2009年8月24日 (月) 掲載

◎喜頓さんの思い熱演…「案山子物語」函館公演

 今年生誕100年の函館出身の喜劇俳優、故益田喜頓さん(1909―93)が函館市民のために書き下ろしたミュージカル「案山子(かかし)物語」の函館公演が23日、市民会館(湯川町1)で行われた。愛と平和の思いに彩られたストーリーを市民キャストが熱演し、大勢の観客が感動を共有した。

 同演目は、喜頓さんが亡くなった翌年の1994年に函館で初演され、今回が4度目の上演。本公演は函館市栄誉賞第1号受賞者である喜頓さんの功績をたたえ市や文化団体など9機関・団体でつくる実行委の主催で開かれた。この日は午後と夜の2ステージが行われ、合わせて約1300人が来場した。

 物語は函館近郊の畑に立つ主人公のかかし「ペコ」が台風に乗ってスズメ3羽とパリやニューヨークなど世界各地を巡るもの。現地の人々と交流を重ねる間に笑顔や泣き顔などの「顔」を身に付けていき、さらなる自由と愛を求めていく感動のドラマ。

 昨夏から練習を重ねてきたキャストは、のどかな農村や緊迫感のある台風の情景、華やかな祭りなど場面場面でリズミカルな踊りや生き生きとした歌唱や演技を披露。中でも地雷で片足を失った少女がペコに向き合い「たった一つの魔法が使えたら世界中の兵器を花に変えたい」と願うシーンには、戦争に対する怒りと人を大切に思う喜頓さんの強いメッセージが込められ、来場者を引きつけていた。歌と踊りで躍動したフィナーレは万雷の拍手に包まれた。

 来場した市内の川村一治さん(58)は「本当に素晴らしかった。踊りや演技などキャストの努力が伝わってきて感動した」と話していた。

 なお、9月20日には喜頓さんが活動していた東京、浅草での公演が予定されている。



◎シニア世代 経験で支える【2009総選挙道8区】

 30日投票の衆院選で、函館市選管は市内405カ所(旧4町村除く)のポスター掲示場設営などの作業を市シルバー人材センターに委託している。22日は市内の投票所近くの79カ所で最高裁判所裁判官国民審査用の掲示板を設置。同センターに登録する60歳以上のシニア世代の会員が活躍し、持てる技術を生かせる機会にもなっている。

 市選管は地方統一選以外の選挙で、「高齢者の生きがいづくりの場の提供」を目的にポスター掲示場の設営など一部業務を委託。今回の選挙では掲示板の設営以外に、投票所の玄関スロープ設置や案内係を依頼した。

 同センターは市内在住の60歳以上1140人(7月現在)が登録。同センターの紹介で、会員たちは長年の経験で培った知識や技能を生かし、普段からさまざまな仕事を請け負っている。

 ポスター掲示場の設営は10―14日に実施。元大工を中心に21人が7班に分かれて作業に従事。3人1組でチームワークを発揮し、手慣れた様子で掲示場を組み立てて固定し、強風などで倒れることがないよう入念にチェックしていた。これまで何度も選挙関連の業務に従事している会員の元大工、渋木茂男さん(78)は「労働機会をもらって退屈しないし、健康にもいいし、お金にもなるのでありがたい」と話していた。

 同センターの坪谷正一事務局長は「高齢者の生きがいづくりの機会創出の契機になる。選挙という大事な事業に対する意識を持って、安全に十分配慮して誠心誠意取り組みたい」と話している。



◎18年ぶり快挙 女子800で岡田が日本中学新…全国中体連陸上 

 【大分】大分県の九州石油ドームで21日に開幕した陸上は、23日の女子800メートル決勝で岡田芽(上磯3年)が2分7秒51で栄冠を手にした。また日本中学記録を0・3秒上回り、18年ぶりの更新となる快挙を成し遂げた。同種目の優勝は道内勢初。

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 22日の予選は2分12秒15で今シーズン2番目の好タイムで流れに乗った。続く準決勝も2分11秒58で道記録を更新し、決勝進出者8人の中でトップで通過。岡田を7年間指導し続けてきたほくとJCの鈴木洋コーチは「いい流れで予選、準決勝を走れていたので安心できた」という。

 “日本一”へ向けて満を持して挑んだ決勝は序盤に5人が抜け出して5番手でレースを進めた。1周目は予想通りの63秒。「決して速いペースでもなく、10秒を切るにはいいタイム。余裕も感じられた」(鈴木コーチ)。落ち着いたレース運びでバックストレートに入った。

 残り700メートルから650メートルで加速して一気にスピードを上げて第4コーナーで先頭に踊り出ると、トップスピードまま直線。並み居る強豪の猛追を振り切ってゴールした。鈴木コーチは「加速がなめらかで理想的な展開。きれいなレースだった。中学生の力を感じた」と、快挙を褒めちぎった。

 2分7秒51は日本中学記録を18年ぶりに塗り替えただけでなく、1日に奈良県で開かれたインターハイ女子800メートルの優勝タイム2分7秒45にあと0秒06と迫る大記録。道南女子中学中距離界の“至宝”が、全国の大舞台で羽ばたいた瞬間となった。24日に決勝が行われる1500メートルも予選を通過。2冠への勢いになりそうだ。


◎仮囲い撤去 奉行姿現す

 国の特別史跡「五稜郭跡」で行われている「箱館奉行所調査復元工事」で23日、復元した建物全体を覆っていた仮囲いが、完全に撤去された。この日は撤去途中の骨組みが風などで倒れてしまわないよう、休日返上で作業。耐荷重量が最大で120トンのクレーン5台を使い、長さ33㍍重さ5.8トンの大はりや、巨大な柱などを取り去った。

 仮囲いは周囲190メートル、高さ20メートル。撤去は7月上旬に開始し、この日はわずかな柱やはりを残すのみとなった。作業員は声を掛け合って安全を確認しながら、地上20㍍の高さで囲いの骨組みを固定する部材を一つずつ慎重に解体。異なる色でむらを表現した瓦屋根は、太陽の光を受けてキラキラと輝いていた。

 現場周囲は塀で囲われているが、出入り口などから市民や観光客が作業の様子を見守った。函館市田家町の男性会社員(60)は「クレーンがたくさん見えたので散歩がてら見に来ました。立派なので完成したら中に入ってみたい」と話していた。

 同奉行所は五稜郭跡の中心にあった建物で、庁舎全体の3分の1に当たる約1000平方メートル(平屋)を復元中。2006年7月に着工し、10年6月の完成、同秋の公開を目指す。


◎情報技術 社会との接点は…サイエンストーク【はこだて国際科学祭】

 はこだて国際科学祭(サイエンス・サポート函館主催)2日目の23日、函館市地域交流まちづくりセンターでは市立函館高校の生徒が研究論文を発表する「サイエンストーク」などが行われた。夜はコーヒーを飲みながら気軽に科学について語り合う「サイエンスカフェ(科学夜話)」が開催され、公立はこだて未来大の川嶋稔夫教授が函館の歴史資料のデジタル化の取り組みを紹介した。0ァ40ィ(宮木佳奈美)

 ○…サイエンストークでは「社会と科学のクロスオーバー」をテーマに、同校3年生8人が授業の総合的な学習の時間で取り組んだ課題研究論文を1人ずつ発表し、約20人が耳を傾けた。

 池上奨君は「情報をデザインする、函館の可能性」をテーマにした論文で「情報デザインとは、人間の行動にかかわる情報を“かたち”として形成し、コントロールすること」と説明。ウェブサイトでバスの到着予測時刻などを確認できる函館バスのバスロケーションシステムを例に、「函館をより住みやすい街にできるのはユーザーであり、情報デザインする側」と話した。

 ○…サイエンスカフェには約30人が参加し、貴重資料をデジタル化して分類・整理、保管する「デジタルアーカイブ」の役割に理解を深めた。デジタルアーカイブを研究する川嶋教授は2003年から始まった市中央図書館の資料のデジタル化の作業に携わる。

 同センター1階で展示されているデジタル化された歴史資料などを示しながら、地域の記録を情報技術を使って将来的につなげる意義を説明。「デジタル化の最大の功績はいろんな資料が市民の目に触れる機会を増やすことにある」と話した。