村弓子(41)▽雪の坂一二の三で振り返る=千葉県、北野友梨(14)▽五りょうかく桜の花で星えがく=札幌市、笹浪あかり(13)▽思い出と光の雪が降りる街=東京都、粟野武幸(18)▽五月雨や人力車夫の声優し=札幌市、安孫子司(48)▽リラ冷えに路面電車の明かりつく=兵庫県、石田順子(64)▽五稜郭昔もここで春を待つ=札幌市、山本はなこ(16)▽夜景見したかぶり朧濃くしたる=青森県、小野寿子(74)▽バラこぼる修道院に妻を撮る=長崎県、辻尾修(60)