2009年6月26日 (金) 掲載

◎榎本武揚のひ孫・隆充さん 福島訪問

 【福島】旧幕府軍の総裁で箱館戦争を指揮した榎本武揚のひ孫の榎本隆充さん(東京農大客員教授)が25日、福島町を訪れ、養殖マコンブで新幹線の模型づくりなどで福島を盛り上げる鳴海健児さん(69)らと会った。武揚の姿をほうふつとさせるコンブ工芸の新作も披露され、隆充さんは作品に寄せられた町民の情熱を肌で感じた。

 隆充さんは昨夏、曽祖父の武揚が歩いたとされる町内千軒地区の山道「殿様街道」を散策して以来、町民と交流が深い。同地区のそば屋「千軒そば」にはその際、「蝦夷の夢」と揮ごうしたキハダの切り株を寄贈している。

 「この作品をさらに引き立てる名作を」と考え、鳴海さんと千軒在住で「森の名人」と慕われる笹島義広さん(73)、中塚建設社長の中塚徹朗さんらが武士を見立てた新作を準備した。

 地元の歴史研究家から武士の振る舞いを教わり、切り株を胴体に見立て、刀や扇子などを忠実にコンブで再現した。笠には金色で「絆(きずな)」と記し、身長150センチの背中には手作りの蓑(みの)を着させた。

 大型の展示ケースは町内の建具店が協力。鳴海さんは「福島を大事に思うみんなの情熱がこの作品にこもっている」と紹介した。

 青空の下でお披露目されるとコンブは独特の光沢を放ち、「金色のように美しい輝きだ。これはすごい」と歓声が上がった。隆充さんは「とても立派で素晴らしい。夢を持った皆さんと今後もきずなを深めていければ」と感激した様子だった。

 この作品は近々、同店に展示される。(田中陽介)



◎谷地頭温泉売却で水道局長 「協議し総合的に判断」…函館市議会

 函館市の中林重雄水道局長は25日、売却の方針を固めている市営の谷地頭温泉の取り扱いについて「市議会経済建設常任委員会の報告を踏まえ、関係部局と十分協議して総合的に判断したい」と述べた。

 25日の市議会一般質問で、紺谷克孝氏(共産党)の質問に答えた。

 温泉資源の保護や適正利用のあり方を検討した「函館市温泉資源懇話会」が5月下旬、「温泉資源の適正利用と保護に関する提言」を西尾正範市長に提出。谷地頭温泉について「長期的な視野に立った温泉保護の施策が必要で、これに責任を持てる機関は函館市をおいて他にはない。経営は今後も公営であることが望ましい」と位置付けた。一方で市議会経済建設委は2月、売却にあたっては慎重な選定方法を取ることなどを条件に了承している。

 中林局長は「公営が望ましいとされたことは承知しているが、常任委での議論もあるため複雑な思いで受け止める」としたうえで、協議する意思があることを伝えた。

 これに対し紺谷氏は「懇話会が進行している最中に(温泉についての)計画を作ることは問題。提言に沿った形で検討してほしい」と強く求めた。

 このほか阿部善一氏(民主・市民ネット)、松宮健治氏(公明党)、三遊亭洋楽氏(無所属)竹花郁子氏(同)が質問した。

 国の地域活性化・経済危機対策臨時交付金を活用した、一般会計など4会計の補正予算案、総額16億円分を提案し、審議を各常任委に付託した。各常任委を26日に行い、7月2日に再開する本会議で採決する。(小泉まや)



◎全盲のカメラマン・大平さん日本全国撮影の旅

 函館を拠点に活動する全盲のアマチュアカメラマン、大平啓朗さん(30)が25日、沖縄から稚内まで47都道府県をヒッチハイクなどで訪れる単独の撮影旅行に出発した。障害者に対する偏見を少しでもなくそうと各地で出会いを広げ、「今まで感じたことがないもの」に挑戦してカメラの腕を磨く。来年4月には市内でフォトスタジオを開業する予定で、ステップアップに向けた第一歩を踏み出した。

 大平さんは2003年秋、山形大学院生の時にメタノールを誤って飲み、失明した。全盲になっても幼いころから好きな写真を続け、釧路から九州まで1人旅を楽しんだこともある。各地をめぐる中、障害に対する意識の地域差を実感。「(視覚障害者でもカメラを楽しむ)こういう人が当たり前にいることを知ってほしい」と、今回の旅を半年前から計画していた。

 スタート地点は日本最南端の沖縄県波照間島。北斗の道ユニバーサル上映映画祭などで中断しながらも来年3月の稚内到着を目指す。訪問先では講演活動を行ったり、スキューバダイビングやスカイダイビングも体験して作品を撮りためる計画だ。

 全盲になった当初は「音」を頼りに撮影していたが、次第に太陽の光や温度、においなどの感覚を使って撮影するようになった。今回も「違う音やにおいなど新しい感覚、新しい撮り方を見つけたい」と意気込む。

 大平さんにとって写真は「人とのコミュニケーションツールであり、自分の表現方法」。「相棒」と呼ぶ白杖(はくじょう)とカメラはいつも手放さない。「みんなが行きたくなるような写真を撮ってきたい」と話している。

 旅の様子は自身のホームページ(http://www.nizamo.com/)で随時紹介する。(新目七恵)



◎碧血碑慰霊祭、旧幕府軍兵士しのぶ

 1869(明治2)年の箱館戦争で戦死した旧幕府軍兵士の霊を慰める「碧血碑(へっけつひ)慰霊祭」が25日、函館市谷地頭町の碧血碑前で行われた。函館碧血会会員や郷土史家、一般の約100人が参列。祭られている約800人の兵士をしのんだほか、今年3月に亡くなった元函館弁護士会会長の山形道文さんが柳川熊吉の志を詠んだ漢詩がささげられた。

 箱館戦争後、旧幕府軍兵士の遺体は新政府の命により、弔う事が禁止されていたが、柳川熊吉が厳罰を覚悟し、数百人の遺体を収容、同市船見町の実行寺などに埋葬した。碧血碑は箱館戦争終結から5年後の1874(同7)年に建立された。慰霊祭は柳川熊吉の4代目に当たる柳川昭祈治さん(81)が会長を務める同会が主催し、今年で141回目。この日は旧暦の5月16日で、旧幕府軍の運命が決した千代岡陣屋陥落の日に当たるため、法要日としている。

 始めに山形さんの作品「碧血碑 柳川熊吉翁」を長男の周文さんが詠み上げた。自らを顧みず賊の汚名を晴らし、厚く弔う柳川熊吉こそ真の男子とする内容に参列者は深く聞き入っていった。引き続き、実行寺住職の読経、焼香がされ、榎本武揚の4代目隆充さん(74)も碑前で手を合わせた。終了後、同会の大谷長道副会長が「山形さんの詩にあるように、柳川熊吉の義理、人情を深く考え、後世に伝えていくことが大切」とあいさつした。(山崎純一)



◎愛媛大とテレビ会議…北大と未来大

 愛媛大と共同で研究を進める北海道大学と公立はこだて未来大は24日、函館と愛媛を結ぶテレビ会議システムを利用したテレビ会議を北大水産学部(函館市港町)で開いた。えひめ産業振興財団を中核機関とする「2009年度都市エリア産学官連携促進事業」に参画する3校は、今後3年間、定期的に同システムを利用し、研究協議を進めていく。

 愛媛県南予地域をエリアとする同事業のテーマは「持続可能な“えひめ発”日本型養殖モデルの創出」で、高知大など6機関も参加。愛媛大側は同地域の大深度内湾の特徴を生かし、水温の状況に応じハタ類などの魚の成育に適した快適な水域へいけすを移動できる技術の確立を目指す。北大と公立はこだて未来大は、その技術で生産した魚の品質などの情報を消費者に提供する機能「生産流通情報管理システム」を構築する。

 この日、同大の長野章教授ら十数人が同学部に集まり、テレビを通じて愛媛大側の山内晧平特任教授ら9人と協議。共同研究の円滑な進め方について提案が行われた。関係者からは「このシステムが地域へうまく波及していけば」との声が聞かれた。(長内 健)