2009年8月20日 (木) 掲載

◎新型インフル流行で道南の学校、施設 警戒

 道南の多くの公立小、中学校で2学期が始まった19日、名古屋市で国内3人目の死者が出るなど新型インフルエンザが流行の兆しをみせ、学校関係者らが警戒を強めている。同日、舛添要一厚生労働相は記者会見で「本格的な流行が始まった」と国民に注意を促しており、市立函館保健所でも「うがい、手洗いの徹底を」と対策を呼び掛けている。

 新型インフルエンザの感染は全国的に拡大しており、18日までに沖縄県と神戸市の男性の計2人が死亡したほか、プロ野球の日本ハムファイターズ選手も感染し、球団が対応に追われている。秋以降に懸念されている流行の兆しが早くもみられており、主な感染源になるとみられる学校の再開に伴い、関係者は一層の注意喚起を図る考えだ。

 函館市教育委員会保健給食課の中村文信課長は「校長会などさまざまな機会を通じて予防策の周知徹底を検討している。保健所と連携した上で学校関係者対象の研修会も考えたい」とし、「2学期が始まり、児童生徒の健康状態の把握に努めたい」とする。

 市内の学校や福祉施設では以前からうがい、手洗い指導を実施しており、市内の小学校教頭(53)は「休み時間など日常的に指導しているのでこれまで通り続けたい」と冷静に語る。函館港小児童が対象の「共同学童保育所たんぽぽクラブ」では、手の洗い方の手順を書いた紙を台所に張って対応。久保田益美主任指導員(32)は「つめの間や手の甲などもきちんと洗うように声を掛けている」と話している。

 市立函館保健所は「うがい、手洗いの徹底しか予防法はない」と説明。「人混みなど外から帰ったら特に気をつけてほしい。高熱やせきなど怪しい症状が出た場合、掛かり付けの病院にまずは電話し、診療について打ち合わせて」としている。  問い合わせは発熱相談センター(市立函館保健所保健予防課)TEL0138・32・1539。(新目七恵)



◎シベリア鉄道で物流強化…日ロ沿岸市長会議開幕

 第22回日ロ沿岸市長会議・ビジネスフォーラム(日ロ沿岸市長会など主催)が19日、函館国際ホテルで開幕し、初日は両地域の経済協力や貿易振興について発表や意見交換をした。新潟市の篠田昭市長らが、シベリア鉄道を活用した物流ルートの確立を提言し、ロシア側からは経済交流を促進する拠点や機能をつくる考えが伝えられた。

 日本18市、ロシア極東10市の市長らと、両国の貿易業者や観光業者など合わせて約120人が出席。函館市の西尾正範市長が「両地域間の経済や観光の交流が促進される契機となるよう、会議に期待します」とあいさつした。

 基調講演でロシア科学アカデミー極東支部経済研究所のミナキル所長は「ロシア極東への諸外国の投資は増えているが日本からは小さい。有望な協力分野はエネルギーや加工産業の設備更新、バイオテクノロジーなどで、どのような経済活動も地域や都市で行われている」と都市間協力の可能性を強調した。

 両地域の経済交流発展について、篠田新潟市長は「姉妹都市3市とは本格的な経済交流に発展し、物流・人流の強化が喫緊の課題」と述べた。ウラジオストク市のズブリツキー副市長は「アジア太平洋地域の経済協力は欠かせず、ウラジオに外資の導入や外国の企業活動参入を促す国際経済交流促進センターをつくりたい」、ハバロフスク市のソコロフ市長も「ロシアの投資プロジェクトに積極的に参加してほしい」と呼び掛けた。

 ただ、ロシア極東との貿易や経済交流に向けた課題として▽ロシア経済に占める極東地域経済の比率は4・5%と低い▽極東地域の人口は650万人程度で、中国沿岸部は約4億人▽ロシアは世界150カ国以上が加入しているWTO(世界貿易機関)に未加盟で、「世界経済のルールが適用されない」(進出企業)―などの指摘もあった。

 20日は観光をテーマに議論し、参加各都市が共同コミュニケに調印する予定。(高柳 謙)



◎市内公立小、中学校で始業式

 函館市内の公立小、中学校計75校を含む道南の多くの学校で19日、2学期の始業式が行われた。日に焼けた子どもたちは元気に登校し、夏休みの思い出や自由研究の成果を発表していた。

 函館金堀小(溝口幸司校長、児童276人)の始業式では溝口校長が「2学期は学芸会やラグビー大会など催しがいっぱい。頑張って力を合わせて成功させて」とあいさつ。続いて6年生の松原杏花さん(11)ら代表児童3人が2学期の目標などを発表した。

 式後、1年1組の教室では児童25人がペットボトルで作った工作や押し花をまとめた本などそれぞれの自由研究を見せ合っていた。森田弘子教諭(43)が夏休みについて聞くと、「札幌のお化け屋敷に行った」「キャンプで遊んだ」などと答えていた。(新目七恵)


◎支庁再編 基本フレーム見直しへ…管理職ポスト格上げなど

 【江差】支庁制度改革をめぐり道は19日までに、6月に公表した9総合振興局と5振興局の組織体制を示す「基本フレーム(素案)」を大幅に見直す方針を明らかにした。素案で打ち出した、14支庁の管理職ポスト格上げや産業振興部門の集約化などの方針は、市町村などの反対意見に配慮して事実上撤回。現在ある14支庁の組織体制を基本に再検討を進める考えを示した。

 市町村や道町村会(会長・寺島光一郎乙部町長)から寄せられた素案に対する修正意見への回答として示した。

 現在の14支庁では、支庁長に本庁部長級、部長に本庁課長級、課長は本庁主幹級を充てている。素案では、支庁再編に伴い部長は本庁次長級、課長も本庁課長級に格上げする方針を示していた。しかし、14支庁全体で次長級50人、課長級150人もの管理職ポストが新たに増え、人件費などのコスト増加が懸念されるとして、道町村会などは「管理職を増やして一般職員を削減するのは本末転倒。行革に逆行する」として反発。道は現行の格付けを基本に管理職の体制を再検討する方針を示した。

 また、農務、農村振興、水産、林務、商工労働観光の5課からなる支庁の産業振興部門について、素案は「地域産業課(仮称)」の1課に集約するとした。だが、関係市町村からは「産業部門の重視を求める地方の要望に反する」との反対意見が相次ぎ、道は現在の課体制を維持する方向での再検討を余儀なくされた。支庁再編に伴い、桧山などの振興局地域で廃止を検討していた教育局の位置付けについては「14教育局体制を基本に機能や組織体制を検討する」として存続を明言した。

 また、道は職員数適正化計画に基づき、本年4月1日現在で9400人に上る支庁職員を、2014年度までに7400人まで削減するとの試算も明らかにした。桧山振興局に名称変更する桧山支庁をはじめ、14支庁ごとの削減数や職員配置数は明らかにしていない。

 道は支庁再編条例を施行する予定の10月までに、基本フレームをめぐる協議を終える方針だったが、市町村などから「十分な協議時間がない。地方の合意を前提に協議を進めるとした道町村会など地方4団体との合意に反する」として条例施行の延期を求める声も相次ぎ、施行期日の決定は不透明な情勢にある。(松浦 純)


◎福島、佐藤氏推薦せず…8区公明

 公明党道南総支部は19日、8区選対会議を開き、推薦要請が来ていた自民党新人、福島啓史郎氏(63)について、党本部の決定に従い推薦しないことを決めた。志賀谷隆選対本部長は「無所属新人の佐藤健治氏(52)からも推薦を要請されていたが、両氏とも推薦はしない。ただ、党員や支持母体(創価学会)には保守系候補(福島、佐藤氏)を応援するようお願いしたい」と話している。

 福島氏については党本部が12日、選挙態勢の遅れなどを理由に推薦しないことを決め、福島氏の陣営から再考を願う要請が来ていた。しかし「保守分裂という事態が変わらず、公認候補といえども福島氏と佐藤氏を区別して判断するのは難しかった」という。

 佐藤氏については、陣営幹部も公示前に公明党と創価学会に協力要請をしたことを認めている。公明党は、佐藤氏が自民党公認で出馬した前回も推薦しなかったが、民主党候補よりは支援色を出し、応援した経緯がある。

 ただ今回、「双方とも推薦せず」では自主投票とも受け止められかねないため、保守系候補を双方、応援する姿勢は明確にした模様だ。(高柳 謙)



◎衆院選企画「願いは届くか」①障害者福祉…十分な医療、就労支援を

 「どの地域に住んでも等しく必要な支援が受けられる社会にしてほしい」。函館市の横川由紀さん(33)は進行性神経性筋委縮症「シャルコマリー・トース病」を抱えながら地域で生活する。車いすを使い、生活全般に介助がいる。障害者自立支援法に基づく、市町村が提供する福祉サービスの「重度訪問介護」をおおむね1日8時間利用している。

 就寝時などに人工呼吸器を付けるため、24時間の訪問介護を申請したが認められず、残りの時間はボランティアに頼る。市は「個々の状態を客観的に判断して必要な時間数を決めている」と説明。ただ、首都圏など財政的に余裕のある自治体で24時間介護を認めるケースが多いのが実情だ。

 神奈川出身の横川さんは20歳の時に施設を出て東京で1人暮らしを始めた。あこがれのまち、函館に住んで4年。「障害があっても好きな街で自分らしく暮らせることを知ってほしい」と、障害当事者による団体「自立の風かんばす」を立ち上げた。「首都圏では24時間介護を認める自治体もある。障害程度はどこに住んでも変わらないのに、サービスは自治体任せ」と指摘。「生活に合わない法律を変えられるのは議員だけ」。そんな願いを込め、横川さんは一票を投じる。

 精神科医療の分野で地域格差の是正を求めるのは、市内のNPO法人全国精神障がい者地域生活支援センター理事長の能登正勝さん(31)。能登さん自身も気分障害などを患う当事者だ。24時間、患者の症状やニーズに合わせて受診できる救急精神科病院は現在、神奈川県にしかなく、能登さんは「当番院が急患を受け入れる形を取るが、通院歴がないと任意入院ができないなど、速やかに受診できる体制とはいえない」と危ぐ。「24時間の緊急時医療の確立は国が一元化してやるべき問題」と政治の力に望みをかける。

 知的障害者の家族らでつくる「函館手をつなぐ親の会」は市内で障害者の就労支援施設を兼ねた軽食喫茶店を運営する。一般就労の道は険しく同店で働く利用者(障害者)は当初の5人から15人に増加。津田麗子会長は「利用者が増えた分、1人1人の労働時間が短くなってしまう」と漏らす。

 障害者自立支援法は「入所施設から地域生活への移行」をうたう。しかし津田会長は「施設には残れない。でも地域に出ても仕事がない、住むところもない…。親亡き後、子どもたちはどうなるのか。実際には形だけの支援法」と支援の不十分さを指摘。「障害者が地域で自立し、安心して暮らせるような政策を」と訴える。(宮木佳奈美)

◇ ◇ ◇

「政権選択」を最大の焦点とする衆院選が18日公示され、12日間の選挙戦の火ぶたが切られた。国のかじ取りをどの政権にゆだね、誰に一票を投じるのか。雇用、経済、医療、福祉、教育…。日々の暮らしで直面する課題が山積する中、テーマ別に有権者の思いに耳を傾けた。