2009年6月18日 (木) 掲載

◎空港に「マル獄」製品販売コーナー

 函館少年刑務所(函館市金堀町)の受刑者が製作し、全国の刑務作業製品の中でも有数の人気を誇る“マル獄”シリーズの販売コーナーが17日、函館空港国内線旅客ターミナル2階の売店「ポルックス」の一角にお目見えした。今や地域ブランドの一つに成長した製品を観光客らに広くPRし、函館の魅力を全国に発信する狙いだ。

 マル獄シリーズは2006年に同刑務所の職員が前掛けを考案したのが始まり。藍(あい)染めの帆布に丸で囲んだ「獄」の白い字体がプリントされている。周囲には前身の函館徒刑場の開設年を示す「創業明治弐年」や「PRISON(刑務所)」などの文字があしらわれ、デザイン性の高さでも注目を集めている。

 ポルックスにはレジ近くの一角にマル獄シリーズの常設コーナーが設けられ、生地のデザインから手掛けた肩掛けかばんや腰袋のほか、ポシェット、ブックカバーなど今春の新作を含む16種類が所狭しと並ぶ。初日から観光客らが物珍しそうに手に取る姿が見られた。

 ポルックスを運営する函館エアポート商事の坂野啓二営業部第一課長は「多くの人が行き交う場所で函館を代表する土産品の一つに育て上げ、地域の活性化につながれば」と話し、同刑務所も「マル獄の人気が受刑者のものづくりへの励みと更生につながっている」と期待する。

 市内では函館山ロープウェイ(元町)の山頂売店でも4月から、同刑務所の協力でマル獄シリーズの通年販売を開始。肩掛けかばんなど4000円以上の高額商品も人気で、民芸品の中ではトップ3に入る売れ行きという。同社は「本州や海外からの観光客に函館のイメージやブランドを売り込みたい」としている。

 営業時間はポルックスが午前7時半―午後7時半、函館山ロープウェイ山頂売店が午前10時―午後10時(夏季のみ)。(森健太郎)



◎CO2削減へ国際連携を…交通政策事務レベル会合

 函館市で開かれている交通政策分野の政府間会議は17日、21カ国、11機関による高級事務レベル会合に移った。世界の二酸化炭素(CO2)排出量の23%を交通関係が占める中で、排出削減に向けた新たな枠組みを作り、国際連携を強化していく必要性などが指摘された。同日夜は函館市主催の歓迎レセプションが開かれた。

 函館国際ホテルで日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)、主要8カ国(G8)、国際エネルギー機関(IEA)などから78人が参加し、2日間の日程で開幕。国土交通省の宿利正史審議官を議長に、低炭素、低公害の交通システム実現について協議している。

 17日はエネルギーや環境問題の権威、シー・リッパー博士(米国)がインターネットを通じて基調講演。燃費の改善にとどまらず、騒音や大気汚染など交通全体の問題として対策を考えることの重要性を指摘した。龍谷大の高村ゆかり教授(国際環境法)も、CO2削減の新たな枠組みに向けての国際交渉について語った。

 続いて参加機関が「戦略」「資金」などをテーマに発表し、議論を交わした。出席者からは「交通分野の環境対策を進めることで高いベネフィット(利益)の実現が図られる」などの意見があった。

 会議は予定を1時間以上オーバーし、市主催の歓迎レセプションは午後7時半から同ホテルで開催。西尾正範市長が「開港150周年の節目に大きな国際会議を二つ開催できたことは大変光栄。良い成果と思い出をつくり、平和と友情が函館の街から広がることを願います」と歓迎のあいさつをした。

 宿利審議官は「交通分野の環境問題解決にかける熱い情熱や知見を実感できる一日だった」と述べ、道運輸局の尾沢克之局長の発声で乾杯。参加者は和やかに懇談した。(高柳 謙)



◎函館市の公用自転車、利用順調

 函館市は4月から公用自転車を導入。5月までの2カ月間に延べ96人(約414キロ)が外勤時の移動手段として利用するなど、活用が進んでいる。行き先は片道2キロ以内が原則だが、駐車場が少ない地域などへの移動にも積極的に使われており、生活保護受給者など個人情報を保護したい場合の対応としても有効だ。希望のあった部局を中心に、2010年度までに支所など11カ所に22台を新たに配置し、その後は利用状況をみたうえで増車を検討する。

 函館市の公用自転車は、05年度に環境部の埋立処分場が独自に導入し、現在も1台を場内でのみ使用している。車体は、ごみとして排出された自転車を再利用する形で入手。今回の市全体での導入目的は、公用自動車の使用を抑制することで、燃料費や排出ガスを削減することだ。

 本年度はまず、本庁舎に5台を導入。4月は延べ33人(約124キロ)が利用し、5月には同63人(約290キロ)と前月の倍以上に伸びた。行き先は若松町や大森町、新川町など近隣が多いが、本町近辺やハローワーク、商工会議所など、駐車場が確保しにくい場所への利用も目立つ。使用する部局は生活保護など支援業務で使用する福祉部が多いが、市民部や経済部、土木部などほとんどの部局にまたがっている。

 市中央福祉事務所で生活保護などのケースワーカーを務める金庭宏明さん(31)は、担当する地域が本町周辺のため積極的に活用。「これまでは電車と徒歩で回っていたが、自転車にしてからは移動時間を短縮できて時間を有効に使える」と喜ぶ。ほかの職員からは「運動になる」との評判もあるという。

 本年度は亀田福祉事務所や環境部など3カ所に11台を置く予定。10年度には市立函館保健所や戸井・椴法華支所、水産物地方卸売市場、中央図書館、水道局、市立函館病院など8カ所に11台を順次配置する。(小泉まや)



◎支庁再編 道の素案に異論も

 【江差】道が提示した新支庁体制の在り方を示す「基本フレーム(素案)」をめぐり、桧山管内では産業部門の一本化や、総合振興局から振興局に移管する広域事務に対する異論が相次いでいる。江差町や管内町村会などは、月内にも開始される見込みの地域協議などを通じて道の認識をただす方向だ。

 道案では、現行14支庁にある農務、水産、商工労働観光などの産業担当課を、支庁再編に伴い「地域産業課(仮称)」に一本化するとした。だが、江差町では今月1日、支庁再編をめぐる高橋はるみ知事と、管内7町長や産業団体の代表者の会談が行われたばかりだ。7町の総意として支庁の産業振興部門の強化を強く求めた直後の素案公表に、複数の町長は「十分に詰めた内容なのか」「道は地域との合意形成を反故にするのか」「担当課を集約して産業振興を実現できるのか」と疑問視する。

 道が提示した、振興局から総合振興局に移管する広域事務についても、道が「支庁管内での事務完結」を基本に、振興局長にも多くの権限を与える一方で、雇用対策や産業支援のほか、保安林指定や林地開発など、地域に密着した事務も集約対象に含めたほか、現在は渡島支庁の出先機関になっている、函館土木現業所江差出張所をはじめ、振興局地域の社会資本整備部門の位置付けが不明確なこともあって、素案に対する地域の不信感をかき立てる結果となった。

 また、道案では、総合振興局と振興局の両局長に本庁部長級、部長に本庁次長級、課長には本庁課長級の職員を充てるとした。現在の14支庁長は本庁部長級だが、部長は本庁課長級、課長は本庁主幹級だ。総合振興局・振興局の部課長ポストを新たに“昇格”させた場合には、14支庁全体で本庁次長級約50人、本庁課長級約130人もの管理職ポストが増えることになる。道町村会長の寺島光一郎乙部町長は「道は局制を導入して36もの局長ポストを新設して本庁の肥大化を進めた。14支庁の第一線職員を削減しながら管理職ポストだけを増やすのか。行革に逆行する焼け太りではないか」と批判的な見方を示す。道は月内にも、振興局の組織体制をめぐる、道町村会など地方4団体との全道レベルでの協議と、5振興局地域での議論をスタートさせる方針だが、その行方は早くも紆余曲折が予想される展開になってきた。(松浦 純)



◎夢助さんが人情ばなし、ゲストに柳家小さんさん

 函館在往の落語家東家夢助さん(68)が落語名作100話に挑戦する「夢助百話の会」の「第25回目記念柳家小さん師匠を迎えて」がこのほど、市民会館で開かれた。ゲストに6代目柳家小さんさん(61)を迎え、節目を祝った。

 夢助百話の会は2004年11月から年に数回開催しており、年に1度、関東や関西の落語家を招こうと実行委が企画した。

 夢助さんの演目は得意の人情ばなしで、平岩弓枝作の人情噺「笠と赤い風車」。継母と反抗的な子・常吉の人間模様で、常吉が旅に出る際に継母からもらった、生母の形見の赤い風車がついた笠をめぐる物語。登場人物の喜怒哀楽、話の展開に合わせて口調を変化させる妙技で熱演。継母の死の場面では客席からすすり泣きの声が聞かれた。

 とりを務めた小さんさんは、父で故5代目小さんさんのエピソードを語り、古典落語の「笠碁」を披露。碁仲間同士がささいな事でけんかするも、すぐに碁が打ちたくなり出かけ、相手も待ちきれずにいる心理を見事に描いた。来場した市内大川町の主婦福田聡子さん(52)は「お互い笠が入った話で面白かった。夢助さんは体に気を付けて100話を達成してほしい」と話していた。(山崎純一)