2009年6月22日 (月) 掲載

◎大型クレーンさようなら 撤去作業開始

 旧函館ドック跡地(函館市弁天町)にある函館どつく函館造船所の大型クレーン(ゴライアスクレーン)の撤去・解体作業が、21日に始まった。この日は赤と白に塗られた重さ2000トンの大型クレーン1基(2号機)が、起重機船のクレーンで海面から約10メートルの高さまでつり上げられて海上を渡り、隣接する市有地で解体作業に取りかかった。

 旧函館ドックが1975年に大型船造船のため2基設置。造船不況に見舞われ、不要となり売却された後、市土地開発公社所有を経て、今年3月に函館どつくが取得した。1基の高さは70メートル、幅110メートル。長く函館港にあったため愛着を感じる市民も多かったが、腐食が進んだため取り壊すことになった。

 起重機船には2基のクレーンが取り付けられており、この日は朝から太さ12センチのワイヤ32本を大型クレーンに接続。午後3時にはクレーンの足元に酒を振り掛け、工事の安全を祈願した。ワイヤの張りを強くして徐々につり上げ、同4時ごろには海上に移動し、約1キロの道のりをゆっくりと進んで同6時ごろには市有地に到着。夜にかけて、両側の下から2メートルを切断し、午後8時40分に作業を終了した。

 函館どつくの社員も作業を見守った。この日非番だった石井紘史さん(28)は「特別な思い出はないが、生まれた時からあったので気になって来ました」と言い、接岸まで構内にとどまった。撤去関連機関との連絡調整を務める南條雅明さん(60)は「作業が順調に進み良かった。今後も安全に配慮して滞りなく行いたい」と話していた。

 2号機は22日にさらに分解する予定。工場側にある1号機は、23日にそれまで2号機があった海側にレール上を移動させた後、25日には同様の作業で市有地に運ぶ。

 クレーンの撤去は市土地開発公社が所有していた2006年、市が方針を決めた。市民団体が保存・活用を訴え、撤去に反対。市議会にも陳情や要望を重ねたが、流れは変わらなかった。クレーンごと跡地を購入した函館どつくも、安全性と今後の事業展開から撤去することを決めた。(小泉まや)

 【写真】解体場に向かうため起重機船につり上げられ、函館港内の海上を進むゴライアスクレーン2号機(右)。左は25日に作業が行われる1号機(21日午後5時半ごろ、函館市港町2の港町ふ頭から)



◎港の象徴 心に刻んで 惜しみながら「発展」願う

 起重機船につられた重さ2000トンの大型クレーンが陸を離れ、海上と水平に移動しながらドック跡地へ―。21日に行われた函館どつく函館造船所(函館市弁天町)の大型クレーン1基の撤去作業を見ようと、緑の島や西ふ頭など函館港一帯には大勢の市民らが訪れた。別れを惜しむ声とともに、港の新たな発展を願う声も聞かれた。

 第1次オイルショック後の1975年に稼働。シーポートプラザで撤去作業を見守っていた元ドック社員の男性(70)は「わずか3隻を造った後、不況で使われなくなった。造船で生活してきたから、姿を消すのは残念でたまらない」と漏らした。同じく元社員という市内大森町の男性(72)は「20数年前、クレーンの上に登ったが、すでにさびによる腐食が進んでいた。実際に残すとなれば危険で維持費がかかる。寂しいけれど(撤去は)仕方がない」と、港の象徴を目に焼き付けた。

 今はシンボルだが、完成当時は「港になじまない」という声があった。日吉町の女性(62)は、完成したときに夫が「港の景色を壊す」と言っていたことを思い起こす。「目に慣れてしまえばいい風景ですが。40年に1度とか100年に1度とか、時代の節目がよく来ますね」と昔を懐かしんだ。市内富岡の堀田守男さん(66)は「開港150年の年に、港のシンボルがなくなるのは変な話」と疑問符も。

 撤去はやむを得ず、今後の港の発展を願うという声も多く聞かれた。中央ふ頭近くで作業を見つめた40代の男性会社員は「これで函館どつくも新たな事業展開ができる。撤去も一つの歴史」。釣りをしていた上新川町の男性(74)も「盛んに動いていた当時を知っているだけに惜しいが、これを機に基幹産業の造船が盛り返してくれれば。昔のような派手さはなくても、少しでも上向きに発展することを願う」と期待する。

 最後の姿を記録に残そうとする市民も多かった。港町ふ頭で七飯町の会社員、武村秀一さん(57)は「海の上を進む姿を撮りたくて来た。2基ともなくなったらどんな景色になるか想像したくない」と別れを惜しんだ。深堀町の室田トシさん(71)は、5歳の孫と緑の島を訪れクレーンの最後の姿を絵に描いた。「孫が大きくなったとき、おばあちゃんとクレーンを見たことがある、と言ってくれればうれしい」と笑顔を見せたが、青函連絡船から見た当時の思い出がこみ上げ、筆が進まなくなったという。(山崎純一、高柳 謙)



◎夏のおもてなしは浴衣で ホテルテトラ

 函館市梁川町17のホテルテトラ(三浦孝司社長)は21日、同社が市内で展開するビジネスホテルや温泉施設など計5カ所で、女性従業員が浴衣姿で業務に当たる恒例の接客サービスを始めた。

 季節感をアピールし、利用客に気軽に浴衣姿で訪れてもらおうと、2005年から毎年この時期に行っている。同ホテルのほか、函館プラザホテル(若松町19)、函館パークホテル(新川町29)、湯っ多里(湯川町2)など系列店の女性従業員約20人が着用する。

 この日は本館で紺やピンクの格子柄や花柄をあしらった彩り豊かな浴衣を身にまとい、フロント業務やレストラン、ビアガーデンなどで接客に当たっていた。8月下旬までの毎週日曜日に通常の制服を衣替えし、涼しげな夏を演出する。

 従業員の笠谷佳代さん(21)は「浴衣を着ると背筋が伸びて気が引き締まり、自然と女性らしい所作になる。お客さんにも毎年好評なので、函館の夏を一緒に盛り上げていければ」と話していた。(森健太郎)



◎車70台以上 窓ガラス割られる 盗難被害も

 20日夜から21日未明にかけて、函館市内で車両70台以上の窓ガラスが割られる被害があった。函館中央、函館西署によると、被害は白鳥町や田家町、五稜郭町など亀田川を挟んだ半径約1キロの範囲に集中し、数台からは車内に置いていた衣類やCDなどが盗まれていたという。両署は、手口が似ていることから同一犯による連続器物損壊、窃盗事件として捜査している。

 両署の調べによると、被害は20日午後7時以降に発生。21日夕方までに、中央署管内で約30台、西署管内で約45台の被害を確認した。車内に石などはなく、車の窓ガラスが外側から割られている手口が共通しているという。

 妻の軽乗用車が被害に遭った土木業の男性(32)は「近所の人に教えてもらい、車を確認したらガラスが割られていて驚いた。車の鍵を開けた形跡はなく、車内の物は取られていませんでしたが、修理代も痛い出費です」と憤慨していた。

 両署では、周辺地域の巡回を強化するとともに、車内に貴重品を置かないよう、注意を呼び掛けている。



◎函館駅周辺イベントにぎわう 駅スポ「ミニSL」に歓声 朝市感謝祭に長い列

 JR北海道函館支社の函館開港150周年を記念したイベント「はこだて駅スポ2009」が21日、JR函館駅前広場で開かれた。駅周辺では函館朝市の市民感謝祭や、はこだて花と緑のフェスティバルなど多彩な催しも重なって、大勢の家族連れらでにぎわった。

 駅スポは利用客や地域住民への感謝を込め、新駅舎の開業を機に毎年開催されている。一番人気は20人乗りの小型SL「ミニ弁慶号」の無料試乗。駅前広場には全長約90メートルの特設レールが敷かれ、子どもたちの歓声や笑顔があふれていた。

 母親と訪れた市内桔梗町の岡大翔君(4)は「楽しかったのでまた乗りたくなった。あした幼稚園でみんなに自慢したい」と大喜びだった。このほか、地元チーム5組によるYOSAKOI演舞や子ども向け遊具のコーナーも人気を集め、会場は大勢の人でごった返した。

 また、函館朝市市民感謝祭では新鮮な海産物などの特売コーナーや、ウニ・イクラのミニ丼、特製のカニ汁などのフードコーナーの前に長い列ができ、生ウニやホタテ、ホッキの限定販売は午前中で売り切れる盛況ぶりだった。

 目玉企画の「第2回全国大道芸グランプリ」では、全国から集まった9組が特設ステージ場で妙技を繰り広げ、グランプリには水晶を使ったジャグリングのPERFORMER・CHIKIさんが輝き、準グランプリにはTOMIさん、審査員特別賞には芸人まことさんがそれぞれ選ばれた。(森健太郎)


◎オフロードバイクレース エンデューロ in 木古内 閉幕 完走13人

 【木古内】オフロードバイク耐久レース「第24回サバイバル2DaysエンデューロIN木古内」(木古内町主催)は21日、初日通過の112人が大会最終日に臨み、2日間の総合タイムで苫小牧市の会社員高橋政人選手(37)が初優勝。北海道勢の優勝は1995年以来の快挙。

 初日の記録を基に午前8時、競技再開し、5時間以内で4周のタイムを競った。山道は早朝の雨でぬかるみ、急こうばいでは一気に登りきれず、滑り落ちる車両が続出。完走13人の過酷なレースとなったが、選手は卓越したハンドル技術で観客を魅了。上位陣がゴールするたびに会場は大きな歓声に包まれた。

 高橋選手は「無欲で自分のレースに集中した。道内勢として優勝することができてうれしい」と喜びをかみしめていた。総合2位は福島県南相馬市の渋谷清幸選手(41)、同県塙町の吉田友彦選手(40)が3位となった。

 閉会式では「また来年も会いましょう」と主催者があいさつ。運営資金繰りや出場者減で次年度以降の開催の行方が不安視されているが、選手は「木古内エンデューロの継続を」と異口同音。大森伊佐緒町長ら大会関係者も前向きな姿勢を示し、エントリー料金の見直しや周知PRの強化で出場者増を図りながら大会継続を模索していく考えだ。(田中陽介)