2009年6月30日 (火) 掲載

◎函館港からクレーンが消えた日

 30年以上、函館港にそびえていたランドマークが消えた。周辺は「港風情漂う風景」が「哀愁漂う風景」となったようだ。

 旧函館ドック跡地(函館市弁天町)や隣接する市有地でで行われていた、函館どつく函館造船所の大型クレーン(ゴライアスクレーン)2基目(1号機)の撤去・解体作業は27日に始まり、28日午後、脚部の切断を終え、けた部が地上に降ろされ終了した。

 晴れた日のクレーンは、赤と白の姿が青空とコントラストを描き、夕方になれば函館港にシルエットを映し出していた。奇しくも28日はオレンジ色の夕陽が輝いたが、ただ港を寂しい情景に包むだけとなった。

 29日に市内港町2の港町ふ頭で釣りをしていた北斗市七重浜の70代男性は「函館山を見るのに違和感があった。北洋漁業、青函連絡船、クレーンと活気ある時代が走馬灯のように蘇った」と海を見つめていた。(山崎純一)



◎本場の味食べなはれ 大阪から移住の夫婦がお好み焼き屋

 4月に長年住み慣れた大阪市から函館に移住してきた面谷樹生(めんたに・しげお)さん(65)、久枝さん(62)夫妻が7月1日、同市末広町の電車道路沿いにお好み焼き屋「エコー」をオープンする。函館は久枝さんにとって青春時代を過ごした思い出の地。新鮮なイカを使った「イカ焼き」や「お好み焼き」をメーンに、“本場の粉もん屋”をあうんの呼吸で切り盛りする。

 久枝さんは、小樽市出身。父親の転勤で中学1年から函館に住み、函館白百合高校を卒業。当時、末広町にあった丸井今井函館店に就職した。そのころ、函館に旅行で訪れた和歌山県出身で大阪にいた、樹生さんと知り合い、40年前に結婚。以来、大阪市住吉区で炉端焼きの店を17年、ステーキ店を16年経営してきたが、BSE(牛海綿状脳症)の影響を受けて、2004年に店をたたんだ。

 函館への移住を考えたのは3年ほど前。昨年4月から半年間、久枝さんが先行して移り住み、「函館は一番いい時代を過ごした街。街並みは変わったけど、住んでる人間は変わってなかったから」と決断した。既に独立した4人の子どもたちは「けんかせえへんで元気でな」と2人の旅立ちを後押ししてくれたという。樹生さんは「ぎりぎりまで迷ったけど(久枝さんを)暑いところで長年、我慢させたから。寒い冬が今から心配や」と笑う。

 店名は大阪時代と同じ「エコー」を継承した。本場から取り寄せたソースが決め手の「お好み焼き」のほか、だしの入った生地にイカと生卵を専用の鉄板でプレスした「イカ焼き」は関西ではおなじみの味だ。価格は「子どもでも食べられるように」と250―500円に抑え、テークアウトも可能。今後、たこ焼きや明石焼きも販売する予定で「大阪で培った料理の腕を振る舞いたい」と久枝さん。

 29日夜には移住者仲間や知人らを招き、試食会を開いた。兵庫県尼崎市から3月末に移住した宮脇辰夫さん(69)は「店を開くのはチャレンジャーやと思う。味はまだピンとけえへんけど(笑)。頑張ってほしい」と辛口のエール。神戸市出身で函館移住者アドバイザーを務める森満さん(67)は「鉄板がなじめば、もっとうまくなる」と太鼓判を押す。樹生さんと久枝さんは「函館はついのすみか。不安やけど、仲間がいるから心強い」と、12坪の店舗に夢を広げている。(今井正一)



◎福島吉岡まぐろはえ縄船団 大漁旗掲げ安全海上パレード

 【福島】福島町のマグロ漁師18人でつくる「福島吉岡まぐろはえ縄船団」(新山文明船団長)は29日、福島吉岡漁港で安全祈願祭を行った。団員の家族や役場職員ら計50人が参加。鎮守に操業の無事を祈り、大漁旗を掲げた海上パレードで今年の大漁を願った。

 例年、個人で神事を済ませていたが、出漁前に団員が顔を合わせ、意思疎通と連携強化を図ろうと昨年から船団の祈願祭を行っている。

 漁港岸壁で福島大神宮の常磐井武典宮司が団員全員の船名を読み上げ、祝詞をささげたあと、お気に入りの演歌をスピーカーで流して海上パレード。白神岬の白神神社沖合で船首を神社に向けて停泊し、海にお神酒を注いで手を合わせた。

 津軽海峡のマグロ漁は青森側で6月中旬から始まっている。福島ではタコや刺し網漁を掛け持ちする漁師が多く、その漁が落ち着く7月1日に出漁することを決めていた。

 新山団長(59)は「祈願祭で仲間の絆(きずな)を深めることができた。大漁でうまい酒を飲みたい」と笑顔。ほかの団員も「昨年は燃料高騰でゆるぐない(厳しい)状況だったが、その分、今年は盛り返したい」と意気込んでいた。(田中陽介)



◎貿易センター問題特別委 市長らの責任を指摘

 函館市議会の函館国際貿易センター問題調査特別委員会(斉藤佐知子委員長)が29日開かれた。市出資の第三セクターの不祥事について、西尾正範市長らの責任を指摘した調査結果の骨子を確認。昨年12月に設置された特別委員会は同日を含め13回開かれ、調査を終了した。

 昨年7月に同社専務(のちに解職、故人)の領収書改ざん問題が発覚し、旅費過払いによる裏金作りのほか、市の派遣職員が研修ではなく業務支援が中心だったことなど、さまざまな問題が明らかになった。参考人の意見聴取では15人が委員会に出席、3人が書面で回答。問題点を整理して社長の谷沢広副市長や西尾市長に対応の是非をただし、市長、副市長とも「もっと早期に調査すべきだった」と謝罪した。

 正副委員長がまとめた調査報告の骨子では、西尾市長は筆頭株主の立場から事実解明に向けた指導、助言などをすべきで、谷沢副市長は市長の指示を適宜、適切に仰ぐべきであったと指摘。市長、副市長が反省すべき点は多々あり、責任は重大とした。今後、同社が信頼を回復し、貿易振興や地域の産業振興に機能を発揮するよう求めている。

 委員からの指摘で、裏金の使途や内訳などあいまいな部分を明記することや、問題を告発した派遣職員を適切に評価すること、職員研修が適正に行われたか、市に第三者機関への調査か監査請求を求めることなどを盛り込む。

 斉藤委員長が7月2日の第2回定例市議会本会議で調査結果を報告する。

 西尾市長は同問題の責任を取り、自身や関係者を処分する方針を伝えている。(高柳 謙)



◎北斗出身、スキーの佐々木明選手と笑顔の交流

 【北斗】日本アルペンスキーの第一人者として活躍する、旧大野町出身の佐々木明さん(27)と親ぼくを深める「佐々木明選手とお話する会」(Akira Top Teamなど主催)が29日、同市本郷の北斗市公民館で開かれた。道南のスキークラブに所属する子どもたちら約40人が参加し、郷土のスター選手と交流を深めた。

 佐々木さんは回転と大回転競技で五輪に2回出場。回転ではワールドカップで2位に3回入る活躍を見せていて、2010年のバンクーバー五輪では日本人として52年ぶりのメダルが期待されている日本のエース。道南でスキー競技を行う子どもたちを励まそうと、2年前からシーズンオフのこの時期に開催。

 佐々木さんは参加者から寄せられた質問に1つ1つ丁寧に答えた。このうち「スタート前は何を」との問いには「周りの風景も含めてコースをイメージしている」とし、「将来、何かになりたいと思ったら、今から頭の中で想像してみて。大人になって始めてもできないから」とアドバイスした。

 最初は恥ずかしそうにしていた子どもたちだったが、時間が経過すると佐々木さんの周りを取り囲んでサインをねだる姿も。Tシャツにサインをもらった北斗市渡小3年の三上洪晴君(9)は「うれしかった。服を洗いたくない」と笑顔を見せていた。

 佐々木さんは「故郷でスキーを続けている子どもたちはみんなかわいい。自分の励みにもなるし、今後もこのような活動を続けたい」と話していた。(山田孝人)