2009年5月9日 (土) 掲載

◎野外劇 成功間違いなし!…祈祷祭に宮司、神父、住職が集結

 7月3日に開幕する第22回市民創作・函館野外劇「星の城、明日に輝け」(NPO法人市民創作「函館野外劇」の会主催)の舞台となる国の特別史跡・五稜郭跡(五稜郭公園)で8日、舞台設営の安全や公演の成功を願う祈祷が行われた。今年は函館開港150年にちなみ、函館の神社、寺院、カトリック教会の宮司らが集まって祈願するという珍しい様子が見られた。

 祈祷は毎年5月下旬から始まる舞台設営工事の前に行う。これまでは市内のカトリック教会の神父が訪れていたが、同法人のフィリップ・グロード理事長が「函館が平和に開港150年を迎えられたのは、宗教の支えがあったおかげ。函館の神社やお寺からも参加してもらい、野外劇の安全、成功を祈ってほしい」と願い、それぞれが承諾した。

 この日は同法人の理事やキャストなど約30人が参加。最初に函館八幡宮(谷地頭町)の中島敏幸宮司(78)が祝詞を上げ、続いてカトリック函館湯川教会(駒場町)のオール・フランソア・ザビエ司祭(42)、法華宗最上寺(五稜郭町)の住山省悟住職(58)が工事の安全、公演の盛況を祈願した。オール司祭は「野外劇の舞台を作るのは神、わたしたちは協力者、神の力を受け野外劇を行いたい」と述べ、住山住職は木剣(ぼっけん)を打ち鳴らした。

 最後に参加者全員でテーマソング「星のまち Hakodate」を合唱し、同法人の寺坂伊佐夫副理事長が「野外劇の火を消さないように努力していきたい」とあいさつした。中島宮司は「神仏にキリストが入る祈祷は初めて。野外劇の成功はスタッフの努力があってこそ」、オール神父は「このようなお祈りは世界でも珍しいと思う。野外劇は大変面白い」、弁士役でも出演する住山住職は「わたしもこのようなお勤めは初めて。函館で行う野外劇の祈祷だからこそ実現したと思う」と話していた。(山崎純一)



◎新社会人応援企画②…仕事の原点 忘れないで・函館戸井幼稚園教頭 戸澤裕美枝さん(47)

 「人に優しくすると優しさが返ってくるよ」。園児に掛けるこの言葉を、自分にいつも言い聞かせている。幼稚園教諭になって26年、失敗は尽きないが、先輩の優しさに支えられてきた。

 函館出身。小学5年生の時に担任だった女性教諭にあこがれ、教職の道へ。道教育大函館校卒業後、22歳で当時の市立函館幼稚園に赴任した。

 新社会人1年目。子どもといるのが楽しく、喜ぶ顔を見たくてがむしゃらに毎日を過ごした。ところが着任1カ月の5月、子どもから「おたふく風邪」をもらい休むことに。秋の発表会の振り付けなど、行事の指導も初めて。困ったり、戸惑っている時、そっと支えてくれたのは先輩の言葉や率先した態度だった。

 「子どもの思いに寄り添い、人の気持ちになって考えること。後輩への接し方を教えてもらった」。この感謝の気持ちを、今度は自分が若い人に向けたいと思っている。

 社会人になり、「責任」の重さを痛感した。新人でも学級を1人で背負う責任感は先輩と同じ。保護者や子どもと接する時、自分の言葉や行動には責任が伴う。気が合う人と付き合っていた学生時代と違い、職場は人との調和も必要になる。自分らしさを失わず、人の間で生きることの難しさに何度もぶつかった。

 保護者との関係や保育の悩み、仕事の難しさがつらく、辞めようと思ったこともある。限界を感じた時、先輩から「子どもが好き」という原点を指摘され、思い直した。

 「その子に一番似合う色を探したい」。自分も親になり、仕事の意義をあらためて感じながら今日も子どもと向き合っている。(新目七恵)



◎資源売却収入 減少…09年度函館市

 資源ごみを売却して得た2008年度の函館市の再生利用品売却収入は、前年度比7・9%減の1億6338万円となった。売却数量はほぼ横ばいだったが、下半期に世界的不況の影響を受け、買い取り単価が大きく下がり、全体の金額を抑える格好に。市環境部は「このままの単価でいくと09年度は08年度の半分以下もあり得る」として危機感を強めている。

 08年度の売却数量は前年度比3・7%減の4136トン。環境部本体と恵山地区、南茅部地区全体の数量、金額ともに、現在の品目ごとに把握している06年度以降最低となった。

 中でも「金属くず」の単価の変動が大きかった。環境部分の売却単価は、世界的な高需要を背景に上昇した4―6月は1トン当たり1万5750円、7―11月は同2万1000円で売却できた。しかし秋以降は世界不況の影響で需要が下がり、12―3月は同1050円に暴落。09年度に入っても状況は変わらず、4―6月の単価も同1050円のままだ。恵山、南茅部地区でも状況は同じで、昨年秋以降の売却単価は、それまでの2%程度になっている。

 値崩れは「アルミ缶」や「スチール缶」「ペットボトル」など資源全体に及んだ。環境部分の売却単価は、アルミ缶は10―11月が1トン当たり13万1250円だったのに対し、12―3月は同6万8250円に。スチール缶は10―11月の同2万7300円が、12―3月は同5250円に。ペットボトルは事業排出、家庭排出ともに、11月途中からそれまでの半値以下に下げられた。

 一方「廃自転車」は06、07年度ともに通年で1トン当たり210円だったのに対し、08年度は7―11月のみ1050円で売却。年間では138トンが7万7241円となった。自転車の状態により売却単価が決められることから、状態が良かった7―11月に単価が上昇した。

 このほか、破砕ガラスは数量、金額ともに前年度比微減の900トン、4万7266円。発泡スチロールは単価が上昇したものの、数量(1・4トン)の減少が金額(1万1592円)にも響いた。

 単価安について環境部リサイクル推進課の佐藤和彦課長は、「少しずつ改善すると言われているが、まだ先は見えない」と話し、今後の状況を見守る考えだ。(小泉まや)



◎中空土偶 出張 大英博物館へ…9月から

 函館市著保内野(ちょぼないの)遺跡(尾札部町)で出土した国宝「中空土偶」が、文化庁などが主催する本年度の日本古美術展「土偶(仮称)」で、英国の大英博物館と東京国立博物館で展示される。同庁から函館市に要請があり、市が承諾した。中空土偶が海外で展示されるのは5回目だが、国宝に指定されてからは初となる。

 日本古美術展は、国際文化交流推進を目的に行っており、本年度は大英博物館、東京国立博物館との共催。9月10日―11月22日は大英博物館で、12月15日―2010年2月21日は東京国立博物館で行い、文化庁が出品依頼している国内の約70点に加え、両館独自の内容を予定している。大英博物館では01年以来2回目の展示。

 中空土偶について文化庁は「当時の技術など縄文文化を語る上で欠かせない存在」と評価し、函館市教育委員会は「代表に選ばれるのは名誉なこと」と喜んでいる。(小泉まや)



◎来月 函館でDPI全国集会…ノーマライゼーション実現の契機に

 障害者も健常者も平等で自由に暮らせる社会を目指し、現状と課題について話し合う「第25回DPI(障害者インターナショナル)日本会議全国集会in函館」(NPO法人DPI日本会議など主催)が6月13、14の両日、函館市総合福祉センター(若松町33)で開かれる。全国から約400人が訪れ、総会や記念講演、パネルディスカッション、分科会が行われる。道南の障害者らで構成される函館実行委員会は「函館の街にノーマライゼーションが実現される大きな契機にしたい」と準備を進めている。

 DPIは障害の種別を越えた当事者でつくる国際的なNGO(非政府組織)として障害者本人が声を上げ、自身を取り巻く問題の解決に向けて活動を進めている。日本会議は世界に約120ある中の1つで1986年に発足した。

 函館実行委員会は島信一郎さん(インクルーシブ友の会代表)、山本修さん(社会福祉法人道南福祉ねっと当事者代表)、能登正勝さん(NPO法人全国精神障がい者地域生活支援センター理事長)、横川由紀さん(自立の風かんばす代表)の4人が共同代表を務める。「まもろう!すべての人の命と尊厳!!」をテーマに、障害者が声を一つにし、函館から自分らしく生きることができる社会の実現を訴える。

 13日に総会と前夜祭を行い、14日は午前9時15分に開会し、高次脳機能障害を抱える奥井直実さんらの男性音楽ユニット「りぼん」の歌と演奏を、音楽を動作や絵などで表現する「ミュージックサイン」で伝える。午前9時50分から北大教授の宮本太郎さんによる記念講演「排除しない社会へのビジョン~生活保障の再構築~」、パネルディスカッション「障害者の視点から見た社会保障は~すべての障害者が権利として地域で暮らせる社会に」が行われる。

 午後1時半から同4時半までの分科会では「地域生活支援」「交通・まちづくり」「権利擁護」「教育」「雇用・労働」の5つのテーマと、特別分科会として「障害のこと、女性であること」「呼吸器と患者の権利」の2テーマ、特別企画では「ユニバーサルデザイン映画祭」をテーマに設定し、議論を深める。

 共同代表の1人で事務局長を務める能登さんは「観光地である函館も障害者に優しいまちになることでいろんな人が暮らしやすくなる。函館で開催されることで函館で何かが始まる、変わることに期待したい」と話している。

 大会は誰でも参加できる。参加費は3000円。申し込みは29日まで。問い合わせは実行委事務局(NPO法人全国精神障がい者地域生活支援センター事務局内)TEL0138・51・0026へ。(宮木佳奈美)