2009年8月6日 (木) 掲載

◎開港100周年も函館沸く…記念絵はがき入手

 道教大函館校地域連携センター長の鴈沢好博教授がこのほど東京の古本屋で、1958年に社団法人函館文化会が発行した「函館開港百年記念絵葉書」を入手した。絵はがきは函館港100周年を記念し、石器時代から昭和期までの函館の歴史的な出来事を写真や資料で振り返る10枚組。鴈沢教授は「はがきから当時の市民の意気込みを感じる。開港150周年を機に、こうした過去の出来事を少しでも発掘できれば」と話している。

 絵はがきは函館などから出土した代表的な土器を掲載した「石器時代」から始まり、寛政11(1799)年の函館絵図や安政元(1854)年のペリー会見を描いた写生画、明治2(1869)年の箱館戦争決戦の錦絵など、地元にかかわる歴史的な出来事をまとめている。函館の発展に貢献した江戸時代の豪商・高田屋嘉兵衛やハリストス正教会の基礎を確立したロシア人宣教師ニコライの肖像など、ゆかりの人物の功績にもスポットを当て、それぞれの解説文も付いている。

 1964年の函館文化会沿革史によると、絵はがきは58年5月に1万組作成し、1組100円で配布した。同会はもともと教員の集まりだったが、「函館郷土文化会」と合併し、同年2月に社団法人函館文化会として設立許可を受けた。絵はがきの配布は、新組織としての最初の活動だったことが分かる。現在、函館文化会関係者で当時を記憶する人はほとんどいない。

 絵はがきは函館市中央図書館にも数十組保管されており、同館で古文書のデジタルベース化を進める奥野進さんは「戦後の絵はがきは少ないが、函館港100年記念絵はがきは発行部数が多いので今も持つ市民もいるのでは」と推測し、「絵はがきの内容から、全国的にも函館は歴史的な話題が豊富なことが分かる。郷土の歴史を見直すきっかけになれば」と語る。

 「函館開港百年祭記録集」によると、絵はがきが作られた58年の7月15日から8月5日まで、市内は記念式典や音楽パレード、人工衛星と宇宙旅行展などさまざまな記念行事が繰り広げられた。高田屋嘉兵衛銅像の建立や海員水産会館の開館などもあり、51年前の夏も函館の街は歴史的な節目に沸き立っていたことがうかがえる。

 鴈沢教授は「民間の文化団体が絵はがきを作ったことに市民のパワーを感じる」と話している。



◎再就職向け60人…丸井今井函館店離職者総合相談会

 経営再建中の老舗百貨店「丸井今井」の新会社移行に伴い、離職した函館店の従業員を対象にした総合相談会が5日、函館市新川町の函館地方合同庁舎で開かれた。不況で雇用情勢が厳しさを増す中、参加者は早期の再就職に向け、真剣な表情で担当者の説明に聞き入った。

 相談会はこの日、函館のほか、札幌と旭川の道内3会場で一斉に開催。函館では7月末までに離職した計65人のうち、まだ再就職先が正式に決まっていない60人(男性22人、女性38人)が出席した。

 会場には函館公共職業安定所や渡島支庁、函館市など7機関が参加。求職票を受け付けたほか、雇用保険の失業手当の受給手続き、再就職に向けた個別相談に応じた。同職安は道南の厳しい求人動向に触れた上で、「職種や勤務地、賃金など希望の優先順位をつけて」などとアドバイスした。

 離職者にはいわゆる「団塊世代」のベテラン社員も目立った。函館店に40年以上勤めた男性(59)は「定年まで勤め上げたかった。後ろ足で砂をかけられて辞めるようなもの」と言葉少な。別の男性(56)は「どこも不況で再就職はそう簡単にはいかない。職種にはこだわらないが、我慢にも限界がある」と漏らした。

 35年間勤めた男性(58)は「いずれこうなる覚悟はあった。いまは何も考えられないが、長年の接客経験は生かしたい」と話し、新生丸井今井については「存続してもらいたいが、今まで以上に地域に密着した店づくりをしなければもう後がない。三越伊勢丹の経営手法がどこまで函館で通じるか疑問も残る」とこぼした。



◎遊んで函館の「いろは」わかる…歴史題材のかるた発売

 函館市海岸町の企画会社アリエル(瀬尾信雄社長)が函館開港150周年を記念し、函館の歴史を題材にした「函館いろはかるた」を発売した。取り札の裏には解説文もあり、同社は「遊びながら歴史を学べる。子どもからお年寄りまで楽しめ、異世代のコミュニケーションツールとしても活用してもらいたい」と話している。

 札は「いろは」の47文字に「ん」を加えた48種類で、大きさは縦8センチ、横6センチ。「ペリー艦隊に驚く市民」など函館の歴史的な出来事をはじめ、函館ゆかりの人物、産業、文化を織り交ぜた内容になっている。

 市内の郷土史家、近江幸雄さんが1980年に自費出版した歴史かるたを基に、同社と近江さんが共同制作し、三和印刷(海岸町)が印刷した。読み札や取り札の裏にある解説文は近江さんが担当。「遺(のこ)された縄文土偶国宝に」など函館と合併した旧4町村に関する話題を新たに盛り込み、アレンジが加えられた。取り札には七飯町在住のイラストレーター松本ゆかりさんが手掛けたカラーのイラストが描かれている。

 札をいろは順や順不同で読み上げる音声CD、パソコンの画面上でコンピューターとかるたの対戦ができるゲームCDが付いて2000円。市内の書店で販売。問い合わせはアリエルTEL0138・45・8898へ。


◎港まつりの夜空に歌声響く…最終日

 「開港150周年記念函館港まつり」(同実行委主催)の最終日となった5日、函館市松風町の大門グリーンプラザの特設ステージでは「大門カラオケ大会」が行われた。食べ物などの屋台が並び華やいだ雰囲気の中、夜空に歌声が響き、夏の夜の祭りを締めくくった。

 同カラオケ大会には函館や近郊の23人が出場し、演歌やポップスなど得意の歌を熱唱。知り合いが出場すると大きな掛け声が飛び交う場面も見られた。審査では順位を争わず、それぞれに賞品が贈られた。

 会場には夏休み中の学生のグループや仕事帰りのサラリーマンが訪れた。前日まではパレードで市内に大音量が響いていたが、この日はしっとりとした歌が流れ、夏の夜を楽しむ人のたくさんの笑顔が祭りのフィナーレを飾った。

 埼玉県から家族旅行で訪れた会社員、能都昭一郎さん(35)は「2日間函館におり、昨日の夜はこの場所で楽しく踊りを覚え、今日は少し寒いが和やかな雰囲気で良い思い出になった。今度はパレードを見てみたい」と話していた。


◎9日から市民茶会で150周年祝う…ドリームボックス

 函館港「緑の島」で8日から開かれる函館開港150周年記念事業のメーンイベント「ドリームボックス150」(同事業実行委員会)で、表千家同門会函館支部は9日午前10時から、市民茶会を開く。開港150周年にちなんだ茶器や菓子を用意してもてなす予定で、同支部は「開港当時を思いながら茶の湯文化に親しんで」と、来場を呼び掛けている。

 当日、茶席は用意されたテント内に開設されるが、ペリー提督が黒船で函館に来た史実を思い浮かべ、船上をイメージした造りにするという。同支部の青年部や高校茶道部の生徒約60人がもてなしをし、外国人同士が交流している様子が描かれた水指(みずさし)や函館夜景をイメージした茶わんなどを使い茶を立てる。高校生は開港150周年記念のキャラクター「ペロリ君」が描かれたTシャツを着て来場者を迎える。

 青年部の高橋真由美部長(45)は「これまで試行錯誤しながら準備を進めてきたが、函館開港150周年記念事業に茶を通して携われることは光栄。笑顔でもてなしたい」と話し、函館工業高茶道部の部長で3年の渡辺清香さん(17)は「未熟ですが先輩たちの力になれるよう頑張りたい」と意欲を見せる。入場料500円。

 16日午前10時からは、裏千家淡交会函館支部ともえ青年部も市民茶会を開く。