2009年7月22日 (水) 掲載

◎カール・レイモン「73年前の皆既日食を動物たちと見ていた」

 七飯町緑町の元小学校教諭、浅利政俊さん(78)がこのほど、函館でハム・ソーセージの製造に尽力したカール・レイモン(1894―1987)が戦前、現北斗市本郷に開いた小動物園で、1936(昭和11)年6月の皆既日食時に動物の生態観察を行っていた内容の新聞記事や同人誌を発見した。きょう22日、国内で皆既日食が観測できることから、浅利さんは「73年前にあったことを知ってほしい」と話している。

 浅利さんはレイモンが開いた小動物園についての研究を続け、昨年9月には同所で飼育されていたライオンの様子について、過去の新聞記事に分析を加えたレポートをまとめている。

 研究を進めるうち、73年前の皆既日食について太陽が欠ける時刻などを記述した当時の「函館日日新聞」と、1958(昭和33)年に函館で発行された同人誌「海峡」を発見。浅利さん自身も当時の日食について鮮明に記憶していたことから、これらの記事に注目したという。

 「海峡」に記されていたのは当時の新聞記者が執筆したもので、レイモンが開いた小動物園で飼育されていたライオンやサル、ワシなどが皆既日食にどのような反応を示したのか―という内容。「数匹の猿が騒ぎ出し、人間が何をしているのかという表情をしながら、何かレイモンさんに訴えようとしている」「タカやワシも理解しがたい大異変に羽をバタバタと広げて叫んでいる」(いずれも抜粋)とある。

 浅利さんは「戦前に日食と動物の生態を観察していた事例は、自分が調査した中では最初の事例」と分析しており、「レイモンは動物の心を見抜くのが上手だった」と話す。

 国内で皆既日食が観測されるのは46年ぶりのこと。浅利さんは「日食の美しさを見るだけでなく、生き物にとって太陽の存在がいかに大事なものか、多くの人々に知ってほしい」と訴えている。

 【写真】皆既日食の時刻を記述している「函館日日新聞」(1936年6月19日付)



◎衆院選へ一気に加速 8区各陣営、緊張高め決戦

 衆院の解散を受け21日、道8区(渡島・桧山管内)に出馬する4陣営は一気に選挙モードに入った。投開票まで40日間という長丁場だが、各陣営は公示前に総決起集会を開くなどして緊張感を高め、決戦に挑む。

 民主党前職で8区初挑戦となる逢坂誠二氏(50)は、衆院本会議に出席し、万歳三唱で解散の瞬間に立ち会った。「追い風は感じるが、選挙に盤石はあり得ない。政権交代をてこに、これまで与党がやれなかった国民生活に身近な政策を実現しなければ」と決意を新たにした。22日には函館市内で街頭演説する予定で「地元の有権者と地道に向き合う『どぶ板選挙』の気持ちで、これまで以上に活動を加速させたい」と述べた。

 自民党新人で前参院議員の福島啓史郎氏(63)は、この日の午後に東京入りし麻生首相から党の公認書を受けると、函館にとんぼ返り。「晴れやかな様子の首相と、現役議員の厳しい表情が対照的だった。逆風の中で走り続けるだけ」と気持ちを引き締める。8月7日に予定する総決起集会では橋本聖子参院議員も駆けつける。「景気や雇用などで閉塞感が漂う道南を“チェンジ”するためにも全力を尽くしたい」と意気込んだ。

 無所属新人の佐藤健治氏(51)は終日、市内の支持者回りに奔走。解散について、選対関係者は「昨年やるべきもの。任期満了の選挙が1週間早まったと思い準備を進めている」。加藤清郎後援会長は「今まで続けてきた活動の手を緩めずにやるだけ。後援会の皆さんを中心に多くの有権者と接触を深め、佐藤健治をアピールしていきたい」と気持ちを高めた。27日には事務所開きを行い、体制を強化し支持拡大を図る。

 「わたしたちは淡々とやるだけ」。21日午後1時、幸福実現党新人の西野晃氏(32)は宗教法人幸福の科学函館支部で、政党のPR資料作成の手を急ぎながら冷静につぶやいた。「知名度を上げる努力の手を緩めず、これまで通り必死に有権者と対話を重ねる」と、この日もJR函館駅前で街頭演説。22日には党本部道ブロック代表の佐藤直史氏が来函する予定で、今後は商店街や企業などの事務所にも積極的にアプローチするという。



◎<企画>8区決戦へ 衆院解散夏の陣① 逢坂誠二(民主・前)

 21日午後1時すぎ。衆院本会議場で「紫のふくさ」に包まれた解散詔書が読み上げられると、民主党の逢坂誠二氏は立ち上がって万歳を三唱した。「長い間行使できなかった国民の主権をようやく取り戻せる時。政権交代をてこに、生活に身近な政策を実現する」。決意を新たに、主戦場となる道南で初陣に臨む。

 2007年10月、引退する金田誠一氏の後継候補に決まった。ニセコ町長時代に地方自治の先駆者として名を上げ、前回の衆院選では道比例単独で当選。現職で一定の知名度はあるが、8区での実績や生活基盤はなかった。今回は小選挙区へのくら替えだけに「まだ一度も名前を書いてもらっていない」(陣営幹部)と引き締めを図る。

 長く保守の不協和音が続く8区。昨年9月には03年の前々回以来となる保守分裂選挙が決まった。自民党の都議選惨敗など政権交代に向けた追い風ムードは漂う。しかし、陣営の不安は尽きない。「保守分裂といっても、もともと8区は保守王国」と関係者は口をそろえる。

 前回選挙は金田氏が13万5000票を獲得。自民党の佐藤健治氏に2万票差で勝利したが、佐藤陣営が保守の融和に失敗するという“敵失”もあった。前々回の保守系2候補の総得票は13万票で、金田氏より2万6000票多かった。今回は投票率アップによる浮動票の取り込みも鍵になる。

 合同選対の目標は「(福島啓史郎、佐藤)両候補の総得票を上回る15万票での完勝」とハードルが高い。しかし、頼りの労組票は「年々、減少傾向にある」(選対関係者)ため、従来は「保守の牙城」とされた票の切り崩しに向け、農漁村回りや地元企業へのあいさつ回りにも精を出す。

 また、逢坂氏は「自民が保守で、民主が革新という構図は時代に合わないのでは」と漏らす。民主党は8区で4連勝中。鉢呂吉雄氏は企業票などの保守票も取り込み、金田氏は医師会からの推薦も得た。逢坂氏も「これまでつながりのなかった方の応援も数多くいただいている」と手応えを感じている。

 共産党が今回、選挙区候補の擁立を見送ったことから、逢坂氏が共産票の受け皿となることも予想される。一見、有利な情勢にも「選挙は何があるか分からない」と楽観を避け、「まさにどぶ板選挙」(逢坂氏)と決意を語る。自民党の支持率低迷、小沢一郎民主党前代表の政治献金問題…。追い風と逆風が交互に吹き、今後の「振幅」も警戒しながら政権奪取に全力を挙げる。

 衆院が解散され、8月30日投開票の「40日決戦」が幕を開けた。道8区に立候補を予定している4氏の動きを追い、選挙戦を展望する。



◎魂の踊り 観客を魅了 ギリヤーク尼ケ崎さん

 函館市生まれの大道芸人ギリヤーク尼ケ崎さん(78)の青空舞踊公演「祈りの踊り」が20日、同市松風町の大門グリーンプラザで開かれた。おなじみの赤い長襦袢(じゅばん)姿で「じょんがら」など3演目を披露。魂を込めた熱い踊りで幅広い年代の観客を魅了した。

 41年目を迎えた青空公演。今年は会場の都合で一日延期となったが、大勢の人が集まった。ギリヤークさんは昨年末に心臓病を患い、体内にペースメーカーを入れていたが、最初の演目はバチさばきが激しい「じょんがら」。三味線を持って飛び跳ねるいつも通りの演技に歓声が起こった。

 ファンとともに踊った「よされ節」に続き、最後は「念仏じょんがら」。途中で水をかぶり、多彩な顔の表情や、地面を叩いたり寝転がるなど、激しい動きを見せ、健在ぶりをアピール。観客からは多くの投げ銭が寄せられた。

 公演後ギリヤークさんは「じょんがらが終わったときに体がきつくて最後まで持たないと思ったが、乗り越えることができたのは、わたしの踊りに対して目の肥えた函館の皆さんの厳しい目線。おかげで(青空公演)50周年まで頑張れそう」と話していた。


◎鉄筋6・7トンドミノ倒し 7人重軽傷

 【江差】21日午後1時半ごろ、江差町中網町257の江差北風力発電所1号機建設現場で、風車を基礎部分に固定するためのU字鉄筋6・7トンが次々と倒れ、作業中の鉄筋工7人が下敷きになった。このうち3人は腰や胸の骨折、肺が破れるなどの重傷。意識は全員はっきりしているという。

 風車の基礎部分は、18メートル四方で深さ約5メートル。高さ121メートルある風車の根元を支える金属製アンカーリングを据え付けるため、中心部に160本U字鉄筋を垂直に立てながら環状に組んでいた。鉄筋は長さ1・8―2・7メートル。重さ39―45キロ。突然ドミノ倒しになり、内部で作業していた7人を一瞬でなぎ倒した。重傷者3人は道立江差病院に入院した。軽傷の4人は厚沢部町国保病院で手当てを受けた。

 現場では、U字鉄筋の転倒防止のため太さ1センチの鉄筋を差し込んでいたが、衝撃に耐えられずすべて折れ曲がるなど、事故対策の不備が指摘されている。当時、周辺では7・9メートルのやや強い風が吹いていた。江差署は業務上過失致傷の疑いも視野に、工事関係者の事情聴取を始めた。

 同発電所は国内風力発電3位の日本風力開発(東京)の子会社・江差風力開発が3月に着工。町内北部に出力2000キロワットの風車10基を建設する。1号機は最も東側にある。総出力1万9500キロワット。来年4月に売電を開始する。工事は東京電力系の関電工(同)が受注。準大手ゼネコンを中心に複数の地元企業も参入。鉄筋工事は函館・北斗両市の2社が中心だった。


◎経済対策6億円補正 函館市

 函館市は、国の地域活性化・経済危機対策臨時交付金を活用した総事業費約6億円の経済対策事業を盛り込んだ、本年度の一般会計補正予算案をまとめた。65人の雇用創出など雇用対策をメーンに、公共事業の前倒しや学校の教育環境整備などを見込む。緊急性が強いため、24日に市議会臨時会を開き提案する。

 同交付金を活用した予算は、6月の市議会定例会で約16億円分が既に決定している。今回は、不確定要素があったために前回提案できなかった事業を追加する。

 今回は総事業費のうち同交付金が3億2400万円を占める。国の負担金と道の補助金は2億4100万円。残りは1900万円を市の起債で賄い、1800万円は既に予算計上されている予備費から支出する。このため、予算案上の補正額は5億8400万円増額となる。

 雇用対策費の総額は1億4200万円。20事業で65人の雇用を創出するほか、国の雇用調整助成金やトライアル雇用奨励金に市独自で助成金を上乗せして企業の負担軽減を図る。

 公共事業の前倒しには2億4000万円を計上。深堀小、東山小、五稜中の3小中学校に対し耐震改修を行い、昭和公園グラウンドを整備する。このほかコンピューター教室未整備の11小学校に同室を整備したり、市内全小中学校に地上デジタル放送に対応したテレビを整備する。