2009年6月25日 (木) 掲載

◎がん検診 低い受診率 対策に力…市立函館保健所

 市立函館保健所がまとめた2008年度の市内のがん検診受診率で、受診料の助成対象となっている5種類の検診のうち、大腸がん、乳がん、子宮がんは前年度より伸びたが、胃がんは前年度比0・7ポイント減の5・4%、肺がんは同2・6ポイント減の5・5%で、これまでよりも下がったことが分かった。同保健所健康づくり推進室は検診に対する周知不足を認識する一方、「『がんと分かるのが怖い』と考えて検査を敬遠する傾向にあるのでは」と推測し、受診しやすいような環境づくりに配慮している。

 まとめによると、対象年齢35歳以上の胃がん検診は、2005―07の3年間は6%台の受診率を確保していた。40歳以上の肺がん検診は、05年度の2・9%から06、07年度は8%台に増加していた。

 昨年度の突然の減少について同室は、基本検診が特定健診に替わったことを挙げ「制度が変わってもこれまで通り検診会場で受診できるにもかかわらず、できなくなったと考えられたのではないか」と分析。対策として、胃がん検診では本年度から、これまで1650円だった40歳未満の自己負担金額を、40歳以上と同一の1000円に減額。さらに特定健診と一緒に受診できる曜日を週1回から2回に増やした。

 逆に、大腸がん検診(40歳以上が対象)は、05―07年度の2・9%が、08年度には4・0%に。同室は昨年度から実施している検査キット事前郵送の効果を実感する。電話連絡での要望に応じてキットを郵送するシステムで、本年度はこれに加え、各町会から依頼された出前講座に合わせて配布を行っている。

 一方で、乳がん(40歳以上が隔年で対象)と子宮がん健診(20歳以上同)は増加傾向にあり、今後さらに増える見込みだ。同室は「女性の健康意識の高さ」が影響する可能性を示唆するが正確な理由は不明。受診できる医療機関はほかの3種類よりも限定されるが、熱心な医療機関では医師が勧めることもある。

 07年度の函館市に対する全道主要10市平均のがん健診受診率は、胃がんが6・1%に対し11・1%、大腸がんは2・9%に対し15・7%、肺がんは8・1%に対し17・2%で、数倍の差が生じている。受診率の高い乳がんでも9・2%に対し22・3%、子宮がん22・5%に対し31・2%となっている。同室は「早期発見、早期治療による市民の健康維持のためには受診率向上が急務」として、現在も関係機関と連携した対策を検討中だ。

 がん検診への問い合わせは同室健康増進課TEL0138・32・1532。(小泉まや)



◎犯罪被害者支援 道南でも広がり

 国の犯罪被害者等基本法に基づく、犯罪被害者支援の動きが道南でも広がりつつある。3月には松前町が道南では初の単独条例となる「町犯罪被害者等支援条例」を制定。森町や江差町など渡島、桧山両管内の9町ではいわゆる「生活安全条例」に関連条項を盛り込み、支援を展開している自治体もある。しかし、人口が集中し、犯罪の発生が多い函館や北斗市、七飯町などでは条例が未整備のままだ。

 国は2005年4月、犯罪被害者らの権利や利益保護を目的に同基本法を施行。道も07年3月に「犯罪被害者等支援基本計画」を策定した。松前町の条例では「被害者が平穏な生活を取り戻すまでの間、途切れない支援をする」という基本理念を定め、町や町民、事業者の責務を条例に盛り込んだ。条例未整備の函館市では「条例制定で、具体的にどのような支援策ができるのか、札幌や旭川など他都市の事例も踏まえながら、検討の段階」とする。

 犯罪で傷ついた被害者を行政、民間がそれぞれの立場で支援した事例がある。昨年末に道南のある町で発生した凶悪事件。この町は条例に基づき、被害者のプライバシーや心情に配慮し、町内設置の住宅案内図から氏名を削除したり、公営住宅の優先入居の準備を進めるなど、安心確保に向けた対応を取った。

 また「函館被害者相談室」を運営する民間ボランティア組織「函館家庭生活カウンセラークラブ」(荒木和子会長)の相談員が被害者の求めに応じて、心のケアに当たった。相談員の女性(60)は「直接の面談に赴くのは今回が初めてのケース。事件のつらさは理解できても心の傷を推し量ることができない部分もあった」と話す。現在、公判での付き添い支援の準備を進めているという。

 荒木代表は「我々は民間団体だからこそ、被害者と同じ目線で話ができて、その不安を少しでも和らげることができる。相談室が地域にある意義は大きい」と強調。一方で財政的な支えが乏しく、「すべてをボランティアだけではまかないきれない」とし、相談員自身の精神的負担の増加や質の向上など、活動維持の課題は山積しているという。

 被害者支援は、条例の制定がすべてではないが、警察や弁護士、医師会など各関係機関、民間団体、自治体のそれぞれが連携して的確な役割分担を果たし、被害者の必要とする支援を推進するための大きな根拠となる。犯罪に巻き込まれた被害者を社会で孤立させることのない、支援の輪を社会全体に広げるため、基盤整備が求められる。(今井正一)



◎駅前市有地活用策 不況で公募延期…函館市議会

 函館市が計画している駅前市有地の有効活用が、昨年秋の世界同時不況の影響を受けて停滞している。市は当初、本年度にも土地利用のプロポーザル(公募)を実施する予定だったが、不動産市況の冷え込みから延期した。下落する土地価格の損害をどう抑え、2015年度の北海道新幹線開業にどう間に合わせるかという課題もある。

 24日の市議会一般質問で小野沢猛史氏(市民クラブ)が取り上げた。

 土地は約6400平方メートル。市が函館をはじめ全国の開発業者や建設会社78社にアンケートし、37社から回答を得たところ、経済・不動産市況の悪化から積極的な事業を考えている業者が少なかった。このため、応募企業が少なく適正な公募にならないと判断し今年1月、公募の時期を延期することにした。

 JR北海道が所有する土地を含め、周辺1万平方メートルの土地を有効活用しようと昨年、有識者でつくる検討委員会が3回の会合で活用法を議論。西尾正範市長に「公益性や集客性のある施設整備を」とする答申をした。

 市は新幹線開業までに、民間主導で施設整備を計画している。市企画部は「施設の設計から工事完成まで3―4年を想定している」と答弁し、その前段に活用策の公募や土地売却が必要となる。

 市有地は区画整理事業の一環で1996年、市土地開発公社が先行取得した。「簿価は約19億円で、時価は約5億円」(市財務部)といい、市は簿価で買い取って民間に売却する。時価で売れた場合でも14億円程度の差損が出るため、「市民感情からも公益性がある施設が求められている」(市幹部)という。

 小野沢氏は、市土地開発公社がこのまま保有していても金融機関への利息が簿価に加わるため、公社から市が早期に買い取り、民間に売却するよう求めた。

 このほか石井満氏(民主・市民ネット)、黒島宇吉郎氏(新生クラブ)、茂木修氏(公明党)、市戸ゆたか氏(共産党)が質問した。(高柳 謙)



◎自慢の品 堪能して…水産食品展示フェア

 函館市内、近隣の水産加工業者が販路拡大に向け自社商品を出展する「はこだて水産食品展示フェア」(同フェア実行委主催)が24日、市内豊川町の市水産物地方卸売り市場で開かれ、市内、近隣の計47団体が流通、小売業者らに自慢の逸品を売り込んだ。

 同フェアは、2005年から毎年開かれている。オープニングセレモニーでは函館商工会議所の高野洋蔵会頭が「函館の多彩な水産食品を目と舌で堪能して」とあいさつ。テープカット後、スーパーや商社の関係者らが、食品会社や水産団体のブースを見て回った。それぞれ函館特産のイカを使った珍味やくん製、昆布巻き、スモークサーモンなどを並べ、一口サイズの商品を試食できる「おつまみバル街」も実施。

 裂きイカのブランド「函館こがね」を製造、販売する業者の組織は専用の機械で製造実演し、出来立てを振る舞った。ズワイカニのカニ味噌の缶詰「北海道仕込み」など13商品を陳列した水産物卸問屋「ま印食品」の本間正哉企画営業部長は「添加物を使わない商品、本物の味をアピールしたい」と話していた。このほか、商談、情報交換の場も設けられ、北海道銀行主催の「北海道の『食』特別商談会in函館」も開かれた。

 実行委員長で、函館特産食品工業協同組合の石尾清広理事長は「函館の海産物は新鮮で、高品質、うまい。全国へどんどん発信していきたい」と話していた。(鈴木 潤)



◎国保料08年度収納率81%

 函館市の2008年度の国民保険料(国保料)収納率は前年度よりも約5%ほど下回る81%前後になる見通しだ。24日の第2回市議会定例会で黒島宇吉郎氏の質問に須田正晴市民部長が答弁した。

 市国保事業特別会計の当初予算では、毎年度の収納率の見込みを国の定めた基準の92%で計上している。毎年度の決算では85%前後で推移し、07年度は86・7%だった。92%に満たない場合、いわゆる”ペナルティー”が課せられ、国が支給する調整交付金の減額につながる。

 収納率が悪化した理由について、須田部長は「08年度に後期高齢者医療制度がスタートし、比較的収納率が高かった75歳以上の被保険者が同制度に移行したこと、市民生活の経済状況が悪化したこなど」としている。

 黒島氏は「予算と決算時の収納率に大きなかい離がある。実際の収納率で見込んで予算化し、保険料の上昇分を一般会計で繰り入れしてはどうか」と提起。

 同部によると、実際の収納率で予算化した場合、約7億4000万円の歳入不足が生じるとしており、須田部長は「単純に不足分を一般会計で補うという話しにはならない。収納率の向上と医療給付費を抑えながら国に対しても財政支援を求めていきたい」としている。(鈴木 潤)