2009年5月8日 (金) 掲載

◎11年度末までに方向性…協議会で「代替輸送」議論 北海道新幹線

 北海道新幹線の新函館―新青森開業(2015年度予定)に伴い、JRから経営分離される江差線の五稜郭―木古内間(37・8キロ)の代替交通機関の在り方を話し合う、「北海道道南地域並行在来線対策協議会」(高橋はるみ会長)が7日、函館市美原の渡島支庁合同庁舎で開かれた。この日は昨年度実施した収支予測調査結果などを踏まえ、今後の検討方針を確認。幹事会の中で第三セクター鉄道による在来線存続の可否について検討・協議を行い、来年2月の次期協議会までに地域交通の確保方策(選択肢)を作成し、11年度末までに方向性を決定するスケジュール案を承認した。

 協議会には函館市から西尾正範市長、北斗市から海老沢順三市長、木古内町から大森伊佐緒町長、道からは高井修副知事と寺山朗支庁長が出席。はじめに同協議会事務局が需要予測調査の結果を説明。三セクで路線を維持した場合は30年間で100億を超える巨額な累積赤字を抱えることになるが、バス路線に転換した場合の累積赤字は約12億円から24億円程度に抑えられるという見通しを示した。

 協議会の中で大森町長は「今回の調査結果を見れば、コスト面では三セク鉄道に比べてバスが有利なのは明らか。ただ、幹事会の中でさらなるコスト削減の可能性を示してもらえれば選択肢も広がるはず。最終的には住民の利便性を踏まえた上で判断を下したい」と述べた。海老沢市長は「市の基本方針として鉄道を残してほしいという考えは変わらない。現在のディーゼル車に変わる車両を導入するなど、経費節減の方法をさらに検討してほしい」訴えた。西尾市長は「函館以北の北海道新幹線開業後も見据えた道や国による全体的ビジョンも示してほしい。バスを導入する場合でも、特急路線を設けるなど様々なシミュレーションが必要では」と提案した。

 高井副知事は「今日の協議会での意見を参考に、1年間かけてじっくりと選択肢を検討していきたい」と話していた。(小川俊之)



◎新社会人応援企画(1)前向き姿勢 自身育てる・松前ガイド協会代表 成田優美さん(39)

 「仕事量が多くて驚いたのを覚えている。毎日が必死で、何がなんだか分からない状況だった」。東京都内の観光会社でバスガイドとして社会人の第一歩を踏み出した21年前の記憶は、今でも鮮明だ。

 松前町出身。松前高校卒業後、「お客さんの感動を演出して、楽しい時間を一緒に共有したい」と上京した。

 気持ちに余裕があったのは研修前夜まで。現場に立ってからはコースのルート確認、歴史の暗記、翌日の準備と早朝から深夜まで神経の休まる暇がなかった。「都会はいいなと思ったのは一週間だけだったかな…」と華やかな街並みとは裏腹の厳しい現実に面食らった。

 失敗談は尽きない。笛で誘導する車両後退では横の外壁を見忘れ、大型バスの側面をこすった。「ピッ、ピッ、ピーー(止まれ)」の最後の合図がうまくいかず、ゴツンと後部がへこんだことも。

 失敗する度に怒鳴られ、落ち込んだ。「失敗はチャンス。いつも前向きに考えるようにしていた」。この思いが古里を離れ、無我夢中で過ごした7年半の勤務を支えた。

 結婚で帰郷後は2003年から松前ガイド協会代表を務める。この季節になると新社会人になったあのころを思い出す。不安や希望が交差した日々を乗り越えてきたことが、「いまの仕事が楽しい」と言える自信をはぐくんだ。

 「優美さんの風情あるガイドのこつを教えて」と新人らが慕う。「最初から上手にできたらわたしの立場がないよ」と冗談を飛ばし、「ゆっくり時間をかけて苦労して、悩みを着実に解決することが大事。真剣に頑張っていれば、いつかだれかが認めてくれるから」とメンバーの背中を後押しする。(田中陽介)

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 新年度が始まり、はや一カ月。ゴールデンウィークも終わり、新社会人にとってはこれからが正念場。経験を積んだ先輩たちが、新人当時の失敗談などを交え、奮闘する若者にエールを送る。



◎ナッチャン夏の再開心待ち…1日だけの一般公開 盛況

 7月から運航を再開する函館―青森航路の高速船「ナッチャンWorld(ワールド)」が6日、道南自動車フェリー函館ターミナル(函館市港町3)で一般公開された。一時は乗船が制限される盛況ぶりで、この日だけで約8500人が来場。大型連休の最終日も相まって大勢の家族連れらでにぎわった。

 同社は7月18日から9月末までの期間限定でナッチャンを運航するため、現在、北海道運輸局に認可を申請中。昨年の5月2日の就航からわずか半年で運休し、再開時に使用予定の「ワールド」を広く知ってもらおうと、ゴールデンウイークの家族向けイベントとして企画した。

 午前10時の乗船受け付け開始直後から長い行列ができ、ピーク時には最大で1時間待ちも。来場者は船内で記念撮影を楽しんだり、等級ごとに席の座り心地を確かめたりしていた。船内ではフリーマーケットが開かれたほか、ターミナル前には屋台も並び、お祭りムードが漂っていた。

 家族5人で来場した市内石川町の会社員鈴木克英さん(42)一家は「初めて乗ったが高級なホテルみたい。特に寝そべることのできる(エグゼクティブ)席が気に入った。夏にまた乗りたい」とご満悦だった。同社は「予想の倍近い乗船者数で、地域のナッチャンへの期待感を確信した」とし、運航再開に向けた手応えを感じていた。

 このほか、青森県大間町の町おこしグループ「あおぞら組」のメンバーら約20人も会場にブースを設け、大間町の特産物やPRグッズを販売。在来船の出入港時には太鼓演奏に合わせて大漁旗を振ってイベントを盛り上げた。(森健太郎)



◎若者ドライバー スピード好まぬ…道警本部が意識調査

 道警本部交通部交通企画課交通総合対策センターは、25歳未満の若年運転者を対象とした「交通事故実態と意識変化」をまとめた。同調査は、1997―2008年の若年者事故の統計データと、実際に事故を起こした若年者から97年と07年に同一項目で実施したアンケートを元に傾向を分析。最近の若年者は、車の運転が趣味から実用的なものに変わり、速度よりスタイルを重視する傾向が顕著となり、ライフスタイルの多様化が若年ドライバーによる事故減少の一因となっていることが垣間見えた。

 統計データからは、少子化などを背景に、全事故件数に占める若年者の構成比率は12年間でほぼ半減。97年と08年を比較すると、若年者が第1当事者となった人身事故は、7143件から2925件に、死亡者数も186人から37人に大きく減少した。死者総数に占める若年者の構成比率も約30%から約16%と減っている。

 違反別に死亡事故を見ると、若年者は速度超過が最も多いが、構成比率は51・6%(97年)から35・1%(08年)に減少。ブレーキやハンドル操作など、事故回避行動直前の速度を示す「平均危険認知速度」は、時速78・1キロ(97年)から時速66・3キロ(08年)と低下している。しかし、若年者以外では、速度超過に起因する事故より、前方不注意の構成比率が高く、危険認知速度も時速48・1キロ(08年)であることから、若年者はスピードを出しがちな傾向にあることがうかがえる。

 また、97年と07年の意識調査を比較すると、主な運転目的がドライブから通勤に変化し、走り慣れた生活圏内での事故が多くなった。車を選ぶときも、速度性よりスタイルを重視する傾向にあり、より実用的な側面が強くなった。速度に関する認識では「高速走行は気分がいい」とする回答が62%から37%に減少し、「好まない」「怖い」と否定的な意見が増加。「高速走行とは時速何キロ以上か」の項目では、97年に80%が「時速100キロ以上」と答えたのに対し、07年は47%に減少している。

 同センターでは、携帯電話やインターネットの普及にともない、若年者の趣味が多様化したことに加え、運転機会や免許人口の減少、速度性を重視しない趣向の変化が、大幅な若年者事故の減少につながっていると分析している。(今井正一)



◎全盛期の名作楽しんで…アイリスであすから「ヨーロッパ特集」

 24日で開館13周年を迎える函館市本町22のシネマアイリス(菅原和博代表)は節目を記念し、9日から「ヨーロッパ名作映画の輝き」と題した特集上映第1弾を始める。カトリーヌ・ドヌーヴ主演のフランス映画「シェルブールの雨傘」(1964年)など3本を用意し、同館は「ヨーロッパ映画全盛期の名作を、ファンはもちろん未体験の若者も観てほしい」としている。

 同館は毎年この時期に記念企画を実施しており、今回は趣向を凝らした第3弾までを計画。初回は近年観る機会の少ないヨーロッパ映画のすばらしさを知ってもらおうとラインアップをそろえた。

 「シェルブール」は美しくも切ないラストに涙する64年カンヌ国際映画祭グランプリ作品。監督はジャック・ドゥミ、音楽はミシェル・ルグラン。同じスタッフが67年に製作した「ロシュフォールの恋人たち」はドヌーヴが姉フランソワーズ・ドルレアックと共演した幸福感あふれるミュージカル大作で、いずれも9―22日に上映する。

 菅原代表は「デジタルリマスター版なので美しい音と映像ですばらしい物語を楽しめる」と太鼓判を押す。

 16―29日にはイタリアの巨匠監督フェデリコ・フェリーニの「81/2(はっかにぶんのいち)」(63年)が登場。菅原代表が「開館時から上映したいと思っていた」という念願の作品で、スクリーン上映は25年ぶり。上映時間はアイリスTEL0138・31・6761。(新目七恵)