2009年8月19日 (水) 掲載

◎衆院選公示、予想の4氏が立候補

 第45回衆院選は18日、公示された。道8区(渡島・桧山管内)には、自民党新人の福島啓史郎氏(63)、民主党前職の逢坂誠二氏(50)、幸福実現党新人の西野晃氏(32)、無所属新人の佐藤健治氏(52)=届け出順=の4氏が立候補した。最大の争点である政権選択に加え、景気回復や年金問題など課題が山積する中、30日の投開票に向け12日間の選挙戦に突入した。(衆院選取材班)

 道8区は、予想された4氏の顔ぶれとなった。福島氏は道南地域の経済立て直しを訴え、保守議席奪回を狙う。逢坂氏は「政権交代」を前面に打ち出し、小選挙区5回連続となる民主党の議席確保を目指す。佐藤氏は「道南の市民党」を掲げ、3回目の戦いを「草の根」で戦う。西野氏は、消費税廃止や国防強化など独自の路線を打ち出す。

 全国的には自民・公明政権の継続か、民主党を中心とした政権交代かが焦点。道南でも自民は民主の政権担当能力や政策実現力を問い、民主は長く続いた自民党政治の弊害を訴え、政権奪取に向け攻勢を強める。

 元農水官僚で参院議員を1期務めた福島氏は、党8区支部長就任から1年間で知名度不足をある程度解消したが、過去2回、自民党公認だった佐藤氏の出馬による保守分裂の影響は避けられない。

 引退した金田誠一氏の後継として小選挙区初挑戦となる逢坂氏は、4年間の実績をアピール。ただ、民主党のマニフェストでは、農業自由化をめぐり農業関係者から反発が出るなど不安要素もある。

 宗教団体を支持母体とする西野氏は、32歳という若さを前面に出している。

 3度目の挑戦となる佐藤氏は、4候補中もっとも道南とのかかわりが深い。潜在的な知名度も高く、従来からの支持者のほか、浮動票の取り込みが予想される。

 道南は景気低迷による地域経済の衰退、人口減少と少子高齢化、漁業・農業経営の厳しさや担い手不足など多くの課題を抱えている。これらにどう対応し、課題を克服していくか、4候補はそれぞれの政策を訴え、支持拡大を図っていく。



◎衆院選公示で舌戦展開

 衆院選が公示された18日、道8区でも各候補者が市内各地で第一声を上げ、初日から激しい舌戦を展開した。自民、公明連立政権の「維持」か、民主党を中心とした野党による「政権交代」か―。「政権選択」が最大の焦点となるだけに各候補の訴えに聞き入る市民が多い一方、一次産業の振興や雇用確保、福祉充実など山積する課題を憂う声や不安視する意見も目立った。

 第一声を聞いていた函館市の無職、杉本邦雄さん(61)は「いよいよ衆院選が始まった。街頭演説だけでなくテレビや新聞でも候補者の主張に耳を傾けたい」と真剣な表情で語り、「所得向上と若者の就労支援に本気になって実行する人に一票を入れたい」とする。同市の女性看護師(49)は「子どもの世代は働いても貯蓄に回すどころか残る金もわずか。雇用環境を良くし、老人介護などの支援も充実してほしい」とし、演説する候補者を熱心に見詰めた。

 身近に迫る問題から政治に望む声も大きい。函館市の主婦、水沢香織さん(32)は「現在育児休暇中なので仕事に復帰したら育児と仕事を両立できるか心配」とこぼす。同市の無職、佐々木茂行さん(78)は「宙に浮いた年金問題や後期高齢者医療制度などはばかげている。もっと国民目線の政治を」と訴える。

 函館市の主婦、小町曜子さん(54)は「息子は来年就職活動だが、勤め先がないと函館に戻れない。若者の雇用先を」。同市でコンブ漁を営む川島幸博さん(78)は「今年は例年よりも水温が低く、養殖コンブの生育が極端に悪い。こんな時こそ政治の力が必要だ」と一票への思いは強い。

 一方、注目が集まる政権公約(マニフェスト)に対する手厳しい意見も。函館市の大学4年生、松尾光太郎さん(22)は「各党のマニフェストは一通り見たが、どこも有権者のご機嫌取りに感じる。実現しても財源を保てるのか」と不信感をあらわにし、現実を見据えた政策を求めた。七飯町の無職、伊藤高さん(68)も「内容が分かりづらい。もっと国民が関心を持てるようなものにしてほしい」と注文を付ける。函館市の会社員、坪内秀樹さん(36)は「今さら政治への期待はないが選挙には行く。地元北海道の景気を良くするならどの政党でも構わない」と冷ややかだ。

 市内を走る選挙カーから候補者の訴えが響く中、函館市の男性会社員(33)は「少しでも暮らしやすくなるような候補者を選びたい」と慎重な姿勢をみせていた。



◎函館市戦没者追悼式、献花しめい福祈る

 2009年度函館市戦没者追悼式が18日、市総合福祉センター(若松町)の多目的ホールで開かれた。遺族ら約300人が参列し、献花などで戦没者のめい福を祈った。

 同追悼式は平和への誓いを新たにする目的で市が主催。地元関係の戦没者(日露戦争―太平洋戦争)は旧函館市が4797人、旧4町村で609人の計5406人。

 追悼式では西尾正範市長が「悲惨な戦争を風化させずに次の世代に語り継ぎ、惨禍が二度と起きないよう力を尽くす」と式辞を述べた。市遺族代表として森玲子さんが追悼の辞を述べた。父親がサイパンで戦死したという森さんは「祖国は等しく平和な世界を享受している。戦争の教訓を生かして平和のために努力します」と戦没者の霊に語り掛けた。

 参列者が祭壇に白菊をささげたほか、水月流賢心朗吟会の湊賢心会長が戦没者に向けて献吟を行った。(小杉貴洋)


◎森・鷲ノ木トンネル工事の見学会

 【森】道内最大級の環状列石(ストーンサークル)がある森町の鷲ノ木遺跡で建設が進む、道縦貫自動車道鷲ノ木トンネル工事(全長約85メートル)の見学会(町教委主催)が18日、同所で開かれた。町民ら約70人が参加、遺跡の下にトンネルを通すという国内でもまれな工事に目を見張った。

 同遺跡は直径約37メートルの環状列石や、昨年発掘された竪穴住居跡などがある。遺跡は縦貫自動車道のルート上に位置するため、当初は遺跡を壊す予定だったが、地元住民の強い要望を受け遺跡の現地保存が決まった。

 2005年に遺跡の真下をトンネルが通る方式に変更され、ことし5月から工事が進んでいる。工事は遺跡下の土を開削せず、地下構造物を使った特殊な手法で行われており、見学会は「全国的にみてもほとんどない」(東日本高速道路道支社函館工事事務所)という作業を見てもらおうと、初めて開かれた。

 環状列石は現在、シートと土のうで厳重に保護されており、見学会ではまず、町教委の担当者がパネルを使って概要を説明しながら「工事が終わる2011年ごろに一般公開を行いたい」と述べた。

 事業主体の同事務所は「現在は箱型のルーフで遺跡の地盤を支えている。来年早々にルーフと構造物を置き換える」などと説明した。参加者は「トンネル工事で地盤に影響はないのか」などと、熱心に質問していた。(千葉卓陽)


◎日ロ沿岸市長会議、ロシア側参加者が市訪問

 19日に函館市で開幕する日ロ沿岸市長会議・日ロ沿岸ビジネスフォーラム(日ロ沿岸市長会など主催)に出席するロシア側の関係者28人が18日、函館市役所を表敬訪問した。同日夜は日本側の関係者も合わせて約120人が出席し、函館国際ホテルで市主催の歓迎レセプションを開催。経済と観光の相互協力をテーマに意見や情報を交換する。

 ロシア側の参加都市は最終的にハバロフスク、ペトロパヴロフスク・カムチャツキー、ヤクーツク、ナホトカ、ユジノサハリンスクなど10市で、旅行会社や商社などからも参加があった。

 市役所では西尾正範市長が「開港150周年の記念すべき年に第22回ロシア沿岸市長会議を開くことができ、ロシア交流を積極的に進めている市にとって喜ばしく意義のあること」と歓迎した。

 ロシア側の団長で、ハバロフスクのソコロフ・アレクサンドル市長(ロ日極東シベリア友好協会会長)は「ロシア大統領と政府はシベリアや極東地域を非常に注目している。今回の会議で両国各都市の経済協力や発展への成果が得られると思う」と期待。西尾市長と記念品を交換した。

 日ロ沿岸市長会議は隔年開催で、日ロ交互に開催地を選んでいる。函館は1997年の第16回以来2回目。日本側から新潟、秋田、富山、舞鶴、敦賀、金沢など18市と貿易会社などが参加する。(高柳 謙)