2009年6月9日 (火) 掲載

◎上國寺本堂修復…青海波模様の彩色など発見

 【上ノ国】約250年前に建立された、上ノ国町の上國寺本堂(重要文化財)では、昨年12月から大規模な保存修理工事が進んでいる。本堂内部の解体が進むにつれて、内部では色鮮やかな青海波(せいがいは)模様の彩色などが相次いで発見されている。

 上國寺は永禄年間(1558―1570年)の創建とされる。現在の本堂は、内部の墨書などから1758(宝暦8)年の建立とみられている。近年は建物の損傷が進み、2010年10月までの計画で「平成の大修理」がスタート。建物を支える柱や梁(はり)を残しながら、壁や床板を取り外し、痛んだ部分を交換したり、補修を進める。どのような形で本堂を保存・修理するのかを検討するため、過去の修復跡などを詳しく調べながら、建立当初の姿や建物内部の変遷を探っている。

 本堂の最奥部に当たり、本尊を納めた厨子(ずし)をまつる「内陣(ないじん)」では、天井付近の板を取り外したところ、波形模様の「青海波」をはじめ、仏教の教えを伝える「宝輪(ほうりん)」などの彩色が発見された。いずれも江戸時代以降の改装の際、板で覆われたとみられ、百数十年ぶりにその姿が明らかになった。

 上國寺本堂設計監理事務所長を務める、文化財建造物保存技術協会(東京)の小幡長治さんは「退色が進んでいるが、元は群青色をベースにした鮮やかな波模様だったと考えられる。内陣の柱には金箔(きんぱく)漆も施されており、建立当時の内陣はかなり豪華な作りだったことがうかがわれる」と話している。

 町教委は21日午前9時半から「夷王山まつり」の関連イベントとして開く「上ノ国歴史探訪」に合わせて工事現場の見学会を行う。事前申し込みが必要。先着50人程度。希望者は19日までに電話で申し込む。問い合わせ、申し込みは町教委TEL0139・55・2230。(松浦 純)



◎木古内町国保病院、外科医1人退職へ

 【木古内】医師の退職に歯止めがかからない木古内町本町708の木古内町国保病院(松谷茂幸院長)で8日、新たに常勤外科医1人が30日付で退職することが明らかになった。さらに院内の薬剤師1人も15日付で退職することも判明。来年5月オープン予定で新・木古内町国保病院の移転改築工事が進む中での事態に、関係者から不安の声が上がっている。

 8日に開かれた町議会総務・経済常任委員会(吉田忠義委員長)へ大森伊佐緒町長が報告した。退職理由に「一身上の都合」を挙げ、「引き続き関係機関を通じて、また、有料広告などの周知で医師の確保に努めたい」とした。

 議員からは「建物が立派になっても先生(医師)がいなければどうしようもない。医療サービスの低下は免れない。問題解決は新病院が完成してからでは遅い」などの声が聞かれた。

 今年1月27日の同委員会で医師不足問題が表面化。3月末付で常勤医8人のうち2人(小児科・内科)が退職し、今回の退職で残り5人となる。薬剤師は3人から2人となる。

 退職理由はいずれも一身上の都合だが、「これだけ短期間に退職者が続くのは異常。病院内に何らかの理由があるのではないか」と疑問視する議員もいる。これに対し、大森町長は「医師本人の事情があっての退職。病院経営の在り方を院長も含め、医局体制をしっかり話し合っていかなければならない」と話している。

 これまでは新病院でも院内薬局を継続する見通しであったが、薬剤師の減少を受け、医療法の基準から新病院では院外薬局に計画を変更せざるを得ない状況になりつつある。大森町長は薬剤師の確保も急務とした上で、「医師同様、全国的に薬剤師不足も深刻。開業(オープン)を優先し、院外薬局の方向で進めたい」と理解を求めるが、院内薬局を望む町民の声は少なくない。

 「医療サービスは維持できると思うが、今後、勤務の負担が予想され、これが理由となってさらなる退職者を生むことが心配」と危ぐする関係者もいる。

 渡島西部地域の救急医療の拠点としても位置づけられており、築年数36年で建物の老朽化が激しく、現在位置南西側手前(海寄り)に4階建て延べ床面積約7500平方メートルの新病院の移転改築工事が行われている。(田中陽介)



◎本年度初の移動市長室

 本年度初めての移動市長室(函館市、函館市町会連合会主催)が8日、市民会館(湯川町)で開かれた。市政報告で西尾正範市長は、開港150周年の年であることをPRしたが、市政についての懇談では運営費用に充てる市民募金の集め方や時期などについて苦言が噴出した。

 市政に対する地域住民の生の声を聞こうと、毎年度地域ごとに開催している。今回は市町連の東央地区(湯川町や日吉町、旭岡町などの49町会)が対象。約55人の市民が参加した。市職員は、工藤寿樹副市長や多賀谷智教育長、渡辺宏身企画部長らが出席した。

 開港150周年記念事業については、突然市民募金についての資料と領収書が送られてきた男性が「市から十分な説明がなく、寄付を集めようにも、何に使うかなど説明を求められても理解させられなかった」として、市の対応の不十分さを指摘。別の男性も「ほかの募金もあるので、急に集めるのはやめてほしい」と苦情を伝えた。

 これに対し西尾市長は「町会には啓発を兼ねて活動してもらったが、混乱が生まれたことについてはおわびする」などと陳謝した。

 このほかの質問では、市議会や委員会を傍聴する時の駐車料金の扱いについて「特別委員会が空転したときなどは困る。議会では長らく継続審議となっているが、無料にしてほしい」と要望。西尾市長は「議会と相談して検討したい」と答えた。

 本年度の移動市長室は今後、残る4地区で順次開催する予定だが、時期や場所などは未定。(小泉まや)



◎村上春樹さん新作「1Q84」函館でも品切れ状態

 作家村上春樹さんの5年ぶりとなる新作長編小説「1Q84」(新潮社、全2巻)が全国的に爆発的な売れ行きを記録する中、函館でも入荷と同時に売り切れになる状態が続いている。小説の内容が事前にほとんど明かされなかったことに加え、今年2月のエルサレム賞における村上さんのスピーチなどに注目が集まっており、市民の関心も高い。客も書店側も「次はいつ入荷するのか」と気をもむ日が続く。

 函館市梁川町25の文教堂書店函館テーオー店では、5月29日の発売当日にBOOK1、BOOK2ともに10冊以上を仕入れたが、即日完売。同店では1Q84を手にできなかった客が、「ノルウェイの森」や「海辺のカフカ」など、村上さんの過去の長編小説を購入する傾向も見られるという。同店の五十嵐教晃店長は「毎日発注しているが、次回入荷日は未定の状態。年内は品薄状態が続くかもしれない」と、驚きの様子。くまざわ書店函館ポールスター店(港町1)でも計30冊を仕入れ、2日間で売り切れた。担当者は「少しずつ入荷されてはいるが、すべて予約分で、店頭にはなかなか並ばない」と困惑気味だ。

 出版元の新潮社は初版でBOOK120万部、BOOK218万部を発行したが、全国から注文が殺到。このため、5月28日から今月3日まで5日連続で増刷し、累計発行部数は96万部に達しているが、書店に届くのはまだ先になりそうだという。

 同社が発売前に行った宣伝は、ホームページにタイトルと発売日、全2巻であることを示しただけ。同社広報宣伝部は「読者からはまっさらな状態で新刊を読みたいという声が多かった。エルサレム賞での村上さんのスピーチに共感した人も多かったのでは」と話す。文教堂書店の五十嵐店長も「新聞やテレビでの紹介が多いにもかかわらず、中身がわからなかったのが人気の要因の一つ」とみている。(千葉卓陽)



◎「あとりえ空」がギャラリー貸し出し開始

 函館市陣川町122の雑貨店「癒しの小部屋 あとりえ空」が、今年から本格的にギャラリーとしての貸し出しを始めている。晴れた日には市内の眺めが一望できるロケーションが売りで、所有者の木元保子さん(64)は「ゆったりと作品を楽しめるスペースとして、多くの人に利用してほしい」と話している。

 あとりえ空は、市内で呉服店経営や組みひも教室を開いている木元さんが、2002年に建設した3階建ての住居を活用。3年前からアロマやハーブなどの雑貨を販売するスペースとして営業を開始し、毎週金曜日から日曜日に店を開いている。

 ギャラリーとしての利用は、昨年11月に木元さんら姉妹3人で組みひもなど小物の展示即売会を同所で開いたのがきっかけ。この際に「作品を飾れる場所がたくさんあることが分かった」(木元さん)ことから、本格的に貸し出しすことにした。

 ギャラリーは1階のフロアとオープンテラスで、計45平方メートルが利用可能としている。休憩スペースの3階からは市内全体を一望できる。ギャラリーと並行して、以前から取り扱っている雑貨も継続して販売する方針だ。

 今年は降雪前の11月中旬まで開館する予定。木元さんは「まずは建物を見てもらい、作品を飾れることを知ってほしい」と話し、積極的な利用を呼び掛けている。開館時間は午前11時から午後6時まで。予約制で、貸し出し料金は要相談。予約と問い合わせはあとりえ空TEL0138・32・2358。(千葉卓陽)