2009年6月3日 (水) 掲載

◎初夏告げるマイカ解禁 函館に初水揚げ

 函館に初夏の訪れを告げる道南近海のマイカ(スルメイカ)漁が1日解禁され、松前沖での漁を終えたイカ釣り漁船が2日早朝、函館市入舟町の函館漁港などに初水揚げした。漁は来年1月まで続き、8月ごろには夏の風物詩「いさり火」が函館沖の夜を彩る。

 市内のイカ釣り漁船は低速での省エネ運航のため、平年より早めの1日昼ごろ、松前沖に向けて出港。同日深夜には操業を終え、2日午前4時すぎに次々と帰港した。船内のいけすから網ですくい上げられたイカは「キュッ、キュッ」と“鳴き声”を上げ、勢いよく水や墨を吐いて跳ね回った。

 初日は市漁協などに所属する計12隻から活イカの水揚げがあり、しけに見舞われた昨年の2倍以上に当たる計474キロが競りにかけられた。大きさは12センチ程度とやや小ぶりで、「まだ水温が13度前後と低く、例年より日本海沖からの北上が遅れている」(市場関係者)という。

 1キロ当たり1700―1450円の高値で取引されたが、前年よりも550―300円下回った。市水産物地方卸売市場(豊川町)の初競りでは威勢の良い掛け声で仲買人に競り落とされ、その日のうちに市内の鮮魚店などに並んだ。

 この日40―50キロ前後を水揚げした第五光洋丸(9・9トン)の山本光夫船長(62)は「昨年は水揚げ高こそまずまずだったが、とにかく油代に泣かされた。それだけに今年に懸ける期待は大きい」と話し、漁が本格化する7月以降の巻き返しを誓っていた。(森健太郎)

【写真】漁船内のいけすから初水揚げされるマイカ(2日午前5時ごろ、函館漁港で)



◎大型クレーン背に最後の進水式 函館どつく

 函館どつくの函館造船所(函館市弁天町)で2日、本年度2隻目の新造船「WHITE CORAL(ホワイト コーラル)」(約1万9850トン)の進水式が行われた。今月中旬には隣接地にある大型クレーンの解体作業が始まることもあり、通常の3倍近い約300人の市民らがクレーンを背景にした最後の式典を見守った。

 新造船は海運会社「NYKグローバルバルク」(東京)が発注した全長175・5メートル、幅29・4メートルの木材兼ばら積み貨物船。函館どつくが独自に開発した「スーパーハンディ32」型としては32隻目で、喫水が浅く、水深の浅い港でも出入りできるのが特徴だ。

 進水式では発注元の関係者がくす玉を割り、軍艦行進曲に合わせて船が勢いよく船台を滑り降ると、詰め掛けた市民から大きな歓声が上がった。初めて見学に訪れた市内谷地頭町の鈴木信治さん(77)は「今まで当たり前だったクレーンのある風景がこれで見納めだと思うと感慨深いですね」と話していた。

 新船は今後、内装工事などを済ませ、7月中旬に船主に引き渡される。函館どつくは現在、新造船を同型の貨物船に特化して年間8隻体制を取り、2012年度末まで受注が入っているという。次回の進水式は7月17日の予定。(森健太郎)



◎道教委の公立高配置計画案 2010年度から南茅部高が地域キャンパス校に

 道教委は2日、2010―12年度の公立高校配置計画案を公表した。渡島管内では、南茅部が10年度から「地域キャンパス校」となることが示された。今回初めて示された12年度計画では、渡島・桧山両管内とも新たな再編や学級削減案は見られなかった。道教委は今後、道内各地で検討協議会を開き、9月上旬に正式決定する。

 配置計画は、中卒者の増減状況や進学希望者数などを踏まえ、学校数や学級数の適正化を計る目的で、07年度から毎年、翌年度以降3年度分を公表している。道内の12年度の中学校卒業見込み数は4万790人で対前年比29人増と2年ぶりに増加。このうち渡島管内は3822人で同2人増、桧山管内は362人で同22人増と、ともに微増となっている。

 南茅部は、09年度の入学者選抜で2学級を募集していたが、予定を大幅に下回ったため、既に1学級に削減された。同校地域では他の高校への通学が困難であるとともに、地元からの進学率が高いことから、10年度からの地域キャンパス校に指定された。同校では、センター校である函館中部からの出張授業や通信機器を活用した教育活動への支援により教育環境の充実を図る。桧山管内の桧山北も本年度の入学者数が少なかったことから、3学級から2学級に削減されている。

 このほか、渡島管内ではすでに10年度の木古内募集停止と函館商業の学科転換による学級減(6→5)、11年度の函館西(5→4)、函館稜北(5→4)、長万部(2→1)の学級減が示されている。(小川俊之)



◎北大練習船おしょろ丸 北洋「ベーリング海」へ洋上実習に出航

 北大水産学部の練習船「おしょろ丸」(1396トン)が1日、ベーリング海方面への洋上実習に出航した。出航式が行われた函館港に多くの学生らが集まり、約2カ月にわたる実習へエールを送った。

 同船は例年、ベーリング海周辺で海底の魚類やクジラの回遊を調査している。函館からは乗組員のほか、学生や研究員ら29人が乗船し、学生は海洋観測やサケ・マスの流し網など各種漁法を学ぶ。19日に米アラスカ州のダッチハーバーに寄港して以降、アラスカ大学の研究者らがそれぞれの調査目的に応じて乗船する。

 同日午前、中央ふ頭で行われた出航式には学生や乗組員の家族らが見送りに駆けつけ、応援団の歌やパフォーマンスなどで華やかな雰囲気に包まれた。同大の桜井泰憲教授が「事故のないよう、成果の多い航海を期待します」と激励。学生代表の安達啓太さん(水産海洋科学科4年)は「海中の鉄分を測定し、研究に生かしたい。2カ月間の長期実習は初めてなのでどん欲に頑張りたい」と話していた。

 出航時には甲板に出た学生らが陸に5色のテープを投げ、見送る側は「いってらっしゃい」と声を張り上げ、大きく手を振っていた。すべての調査を終えて函館に戻るのは7月31日の予定。(千葉卓陽)



◎支庁再編 振興局の組織体制…知事と地元は腹の探り合い

 【江差】道の支庁再編をめぐる高橋はるみ知事と桧山管内7町の直接対話が1日に再開された。地元側が求める産業振興部門を中心とする振興局の組織強化について、知事サイドから踏み込んだ発言はなく、約2年ぶりに再開された両者の対話は、振興局の具体像をめぐり腹を探り合う格好になった。

 高橋知事との意見交換会で、工藤昇上ノ国町長は、道議会で3月、桧山など5つの振興局を、総合振興局の“出張所”に格下げする再編条例が改正され、現行の14支庁を同等に戻したことを評価しながらも「これまでと同じ轍(てつ)を踏みたくない。道と市町村が共通認識に立つ努力が必要」と迫った。

 支庁再編をめぐって知事サイドと道町村会など地方サイドは激しく対立。政府与党を巻き込み激しいつばぜり合いを演じた。再編条例の改正を受けて、両者の対立には一応の終止符が打たれ、雪解けムードも広がるが、振興局の具体像や知事サイドの思惑が見えない中で、あえてくぎを刺す格好になった。

 桧山7町が強く求めた振興局の産業部門の強化について、高橋知事は会議終了後、報道陣に対して「充実は難しいが現状維持は不可欠だ。行革とのバランスを考慮する必要がある」と述べ、農業改良普及センターや水産技術指導所などの体制は維持するものの、振興局に移行する支庁組織のあり方については明言を避けた。

 意見交換会は4―5月、根室、留萌、日高、石狩の4管内でも開催され、桧山が最後になった。高橋知事は5地域すべてで、これまでの対話不足を陳謝し、地方サイドとの対話路線を強調したが、焦点となっている振興局の組織体制をめぐる議論の先行きは不透明なままだ。5つの振興局地域との対話再開をきっかけに、道は支庁再編をめぐる議論を加速する考えだが「道内部で振興局の縮小論は根強い。職員数について過大な期待は禁物」(関係者)との見方がある。管内のある町長は「知事の真意が見えない。もろ手を挙げて賛成するという状況にはない」とし、道に対する警戒感は依然として払しょく仕切れない現状にある。

 道町村会長の寺島光一郎乙部町長も「14支庁を同等に扱うという趣旨の下で再編条例は改正された。総合振興局と振興局の間で、組織や機能に大きな差を付けるべきではない。支庁再編だけでなく、肥大を続ける本庁改革の道筋も早急に示すべきではないか」と述べ、道の対応をけん制している。(松浦 純)